新聞記者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「新聞記者」とは
政治、経済、国際情勢など世の中の動きを取材し、わかりやすい記事にまとめる。
新聞記者は国内外のあらゆることを取材して、新聞記事を書く仕事です。
本社勤務の場合は、政治、経済、国際、社会部などの各部に配属され、記者クラブを拠点にして、担当者からの発表等を記事にします。
その際、担当者の発表の「ウラをとる」ことが重要になり、取材力があればあるほどスクープなどの記事を書くことができます。
作成した原稿をレイアウトし、見出しや体裁を整える「整理記者」、誤字脱字や物事の事実確認を行う「校閲記者」、写真撮影をする「写真記者」という仕事もあります。
新聞記者になるには、新聞社の採用試験に合格する必要がありますが、たいていの場合4年制の大学学部または大学院を卒業していることが条件です。
近年は、政治学部や社会学部だけでなく、工学部など科学系の専門知識を持った学生も採用されています。
基本的にハードな仕事で、特に社会部、政治部などの場合は、政治家や社長の自宅に早朝や深夜に訪問するため、長時間労働は避けられません。
新聞の購読者数は年々減少傾向で、他のメディアとの差別化が急務となっています。
「新聞記者」の仕事紹介
新聞記者の仕事内容
国内外の出来事を取材し、さまざまな視点から論評する
暮らしに関係するさまざまな記事を書く
新聞記者は、国内外のあらゆることを取材して、記事を書く仕事です。
新聞というと、政治経済や国際問題などを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、それ以外にも、生活・教育・文化・スポーツなど、私たちの暮らしに関係するあらゆる分野について記事を書きます。
新聞記者の多くは、政治・経済・国際・社会部などの各部に配属されます。
各部での仕事は専門性が高くなるので、専門家や関係者の話を聞いたり、自身で勉強して考察したり、事実だけでなく会社としての意見を記事にしたりします。
新聞は多くの人に読まれているメディアですので、正しい日本語で、公平かつ偏りのない記事が書ける文章力が必要とされます。
新聞記者の役割
新聞は、非常に高い公共性を有し、言論の自由を守るメディアです。
現在、新聞協会に加盟している新聞社は100を超えており、それぞれがさまざまな視点から意見を述べています。
同じニュースを伝えていても、さまざまな視点から分析し論評することにより、社会への関心や視野を広げる役割があります。
そのため、新聞記者は強い正義感や責任感を持って仕事に臨みます。
記者が地道な取材をしたことによって重大なニュースが発見されたり、国や企業に対する問題提起をしたり、不正を取り上げたりすることも少なくありません。
新聞記者になるには
大学卒業後に新聞社の採用試験を受けて合格する
大学卒業後就職試験を受ける
一般紙の記者職を目指すには、大卒が条件です。
新聞社の入社試験はほかの企業とは違い、一般常識や論文試験があり、一般的な就職試験とは内容が異なるため、適切な対策が必要です。
ここでまず、記者として働くための知識や文章力が問われますので、学生のうちにしっかりと力をつけておかなくてはなりません。
なかにはマスコミ系の専門予備校や対策講座を開催しているところもあるので、利用するのもよいでしょう。
マスコミ研究会、ジャーナリズム研究会などに入って集中的に学ぶ人も少なくありません。
新聞社の採用試験は倍率が高いので、大学での勉強だけで試験をクリアするのは難しいと考えておいた方がよいでしょう。
新聞社の採用試験の内容
記者志望の場合、編集部門の試験を受けます。
新聞社を受験する学生には記者志望者が多く、必然的に高倍率になります。
採用試験の内容は、全国紙・地方紙とも、おおむね筆記試験と面接ですが、最近では、模擬取材での選考や面接の一環としてグループディスカッションを取り入れる新聞社もあります。
過去の試験内容を調べるなどして、対策をしておくとよいでしょう。
政治学部・経済学部・社会学部などの出身であれば有利といわれますが、必ずしもそうではありません。
また英語などの語学を習得することで就職試験は有利になりやすく、加えてコミュニケーション能力の高さがある人は記者に向いていると言えます。
新聞記者の学校・学費
出身大学や学部は問われないことが多い
新聞記者になるためには、4年制の大学または大学院を卒業していることが条件です。
学部では、「新聞学部」「新聞学科」を設けている大学がありますが、必ずしもこうした学部を卒業する必要はありません。
出身大学や学部は不問ですが、一般的にいえば、政治学部、経済学部、社会学部などの出身であれば、新聞記者の仕事をしやすいといえます。
一方で近年は、特別な専門分野を専攻した学生を採用する新聞社が増えつつあります。
経済分野では、近年、金融工学の知識が、産業・技術分野でもIT(情報技術)工学が求められているため、工学部出身者が採用されるケースも少なくありません。
また、外国特派員として、海外勤務を希望する学生の場合、英語に加えて、第二外国語を習得することで有利となります。
新聞記者の資格・試験の難易度
特別な資格は必要ないが、採用試験への対策は必要
新聞記者になるために特別な資格は必要ありませんが、新聞社に入社するための試験は独特なので、しっかりと対策をしておきましょう。
全国紙、地方紙とも、おおむね筆記試験と面接が行われます。
筆記試験は、時事・常識問題、語学、作文・論文が中心です。
作文・論文については、大学の論文の形式とは異なるため、文章構成や表現力について、新聞記事に適した書き方を身に着けることが大切です。
これらの試験のほか、最近では、模擬取材での選考も増えています。
全国紙では、実際に特定の対象を取材し、記事を書いたり、模擬記者会見の内容を記事にまとめたりするケースがあります。
また、面接の一環としてグループディスカッションを取り入れる新聞社もあるようです。
新聞記者の給料・年収
大手になればなるほど給料も高い傾向にある
勤務時間が長いため給料も高くなる傾向に
新聞社といっても、全国紙を発行する大手から地方の中小企業までさまざまで、一般的に給料は大手のほうが高い傾向にあります。
新聞記者全体の平均年収は900万円を超え、一般的な職業よりも高収入といえるでしょう。
これは、仕事の内容が極めてハードで勤務時間が長いためであり、一日8時間労働といった形で決まった就業時間があるわけではなく、時間外労働が常態化しているからです。
また、中小では大手の半分程度の給料ということも少なくありません。
さらに、新聞記者の給料は所属する部署によって差が出るという特徴もあります。
特に新聞の花形ともいえる政治部や経済部などは給料が高く、待遇も安定していることが多いですが、深夜や早朝に働くことも日常茶飯事で激務になる傾向があります。
スクープで報奨金が出ることも
新聞記者にはノルマはありませんが、新聞社間での「抜いた」「抜かれた」のスクープ合戦は非常に激しくなっており、特ダネをスクープした記者には報奨金が出ることもあります。
給料をより増やすには、フリーランスで活躍する方法もあります。
記者として経験を積んで独立し、フリーランスとして実力が認められればジャーナリストや作家としても活動する道が開けます。
人気が出たればさらなる収入アップも見込めますが、新聞社という後ろ盾がない中で、一人で取材をし、記事を書くのは非常に難しく、記者として相当の実力がなければ難しいでしょう。
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新聞記者の現状と将来性・今後の見通し
新聞離れが進む中で、記者のあり方や記事の書き方が問われる
購読者数の減少により新聞記者のあり方が問われている
情報化社会の進展で、テレビ・インターネットなど新聞以外のさまざまな媒体が登場し、国民の情報を得る手段は多様化しました。
近年、新聞はその購読者数が年々減少し、多くの人に親しまれるメディアではなくなってきました。
インターネットの速報性、相互コミュニケーション性などに新聞は太刀打ちできなくなりつつあり、新聞本体で経営を維持できる新聞社は極めて少ないといってよいでしょう。
また、自動で記事を作成するAIなども生まれてきて、今後新聞記者はどうあるべきかの模索がはじまっています。
ひとつの方向としては、専門記者、専門解説委員として活躍できる人材を目指すことが挙げられます。
今後はより詳細な解説、分析、調査などを経て記事が作成されるようになると考えられ、自分の得意分野、専門分野を生かして働く記者が増えることでしょう。
デジタルコンテンツに力を入れる新聞社も
新聞の購読者数が減少するなか、今後は各新聞社もデジタルコンテンツに力を入れると考えられます。
インターネット上で新聞を読めるようにしたり、SNSなどを利用し即効性のあるニュース発信をしたりと各社が模索しています。
紙と違い、デジタルコンテンツの場合は目に留まったり面白いと思ったりしてもらわなければ記事を読んでもらえないため、新聞記者も紙面とはまた違った記事の書き方が求められると考えられます。
新聞記者の就職先・活躍の場
新聞社によって規模や内容はさまざま
新聞記者の就職先は、全国の新聞社です。
新聞社にも、全国紙をつくっている大きな新聞社から、専門紙をつくる小さな新聞社までさまざまな企業があります。
大手新聞社の場合、研修を受けてから地方支局に配属になり、さまざまな分野の記事を書きながら記者としての力をつけるとともに、「自分がどんな記事を書きたいか」という進路を考えます。
その後、本人の希望や適性によって、政治部・社会部・生活部・など専門部署に配属されるのが一般的です。
一方専門紙は数人から数十人規模で新聞づくりのすべてをまかなっているところも多く、大手新聞社とは働き方が全く異なることも多いです。
新聞記者の1日
配属される部署で異なる
新聞記者の勤務時間は、各部の仕事の中身によって、異なります。
時差や朝刊、夕刊の担当によって時間帯が異なるためで、生活は不規則になり、仕事がハードになりがちです。
<大手新聞社で働く新聞記者の1日>
新聞記者のやりがい、楽しさ
スクープで社会を動かし、取材力を知らしめる
新聞記者であれば誰もが憧れるのは、他社がまだ取材していない独自のスクープ記事を掲載することでしょう。
スクープの内容はさまざまですが、センセーショナルな話題であればあるほど、世の中の注目を大きく集めることにつながり議論を巻き起こすことができます。
そしてそれは同時に、世間に対してその新聞社の取材力を知らしめることにもつながるのです。
スクープを連発する新聞記者は、その新聞社のエースとして信頼されるようになり、自分が取材したいネタをどんどん自由に取材させてもらえるのも魅力のひとつです。
ほかにも、書いた記事に対する反応から、多くの人に自分の言葉が届いたという手ごたえを感じられるのもやりがいのひとつといえます。
新聞記者のつらいこと、大変なこと
相手にわかりやすく伝える記事を書くこと
新聞記者は文章が命です。
どれだけいい取材をしても、上手く記事にできなければ、記者としては失格です。
時間をかけてようやく完成した原稿をデスク(部次長)に見せても、「新聞に載せられるレベルに達していない」と判断されれば、何度でもボツになってしまいます。
とくに新人のうちは何度もボツを繰り返し、原稿がうまく書けないことで記者としての自信をなくしてしまう人も多いようです。
また、新聞記事は、時間との勝負で、どんなに優れた文章でも、締め切りに間に合わなければ、意味をなしません。
文章の構成や起承転結を考えながら、素早くそして正確にわかりやすい文章をかけなければ、記者として一人前とは言えないのです。
新聞記者に向いている人・適性
取材をする上でコミュニケーション能力は必須
新聞記者の最も大事な資質は、コミュニケーション能力です。
さまざまな人に会い、取材をして情報をことが、記者としての仕事の基本になるからです。
新聞記者の場合は、記事にするための情報を相手から得なければなりません。
記事を書くには文章力、幅広い知識が必要であることはいうまでもありませんが、基本的には人とのコミュニケーションによって情報の量と質を深め、それを記事化することです。
相手との信頼関係を深められれば、相手は、さまざまな意見や情報を与えてくれるようになるでしょう。
また、限られたスペース・文字数に収まるようにわかりやすく文章を書き、相手に伝える文章能力は、新聞記者としての基本といえます。
関連記事新聞記者に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
新聞記者志望動機・目指すきっかけ
ジャーナリズムへのあこがれ
新聞記者を目指したきっかけの多くはジャーナリズムへの興味関心です。
新聞記者を志す人の多くは、テレビ、通信社などのマスコミに強く惹かれている人が多いです。
今でこそ購読している人が減少傾向にありますが、昔から新聞は「第四の権力」と呼ばれ、国民の側に立って時の政府権力を厳しく監視し、チェック機能を持ちます。
社会のあらゆることを多くの人たちに知ってもらい、問題意識を持ったり生活改善をしたりしてもらいたい、そうしたジャーナリズムやマスコミに対するあこがれから、新聞記者を目指す人は少なくありません。
面接で志望動機を話す際は、全国にたくさんある新聞社の中から、なぜその新聞社を志望しているのかを明確にしておきましょう。
新聞記者の雇用形態・働き方
多くは正社員として雇用されている
新聞記者は、その多くが新聞社の社員として雇用されています。
新聞社として責任ある記事を書くためには、やはり正社員であることが必須という考え方が浸透しているためです。
中小の新聞社は、社員が少ないため契約や外部のライターに一部の記事を書いてもらうこともあるようですが、それはごくまれな例です。
新聞記者はどうしても締め切りやスクープのため不規則な生活になりがちですが、その分立場や給料など生活の保障はあるといえるでしょう。
なお、内勤の校正記者の場合は、契約社員やアルバイトとして働いている人もいます。
新聞記者の勤務時間・休日・生活
「夜討ち朝駆け」の言葉通り朝から深夜まで働く
新聞記者などが、予告なく早朝や深夜に取材先を訪問することを「夜討ち朝駆け」と言います。
この言葉が表す通り、新聞記者は事件や情報があれば深夜や早朝でも現場に駆け付け、取材をし、記事を書かなくてはなりません。
新聞記者を目指す人は、あらかじめ不規則な生活であることを覚悟しておかなくてはならないでしょう。
また、新聞は休刊日をのぞき毎日発行されているため、休日も不規則になりがちで、大きな災害や事件があったときには何日も休みを取れないこともあります。
一方、ワークフローの見直しや完全週休2日制の導入などと通して、出産や育児、看護があっても長く働き続けられるよう働き方改革を進めているところも増えてきています。
新聞記者の求人・就職状況・需要
数十倍も珍しくない高倍率で狭き門
新聞社は毎年新聞記者を採用しており、新聞離れが進む中でもすぐに採用がなくなることはないと考えてよいでしょう。
しかし、今後は採用人数を絞っていく新聞社も増えることが予想されるため、注意が必要です。
新聞記者を目指すためには、新聞社の入社試験をパスしなければなりません。
新聞社はおおむね編集部門と営業、販売部門、さらに総務部門などに分けて試験を実施するところが多いようです。
新聞記者は編集部門の試験を受験しますが、採用倍率は非常に高いのが実情で、新卒で記者職を目指すのであれば、学生時代からしっかりと対策をしておくことが大切です。
晴れて合格したとしても、記者として適性がなければ営業、販売、企画、開発等の他部門に配属されるケースもままあります。
新聞記者の転職状況・未経験採用
年齢制限があるところが多く若手に限られる
転職の場合、他社で新聞記者をしていたり、報道関係の仕事をしていたりした場合は転職しやすい傾向にあります。
ただし、入社試験を受ける際は、新聞社における年齢制限に注意する必要があります。
4年制大学の学部を卒業していれば問題ありませんが、大学院あるいは、どこかに就職していて新聞社に再就職する場合は、第二新卒として、年齢制限があります。
通常、年齢制限は25歳から30歳とされていますが、第二新卒者を採用しない、あるいは年齢制限がより厳しいところもあるようです。
記者としての経験やキャリアがない場合は、転職できない新聞社も少なくないので注意が必要です。