「レコーディングエンジニア」とは

アーティストが録音を行うスタジオで音響機器を調整し、より良いサウンドに仕上げる。
レコーディングエンジニアの仕事は、ボーカルやコーラス、各楽器の演奏を個々に録音し、それぞれのバランスを調整して1つの楽曲としてまとめることです。
資格や免許は必要ないものの、さまざまな音響機器の操作やデジタル処理の技術を専門学校で学び、まずはアシスタントや見習いとして就職。現場で数年間、経験とスキルを磨いた後に、晴れてキャリアアップが叶います。
アシスタント時代は薄給ですが、大手レコード会社の社員であるレコーディングエンジニアの場合は平均年収が600〜800万円だといわれています。
音楽市場全体は低迷していますが、音楽そのもののニーズが尽きることはなく、その音源を作るレコーディングエンジニアは実力と努力によって活躍し続けることが可能な職種だといえるでしょう。
「レコーディングエンジニア」の仕事紹介
レコーディングエンジニアの仕事内容
音を組み合わせ仕上げる音楽制作の要
アーティストがスタジオでレコーディングを行う際に、音響機器を調整してより良いサウンドに仕上げるのがレコーディングエンジニアの仕事です。
現場によっては「ミキサー」や「音響エンジニア」と呼ばれることもあります。
そもそもCDをはじめとする音楽メディアを制作する工程は、大きく分けると、レコーディングをした音を編集(ミキシング)し、マスターテープ(マスタリング)を作成することで完成します。
ボーカルやコーラス、各楽器の演奏の録音に立ち会い、それぞれの音量などのバランスを調整し、1つの楽曲としてまとめる音楽制作の要の仕事です。
ときにはレコーディングが深夜に及んだり泊まり込みになったりすることもあり、技術だけでなく根気と集中力も必要とする仕事だといえるでしょう。
レコーディングエンジニアの就職先・活躍の場
音楽制作の現場
レコーディングエンジニアが就職する会社は、主にレコーディングスタジオやレコード制作会社、エンジニアをマネジメントするプロダクションです。
レコーディングスタジオやエンジニアのプロダクションに所属する人には、さまざまな仕事の依頼が入るため、より幅広い楽器や音楽ジャンルに精通している必要があります。
一方、レコード会社やレコード制作会社に所属する人には、アーティストやプロデューサーなどから指名で仕事が依頼されることが多いため、よりアーティストの個性や趣向に密接した音作りが求められるでしょう。
レコーディングエンジニアの1日
レコーディングの有無によって変わる
レコーディングエンジニアの一日は、レコーディングの有無によって変わります。
レコーディングがない日は、事務所で仕事をしたり打ち合わせをしたりなど比較的ゆっくりとした時間を過ごせます。
レコーディングがある日は、長時間立ち会うため不規則な生活になりがちです。
11:00 スタジオ入り
マイクやスピーカーなどの機材の準備を行います。
12:00 楽器パートサウンドチェック
ミュージシャンがスタジオ入りし、音質や音量などを調整、テストします。
14:00 本番録音
本番の録音を開始。
納得いく出来でない場合はさらにテイクを重ねます。
19:00 休憩
次の予定までの空き時間を利用し、小休止と食事を取ります。
19:30 ボーカルサウンドチェック
多忙な有名ボーカリストの場合、ミュージシャンとは時間をずらしてスタジオに入ります。
20:30 本番録音
1曲通して本番の録音を行い、ときには部分的に歌い直すこともあります。
23:30 ミキシング
納期に余裕がない場合、そのまま夜通しでミキシング作業を行います。
翌朝05:00 作業終了
マスターテープを仕上げ、ようやく1日の仕事が終了となります。
レコーディングエンジニアになるには
見習いとして就職し経験を積む
レコーディングエンジニアは新卒ですぐに就ける仕事ではありません。
まずはレコーディングスタジオやレコード制作会社、エンジニアを派遣するプロダクションなどにアシスタントや見習いとして就職するのが一般的です。
先輩に教わったり先輩の技を吸収したりしながら、現場で数年間、経験とスキルを磨いた後に、晴れてレコーディングエンジニアへのキャリアアップが叶います。
またレコーディングエンジニアの求人はそれほど多い方ではないため、コネクションは貴重であるといえるでしょう。
レコーディングエンジニアの学校・学費
音楽系の専門学校が有利
レコーディングエンジニアを目指す場合、さまざまな音響機器の操作技術、Macパソコンと専門のDAW用ソフトウェアであるPro Toolsによるデジタル処理の技術が必要であるため、独学では難しく専門学校で学ぶことは王道だといえるでしょう。
レコーディングエンジニアを目指せる学校は、音楽系専門学校のレコーディングエンジニアコースやコンピュータ系専門学校の音響エンジニア専攻などがあります。
アシスタントとして即戦力になれるよう、本格的なレコーディング設備が備わった学校を選ぶとよいでしょう。
レコーディングエンジニアの資格・試験の難易度
資格はなくてもOK
音楽業界は実力や経験がものをいうので、学校でしっかり音響機器やデジタル処理の技術を身に付けてさえいれば、資格や免許を取得している必要はありません。
関連するものとしては、レコーディングスタジオで使われる音楽制作ソフトウェア、ProToolsの技術をランク形式で判定するProTools技術認定試験、音響の理論やレコーディング技術など、レコーディングエンジニアとして欠かせない知識や技術を評価するサウンドレコーディング技術認定試験などがあります。
こうした技術力の証明になる検定は存在しているので、機会があれば取得しておいてもいいでしょう。
レコーディングエンジニアの給料・年収
実力次第で給料もアップ
アシスタントエンジニアの初任給は正社員や契約社員の場合、月収15から18万円、アルバイトの場合は時給850円程度が相場です。
会社員のレコーディングエンジニアの給料は会社の規模や経営状態によって異なりますが、大手レコード会社の場合は平均年収が600から800万円だといわれています。
レコーディングエンジニアは、自分の実力次第でどんどん仕事の依頼が来るようになります。
努力次第では給料アップを目指すことも可能で、有名アーティストに腕を認められフリーランスへ転向したレコーディングエンジニアの場合、1日に数十万円になることもあるようです。
レコーディングエンジニアのやりがい、楽しさ
よい作品ができた時の感動
レコーディングエンジニアが1つの曲の音源を制作するためには、アーティストをはじめとする大勢のスタッフとかかわります。
ボーカル、バンド、スタッフの要望を集結し、最後の仕上げを行うのがレコーディングエンジニアの仕事です。
多くの人の意見を聞きながら、誰もが納得できる作品に仕上がった時には最高の満足感を味わえます。
さらに、アーティストのファンに感動を与えたり、楽曲がヒットしたり、よい評価を受けたりすることは、レコーディングエンジニアにとっても感動の瞬間です。
レコーディングエンジニアのつらいこと、大変なこと
一人前になるまでに時間がかかる
レコーディングエンジニアになるためには、経験を積むためのアシスタント生活が必要不可欠です。
はじめは雑用や力仕事がほとんどで、レコーディングに直接かかわることは少なく、接客業のような仕事も担います。
先輩エンジニアがスタジオ入りする前に入って機材の準備やセッティングを行い、エンジニアが帰った後も残って片付け作業を行うなど過酷な環境です。
エンジニアデビューまでには時間がかかり、アシスタントのうちに夢を諦めてしまう人も少なくありません。
レコーディングエンジニアに向いている人・適性
音にこだわりを持っている
音に関するセンスを持っていることは、レコーディングエンジニアを目指す上でもっとも大切な資質です。
一流アーティストの曲を聴く、音響に優れるライブハウスやコンサート会場で音楽を聴くなど、いい音をたくさん聴くことが大切です。
また、レコーディングエンジニアは、自分の好みで仕事を選んでいてはプロとして通用しません。
まったく好みでないアーティストや、親しみのないジャンルの曲をレコーディングすることもあるため、色々な音楽を聴くのが好きな人ほど、臨機応変に対応することができるでしょう。
レコーディングエンジニア志望動機・目指すきっかけ
音作りにかける思い
レコーディングエンジニアを目指す人のきっかけとしては、まず「音楽が好き」ということがあげられます。
自分でバンドを組んだり、曲を作ったり、レコーディングの真似事をして楽しんでいるうちに、レコーディングエンジニアを目指していたという人も少なくありません。
また、自分は楽器ができないけれど音楽に携わりたいと思い、レコーディングエンジニアを目指す人もいるようです。
いずれの場合も、志望動機では音作りにかける情熱や、どんな音にこだわりたいかなど自分の思いをしっかりと伝えることが必要です。
レコーディングエンジニアの雇用形態・働き方
アシスタントのうちはアルバイト
雇用形態は最初から正社員という会社も存在しますが、アシスタントエンジニアのうちは社員という形にはせず、アルバイトとして時給制をとっているところもあります。
また、レコーディングエンジニアでも社員という形ではなく、完全出来高制としている会社も多くあります。
こうした雇用形態を採用しているのは、人により仕事の量や質が大きく異なることが一番の要因です。
レコーディングスタジオにしても制作会社にしても、所属するエンジニアを個人事業主のように扱っているところが多いようです。
レコーディングエンジニアの勤務時間・休日・生活
勤務時間は日によってまちまち
レコーディングエンジニアはその日のスケジュールによって勤務時間は変動し、レコーディングが長引くと終わるまで帰れないという不規則な生活になりがちで、徹夜作業も少なくありません。
特に忙しくなるのは、アルバム制作など複数のレコーディングとミキシングを手がけるときです。
朝から深夜までスタジオに缶詰め状態で作業をし、その後少し仮眠を取って、また翌日のレコーディングの準備に入るという過酷なスケジュールを余儀なくされることもあります。
レコーディングエンジニアの求人・就職状況・需要
求人の多くはアシスタント
求人が比較的多いのはレコーディングスタジオで、雇用形態はアルバイトまたは契約社員がほとんどです。
24時間体制のレコーディングスタジオでは交代制をとり、時給制のアルバイトのみで運営しているところもあります。
はじめはほぼ雑用や接客などでレコーディングエンジニアの業務とはかけ離れたところからのスタートだと考えた方がいいでしょう。
経験や学歴、免許・資格は問われませんが、年齢はアシスタントという職務上、採用されるのは20代前半位までのようです。
レコーディングエンジニアの転職状況・未経験採用
異業種からの転職は難しい
レコーディングエンジニアは、異業種からの転職が難しい仕事です。
転職者より、若手の人材をアシスタントから育てた方がよいという考えがあるため、中途採用の求人数は非常に少ないのが現実です。
しかし、大手レコード会社もまったく求人がないわけではなく、実力とタイミングさえ合えば、新卒では到底採用されないような大企業への転職が叶うこともあります。
また、会社員として働いていたレコーディングエンジニアが腕を認められ、有名アーティストのお抱えとなり独立するというパターンは珍しくありません。
レコーディングエンジニアの現状と将来性・今後の見通し
音楽業界の低迷が影響
日本の音楽市場が全盛期を迎えた1980年から90年代、ダブルミリオン、トリプルミリオンと爆発的にヒットする楽曲も少なくなく、レコード会社は1曲に数千万円という予算をかけることができました。
しかし近年は携帯電話やスマートフォンで1曲単位での楽曲ダウンロードが可能になり、CDの売上げは激減し、音楽市場全体は低迷を余儀なくされ、楽曲の製作費も激減しています。
全体の売り上げが落ち込むと、レコーディングエンジニアの給料も下がり、需要も少なくなるため、今後生き延びていくのはより技術持ったレコーディングエンジニアに限られてくるでしょう。