コンサルティング業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
コンサルティング業界とは
コンサルティングとは、経営戦略、会計、人事、営業、IT化など企業の課題を解決するための相談や指導を行うことで、こうした業務を専門的に行う仕事をコンサルタントと言います。
コンサルタントは経営全般に精通したコンサルタントもいれば、特定の領域に特化したコンサルタントもいたりとさまざまで、所属するコンサルティング会社によってコンサルタントの性質や扱う課題にも違いが見られます。
多くのコンサルタントを抱える大手コンサルティング会社、個人で企業の問題解決に奔走する個人コンサルタント、市場動向の研究や調査を主にする調査会社など組織形態や提供されるサービスも多様です。
コンサルティング業界は、複雑化するビジネス環境や、増える企業の組織課題への対応ニーズから年々市場規模は大きくなっており、4,000億円程度の規模の市場となっています。
しかし、まだまだコンサルティングの本場とされるアメリカと比較するとGDPに対する市場規模はずっと小さいため、日本国内やアジア圏におけるコンサルティング業界の伸びしろはまだまだ大きいと考えられています。
コンサルティング業界の役割
コンサルティング業界は、顧客の問題解決に貢献することをその役割としています。
コンサルティングを必要とする顧客は「売上を上げたい」「組織の風通しを良くしコミュニケーションが活発な組織にしたい」とさまざまなニーズがあります。
しかし、その相談内容が必ずしも企業の本質的な問題とは限らず、さまざまな情報の中から企業にとって最も重要な課題を見つけることがコンサルタントには求められます。
また、コンサルティングは科学的な手法によって行われ、個人の勘や経験に頼ったアドバイスとは異なる性質を持っています。
そのため「コンサルタントはデータで語れ」と言われることも多く、提案の根拠となるデータや最新事例などの情報収集を行って資料を作成し、説得力のあるプレゼンテーションで提案することも行います。
こうした仕事を通し「正しい」だけでなく、顧客が「これならできる」と高いモチベーションで業務改善に取り組めるよう支援することもコンサルタントの役割です。
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コンサルティング業界の企業の種類とビジネスモデル
コンサルティング業界のビジネスは、基本的に顧客と顧問契約または案件ごとの契約を結び、求められるサービスを提供することで報酬をもらいます。
または、顧客のコミュニティを作りビジネス上の協力を促進したり経営情報を提供することで会費収入を得たり、リサーチやレポート、書籍などを発売し収益とすることもあります。
コンサルティング業界の企業はその成り立ちや提供形態からさまざまに分類されますが、ここでは大きく5つに分けて紹介します。
総合系
総合的な経営コンサルティングを行っているコンサルティング会社で、企業の戦略立案から業務の詳細な問題解決まで幅広くコンサルティングサービスを提供します。
アクセンチュアやデロイトトーマツコンサルティング、アビームコンサルティングなど大規模な企業が多いのが特徴です。
戦略系
戦略に特化したコンサルティングを行っている企業で、競争環境の中で有利な状況を作り出すための提案やプロジェクトの推進サポートを行います。
外資系企業ではマッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティンググループが有名で、国内企業ではドリームインキュベータなどの企業があります。。
IT系
経営課題解決のためのIT戦略やシステム導入などを支援するコンサルティング会社で、IT技術の進歩に伴い、需要が高まっている成長分野です。
IBMやSAPジャパン、日本オラクルなどが有名で、日立コンサルティングなど国内企業も多いです。
国内独立系
国内企業の99%を占める中小企業に対し、ニーズに合わせたコンサルティングを提供しており、特に日本企業の独自性の強い戦略や、人事、組織、営業に関する案件が多いのが特徴です。
国内には多くのコンサルティング会社がありますが、特に船井総研やタナベ経営、リンクアンドモチベーション、日本能率協会コンサルティングなどが有名です。
シンクタンク系
大手金融機関が母体になっていることが多く、官公庁向けのリサーチや統計データからのレポート提供、経営・ITコンサルティングを提供することが多いのが特徴です。
野村総合研究所やNTTデータ経営研究所、三菱総合研究所など、メディアでデータの提供元として名前のあがる企業が多く見られます。
コンサルティング業界の職種
コンサルティング業界も多くの企業と同じく営業や企画などの職種や、バックオフィスを担当する経理、総務、法務などの職種があります。
また、業界特有の職種には次のようなものがあります。
アナリスト
コンサルティング業界でのアナリストは、市場の状況や経営にまつわるさまざまなデータを分析し、顧客に有用な情報を提供することを主な業務としている職種です。
作成する資料は不特定多数の人の目に触れることになり、また事業における調査や意思決定における資料としても自社内外で利用されます。
そのため、数字に強いだけでなく論理的な思考や文章力なども問われ、正確に情報を伝えることを意識する必要があります。
コンサルタント
コンサルティング業界の花形といえばやはりコンサルタントです。
顧客ニーズのヒアリングや課題分析、経営課題の解決のための企画立案やプロジェクトの進行サポート、教育や研修などを行います。
コンサルタントは企業の経営層と直接やりとりを行う機会が多いため、基本的なビジネスマナーや経営知識はもちろん、プレゼンテーションや提案力も求められます。
コンサルティングの仕事はコンサルタントの知識やスキルがあってこそ成り立つものであるため、コンサルタントの実力と人数が企業の売上を大きく左右します。
アシスタント
コンサルティング業界では、新人や営業事務に携わる人がアシスタントと呼ばれることも多く、コンサルタントとの同行や書類作成、議事録の作成などを行っています。
アシスタント専門の人もいれば、アシスタントからコンサルタント、そしてコンサルタントのチームをまとめるチーフ・コンサルタントに昇進していく人もおり、キャリアパスはさまざまです。
アシスタントであっても、顧客の重要な情報を知ることになりますので、高いモラルやプロ意識をもって主体的に仕事に取り組むことが必要です。
コンサルティング業界のやりがい・魅力
早いうちから大きな仕事に携わることができる
コンサルティング業界では、新人でもベテランに同行し、規模の大きな案件に携わる機会が多いのが特徴です。
経営に関する知識を深く学ぶだけでなく、経営層の考えを直接聞き、他企業の内情を詳しく知る機会も多いため、仕事や企業に関する知見が深まることも大きな魅力です。
企業の経営課題の解決に全力で取り組んだ結果、大きな改善が見られたり、業績上の大きな貢献ができたりした時に、非常に大きな達成感を得ることができます。
また、企業側の担当者や経営者から直接感謝されたり、プロジェクト成功の喜びを分かち合ったりすることができ、やりがいを実感しやすい業界です。
給与は高水準で実力主義の企業が多い
コンサルティング業界の魅力のひとつは高水準の給与だと言われます。
コンサルティング業界に絞り込んだ政府統計はないものの、多くの企業が成果主義の年俸制を採用しており、20代でも600万円ほどの平均年収になるとされ、実績によっては1000万円をこえる人もいます。
大手企業のベテランコンサルタントであれば1000万円をこえることも多いですが、あくまで成果次第という面が強く、企業や、得意分野、案件規模によってバラツキも大きいのが実情です。
多くのプレーヤーが参入し実力が問われる状況
今や、さまざまなビジネスにおいてコンサルティングの手法が使われるようになっており、IT企業や不動産会社などさまざまな企業が「コンサルティング」の名の元にサービスを提供しています。
また、インターネット上の情報の信頼性や専門性も向上し、企業経営上の問題解決においてコンサルティング会社は以前ほど絶対的な存在感を持っているとは言い難い状況です。
加えて国内の労働力人口の減少により、企業数の減少、つまりコンサルティング業界の顧客の減少も進んできており、本当に実力のあるコンサルティング会社でなければ生き残ることが難しい環境になりつつあります。
コンサルティング業界の雰囲気
コンサルティング業界は成果主義が基本であり、労働時間に応じて給与が支給されることは少ないため、裁量労働制やフレックスタイム制など柔軟性のある働き方をする人が多いです。
そのため、資料作成や課題解決のための思案で夜中まで仕事を行うことも多く、逆に何もなければすぐに帰宅したり自宅や移動先で必要な業務だけを行ったりとメリハリのある働き方をする人も多く見られます。
コンサルティング業界では若いうちから年収も大きく伸びるチャンスがあり、大きな仕事に携わる機会も多いため、全般的にエネルギッシュで成長意欲の高い人が多いのが特徴で、独立を考えている人も多い傾向があります。
ハードワークになりやすいため男性の割合が高いものの、最近は女性のコンサルタントも増えており、ワークライフバランスに配慮した働き方をしていることも珍しくありません。
コンサルティング業界に就職するには
就職の状況
コンサルティング業界では、ある程度の規模の企業では定期的に新卒採用を行っています。
コンサルティング業界では独立する人が多く常に人材が流動しているため、企業は将来のリーダー候補として、新卒の採用や教育に力を入れる企業が多く見られます。
給与水準が高く、またコンサルティングの仕事に魅力を感じる人も多いため、人気企業も多く、能力の高い志望者が集まる傾向があり、例年、選考における倍率は非常に高めになっています。
中小のコンサルティング会社では即戦力が重視され、新卒の求人が行われることは多くありません。
就職に有利な学歴・大学学部
コンサルティング業界では、経営知識のある経済学部や経営学部が有利に思われがちですが、選考時点で学部や学科を意識している企業はさほど多くありません。
学歴以上に、ロジカルシンキングやコミュニケーションの能力などが問われることが多く、外資系の企業ではTOEICの点数が問われることもあります。
コンサルティング職では、基本的に4年制の大学卒以上の学歴が条件となっており、シンクタンクや外資では修士卒や博士卒を条件にしているところも多いです。
大学院卒の場合は給与面でも優遇されることが多く、経営学や統計学、情報工学の博士号保持者は特に高く評価されることも少なくありません。
新卒では基本的に専門学校卒や高卒の採用枠はないため、コンサルティング業界を目指すならまずは大学卒業を目指すことが必要です。
就職の志望動機で多いものは
コンサルティング業界を志望する学生の中で多い志望動機としては、「企業のビジネスに貢献したい」「将来独立を考えており、深くビジネスについて勉強したい」といったものが多く見られます。
コンサルティング業界は成果主義の企業が多いですが、自己中心的な考え方をする人は、顧客の利益を損なうことになりかねず、採用を見送られてしまいます。
そのため、志望動機では自己中心的な内容と受け取られることがないよう十分な注意が必要で、社会や顧客に対する誠実さや貢献意欲をしっかりとアピールすることが大切です。
また、志望動機においても論理性がが求められる傾向が強く、コンサルティングという仕事の本質をよく理解し、その企業を志望することが論理的に正しいと認められるように志望動機を準備することが大切です。
コンサルティング業界の転職状況
転職の状況
コンサルティング業界では、業界経験者は企業規模を問わず中途採用が行われていますが、業界未経験の場合、大手での求人募集はほとんどありません。
国内の中小企業であれば、業界経験者はもちろん、業界未経験でも関連業界に勤めていた専門性の高い人材であれば採用され、アシスタントなどを経てコンサルタントとなることがあります。
法務や総務、経理など一般的なバックオフィスの職種は、企業の規模を問わず、業界経験不問で中途の採用が行われており、業務経験があれば学歴は問われません。
転職の志望動機で多いものは
コンサルティング業界への志望動機は、転職だと「業界の経験や知識を活かしたい」「企業における課題解決に貢献したい」「成長している分野で学び、コンサルタントとして成長したい」などさまざまなものがあります。
コンサルティング業界は実力主義の風潮があり、中途入社だとしても実力次第で管理職や幹部職へ早く昇格できることも多いため、人格や成長意欲、業界や企業に対するビジョンがわかるような志望動機を作成すると良いでしょう。
転職で募集が多い職種
転職では、コンサルタント職や営業職の募集が多く見られます。
業界経験者でなければ、基本的にはしばらくは営業を行いながら先輩社員の案件に同行し、コンサルタントとしての知識やスキルを身につけることになるでしょう。
業界経験者であれば、企業のスタイルを覚えるための期間を経て、すぐに独り立ちしてコンサルタント業務を行うことが多いです。
バックオフィス分野では欠員に合わせて補充が行われるため、ある程度の募集はありますが不定期になることが多いです。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
コンサルティング業界では、営業職であれば経験不問、業界未経験でも採用されることが多いです。
IT系のコンサルティング会社であれば、IPAの情報処理技術者の各種資格を保有していると良いでしょう。
中小企業診断士や税理士、公認会計士、弁護士の資格はどの種類のコンサルティング会社でも評価されます。
近年はアジア圏への進出を始め、グローバルなコンサルティングサービスを提供している企業も多いため、英語やアジア圏で需要の高い中国語の能力があれば活躍の幅も広がります。
コンサルティング業界の有名・人気企業紹介
アビームコンサルティング
1981年創業、設立。連結売上高748億円、従業員数5,915名(2018年3月期、連結)
12の国と地域28拠点に広がる日本発の総合系コンサルティングファームで、さまざまな経営ソリューションを提供しています。
近年はデジタルトランスフォーメーション分野に特に力を入れると共に、スポーツ支援などのCSR活動も積極的に行っています。
野村総合研究所
1965年創業、1966年設立。連結売上高5,012億円、従業員数12,578名(2019年3月期、連結)
国内発の民間シンクタンクで、コンサルティング業界における数少ない東証一部上場企業。
主に金融機関や流通業向けにITコンサルティングを提供し、システム開発や運用まで担当すると共に、リサーチや経営コンサルティングサービスも提供しています。
船井総研ホールディングス
1970年創業、設立。連結売上高216億円、従業員数1,105名(2018年12月度、連結)
東証一部上場の国内系コンサルティング企業で、プロジェクト型・顧問型のコンサルティングサービスや経営研究のコミュニティサービスを主な事業の柱としています。
ソリューションのIT化を推進し、メインの顧客層となっている中小企業を中心にITを活用したコンサルティング商品の提供に取り組んでいます。
コンサルティング業界の現状と課題・今後の展望
競争環境(国内・国外)
現在は働き方改革や企業活動のグローバル化、IT化など、社会の変化への対応ニーズが多いため、多くのコンサルティングサービス提供企業が現れており、国内市場での顧客獲得競争が激しくなっています。
また、大手企業でグローバル戦略をサポートすべく、大手コンサルティング会社では海外拠点や海外パートナー企業を設けて海外展開を始めており、海外の同業他社とのグローバルな競争が行われています。
特に成長エリアであるアジア地域では、国や文化の違いに対応しながら、先行しているノウハウでの市場シェア拡大が急がれています。
デジタルトランスフォーメーションが成長のカギに
現在、コンサルティング業界の中で特に注目度が高いのが、IT技術による業務革新と競争上の優位を作り出すためのデジタルトランスフォーメーションです。
従来のアナログ的なコンサルティングや単純な業務IT化だけでなく、顧客ニーズに応じた抜本的な業務変革をもたらすためのITを利用した仕組み作りが求められています。
デジタルトランスフォーメーションのための商品や成功事例を増やすことが、今後は各コンサルティング会社の成長力を左右すると見られています。
業界としての将来性
現在の国内市場は高い社会的ニーズによって需要は安定しているものの、今後は労働人口の減少や企業数の減少により、中小企業向けのコンサルティングサービスは需要の減少が予想されます。
また、デジタルトランスフォーメーションによるコンサルティングが主になれば、個人や少規模のコンサルティング会社では対応が難しくなり、企業の淘汰が進む可能性があります。
国内市場だけでは成長が難しいですが、海外には多くのチャンスがあると見られ、国内で商品やノウハウの開発に成功した企業であれば将来的に大きな飛躍が期待できるでしょう。
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