潜水士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「潜水士」とは
海、河川、下水、ダムといった水中に長時間潜り、土木建築、海洋調査などの作業を行う。
潜水士は、海や河川、湖、下水、ダムといった水の中に長時間潜り、潜水器を用いて送気やボンベからの給気を受けながら、さまざまな作業を行う仕事です。
海難救助、魚介類の採取、水中での土木建築、船舶の修理、沈没船の引き上げ、海洋調査、ダイビング指導、水中撮影など潜水士の業務内容は多岐にわたります。
それぞれ民間企業や大学・研究所、海上自衛隊といった公的な組織などの場所で活躍しています。
潜水士として業務を進めるためには「潜水士免許」の取得が必要となりますが、活躍の場はさまざまであり、どのような分野で仕事をするのかによって、潜水技術以外に身につけるべき技能や知識が異なります。
陸上とは環境が異なる水中作業は難易度が高いため、平均年収は600〜700万円程度と比較的高めです。
経験は強みになりますが、未経験者が就職できる企業もあります。
一人前になるまでには長い時間がかかりますが、この道でスキルアップしていくことで給料や待遇に跳ね返ってくるほか、独立して仕事を進める道も開けます。
「潜水士」の仕事紹介
潜水士の仕事内容
潜水士の資格を持ち、水中でさまざまな作業を行う
水中での作業を行うプロフェッショナル
潜水士は、海や河川、湖、下水、ダムといった水の中に長時間潜り、潜水器を用いて送気やボンベからの給気を受けながら、さまざまな作業を行う仕事です。
水中は気圧をはじめ、環境条件が陸上とは異なるため、安全に作業を進めるためには専門知識と技能を身につける必要があり、「潜水士」の国家資格(免許)の取得が不可欠です。
潜水作業は危険も多いですが、潜水士にしかできない業務をこなしていくことから、大きなやりがいを感じられる仕事だといえます。
活躍の場は多岐に渡る
潜水士というと、ドラマや映画などの影響から海上保安庁で働く、いわゆる「海猿」といわれる潜水士の姿をイメージする人が多いかもしれません。
「人を助けるのが仕事」と考えられがちですが、実際にはさまざまな種類の潜水士たちが各領域で活躍しています。
潜水士が行う作業内容は多岐にわたり、魚介類の採取、水中での土木建築作業、船舶の修理、沈没船の引き上げ、海洋調査、あるいはスキューバなどのダイビング指導者として活躍する人もいます。
たとえば、民間の海洋関連会社では「作業ダイバー」といわれる人が大勢活躍しています。
また「調査ダイバー」といわれる潜水士であれば、海に潜りながら水中遺跡や海洋生物についての調査を行います。
そのほか、水中での映像や写真撮影をすることを専門とする潜水士もいますし、珍しいところでは、水族館で大きな水槽の中に潜り、餌付けや清掃作業を行う人にも潜水士の免許が必要とされます。
潜水士になるには
潜水士の資格を取得し、少しずつ仕事を覚えていく
潜水士資格を取得する
潜水士としての仕事をするには、「潜水士免許」の取得が必要となります。
潜水士免許試験は筆記試験のみとなっており、実技試験は実施されません。
受験資格もないため(免許の交付は18歳以上)、本人であることさえ証明できれば誰でも受験することが可能で、高校生で潜水士資格を取得する人もいます。
しっかりと勉強しておけば、合格自体はさほど難しくないといえるでしょう。
潜水士の就職先としては、まず海洋関係会社、建設会社、水産会社、ダイビングショップなどの民間企業が挙げられます。
一人前になるには時間がかかる
たとえ潜水士免許を取得できても、潜水の技能を身につけなければ実際に仕事としてやっていくのは難しいです。
というのも、潜水士はただ潜るだけでなく、潜ったうえで建設作業や船舶の修理、撮影、海底調査など、さまざまな業務をこなさなくてはならないからです。
また、水中という私たちが日常生活を送る陸上とは異なる環境に身をさらすことから、リスクも背負う仕事です。
潜水士として一人前になるまでには、最低でも10年はかかるといわれることもあります。
自分の命を守るためにも、まずは潜水に関する正しい技能を身につけておかなくてはなりません。
こうしたことから、ほとんどの民間の潜水会社では免許取得に加え、先輩から教わりながら訓練を続けて潜水技能を高めていくという流れをとっているようです。
潜水士の学校・学費
特別な学歴は必要なし
潜水士になるために、特別な学歴は必要ありません。
資格取得にも受験資格はないため、高卒で潜水士資格を取得する人も多いです。
なお、岩手県立種市高等学校は潜水士を養成する海洋開発科がある国内唯一の高校です。
また、大学のサークルや趣味でスキューバダイビングなどを経験し、この仕事に興味を持って潜水士資格を取得する人も少なくありません。
実際の現場では潜水士としての経験や技術がものをいうため、学歴で仕事が左右されることはほとんどないでしょう。
潜水士の資格・試験の難易度
潜水士資格だけでなく、業務に合わせてさまざまな資格取得を目指す
仕事として潜水をするための資格
潜水士試験とは、潜水士として業務に臨む際に必要とされる潜水士免許を得るための試験です。
主に労働災害の防止など労働者の保護を目的とする免許になり、潜水業務を行う事業者はこの免許を持たない者を潜水作業に従事させることを禁止しています。
混同されがちですが、レジャーダイビングをする時にはこの資格は必要なく、ダイビングライセンス(Cカード)とは全く別の資格です。
潜水士試験には受験資格がないため、誰でも受験することが可能で、試験合格後の免許交付は18歳以上が対象となっています。
試験は学科試験のみとなっており、実技は行われません。
潜水士試験は学科のみ、さらに問題は各問五者択一の選択式であるため、試験前に勉強をきちんとしておけば、合格はそれほど難しくないといわれています。
なお、合格率は、例年70~80%前後を推移しています。
潜水士以外にもさまざまな資格取得が必要
潜水士の資格を取っただけでは、水中での業務を行うのは難しいです。
潜水士は一般的に、海底調査や護岸工事といった水中土木、作業ダイバーとしての水中溶接、あるいは海上保安庁や海上自衛隊の潜水員などとして仕事を行います。
そのため、それぞれの潜水業務に応じた資格や技能を身につけていかなくてはなりません。
必要とされる資格は勤務先や携わる業務内容によって異なりますが、水中での作業に携わる場合、基本的に潜水士の免許だけでは仕事ができないということは知っておく必要があるでしょう。
関連記事潜水士試験の難易度・合格率は? 試験は学科のみで8割合格
潜水士の給料・年収
給料は高めで好待遇であることも多い
給料は比較的高め
潜水士の給料は、勤務先となる企業や組織によって異なります。
危険も伴う特殊業務に就くことから給料は比較的高めといわれており、平均年収は600万円〜700万円程度、ベテランになると年収1000万円を超す人もいます。
海上自衛隊や海上保安官として潜水士の仕事をする場合、どちらも国家公務員であることから俸給表に沿った給与が支給されます。
海上保安官の場合は「保安職」に分類されるため、一般の国家公務員と比較して12%ほど高い給与が支払われ、給料のベースが高めとなっています。
また、海上勤務の場合には特別に手当が支給されます。
また、実力さえあればフリーの潜水士としてできる業務は多く、人脈を得て安定した仕事量を確保できれば、組織に所属しているよりもずっと多くの収入を得ることも可能です。
好待遇で採用されやすい
専門知識と技能を要する潜水士は、正社員として働く人が多いことも特徴のひとつといえるでしょう。
建設業界においても、陸上と水中では難易度に相当な差があるとされ、水中での作業をこなせる潜水士は好待遇で採用されやすいようです。
また勤務先や作業内容によっては、潜水士以外にも溶接や塗装、小型船舶操縦、クレーンといった各種免許や資格の取得が必要となることもあります。
そうした技術を要する業務に携わる場合には、基本給自体が高めに設定されていたり、取得した資格に応じて手当が加算されたりすることもあるなど、手当ても充実しています。
潜水士の現状と将来性・今後の見通し
ニーズが高く、活躍の場も今後広がっていくと考えられる
陸上とは環境が異なる水中での作業は誰にでもできることではないため、潜水士はさまざまな分野においてニーズが高い職業です。
すでに建設分野における溶接や切断、塗装などの作業、落下物の捜索、沈没船の引き揚げ、海洋調査、ダイビング指導、撮影などさまざまな業務を担っています。
潜水士の活躍のフィールドは、今後もさらに広がると考えられ、これから潜水士を目指したいと考えている人にとっても、チャンスはたくさんあるといえるでしょう。
この道でスキルアップしていくことで給料や待遇に跳ね返ってくるほか、独立して仕事を進める道も開けます。
一人前になるまでには長い時間がかかりますが、少しずつ技術を身につけていくことで請け負える仕事が増え、給料もアップしていきます。
潜水士の就職先・活躍の場
民間企業に就職するか、公務員として働くか
潜水士は大きく分けると民間企業に就職して働く人と、海上保安庁や海上自衛隊など「公務員」として働く人がいます。
海上保安庁の潜水士の主な仕事は、転覆した船内からの生存者救出など、海上における困難な環境下での救助活動を行うことで、そのほか犯罪捜査の一環として水面下から物を引き上げることもあります。
また、海上自衛隊では水中における軍事活動や機雷の掃討などを行う「潜水員」と呼ばれる人が活躍しています。
さらに警察組織には行方不明者の水中捜索や水中での証拠採集を行う潜水士が、消防組織には湖や河川での人命救助を行う潜水士がいます。
一方、民間企業では建築会社で土木建設作業を担ったり、漁業で海産物を獲ったり、大学などの研究機関で調査研究をしたりとさまざまな活躍の場があります。
潜水士の1日
1日に作業できる時間は限られている
潜水士が仕事を行える時間は、「作業内容」と「水深」によって変わってきます。
潜水士1人あたりの1日にできる作業時間が決められているため、作業効率を上げるために、潜水士の人数を増やしたり、効率的に作業ができるようスケジュールを組んだりと、各所で工夫をしています。
<海中の工事現場で働く潜水士の1日>
関連記事潜水士の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
潜水士のやりがい、楽しさ
潜水士にしかできない特別な仕事
潜水士は多岐にわたる業界で必要とされており、潜水士にしかできない仕事がたくさんあります。
潜水士は国家資格であり、また実際に現場で仕事をするには特殊な技能が求められるため、水中での建設作業や海難救助などは、誰もがすぐ簡単にできる仕事ではありません。
専門職として誇りを持って仕事に臨める点は、潜水士の大きなやりがいとなるでしょう。
また、水中に長時間潜るため、陸上とはまったく異なる環境となり、しっかりと安全対策をしておかなければ、命の危険にさらされることもあります。
過酷な環境下での作業を的確にこなし、安全に仕事を終えたときは、潜水士が最もやりがいを感じる瞬間です。
潜水士のつらいこと、大変なこと
厳しい訓練を乗り越えなくては一人前になれない
厳しい訓練を乗り越えて
潜水士として業務を遂行するためには、厳しい訓練をこなさなくてはなりません。
知識や技能がなければ、身体に悪影響を及ぼすだけでなく、最悪の場合は命まで落としてしまいます。
潜水士の免許を取ること自体はそこまでハードルが高くありませんが、安全に、確実に作業を進めていくためには、日ごろからしっかりと訓練をしておくことが不可欠なのです。
とくに海上保安庁では潜水士になるために非常に過酷な訓練が行われることはよく知られており、訓練期間中は体力的にも精神的にも追い詰められ、つらいと感じることもあるかもしれません。
しかし厳しい訓練を乗り越えられる人でなければ、とても現場で仕事をすることはできないと考えられているのです。
一人前になるまでに時間がかかる
潜水士は潜水技術があることに加え、建設や調査、救難など、目的に応じてさまざまな水中作業をこなすだけの専門的なスキルが必要とされます。
地上とは異なる制約の多い環境で作業を進めるのは思っている以上に大変なことです。
頭では理解していても、天候や潮流の流れなど予測できない部分もあり、思うように身体を動かせないということもあるでしょう。
誰にでもできる仕事ではないところは潜水士のやりがいといえますが、一朝一夕で一人前になれる仕事ではありません。
潜水士としてデビューしてからも、現場でたくさん経験を積んで実力を磨いていかなければならないところも、潜水士の大変な面だといえるでしょう。
潜水士に向いている人・適性
チームワークで仕事をするのが得意な人
潜水業務では、業務を素早く確実に進めるうえでも、安全性を確保するうえでも、複数の潜水士が一緒に潜り作業をすることが大半です。
そのため、チームワークが何よりも重要なポイントになり、お互いを信頼し合い、仲間と一緒に仕事を成功させようという気持ちが不可欠です。
仲間と協力して何かに取り組んでいくことが好きな人困っている人がいたら積極的に手を差し伸べたりできるような人が向いているでしょう。
また潜水士として一人前になるまでには長い時間がかかるため、目標に向かってあきらめることなく訓練を続け、自分自身を高めていこうとするような人は、潜水士に向いているといえるでしょう。
潜水士志望動機・目指すきっかけ
潜水士に興味を持ったきっかけは人それぞれ
潜水士の仕事に興味を持ったきっかけは、海のある環境で育ち、海に関わる仕事がしたいというものや、スキューバダイビングなどを体験して水中での仕事に興味を持ったというものが多いです。
また、もともと溶接などの資格を持っており、資格を生かしてさらに高度なスキルを身に付けたいと潜水士を目指す人もいます。
公務員の潜水士を目指す場合は、人命救助をしたいという志望動機が非常に多いです。
水難や震災などを経験して多くの人を救いたいと思うようになったというものや、テレビや映画などで救難業務の様子を見て憧れた、というものもあります。
潜水士は業務の幅が広く、どのような業務につきたいかは人によって異なるため、志望動機も人それぞれとなることが大半です。
潜水士の雇用形態・働き方
多くは起業の正社員や公務員として働く
潜水士の多くは民間企業の正社員、または公務員として働きます。
難しい仕事であることから、比較的良い労働条件を提示している企業が多いですが、体力を要すること、また場合によっては危険を伴う仕事であるだけになり手が不足しています。
潜水士の求人は年間を通じて多く出されており、就職することができれば安定した生活が保障されていると言っても過言ではないでしょう。
とくに体力のある若い世代の需要が高くなっており、同世代の一般的な求人よりも高額な年収を得られることも多いです。
また近年は災害対策など海洋建設業の分野で潜水士の需要が高まっており、未経験者や潜水士免許を持っていない人でも、潜水士候補として採用し育てていく会社も増えつつあります。
潜水士の勤務時間・休日・生活
民間企業と公務員では全く異なる
潜水士の勤務時間は、民間企業と公務員で異なります。
民間企業に勤める場合、基本的には日勤が一般的で、朝から夕までの決められた時間内で働きます。
職場や仕事内容によっては、シフト制としているところもありますが、1日の実働は7時間半〜8時間程度となっています。
海上保安庁や海上自衛隊の潜水士の場合は、24時間態勢の勤務や船での当直があったり、さらに海難事故で出動する際には朝も夜も関係なく勤務を命じられたりすることがあります。
もちろん、休日や休憩時間は確保されていますが、事件や事故が発生すると長時間の勤務になることも珍しくありません。
なお、潜水士は潜水深度や潜水時間など、事前に定められた計画に基づいて作業が進められるため、予定時間を超えて働くことはあまり多くありません。
潜水士の求人・就職状況・需要
求人は多く見られるため、なにをしたいのかが重点となる
潜水士は大きく分けると民間企業に就職して働く人と、海上保安庁や海上自衛隊など公務員として働く人がいます。
海洋建設業の需要が高いですが、海洋関連会社、ダイビングショップなどでも求人は比較的よく見られます。
公務員として働く場合も毎年採用がありますが、海上保安庁や自衛隊の場合、必ずしも潜水業務に就けるとは限らないため注意が必要です。
潜水士が活躍できるフィールドは多岐にわたるため、これから潜水士を目指したいと考えている人にとっても、まだまだチャンスはたくさんあるといえるでしょう。
一方で、魚介類を捕ること、海洋物の建設作業を行うこと、海洋生物の調査、救難など、何を仕事として潜るかという目標を定め、それを元に就職先を考えていく必要があります。
潜水士の転職状況・未経験採用
未経験から転職できることも少なくない
未経験でも潜水士になることはできますが、より有利な条件で就職したいのであれば、潜水士の免許を先に取っておくことが大切です。
各地で行われている講習会を受講したり、民間のダイビングスクールに通ったりすることなどでも試験に向けて勉強をすることができます。
ただし、潜水士を募集する各企業では、免許を持っていなくても潜水士候補となる人を採用するところが多いです。
入社後に必要な研修や訓練を受けて免許を取得することができるため、まったくの未経験者でもやる気さえあれば潜水士へと転職することは可能だといえるでしょう。
ただし水中で長時間過ごす仕事であるだけに、健康状態が良好であることや、体力に自信があることなどが求められます。