アクチュアリーの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
アクチュアリーの仕事とは
アクチュアリーは日本では「保険数理人」とも呼ばれる職業で、日本アクチュアリー会が実施する非常に難関なアクチュアリー資格試験に合格した人のみアクチュアリーを名乗れます。
すべての試験に合格した人のみが正会員は2018年3月現在で1,697人しかおらず、希少性が高い資格といえます。
アクチュアリーのおもな仕事内容は、人が安心して生きていくうえで欠かせない「保険」や「年金」の掛金や支払金の額を決めることです。
この掛金や支払金は、数字はさまざまなデータをもとに算出されており、アクチュアリーは最適な金額を算出するための複雑な計算をするエキスパートとして活躍します。
アクチュアリーが適正な保険金額を算出することで、保険会社の健全な経営が実現できるばかりでなく、お客さまにとって魅力的な保険商品を開発する場面でも、アクチュアリーは大きな役割を担っています。
一般的にはあまり馴染みのない職業かもしれませんが、国際的な専門職として、海外からの評価が高い仕事です。
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アクチュアリーの業務の内容
保険や年金の掛け金や支払額を算出
アクチュアリーは、確率や統計などの数学的な手法を活用して、保険や年金の適正な掛金や支払い金を決定することをおもな業務とします。
個人の寿命や病気、事故にいたる確率は予測するのが難しいものですが、確率論や統計学を用いることによって、「将来」という不確定な事象の動向を推測することが可能になります。
アクチュアリーの具体的な仕事内容としては、まず保険関連資料などを収集し、死亡率、自殺率、事故率、伝染病、天候、国の景気、災害確率、政治・経済情勢などのデータを分析し、将来起こり得る事象を確率論・統計学を用いて予測します。
販売済みの保険の収益データも計算
アクチュアリーは保険を販売した後もその保険の売れ行きやどのように収益を上げているかなどのデータを分析して、より売れる商品になるように、掛け金や支払金を見直すこともします。
ただ計算するだけではなく、実際に保険を販売する営業員と連携をとって、その保険のメリットを説明し、顧客へのセールストークを考えることもあります。
アクチュアリーの役割
アクチュアリーの社会的な役割は、所属する会社で保険商品をうまく運用することにより会社を長続させて、保険金や給付金をお支払いすることで、お客さまに安心してもらうことです。
もし、アクチュアリーの設計ミスにより、想定以上に保険金が支払われるようなことがあり、会社が存続できないようなことがあれば、お客さまが必要な時に保険金を受け取れなくなってしまう危険性もあるので、大きなミスは許されません。
また、各社競争が激化しているので、採算を考えながらお客さまのニーズに合った商品の開発やリスク管理に力を入れていくことが会社内でのミッションとなります。
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アクチュアリーの勤務先の企業の種類・活躍の場
アクチュアリーの勤務先・働き方の種類
アクチュアリーの多くは生命保険会社・損害保険会社・信託銀行などの金融機関で正社員として働くことが多いです。
新卒採用からアクチュアリーとして働きたい人向けの枠が用意されている会社もあり、入社後すぐにアクチュアリーとして働きながら、資格取得の勉強を始められます。
新卒として入社する時は、アクチュアリー資格は必須ではなく、働きながら資格取得を目指す人が多いです。
ただし、基本的に試験を受ける資格は大卒以上ですが、大学3年生で62単位以上を取得している人や、高専の卒業生、生保数理などの仕事を3年以上経験した人も受けられるので、アクチュアリーになりたいと思う気持ちが強い人は在学中に挑戦してみてください。
生命保険会社で働くアクチュアリー
生命保険会社は、人が亡くなった時やケガをした時にお金を受け取れる保険を販売しています。
生命保険は長期契約が主になるので、金利や死亡率の変化など考慮するべき点も多く、そのため結論を導き出す際は、膨大な統計データと統計学が使われます。
契約者は掛金が高すぎると契約してくれませんが、安すぎて保険金の支払いが上回った場合、生命保険会社が損をしてしまいます。
そのバランスを考えて、適正な値段の保険を販売するために緻密な計画をすることが生命保険会社で働くアクチュアリーの仕事です。
生命保険会社で働くアクチュアリーは、金利や死亡率の変化など考慮しながら、膨大な統計データと統計学が使い、適切な保険金や保険料の算出、給付金の支払いに備える準備金の評価をすることがおもな仕事になります。
他にも、会社の予算プランニングや財務・経理全般にわたる分析、会社全体のリスク管理、ALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)と呼ばれる資産と負債の管理もアクチュアリーの仕事です。
生命保険会社では新卒でアクチュアリー採用しているところも多く、アクチュアリー資格保有者の中では、生命保険会社勤務の人が一番多くなっています。
損害保険会社で働くアクチュアリー
損害保険会社は、自動車事故や家の倒壊などに対してお金を支払われる保険を販売しています。
たとえば、自動車保険で考えてみると、車種・年齢・走行距離などリスクは多様のため、まったく同じ条件を持つ契約は存在しません。
アクチュアリーはさまざまなパターンのモデルを組み立てて、適正な保険料を計算する必要があります。
損害保険会社で自動車保険の商品開発するアクチュアリーは、新商品の検討だけではなく、時には金融庁との折衝、販売中の商品の採算チェックなど業務は多岐に渡ります。
自動車は通信技術の進化や自動運転車の登場など変化が大きくなっており、社会のニーズと会社の利益のバランスを取りながら、多くの人に喜んでもらえる商品を作ることが損害保険会社で働くアクチュアリーのミッションです。
また、商品の自由化、リスクの高度化・複雑化、自然災害の増加などにより、アクチュアリーの重要性は増す一方となっています。
信託銀行で働くアクチュアリー
アクチュアリーというと保険会社で働くイメージが強いかもしれませんが、信託銀行で働くアクチュアリーもいます。
信託銀行で働くアクチュアリーは、退職金や企業年金の設計や、掛け金の計算、財政の健全性についてのフィードバック、法律・会計基準の改定に伴うコンサルティングなどをしています。
退職金や企業年金は企業に合わせたオーダーメイドの商品を設計するのですが、各企業によって求めるものや理解度が異なるため、お客さまがきちんと理解してくれるような丁寧なコミュニケーションが必要です。
少子高齢化で公的年金に対する不安が増えているので、企業年金に対する期待も大きく、やりがいを持って仕事ができます。
独立・開業して働くアクチュアリー
アクチュアリーという職業が日本以上に認知されている欧米諸国では、独立し、自ら事務所を開いて仕事をするアクチュアリーも珍しくはないです。
そのため、今後は日本でもアクチュアリー正会員の数が増えるに従って、独立・開業する人が増えるなど、働き方にも変化が見られることが予想されます。
すでにアクチュアリーが起業し、代表を務めている会社は複数ありますが、この世界で起業する人は一般的に、保険会社や信託銀行、コンサルティング会社等で経験を積み、知識やノウハウを蓄えたうえで起業に踏み切っています。
独立するとなれば、企業に勤めているとき以上に実力が問われますが、成功すればたくさんの人の役に立てるのみならず、大きな収入を得ることも夢ではありません。
また、どれだけ大学や大学院で数理の勉強をして、資格を持っていたとしても、アクチュアリーは業務を通じて覚えることも多いため、実務未経験者がいきなり独立というのは、ほぼ不可能に近いといえます。
アクチュアリーの雇用形態
現在、日本国内のアクチュアリーのほとんどは、生命保険会社や損害保険会社などの企業や団体、官公庁などに所属して働いているとされています。
近年、急速にニーズが高まっているものの、まだまだ有資格者(正会員)の数は少なく、有能なアクチュアリーを求める企業は多いです。
ほとんどのアクチュアリーは正社員として雇用されていますが、女性のアクチュアリーで出産を機に退職して、パートタイムで復帰するという人も稀にいます。
アクチュアリーの仕事の流れ
保険の商品開発をするアクチュアリーは、まずデータを分岐するところから始めて、どれくらいの人にニーズがあるか、採算が取れるかなどを計算します。
その後は、営業、事務、システム等の各分野のエキスパートと意見交換をしながら保険の商品化をしていきます。
商品が販売された後も、思ったより採算が合わなければ新規顧客に対しては掛金の改定などをして、常にデータを見ながら会社にとっても顧客にとっても良い保険になるように運用していきます。
アクチュアリーと関連した職業
アクチュアリーとよく比べられる職種として「クオンツ」というものがあります。
クオンツとは、金融機関においてデリバティブ(金融派生商品)のプライシング(価格付け)、システムの構築や、トレーディングアシストツールを開発する仕事するエキスパートです。
どちらも高度な数学知識が必要になる職種ですが、クオンツはアクチュアリーのような資格は必要ありません。
就職活動でアクチュアリーとクオンツの両方にエントリーする人もいます。
しかし、求められる学力は非常に高く、旧帝大か早慶以上の大学院に在学していたような人しか採用されません。