警察犬訓練士の仕事内容・目指せる学校とは?女性でもなれる?
そのため、警察犬訓練士も「直轄警察犬訓練士」と「嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)」の2パターン存在します。
ここではそれぞれの訓練士になるための方法をご紹介します。また、訓練士になるための学校の種類や必要な学歴、目指せる年齢、女性でもなれるのかなど、気になる部分も網羅しています。
もちろん警察犬訓練士の仕事内容や一日の仕事の流れなども解説していますので、参考にしてみてください。
警察犬訓練士の仕事とは
警察犬訓練士は、警察犬の候補になる犬に対して、必要な能力を訓練する仕事です。
警察犬は人間の4,000~6,000倍もある嗅覚を使って、犯罪捜査や警備、災害現場などで活躍しています。
警察犬の主な仕事は以下の4つに分けられて、それぞれ訓練されていきます。
- 麻薬探知犬(麻薬のニオイを嗅ぎ分け税関職員に知らせる)
- 跡追求犬(犯人の遺留品のニオイから、犯人を見つけ出す)
- 気選別犬(現場の証拠のニオイと逮捕された犯人のニオイが一致するかを確認する)
- 威嚇犬(不審者に噛み付いたり、威嚇することで犯罪抑止につながる)
犬は集団訓練ができないので、訓練士がマンツーマンで犬と向き合い、犬の性格に合わせた能力開発が必要となります。
近年は警察犬の訓練だけでなく、一般家庭でペットとして飼われている犬のしつけ教室や出張訓練、訓練所で預かりしつけを行う預託訓練のケースも増えてきました。
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警察犬訓練士の業務の内容
警察犬訓練士の仕事とは?
警察犬訓練士の仕事内容である警察犬の能力開発は、犬のレベルに応じて行います。
まだ訓練を始めたばかりの犬の場合は、人間との主従関係を作る「服従訓練」から始まり、徐々に嗅覚を使った「足跡追求」「臭気選別」「犯人襲撃や警戒」といった訓練に移行していくのです。
もともと犬は嗅覚が優れていますが、最初からニオイを嗅ぎ分けたり、それを人間に知らせることができる犬はいません。
高い集中力と人間への忠誠心が必要になるため、訓練士は根気よく、褒めながら訓練をすることが重要です。
現在警察犬は、
- シェパード
- ドーベルマン
- コリー
- ボクサー
- エアデール・テリア
- ラブラドールレトリバー
- ゴールデンレトリバー
の7種の犬種から選ばれています。
犬種の特徴だけでなく、一頭一頭の犬の性格に合わせた訓練をしなければいけません。
警察犬の世話全般も重要な仕事
訓練をするだけでなく、犬のお世話も訓練士の大切な仕事です。
犬の排便の処理をして体調を判断し、犬舎の掃除、食事、訓練所内の掃除を行い清潔な状態に保ちます。
ペットを対象に訓練する場合も
訓練所によっては警察犬の訓練だけでなく、ペットを対象にするしつけ教室、スクール、自宅に訪問して訓練をする出張訓練、訓練所でしばらくの間預かって訓練する預託訓練などを行う場合があります。
警察犬訓練の合間に、それらの犬たちの訓練も行うことも大切な業務です。
警察犬訓練士の役割
警察犬訓練士の役割は、犯罪捜査や警備、災害現場で活躍する優れた警察犬を育てることです。
警察からの出勤要請があった場合、いつでも対応できるように地道な訓練が求められます。
現場を想定したトレーニングだけでなく、少しでも速く駆けつけられるように走ったりと、さまざまな訓練が欠かせません。
犬への愛情と警察犬の能力開発をするための根気だけでなく、体力も必要な仕事です。
訓練士が育ててくれた警察犬のおかげで、私たちの安全な暮らしも守られているといえるでしょう。
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警察犬訓練士の勤務先の種類
実は警察犬の種類は2種類あり、警察が所有している「直轄犬」、民間の警察犬訓練所が訓練した「嘱託犬」に分かれています。
警察犬訓練士も、警察官である「直轄警察犬訓練士」と、民間の訓練所に入所し資格を取得した「嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)」の2パターンがあります。
直轄警察犬訓練士
直轄訓練士になれるのは、都道府県の警察官採用試験に合格した警察官のみです。
しかし、鑑識課など警察犬がいる部署に配属にならないと、訓練士の仕事はできません。
代表的なところは、警視庁(東京)、神奈川県警、千葉県警、群馬県警、京都府警、兵庫県警です。
数年で異動してしまう可能性もあるので、訓練士になれることも、訓練士でい続けることも運がよくないと難しいでしょう。
警察犬訓練士一本で行きたい方は、次の嘱託警察犬訓練士がおすすめです。
嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)
一方、嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)は、民間の警察犬訓練所に入所してから「公認訓練士」の資格を取ることで、なることができます。
公認訓練士になるには、見習いとして3~6年ほどの修行期間が必要で、根気や体力が必要ですがずっと訓練士でいたい方はこちらを目指すとよいでしょう。
日本警察犬協会の「公認訓練士資格」か、養成学校卒業後にジャパンケネルクラブや日本シェパード犬登録協会の「公認訓練士資格」を取り、訓練した犬と一緒に警察の審査をパスすると、晴れて訓練士です。
警察からの出動要請に応じて、嘱託犬と一緒に現場へ向かえるようになります。
ちなみに警察犬の中でも直轄犬は10%ほどしかおらず、全体の90%程度は嘱託犬です。
日本警察犬協会 公認訓練士資格について
ジャパンケネルクラブ 訓練士資格
日本シェパード犬登録協会 訓練士資格
警察犬訓練士の仕事の流れ
ここでは、見習い警察犬訓練士の仕事の流れをご紹介しましょう。
住み込みで働きながら勉強する場合が多いので、全犬の排便、犬舎の掃除、食事などのお世話を行います。
日中は担当犬の訓練だけでなく、民間の家庭から預かったペットのしつけなどの訓練をすることもあります。
またスタッフ同士のミーティングも行い、体調不良の犬や訓練状況などの情報共有も大切な仕事です。
訓練所では4:00〜22:00までなど、朝早くから夜遅くまでスケジュールが組まれているのが一般的です。
警察犬訓練士になるまでの道のり
警察犬訓練士になるには、2つのルートがあります。
1つ目は、警察官の採用試験を合格し、担当部署に配属される「直轄警察犬訓練士」で、高校卒業以上の学歴が必要です。
ただし鑑識課などに配属されなければ警察犬訓練士にはなれず、なれたとしても数年で違う部署に異動になる可能性もあります。
2つ目の「嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)」は、警察犬訓練士一本でいきたい人におすすめで、民間の警察犬訓練所に入所し、資格を取った上で警察試験に合格するとなることが可能です。
訓練所に入所するのに学歴は求められませんが、見習い期間は3~6年と長く、早朝から夜遅くまで体力勝負の仕事でもあるので、途中で違う道に進みたいと考えてしまう人もいます。
いざというときのために、高校は卒業しておくとよいでしょう。
警察犬訓練士の資格・難易度
警察犬訓練士のうち、「直轄警察犬訓練士」になる場合、必要な資格はありませんが、警察官採用試験に合格する必要があります。
筆記試験の勉強時間は、高卒程度のⅢ類は300時間、大卒程度のⅠ類は1500時間が目安といわれています。Ⅰ類は難易度が高いと考えておいたほうがよいでしょう。
合わせて、体力検査も実施されます。
「嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)」は、訓練所で見習いとして働きながら「公認訓練士」の資格を取り、警察試験に合格することが必要です。
資格を取るためには訓練や勉強が必要となり、合わせて修行期間が3~6年ほどかかるので、その年数も合わせて難易度が高いといえるでしょう。
警察犬訓練士になるための学校の種類
警察犬訓練士になるためには「直轄警察犬訓練士」と「嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)」で、ルートが異なります。
直轄犬訓練士に必要な学歴
警察官には次の3つの区分があり、区分に応じた学歴が求められます。
- Ⅰ類(大卒程度)
- Ⅱ類(短大卒程度)
- Ⅲ類(高卒程度)
警察犬訓練士として、どの区分を受けるかによっても学歴が変わってきますが、Ⅲ類の場合は高校を卒業していれば問題ないでしょう。
嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)の学歴は不問
嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)の受験資格は、
- 日本警察犬協会で満18歳以上の人
- 訓練経験があり関係している人
- 所定の訓練試験合格実績がある人
の3つで、学歴は不問とされているので中卒でも問題ありません。
ただし修行期間が長く、その間に違う道に進む方も少なからずいるので、万が一を想定して高校は卒業しておくことをおすすめします。
訓練所への入所に不安を感じる方は、ドッグトレーナーの勉強ができる専門学校を出ていると有利になることもあるので、チェックしておくとよいでしょう。
無事訓練所に入所できた場合は、見習いとして「働く」という形態をとるので、期間中の学費はかかりません。
訓練所によっては無給の場合もありますが、待遇がよければ3~8万円ほどもらえるようです。
警察犬訓練士に向いている人
警察犬訓練士に向いている人は、犬好きであることが大前提になります。
一人前の警察犬を育てるまでに、トレーニングに1年半ほどの時間がかかるので、結果が出るまで根気よく取り組める人が向いているでしょう。
諦めない粘り強さや、忍耐力も必要になり、正義感の強さも武器になります。
トレーニングだけでなく、何頭もの犬の世話、犬舎の掃除など朝早くから夜遅くまでたくさんの業務があり、さらに警察からの出動要請によって昼夜を問わず対応しなければいけません。
健康であること、体力に自信があることも大切な素質です。
警察犬訓練士のキャリアプラン・キャリアパス
ここでは「嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)」のキャリアプランについて、みていきましょう。
公認訓練士には5つの階級があり、まずは「三等訓練士試験」に合格しなければいけません。
その後2年以上訓練をすると「二等訓練士」、5年以上訓練すると「一等訓練士」、さらに条件が加わり「一等訓練士正」「一等訓練士長」と昇格していく仕組みです。
それぞれの昇格は訓練士としての実績や協会への貢献度で判断されるため、警察犬訓練士になったからといってそこで終わりではなく、努力し続けなければいけません。
中には十分な実績を作ってから、自分で訓練所を設立して独立する方もいます。
警察犬訓練士を目指せる年齢は?
警察犬訓練所の募集を見ると「年齢不問」や「18歳以上」で募集されていることが多いようです。
学校を卒業したばかりの人から、社会人から目指す人も受け入れてくれるでしょう。
しかし見習い期間は住み込みで数年間働かなければいけず、訓練したからといって必ず訓練士になれる保証はありません。
また朝から晩(4:00~22:00頃)まで働き、休みは月2~3日程度であり体力勝負です。
できるだけ若いうちから目指したほうが、その後のキャリアプランも描きやすいでしょう。
警察官になる場合は、35歳未満が受験資格となるため、それまでに合格する必要があります。
警察犬訓練士は高卒から目指せる?
警察犬訓練士は、高卒からでも十分に目指せます。
直轄警察犬訓練士の場合は、高卒程度のⅢ類の警察官採用試験の合格を、嘱託警察犬訓練士(公認訓練士)の場合は警察犬訓練所への入所を目指しましょう。
それぞれのルートから、警察犬訓練士になることが可能です。
警察犬訓練士は女性でもなれる?
警察犬訓練士は、女性でもなれます。
公認訓練士のうち、女性比率は約半数と女性も活躍している仕事です。
男性の訓練士と同じような訓練を行い、長時間勤務を行うなど、ハードな仕事内容は変わりません。
しかし、警察犬訓練士として警察から感謝状を何度も受賞したり、訓練所を設立し独立したりするなど、輝かしい活躍をしている女性の先輩たちが大勢います。
警察犬訓練士の仕事内容のまとめ
警察犬訓練士は、犬への愛情はもちろんのこと、根気強さや体力も必要になります。
見習い期間も長く、とても大変な仕事ではありますが、警察犬訓練士が育ててくれた警察犬のおかげでさまざまな事件が解決し、私たちが安心して暮らしていけるのです。