刑務官になるには
採用試験は年齢制限が定められているので、刑務官になりたいと考えている人は事前に情報をよく確認しておきましょう。
この記事では、刑務官になるための道のりや、なってからのキャリアパス・キャリアプランなどをまとめて解説しています。
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刑務官になるまでの道のり
刑務官採用試験に合格する
国家公務員である刑務官になる一般的な方法は「刑務官採用試験」に合格することです。
刑務官採用試験は「刑務官」「刑務官(社会人)」「刑務官(武道)」の3区分で試験が実施されています。
試験の難易度は「高校卒業程度」ですが、各区分で年齢制限があり、「刑務官」と「刑務官(武道)」は受験年の4月1日時点で「17歳以上29歳未満」の男女を対象としています。
採用試験は第1次試験と第2次試験に分かれており、以下のような内容で実施されます。
- 第1次試験:選択式の教養試験と作文試験。作文試験では文章による表現力や課題に対する理解力をはかる
- 第2次試験:面接による人物判定や、身体測定、運動能力や体力の測定など
なお、刑務官は「公安職」となるため、個人の思想や過去の犯罪歴などに問題がないか調査された後で合否が決定します。
試験に合格すると採用候補者となって、候補者の中から内定者が選ばれる流れです。
なお、不定期ではありますが、欠員が出た時には通常の採用試験とは別に、50歳程度までの男女を対象とした中途採用のような形の募集がおこなわれることもあります。
国家公務員総合職試験に合格する
ごく少数ですが、国家公務員総合職試験に合格し、法務省職員から刑務官になる例もあります。
ただし、このルートで採用された場合は「幹部候補生」となるため、配属先では教官や管理職の待遇となり、刑務所の現場で働くことはほとんどありません。
階級も副看守長や看守部長など高い階級からはじまり、昇進のための研修も免除されることが多いです。
武道拝命枠で合格する
通常の試験とは別に、刑務官の採用には「武道拝命」という枠も存在しています。
これは、過去に柔道や剣道に熱心に従事した有段者などが、その功績を認められて採用される制度です。
おもに武道訓練の指導者や要員としての働きを期待されていて、なかには国体や全国大会入賞者クラスの人もいます。
試験には武道の実技が必須となり、採用後の配属先としては警備隊がとくに多いといわれます。
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刑務官の資格・難易度
刑務官として働くために必須な資格はとくにありません。
ほかの公安職と同じく、年齢や身長体重、運動能力、政治思想や経歴などに制限があるだけで、とくに資格を持っていなくても、採用試験に合格すれば刑務官になることができます。
ただし、たとえば受刑者の実技指導に役立つ資格や、最近では外国人受刑者も増えてきているため外国語関連の資格などを持っておくことで、その知識が実際の仕事につながる場面も考えられます。
そういった実地に役立つような資格を取得していれば、採用時にプラスアルファとして働くことはあるでしょう。
刑務官になるための学校の種類
採用試験は学歴関係なく受験できる
刑務官の受験資格は、受験年の4月1日時点で「17歳以上29歳未満」の者、社会人の場合は「29歳以上40歳未満」の者と定められていますが、学歴に関する規定はとくにありません。
採用試験のレベルも高校卒業程度であり、「資格学校に何年も通って勉強しなければ合格できない」といった難関試験ではありません。
とくに刑務官の職場は「実力主義」の色が強いため、出身学校の違いによって出世に影響が出てくることはほとんどないでしょう。
勤務成績が良好で勤続年数も積み上がっていけば、学歴に関係なく施設の責任者クラスにまで出世のチャンスがある仕事です。
参考:公安職俸給表(一)学歴別人数
以下の図は、刑務官を含む「公安職俸給表(一)」の学歴別人数をグラフで表したものです。(※2022年のデータより)
大卒者が最も多いですが、高卒も約36%と比較的大きな数字になっていることが特徴です。
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刑務官に向いている人
刑務官の主な仕事内容・役割は、刑事施設の収容者に対して生活指導や職業訓練をおこない、社会復帰のサポートをしていくことです。
受刑者が規律違反を犯せば厳しく指導する必要があり、ときには懲罰を与えなければいけないケースもあります。
そのため、受刑者の社会復帰を支える「正義感」や「責任感」がなければ続けることは難しい職業でしょう。
また、「体力的な強さ」も刑務官には必要です。
日勤だけでなく、交替制で夜勤も担当することは避けられず、その際は合計で24時間勤務をこなさなくてはなりません。
それに加えて、万が一の事態に備えて武道や護身術のトレーニングも欠かせないため、体力に自信のない人にとってはつらい仕事といえるでしょう。
刑務官のキャリアプラン・キャリアパス
採用後は7か月間の初等科研修を受ける
刑務官として採用・任命されると、実際の仕事に入る前に8か月間の「初等科研修」があります。
初等科研修では刑務官に必要な知識と実技の両面から教育を受け、ほとんど官舎に泊まり込みとなります。
厳しい研修であるため、この研修の段階で脱落者が出ることも珍しくないといわれています。
初等科研修が修了すると、晴れて刑務官としての仕事が開始します。
昇進するには各種研修の修了が必須
刑務官に採用されたのち、将来的に階級を上げて昇進を望む場合にはいくつかの条件があります。
いわゆる中間管理職クラスの昇進には「中等科研修」を修了していることが必要です。
こちらは勤続2年以上で受験可能です。
さらに上級の管理職に昇進するには、「高等科研修」の試験合格と研修修了が必要となります。
ただし、勤続年数やポストの問題などで、研修に合格しても昇進時期が遅くなってしまうことはあるようです。
なお、国家公務員総合職試験合格者で法務省職員から刑務官を拝命している場合、幹部候補生のいわゆる「キャリア組」となるため、管理職相当の副看守長や看守部長から階級がスタートします。
刑務官を目指せる年齢は?
刑務官採用試験は、「刑務官」「刑務官(武道)」「刑務官(社会人)」の大きく3つの区分に分かれます。
それぞれの区分別に年齢制限があり、「刑務官」と「刑務官(武道)」に関しては、受験年の4月1日時点で「17歳以上29歳未満」の男女が受験資格を与えられています。
「刑務官(社会人)」については、「29歳以上40歳未満」の男女が受験可能となっています。
刑務官は高卒から目指せる?
前述のとおり、刑務官採用試験には年齢制限があるものの、学歴に関する規定はとくに決められていません。
そのため、高卒から刑務官を目指すことももちろん可能であり、仮に高校を中退していた場合でも年齢条件さえ満たしていれば採用試験を受験することができます。
試験の難易度は「高校卒業程度」であるため、大学へ進学していないことが試験上不利になることもないでしょう。
刑務官は女性でもなれる?
刑務官は女性でも目指すことができる職業です。
刑事施設のなかには「女子刑務所」もあるため、そういった施設の保安・運営には女性刑務官は欠かせない存在です。
採用試験の区分としては、女性は「刑務B」に分類されており、基本的な試験内容に関しては男性と同様となります。
ただし、女性の採用枠は男性の半数以下と少ないことや、体力検査の最低基準が男性よりも低く設定してあるなど、一部違いもみられます。