絵本作家の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「絵本作家」とは
絵本づくり専門の作家。ストーリーを考えてセリフや絵を仕上げ、作品として発表する。
絵本作家は、ストーリーを考え、絵を描き、絵本を制作する仕事です。
「文章と絵の両方を一人で担当する人」もいれば、「文章と絵を別の人が担当して制作すること」もあります。
絵本制作は、まず伝えたいテーマを考え、全体の構成と話の流れを考えます。
次に、セリフや全体の配置などを決めて下書きを書いていきます。
最後は下書きに色をつけ、仕上げをし一冊の絵本が完成します。
また、絵本作家になるための決まったルートはありません。
一般的なデビューまでの道筋は主に
1.自ら出版社に作品を持ち込み、編集者に認めてもらう
2.コンクールで入賞をする
の2の選択肢が挙げられます。
絵本作家を専業としている人はわずかで、多くの絵本作家はイラストレーターや作家などと兼業しています。
近年は「大人向け絵本」というあらたなジャンルも注目され、子どもだけでなく大人を対象とした絵本も発売されはじめています。
常に時代の流れやニーズを把握し、自分ならではのオリジナリティのある作品を作り続けることが重要となってくるでしょう。
「絵本作家」の仕事紹介
絵本作家の仕事内容
絵を描いたり文章を考えたりして、さまざまな絵本をつくる人
絵本を出版するまで
絵本作家には、
・絵を担当する作家
・文章を担当する作家
・絵と文章の両方を1人で制作する作家
の3つの働き方があります。
絵本を出版するときは、担当者と打ち合わせを何度も行い、「対象年齢やテーマ」、「絵柄などコンセプト」を細かく設定し、制作に取り組みます。
またーリーと絵は別の人が担当するときは、打ち合わせを繰り返し、お互いで連携しあいながら作業を進めます。
絵本ができあがるまでには、 多くの時間を要することが多く、年に何冊も絵本を手掛けられる人気作家はごく一部です。
そのため、イラストレーターや作家などと兼業で絵本作家をしている人も多くいます。
また絵本を制作するだけでなく、講演会やサイン会、雑誌などでの連載といったさまざまな仕事を行います。
絵本の役割は大きい
一口に絵本と言っても、「幼児向けのものから大人向けのもの」、「しかけのある絵本や特殊な技法で描かれ印刷されたもの」など、さまざまなジャンルがあります。
まだ自分で絵本を読めない年齢の子どもにとっては、大人と一緒に絵本を読むことは重要なコミュニケーションとなります。
子どもと子育て世代の大人にとっては非常に重要なツールであり、絵本作家は子どもやその親に対して大きな影響を与える存在です。
また近年は、子どもが読むためのものではなく、大人も楽しめる絵本が増えてきています。
エンターテインメントの1つとして、大人に対しても感動を与える絵本制作は、絵本作家の大きな役割です。
絵本作家になるには
絵本コンテストやコンクールに応募するのが近道
絵本に関する賞を受賞してデビューする
絵本作家になるには、「絵本のコンテストやコンクールに応募し、入賞してデビュー」するのが一般的です。
絵本コンテストは、各出版社や各企業が手掛けていて年に数回行われています。
デビューが約束されている大手出版社のものに限らず、雑誌や企業が主催となった中堅の絵本コンテストも毎年行われており、こちらは初心者でも比較的応募しやすくなっています。
コンテストはテーマが決められているものも多く、それに挑戦していくことで表現力を高め、絵本作家としてのスキルを身に付けられます。
たとえ入賞しない場合でも、「審査員や審査をした企業から気に入られて、絵本の仕事が舞い込む」というケースもあるため、あきらめずにチャレンジし続けることが大切です。
昔ながらの方法「持ち込み」
「自分から出版社に作品を持ち込むという方法」もありますが、絵本を扱う出版社は目が肥えているため、持込みのみでデビューを目指すのはなかなか難しいのが現状です。
出版社側のタイミング・作家志望者の作品のジャンルや作風との相性があるため、よほど出版業界に強い人でない限りは、1つの出版社を選ぶよりも多くの出版社へ足を運んだほうがよいでしょう。
また、諦めない、粘り強い気持ちを持ち、何年もチャレンジし続けられる根気強さを持っていることが重要といえます。
絵本作家の学校・学費
特別な学歴は必要なく誰でもチャレンジできる
絵本作家になるために、特別な学校に通ったり、学歴を取得したりする必要はありません。
なろうと思えば、誰にでも門戸は開かれている職業です。
しかし、絵本作りには「文章やイラストなどの技術やセンス」が求められますから、基礎知識を学ぶために大学や専門学校などの学校に通う人がほとんどです。
デザインや芸術を学べる大学や、絵本作りやイラストレーションについて専門的に学べる学校も数多くあります。
また、絵本に関しては、文章よりも絵の重要度が高くなるため、児童文学を学んだり、絵本作家養成のスクールで絵本作りの基礎を身につけたりしておくこともよいでしょう。
ただし、そうした学校を卒業したからといって、必ずしも絵本作家になれるとは限りません。
絵本作家の資格・試験の難易度
絵本作家志望者向けの講座や通信教育も
絵本作家になるために、特別な資格は必要ありません。
絵の勉強を全くしていない人がデビューすることもありますし、サラリーマンや主婦が絵本を作ることもあります。
ただ、絵本作りの基礎を学びたい人に向けて、絵本作り講座や絵本作りが学べる「通信教育」などもあります。
講座は習い事感覚で学べる完全に初心者向けのものから、プロ志望で今までも絵を勉強したことがある人向けのものまで、さまざまな種類のものがあります。
通信講座はテキストを中心に、DVDも利用して学ぶものが多いようです。
通学する時間がとれない場合や、気軽に絵本制作の基礎を学んでみたいという人にはおすすめです。
絵本作家の給料・年収
絵本作家のみで食べていける人はごく一部で、多くは兼業作家
原稿料と印税から収入を得る
絵本作家は「原稿料」と「印税」の2種類の収入を得ています。
原稿料は、雑誌に掲載される単発の物語や挿絵を手がけた際に、1回辺りの仕事量に応じて得られるものです。
印税は、絵本を出版したのち、1冊売れるごとに約10%程度の金額が絵本作家に支払われるというものです。
絵本作家は安定した給料を得ることが難しいため、多くの絵本作家は挿絵やイラストの仕事をするなど、兼業をしています。
一方で、絵本は一度人気が出ればロングセラーとなることもあり、ヒット作を生み出すことができれば大きく稼げる仕事です。
絵本作家が収入を上げるために
近年は大人向けの絵本が人気を集めたり、育児を助けるグッズとしての絵本が読者に支持されたりしています。
さまざまなジャンルの絵本を描き、仕事量を増やすことで出版の機会も増え収入も増えます。
また、絵本作家として人気が出ると、絵本に登場するキャラクターのグッズ制作をしたり、雑誌や本の挿絵やイラストなどの仕事をもらえたりなど活躍の場が広がります。
絵本製作というジャンルにとらわれず、さまざまな仕事をこなすことで、仕事も増え、より絵本の知名度も広がります。
また、近年ではWeb上で自身の作品を発表するだけでなく、子ども向けのコンテンツやアプリを開発したり、イラストの提供をしたりするケースも見られます。
絵本作家の現状と将来性・今後の見通し
人気作家の定番作品に人気が集中する傾向にある
絵本は少子化の中でも、その価値が見直されつつあります。
とくに乳幼児のうちは、スマートフォンやタブレット端末・ゲーム機よりも本を与えたいという親や祖父母世代の意向もあり、絵本に対する消費はこの不況にありながら、新しい需要を広げています。
人気の作家に注目が集まり仕事も集中する傾向にはありますが、絵本の需要を踏まえ出版社も力を入れるところが増えてきているため、絵本作家として活躍するチャンスはあるといえるでしょう。
絵本は出版業界において、もっとも一度の発行部数が少ない書籍であり、需要は大きいとはいえ、定番化された作品に人気が集中する傾向にあります。
将来的にも、絵本作家という仕事がなくなることはないですが、厳しい世界に飛び込む覚悟も必要です。
絵本作家の就職先・活躍の場
絵本作家のほとんどがフリーランスで活躍している
絵本作家のほとんどは「フリーランス」で活躍しています。
また、絵本作家を専業にしている人は少なく、イラストレーターや作家、グラフィックデザイナーなどと兼業している人が多いです。
絵本や児童書などを多く使う出版社に社員として就職し、そこで働きながら絵本を描く人もいますが、非常に人気が高く、この働き方ができる人は限られています。
絵本を制作する場合は、まず仕事の依頼が来たり売り込んだりすることからはじまり、制作が決まると出版社や絵本製作をしている会社と契約して、絵本を作りはじめます。
売れっ子の作家になると、自分でプロダクションや事務所を構える人もいますが、そうした人はごく一部です。
絵本作家の1日
一人作業が多く自由に時間を使える
絵本作家は基本的に一人で作業を行うので、自分の好きなように時間を使えます。
請け負う仕事や仕事の仕方は人それぞれで、生活スタイルも大きく異なるのが特徴です。
<ある絵本作家の1日>
絵本作家のやりがい、楽しさ
子どもから大人までたくさんの人を笑顔にできる仕事
絵本作家は、大変な時間と手間を費やして一冊の本を仕上げますが、その本は全国の書店に出回り多くの人たちが手に取ります。
その本の人気が出たり、内容が評価されたりすれば、学校で課題図書に指定され、日本のみならず海外でも翻訳されて「世界中の子どもに読まれる可能性」もあります。
また、絵本は子どもだけのものではなく、大人にも読まれます。
いい絵本を生み出せたときには多くの子どもに喜んでもらえ、日本のみならず世界中で長く愛されるものになります。
世界中の親が安心して子どもに与え読み聞かせられる、そして子どもに繰り返し読まれるような絵本を作りたいという想いが形となったとき、絵本作家としてのやりがいを感じるでしょう。
絵本作家のつらいこと、大変なこと
絵本に対する評価や売り上げと向き合っていかなくてはならない
絵本はどんなに心を込めて作っても、評価され売上につなげなければ作品としての価値はないも同然です。
子どもは、おもしろいか面白くないかに非常に素直で敏感なので、受け入れられなければ2度と手に取ってもらえません。
また近年、絵本は子育ての重要なツールとして使われ、親の絵本を見る目もシビアになってきています。
出版不況と言われる中で、出版社も「これは売れる」というものしか出版しませんし、何度絵本を出版したとしても、次の絵本が売れなければ、もう契約はないかもしれません。
とくに本が売れない、収入が得られないという悩みは、大変つらいことであり、絵本作家を諦めるきっかけになることもあります。
そのため絵本作家は、常に売上や評価と向き合って仕事をしなければならないのです。
絵本作家に向いている人・適性
子どもの心を忘れず、絵本作りに生かせる人
絵本は基本的に、子どもが理解でき、おもしろいと思ってくれるものでなくてはなりません。
子どもは、一度おもしろいと思えば何度も繰り返し絵本を読むため、ロングセラーとなり長年にわたって愛されるのです。
そのため、大切なのは「子どもの心を忘れない、また子どもの心を想像できる力や感受性が豊かな人で、こうした人こそ、子どもに夢を与える仕事ができるのです。
また絵本は、文章も絵もその作家だけのオリジナルでなくてはなりません。
絵本づくりは、絵だけでなく文章も手掛けることが多いため、ただ「絵がうまい」だけではないオリジナリティある表現を必要とします。
表現する力を育てるために、頭の中にたくさんの引き出しをつくり、想像力や感性を磨くことが重要です。
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絵本作家志望動機・目指すきっかけ
絵本や子どもが好きだという気持ちがきっかけ
絵本作家になったきっかけは、「絵が好きで絵を描く仕事がしたい」、という純粋な思いからが多いようです。
絵を描くといっても、イラストレーターやデザイナーなど絵を扱うほかのさまざま仕事と比べて、絵本は子どもが対象の仕事です。
子どもが好きだから子ども向けに絵を描きたい、という人もいますし、美術学校を出て絵を描く仕事に就く際に、媒体として身近な絵本を選んだという人は非常に多いです。
また、自分が子どものときに親がよく読んでくれた本や印象的だった本が心に残っていて、そんな本をつくりたいというきっかけで絵本作家の道を歩くことになった人もいます。
絵本作家の雇用形態・働き方
ほとんどがフリーランスとしてさまざまな仕事をしながら働く
絵本作家は、ほとんどがフリーランスで活躍しています。
編集やイラストの仕事を兼業する人の場合は、出版社や編集プロダクションに所属することもありますが、そうした人はごく一部です。
多くの絵本作家は、絵本の制作だけでは収入が少ないため別の仕事を持ちながら活動しています。
イラストレーターや挿絵の仕事などをしながら絵本作家をしている人もいますし、サラリーマンや主婦の傍ら活動している絵本作家もいます。
チャンスをつかむことが出来れば年齢関係なく、誰でも絵本作家になれるチャンスがあるといえるでしょう。
ただし仕事も定期的にあるわけではなく、給与も絵本を手掛けたときの原稿料と、絵本が売れたときの印税なので、一般的な職業と比べるときわめて不安定といえるでしょう。
絵本作家の勤務時間・休日・生活
勤務時間や休日は自由に決めることができる
多くの絵本作家は、フリーランスのため基本的に休日や仕事時間は自分で決められます。
仕事をする時間も、昼の人もいれば夜の人もいますし、日中はほかの仕事をして、空いた時間で絵本作家をするという人もおり、時間の使い方も人によってバラバラです。
絵本の出版前や締め切り前になると連日仕事をしたり、徹夜をしたりすることもありますが、無理な働き方をすることはあまりないでしょう。
基本的には一人で自宅や作業場で仕事をすることが多いですが、出版社に打ち合わせに行ったり、絵本作りのために取材に行ったりすることもあります。
絵本が出版されると、サイン会やキャンペーンなどで大型書店を周ったり、ときには地方まで宣伝に行ったりすることも珍しくありません。
絵本作家の求人・就職状況・需要
「絵本作家」という求人募集はない
企業や出版社が絵本作家という職種の求人募集を行うことはなく、絵本作家のほとんどがフリーランスで仕事をしています。
「絵本作家になる」という定義もばらばらで、絵本を出版した時点で絵本作家を名乗るのか、絵本を出版することだけで生計を立てられるようになってはじめて絵本作家を名乗るのか、は人によって異なります。
絵本作家は年齢や性別に関係なく誰でも目指せ、学歴や資格も必要ないため、絵本作りの才能があり、チャンスをつかめれば絵本作家になることは可能です。
しかし、絵本作家という職業は非常に狭き門であり、さらにデビューできたとしても生計を立てることは非常に厳しいことは知っておかなければなりません。
絵本作家の転職状況・未経験採用
絵本作家に転職できるのは限られた一部の人のみ
兼業で仕事をしながら、絵本作家としてデビューした人は少なくありません。
サラリーマンなど全く別な仕事をしながら絵をコツコツ描き続けて作家デビューした人もいますし、イラストレーターや挿絵の仕事などをするうちに、出版社から声をかけられたという人もいます。
絵本作家に転職したい場合は、まずは仕事をしながら作品を描きため、出版社に売り込んだり、コンテストに応募したりという活動をはじめることです。
無事チャンスをつかみ、絵本の出版が決まったとしても、継続的に仕事の依頼が来るかどうかは未知数であり、簡単に専業絵本作家になってしまうのは軽率です。
ヒット作が出るまでは、現在の仕事を続けるか別の仕事と兼業しながら、絵本作家を続けることが一番リスクのない方法でしょう。
絵本作家は副業でできる?
生計を立てるのが難しく、副業や兼業をしながら絵本作りをする
絵本作家は、生計を立てるのが難しい職業で、多くの作家が副業や兼業をしながら活動しています。
イラストと文章の才能があり、チャンスをつかむことが出来れば年齢関係なく、誰でも絵本作家になれます。
絵本作家になる際に、性別や年齢、仕事をしていることは決してマイナスにならないため、いつでも気持ちさえあれば、はじめられます。
また、兼業をすることで新しいアイデアが生まれることもあります。
デビューするために、まずは根気強く地道に活動していくことが、絵本作家になる近道と言えるでしょう。
ただし、絵本作家に転職するときには、一部の作家以外は収入が不安定であることを知っておくのも重要です。