視能訓練士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「視能訓練士」とは
眼科医の指導の下、目に関する各種検査や、機能回復のための訓練、リハビリを行う。
視能訓練士とは、医師の指示の下で、目に関する検査や目の機能を回復するための訓練をする医療系の専門職です。
専用の検査器具を用いて、視力・眼圧・視野・色覚・光覚などの目の検査を行う「眼科検査」や、斜視や弱視など両眼視機能に問題がある患者さんに対して訓練プログラムを作成する「矯正訓練」などを実施し、視力機能の回復を図ります。
視能訓練士になるためには、視能訓練士養成施設(大学・専門学校)で学んだのちに、国家試験に合格することが必要です。
おもな就職先は、眼科の診療所か病院です。
視能訓練士国家試験の受験者数は増加傾向にありますが、視能訓練士の人数はまだ不足しているとされ、都市部の病院や眼科診療所を中心に多数の求人が出ています。
視能訓練士は、他の医療職と異なり夜勤がほとんどないため、女性にとっても働きやすい仕事といえるでしょう。
「視能訓練士」の仕事紹介
視能訓練士の仕事内容
眼科における検査と機能回復訓練を中心に担当する
視能訓練士とは、医師(眼科医)の指示の下、目の検査や、目の機能を回復させるための訓練を担当する医療系の専門職です。
専用の検査器具を用いて「視力」「眼圧」「視野」「色覚」「光覚」などの眼科関連の検査を行います。
眼科医は、視能訓練士が実施した検査結果を基に診療・治療方針を決定しています。
このほか、弱視や眼球運動の改善、子どもの未発達の視覚を育てるための訓練、ルーペなど補助具の選定と使い方の訓練を行うリハビリ関連業務、あるいは学校や職場での集団検診などにも携わります。
視能訓練士の役割
視能訓練士の多くは医療機関(病院・診療所)で働いているため、日々の仕事では、眼科医のサポート的な役割を任されることが多くなるでしょう。
一般的に、眼科医1人に対して、視能訓練士は2~3人ほどが必要であるといわれています。
眼科検査で使用する機械は年々高度化、複雑化しているため、機械の特性を把握し、正しく操作できるスキルを備えることが重要です。
また、視能訓練士は検査や訓練の際に、患者さんと直接コミュニケーションをとる機会が多いことも特徴です。
医療従事者の一人として、患者さんに温かな心をもって接することが求められます。
視能訓練士になるには
まずは視能訓練士養成機関へ進学する
視能訓練士として働くためには「視能訓練士国家試験」に合格し、国家資格を取得する必要があります。
国家試験の受験資格を得る方法として、大きく以下の2つのルートが考えられます。
(1)高校卒業後、指定の視能訓練士養成施設(4年制大学あるいは3年制専門学校)で学ぶ
(2)大学や短大などで指定の科目を履修し、さらに視能訓練士養成施設で1年以上学ぶ
これから視能訓練士を目指す高校生が進路を考える場合には、「1」のルートを選ぶのが一般的といえるでしょう。
視能訓練士養成施設に認定されている学校には大学や専門学校などがあり、日本各地に存在します。
国家資格取得後、病院・診療所などに就職
視能訓練士の国家試験を受け、資格を取得したのちは、病院(総合病院・大学病院など)の眼科や眼科診療所といった医療機関で働く人がほとんどです。
視能訓練士の資格保有者数は年々増え続けていますが、まだ人数が不足している医療機関もあります。
なお、視能訓練士の資格は生涯有効なものとなっており、年齢制限もありません。
就職先が決まり、各職場に配属されると、先輩の下で実務経験を積みながらスキルアップに励みます。
視能訓練士の学校・学費
「視能訓練士養成機関」として指定された大学や専門学校がある
視能訓練士国家試験の受験資格を得るために通わなくてはならないのが「視能訓練士養成機関」といわれる学校です。
2019年4月時点で全国に28校存在しています。
また、視能訓練士養成機関の学校の種類は、以下のようにさまざまです。
・3年制の専門学校
・4年制大学
・大学で必要な履修科目を修めた人が通える1年制または夜間の2年制専門学校
高校生は「3年制専門学校」もしくは「4年制大学」に進学する人がほとんどです。
上記に当てはまる学校では、視能訓練士に必要な基礎知識や技術を学んでいくことができ、国家試験対策もできます。
学校選びのポイントは?
「視能訓練士養成機関」に指定されている学校でも、校風や学費は学校ごとに異なります。
学費に関していうと、専門学校の場合1年間あたり100万円前後が一般的ですが、別途、初年度には入学金が、また年度ごとに実習費や施設維持費などがかかります。
さらに、就職サポート体制や就職率、実習先や実習内容なども各学校で特色があります。
これらの情報は各養成校のホームページで確認することができるため、学校選びの際には念入りに調べて参考にしましょう。
視能訓練士の資格・試験の難易度
養成機関できちんと学んでいれば合格できる
「視能訓練士」は国家資格であり、他の医療系資格の多くと同様に厚生労働省が管轄しています。
視能訓練士国家試験は年に1回、2月下旬に実施され、「指定の視能訓練士養成所の課程を修了していること」が受験の条件となります。
試験内容は専門的で、決して容易というわけではありませんが、試験範囲はすべて視能訓練士の養成機関で学習する内容です。
在学中にきちんと授業を受けて自主的に勉強もしていけば、十分に合格できるといえるでしょう。
なお、視能訓練士の資格には有効期限がないため、一度試験に合格すれば、生涯にわたって視能訓練士を名乗ることができます。
視能訓練士国家試験の合格率は?
視能訓練士国家試験の合格率は、平成25年以降は80%以上が続き、90%を大きく超える年度もあります。
平成30年には98.2%と非常に高い数字となっていますが、不合格の人がまったくいないわけではないため、気を抜かずに臨みましょう。
なお、視能訓練士養成機関では、国家試験のサポートに力を入れている学校が多いです。
各学校のサポート体制を調べてみるのもよいでしょう。
視能訓練士の給料・年収
勤める医療機関や地域によっても収入差が出てくる
厚生労働省の令和2年度賃金構造基本統計調査によると、視能訓練士の平均年収は、33.9歳で419万円ほどとなっています。
この仕事の給与や待遇は経験年数のほか、勤務先の医療機関によっても差が出やすく、また地域差も大きいといわれています。
個人経営の小さなクリニックであっても、都市部で自費診療に力を入れているところだと、年収500万円~600万円以上が見込めるケースがあります。
視能訓練士はアルバイトや非常勤で働く人もおり、その人たちの平均年収は、もう少し低めになるでしょう。
経験年数3年以内くらいであれば時給1,300円~1,500円ほどが相場ですが、5年以上の経験を積むとそれ以上になる人も増えていきます。
公務員として働く視能訓練士の給料・年収
市民病院や県立病院といった公立の病院に勤務する視能訓練士は、基本的に「地方公務員」の身分となります。
独立行政法人が運営する国立病院で働く視能訓練士は、公務員に準ずる「みなし公務員」として働きます。
これらの医療機関で働く場合、公務員としての安定した待遇が得られることは魅力といえるでしょう。
しかし、必ずしも常勤勤務できるとは限らず、地方自治体では約1年の任期付きで募集されることもあります。
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視能訓練士の現状と将来性・今後の見通し
現状の需要は十分にあるが、今後は就職がやや厳しくなる可能性も
視能訓練士は、最近になって知名度が大きく向上した職業です。
視能訓練士の有資格者数の人数は、1990年には1,813名でしたが、2010年には9,351名、2018年末では15,351名と右肩上がりで増加しています。
眼科検査自体は現在のところは無資格でも行えるものの、最先端機器が使われることが多く、眼科医が一人で診察と検査を完璧にこなしていくのは難しいのが実情です。
そのため、昨今では個人経営の眼科クリニックでも、専門スキルを持った視能訓練士を積極的に配置するケースが増えています。
まだ人材不足の職業であるため、これから目指していく人にも活躍のチャンスは大いにあるといえるでしょう。
ただし、国家試験合格者がさらに増え続けると、この先は就職が厳しくなることも予想されています。
視能訓練士の就職先・活躍の場
全国の病院の眼科および眼科診療所で活躍
視能訓練士のおもな活躍の場は、大学病院や総合病院の眼科、あるいは医療法人や個人経営の眼科診療所です。
眼科検査自体は無資格でも行うことができるため、すべての眼科で視能訓練士が働いているわけではありません。
しかし、近年は新しい眼科疾患が多く発見され、眼科診療や治療の技術も進歩していることから、視能訓練士のニーズは増しています。
また、眼科のなかでも、近視・遠視などを矯正する「レーシッククリニック」に勤務するケースや、目のリハビリを専門的に担当するケースなど、特定の分野に関する専門的な業務を任されることもあります。
視能訓練士の活躍の場は、以前よりも広がってきているといえるでしょう。
視能訓練士の1日
病院業務をスムーズに進めるための「検査」を中心に担当
視能訓練士のおもな仕事は、眼科医が患者さんに必要な医療を提供するために必要な情報を、検査によって収集して渡すことです。
視能訓練士の検査によって得られたデータに問題があれば適切な医療は提供できませんし、検査が滞れば治療も思うように進みません。
的確かつ迅速に検査等の業務を進めることが、視能訓練士には求められます。
ここでは、眼科診療所で働く視能訓練士のある1日を紹介します。
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視能訓練士のやりがい、楽しさ
患者さんに寄り添い、目の健康のために力を尽くす
視能訓練士が一番やりがいを感じる瞬間は、眼科分野の医療専門職の一人として、たくさんの患者さんの健康のために力を尽くしていけることです。
たとえ視覚補助具を使いながらであっても、患者さん自身が見たいものがよく見えるようになれば、患者さん本人はもちろん、そのご家族にも喜んでいただけます。
自分が力を尽くした相手の状態が少しでも良くなる瞬間に立ち会えることは、この仕事をしていて最もうれしいことだといえるでしょう。
人の役に立っている実感を味わうことができる仕事です。
「働き方」の面でいうと、視能訓練士は残業や夜勤が少ないため、仕事にはしっかりと打ち込みつつも、規則正しい生活を送りたい人、プライベートも大事にしたい人にも魅力的な仕事と感じられるでしょう。
視能訓練士のつらいこと、大変なこと
一人ひとりの患者さんの不安や悩みに寄り添う難しさ
視能訓練士が接する患者さんたちは、誰しもが「目の調子が悪い」「物が見えにくい」など、なんらかの症状を抱えています。
同時に「本当に回復するだろうか」という不安を感じ、心配しています。
そうした人々と接する視能訓練士には、眼科医の指導の下、確かな検査を実施することはもちろん、患者さんの気持ちを和ませるような会話を行い、スムーズに検査を進めていく力が求められます。
眼の矯正訓練ではすぐに効果が出ないことも多いですが、根気よく、本当に相手のためになることを常に考えなくてはなりません。
ときには、患者さん一人ひとりが抱える悩みや不安に寄り添うことの難しさを感じるでしょう。
視能訓練士に向いている人・適性
人の気持ちに寄り添って、確実に物事を進められる人
視能訓練士の仕事では、なによりも正確性が優先されます。
医療ミスは決して起こしてはなりませんから、過去の検査結果を慎重に確認し、確実に検査を進めていく必要があります。
患者さんは少なからず不安を抱えているため、相手の気持ちに寄り添い、親身になれる人に適した仕事です。
子どもから高齢者まで、さまざまな年代の患者さんとの関わりがあるため、「人が好き」という要素もプラスにはたらくでしょう。
また、視能訓練士は「眼科医」など他のスタッフとの連携や協力も不可欠な仕事であるため、医療関係者の一員となり、患者さんのために協力して頑張ろうと思える人がこの仕事には向いているといえます。
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視能訓練士志望動機・目指すきっかけ
専門性の高さや需要があることに魅力を感じて
「医師」や「看護師」、あるいは「理学療法士」などの
リハビリテーション職のように、医療に関わる仕事はたくさんあります。
そのなかで、あえて視能訓練士を目指す人は、自分自身が視能訓練士にお世話になった経験があるというケースが多いようです。
子どものころに視力矯正の訓練をしてくれた視能訓練士に憧れた人もいれば、眼科に通院する機会が多く、そこで働く視能訓練士に興味をもつようになったという人もいます。
そのほか、高齢化社会が進むなかで、視能訓練士のニーズが高まっていることや、国家資格を持つ専門職であることに魅力を感じて目指すケースもあります。
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視能訓練士の雇用形態・働き方
正社員以外に、パートとして働く人も多い
視能訓練士の多くが、国公立の病院や私立病院の眼科、また地域の眼科診療所に勤務しており、雇用形態は「正規職員」が中心です。
しかし、視能訓練士はもともと女性の国家資格取得者が多いという特徴があります。
男性はそのほとんどが正規職員を選択していますが、女性の場合、家庭との両立やプライベートを充実させたいなどの理由で、あえて非正規雇用を選択するケースも多いです。
もともとフルタイムで働いていた人が、結婚・出産を機にいったん現場から離れ、その後、家庭が落ち着いた際に、時短勤務やパート・アルバイトで職場復帰するケースもあります。
どのような雇用形態であっても、視能訓練士は通常、医師のように当直や救急対応をすることはほとんどありません。
比較的安定した生活を送りやすいでしょう。
視能訓練士の勤務時間・休日・生活
勤務先の診察時間に合わせて働く
視能訓練士は、一般的に、勤務先となる病院や眼科診療所などの診察時間に合わせて働きます。
診察時間は9時~17時くらいになることが多いでしょう。
ただし、診療時間前には器具の準備や点検、掃除などを行うため、たいていは診察時間の30分から1時間ほど前に出勤し、患者さんをきちんと待てる体制を整えます。
診察時間後には、片付けやミーティングなどの時間が30分ほどとられることもあります。
他の医療職と異なり残業はさほど多くなく、夜勤になることも基本的にありません。
勤務先の休診日は視能訓練士も休日となり、その日はしっかりと休めます。
ただ、ときには休みを使って院外研修などに参加するなど、自主的に知識・技術を磨くための時間が必要になるでしょう。
視能訓練士の求人・就職状況・需要
近年、需要が急激に伸びてきた職業
高齢化社会を迎え、目に不自由さを抱える人が増えているなか、眼科の検査を専門的に行える視能訓練士の需要は拡大しています。
とくに、現代は医療の専門化が進んでいることから、これまで視能訓練士を置いていなかった医療施設でも、新規に視能訓練士を採用する傾向が続いているようです。
視能訓練士は女性も多く活躍しており、国家資格の強みを生かしながら働ける職業としても人気が高まっています。
入院施設を備えた規模の大きな病院から、個人経営の地域密着型の眼科クリニックまで、就職先の選択肢は多彩です。
ただし、求人の多くは都市部を中心に集中しており、地方では就職先を見つけることがやや難しいかもしれません。
視能訓練士の転職状況・未経験採用
視能訓練士の国家資格取得は必須
視能訓練士は転職によって目指すことも可能ですが、その場合でも国家資格の取得は不可欠です。
視能訓練士養成機関で所定のカリキュラムを修了し、国家試験に合格しなくてはらないことから、転職ハードルはやや高めといえるでしょう。
転職までにかかる時間と費用を具体的にイメージして、計画を立てていく必要があります。
国家資格を取得してしまえば、前職がどのような人でも医療機関に採用される可能性はあります。
医療従事者としての経験があると優遇されることも考えられますが、異業種からの転職者もゼロではありません。
ただし、最近は国家資格取得者が増えていることから、未経験者の場合、なるべく若いうちに転職を決意することをおすすめします。