画家の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「画家」とは
水彩、油絵などさまざまな道具と手法で自身のイメージする絵を描き、作品を世に発表する。
画家とは、絵を描き、作品を人に公表したり販売したりすることを職業とする人のことです。
独自の世界観やイメージを、専門的な技法によって表現する、芸術家の一種ともいえます。
画家には特別な資格や学歴は必要なく、それよりも絵を描くための技術や独創性、感性などが重視されます。
そのため完全に独学で画家を目指すのも不可能ではありませんが、美術系の大学でファインアート(純粋芸術)を広く学んでおくと、画家としての土台づくりには大いに役立つでしょう。
過去から現代に至るまで世界中で多くの画家が優れた作品を残し、人々の心を動かしたり、影響を与えたりしてきました。
しかしながら、安定した収入や知名度を得ている画家は非常に少なく、画家として世間に認められるようになるには、労力と根気が必要です。
画家のなかには、生活のために別のアルバイトをしていたり、中高の美術教師やデザイン会社などに勤務しながら、自分自身で好きな絵を描き続けている人もいます。
「画家」の仕事紹介
画家の仕事内容
絵画作品をつくり、世の中に発表する
画家とは、広義には「絵を描く人のこと」を意味します。
紙・布・絵筆・絵の具などのさまざまな画材を用い、作品として仕上げていきます。
「画家」の定義は法律で明確に定められているわけではなく、ややあいまいなところがあります。
クライアントから依頼を受けて、目的・コンセプトに基づく商業的な絵を描く人もいますが、独自の世界観をとことん追求する芸術家のような人を「画家」と意味することも多いです。
芸術家としての画家は、自身の心の中の葛藤や思いを絵として表現し、その作品を公開して人々に感動や驚き、発見を与えます。
画家の種類は大きく「日本画家」と「洋画家」に分けられ、それぞれで作業に使用する画材やテクニックなどが異なります。
最近はグラフィックソフトを利用して、デジタル作画を行う画家も増えてきました。
経済的に大きく成功できる画家は一握り
画家の働き方はさまざまですが、基本的には個人で仕事をする人が多いです。
普段は黙々と絵を描き続けており、完成した作品は、美術展への出展や個展の開催などを通して、人々の目に触れることになります。
画家として絵が認められるようになると、美術商やアートコレクターなどに購入してもらえることが増え、活躍の場も広がっていきます。
しかし、経済的に成功できる画家は限られており、副業として美術講師やデザインの仕事などをしている人も少なくありません。
画家になるには
目指すことは誰でもできるが、成功のためには相当な努力が必要
画家は、特別な資格や学歴が求められる職業ではありません。
また「画家」と名乗ること自体に制限もないため、誰でも、いつでも、画家としてのキャリアを歩みはじめることは可能といえます。
しかしながら、画家として世の中に広く評価されるようになるのは、決して簡単なことではありません。
たとえば著名な美術展・コンクールに作品を出品して賞を取ったり、メディアに取り上げられたりといったきっかけがないと、なかなか日の目を見る機会がなく、時間ばかり過ぎてしまうといったことにもなりかねません。
画家としての成功の基準は人によって異なるため、まずは自分がどのような画家になりたいのか、しっかりとイメージしていくことが重要です。
現実的には美術大学への進学の検討を
先にも紹介した通り、画家は、学歴や資格は関係なく就ける職業です。
しかし、絵を描くための知識やスキルがないと、職業としては成り立ちづらいのが現実です。
そのため、日本の著名画家には美術系大学出身の人が多く、学生時代から美術全般の知識・技術を専門的に勉強し、その土台をきっちりと固めています。
完全な独学で画家になるのが不可能というわけではありませんが、美大に進学し、画家・美術家としてのスキルを磨いておいて損はありません。
画家の学校・学費
美術系の大学で各専攻に関する知識を深める
画家になるために、必ず通わなくてはならない学校はありません。
とはいえ、画家として世の中に認められ、生計を立てられるようになるのは簡単なことではありません。
資格や学歴が必要ないぶん「実力」や「センス」で勝負する世界であるため、一般的なオフィスワークの職業以上に、厳しい面があると考えておくべきでしょう。
多くの画家志望者は、美術に関する幅広い知識を身につけ、「絵を描くこと」に関連する技術を習得しながら、独自の世界観を追求していきます。
東京藝術大学や多摩美術大学、武蔵野美術大学などの美術系大学は、画家を目指す人にとって最も有力な進学先となるでしょう。
美大は「油絵科」「彫刻科」「工芸科」などの学科が複数あり、自分が最も学びたいものを選びます。
なお、美大は入学試験において、デッサンや専攻別の課題が出題されるところがほとんどです。
したがって美大への進学希望者は、高校に通いながら美大専門の予備校・スクールに通い、入試に向けた準備をする人も多いです。
関連記事画家になるためにはどんな学校に行けばいい? 独学でなれる?
画家の給料・年収
知名度や評価によって、収入には大きな違いが出る
画家の収入や年収は、非常にあいまいなものだといえます。
基本的には、自分の描いた絵(作品)が値付けされ、それが売れることで、画家は収入を得ます。
しかし、作品の価格は相場が決まっているわけでもなく、「作品を気に入ってくれる人がいるか」が重要なポイントになってきます。
極端なことを言えば、100人中99人が「駄作だ」と言う作品でも、たった1人の人が作品に大きな魅力を感じて驚くほど高値で買い取ってくれる可能性もあります。
こうした事情もあり、画家は平均的な年収を出すのが非常に難しい職業です。
国際的に名が知られた画家なら、年収が億単位になることもありますし、一方では、限りなくゼロに近い人もいるのが実情です。
知名度を上げるためにはコンテストの受賞が近道に
全体としていえることは、画家として多くの収入を得ている人はそう多くありません。
画家の仕事だけでゆとりをもった生活ができる人は限られており、実際には安定収入を確保するために、他の仕事(アルバイトや副業)を持っているパターンも多いです。
画家として評価され収入を上げるためには、数々の美術コンテストで受賞し、肩書きを得るのが近道です。
ファンが増えれば、個展を開催しても集客につなげやすく、作品が売れる可能性も高まっていきます。
有名な美術商やアートコレクターに注目してもらえると、一気に活躍の場が広がる可能性もあります。
関連記事画家の年収・給料はいくら? 収入源についてくわしく解説
画家の現状と将来性・今後の見通し
本業として生きるのは厳しい世界だが、新たなスタイルを開拓する人も
画家を職業にしている人は日本にも多くいますが、そのうち生活が安定しており名声も得ている画家は、ごく一部といわれています。
また、画家といっても完全に自己の芸術性のみを追求している人と、クライアントから依頼を受けて作品づくりをする商業的な仕事にも携わる人がおり、とくに前者のタイプの人が本業として生きていくことは非常に厳しいのが実情です。
画家の厳しいところは、収入の保証がないことです。
さらに、画家自身がニーズを開拓しなければ、作品を発表する場の獲得すら難しいという一面があります。
ただし、時代の流れによって求められる絵画スタイルや美術の楽しみ方も変わっています。
従来は展覧会や個展、美術雑誌の誌面などが活躍の場でしたが、現在はインターネットを通して作品を広めていくことも可能です。
活躍の仕方や場所を自分で自由に決めていけることは、画家の魅力といえるでしょう。
既存の枠組みにとわられない斬新なスタイルで、世界を股にかけて活躍する画家も、さらに増えていくかもしれません。
画家の就職先・活躍の場
どこかに勤務するのではなく、個人で活動する形態が一般的
画家は、一般的な会社員やオフィスワークなどをする職業とは異なり、どこかの組織に雇われて働くといったことはほとんどありません。
独りで、とことん作品づくりの世界に没頭します。
つまり、自営業やフリーランスのような形態として働くのが一般的です。
ただし、画家としてある程度の実績ができてくると、美術団体に所属する人もいます。
美術団体に属すれば年会費を支払う代わりに、作品を発表する場が確保される、他の画家とのコミュニケーションをとりやすい、先輩の画家からアドバイスをもらいやすいといったメリットがあります。
ただし、あくまでも個人としての自分自身をどんどん磨き上げ、すぐれた作品を世に送り出していく努力が求められます。
非常に孤独な世界ということもできるでしょう。
画家の1日
画家によって毎日の過ごし方はまったく異なる
画家の1日の過ごし方は、人によってまったく異なったものとなります。
会社員とは異なり、決められた時間に仕事をしたり休みをとったりするのではなく、自分でスケジュール調整をしながら、作品づくりを進めます。
コンクールや個展の予定が決まると、その日に向けて作品を仕上げる日々が続き、1日中、まさに寝食を忘れて作業に没頭することもあります。
自分の働き方のスタイルを確立させることも、画家にとっては大事なことです。
ここでは、参考程度に、個人で活動する画家のある1日を紹介します。
画家のやりがい、楽しさ
自分の理想通りの作品を完成させられた瞬間
画家は、自分の心や頭で思い描くイメージ・世界観を「作品」という形で表現します。
理想の作品を仕上げていくためには、来る日も来る日も、自分自身の内面と向き合い続けなくてはなりません。
喜びや希望、悲しみ、恐れ、怒り、苦しみなど、あらゆる感情に包まれることになりますし、何時間考え続けてもまったく思うような表現ができず、つらいと感じることもあります。
だからこそ、最終的に思い通りの作品が描けた時の達成感は、言葉では表せないほど大きなものとなります。
画家のように、自分の独創性を惜しみなく発揮できる仕事は、決して多いわけではありません。
自分の世界をただひたすらに追求し続け、その活動を認めてくれる人が増えていくことは、画家としての大きな幸福といえるでしょう。
画家のつらいこと、大変なこと
スランプの苦しみ、作品が評価されないこと
画家にとって非常につらいことのひとつが、スランプ、つまり創作活動に行き詰まることです。
何時間考えてもアイデアやイメージが浮かばなかったり、何度も何度も描き直しても納得がいかない状態に陥ったときには、どのような画家でも苦しみます。
とくに、画家は普段から一人での作業が多く、孤独な仕事です。
友人や家族はいたとしても、自分の作品に責任をもてるのは、自分自身でしかありません。
結局は自ら精神をコントロールするしかないのですが、逃げ出したくなるほど苦しい時期を過ごすこともあるでしょう。
また、自分の理想を追求した作品が評価されず、努力がなかなか実を結んで花開かないのも、画家としてはつらいことです。
画家に向いている人・適性
画家として生きる覚悟があり、理想の生き方を追求できる人
画家として活躍するためには、さまざまなスキルが必要です。
絵を描くための最低限の知識や技術を備えていることはもちろんですが、それに加え、感性や創造力、オリジナリティといったものも求められてきます。
ただし、これらは目では見えないもの、数字では測れない要素が中心であり、「どのような画家が成功するか」ということは、はっきりとはいえません。
誰でも才能を開花させることができれば、飛躍できる可能性はあります。
しかしながら、一般的に画家として世間に認められるようになるには、ある程度の年月がかかる傾向にあります。
忍耐強く自分を高め続けていき、あまり評価されない時期でも、自分の理想の姿を追い求めて活動を続けていける精神力を持つ人こそが、画家に向いているでしょう。
売れない時代は経済的に厳しくなる人も多いですが、それでも画家として生きるという本気さ、覚悟のようなものも求められてきます。
画家志望動機・目指すきっかけ
子どもの頃から絵画や美術作品が好きだった人が多い
画家を目指す人の年齢はさまざまですが、早ければ中学生や高校生くらいから、画家になるための具体的な方法を考えていきます。
子どもの時から絵を描くことが好きだったり、学校の美術が得意だったりして、次第に画家の道に目覚めていくようです。
このような人の多くは高校卒業後に美術大学へ進学し、さらに美術を深く学ぶ道を選択します。
美大では、それまで以上に美術に対しての情熱や意欲をもつ同級生と触れ合う機会が増え、お互いに影響を与え合うことができるでしょう。
こういった時間を通して、より強く「画家になりたい」という思いが強くなり、本気で画家になるために努力を続けていきます。
一方、社会人になってから画家を目指す人がいないわけではありません。
たとえば定年後の第二の人生として画家という道を選択したり、一般企業の会社員でありながら、絵を描くことを長く続けており、なんらかのきっかけで画家デビューする人もいます。
画家の雇用形態・働き方
安定するまでは他にも仕事をしながら活動する人も
画家の働き方は、基本的には「自営業」あるいは「フリーランス(自由業)」です。
しかしながら、本業として画家一本で生活が安定するようになるまでは、いったんどこかの企業に就職して、画家の活動も並行して続ける人が多いです。
たとえば美大や美術系の学校を卒業した人であれば、出版会社やデザイン事務所、アニメ制作会社などに就職し、デザインやイラスト制作などの仕事をするといった例が挙げられます。
また、学校の美術教師や美術スクールの講師として働く人もいます。
養ってくれる家族がいれば、作品づくりだけに没頭することも可能かもしれません。
企業への就職ではなく独立して働く形態が基本となる画家にとって、ワークスタイルは無限大ともいえます。
だからこそ、自分がどのように活動していきたのか、しっかりと考えて行動することが大切です。
画家の勤務時間・休日・生活
作画状況や納期に合わせて自分でスケジュールを組む
一般的な画家には、決まった勤務時間や休日がありません。
基本的は「作品づくり」が生活の中心を占めますが、イメージを構想している時間もあれば、作業場にこもって実際に手を動かす時間もあります。
その時々に手掛けている作品をどう理想形に仕上げるかということに、全力を注ぎます。
休日については、制作がひと段落したらゆっくり取るタイプの人もいれば、ある程度規則正しく休むタイプの人もいます。
画家は個人作業がメインとなるため、あまりに集中すると、寝食を忘れて作業に没頭し、生活が不規則になってしまうこともあります。
簡単にまとめると、それぞれの画家は自分が活動しやすいペースやスタイルを見つけて、思い思いの生活をしています。
画家の求人・就職状況・需要
画家としての求人はほぼないが、依頼を受けて絵を描く人も
画家は、ほとんどの人が個人で活動をしています。
つまり、どこかの企業に従業員として雇われるのではなく、個人事業主(フリーランス)として働くということです。
そのため、一般的な職業のように、画家としての求人が出ることはほとんどありません。
自分自身でどのように働くのか、どのような活動をしていくのかを考えていく必要があります。
ただし、画家のスキルやセンスを生かして、企業などから依頼を受けて作品づくりをしたり、デザインの仕事をしたりといったことは考えられます。
また、個人的な制作作業とは別の時間で、美術スクールや絵画教室の講師として勤務する人もいます。