産業カウンセラーと臨床心理士の違い

産業カウンセラーと臨床心理士の仕事内容の違い

産業カウンセラーと関連性のある職業として、心の問題の専門家である「臨床心理士」が挙げられます。

しかし、両者の仕事内容には違いがあります。

臨床心理士が、学校でのいじめの問題からうつ病を患う高齢者のケアまで「心」の問題に幅広く取り組むのに対して、産業カウンセラーのフィールドはあくまでも「産業」を取り巻く場に限定されています。

企業の組織の中で起きている人間関係のトラブルやキャリア開発における課題など、経営者や従業員がぶつかるさまざまな壁に一緒に立ち向かうのが、産業カウンセラーの役割です。

その業務のひとつとして、働く人に対する「メンタルヘルス対策への援助」があり、産業カウンセラーは臨床心理士のように心の問題のケアこそが専門というわけではありません。

こうした違いがあるため、産業カウンセラーの場合は、カウンセリングの知識や技術に加えて、労働基準法や雇用の動向に関する知識を持っていることが求められます。

臨床心理士

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産業カウンセラーと臨床心理士のなる方法・資格の違い

産業カウンセラーと臨床心理士では、なるために必要な資格の種類や取得のためのプロセスにも大きな違いがあります。

現在、産業カウンセラーの資格は「一般社団法人 日本産業カウンセラー協会」が認定しています。

心理系の大学院で所定の科目を修得するか、20歳以上であれば学歴不問で受講できる「産業カウンセラー養成講座」のカリキュラムを受講することで受験資格を得られます。

一方で、臨床心理士の資格は、「公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会」が認定します。

資格試験受験のためには、心理学系の指定大学院や専門職大学院で2年間勉強し、カウンセリングの実習まで経験しなくてはなりません。

一般的にいうと、臨床心理士のほうが受験資格を取得するための条件が厳しく、挑戦できる人が限定される資格だと考えられています。

産業カウンセラーと臨床心理士の資格・必要なスキルの違い

臨床心理士になるには、大学卒業後、さらに指定大学院などへ進学しなくてはならないことから、取得ハードルはやや高めといえます。

もともと臨床心理士は、日本にある数ある心理系民間資格の中で、最も権威があるものと認識されていました。

現在では「公認心理師」という国家資格が生まれたことで、臨床心理士の資格の立ち位置はやや変わりましたが、それでも心理学の専門家とみなされることは確かです。

一方、産業カウンセラーの資格は、20歳以上であれば学歴不問で養成講座を受けて受験できるものであるため、意欲的でさえあれば、幅広い人に門戸が開かれています。

スキルに関しても、臨床心理士は産業現場以外に医療・保健、教育、福祉、司法など多岐にわたる領域で活躍することから、幅広い心理学の知識が必要です。

とくに「心の問題」に焦点を当てるため、人間の精神や発達などに関する知識も求められてきます。

産業カウンセラーの場合、産業領域に特化したカウンセリング業務に携わるため、労働基準法や雇用の動向をはじめ、働く人が抱えがちな問題や、いかに現場に即した知識を習得できるかが重要視されます。

もちろん、どちらもカウンセリングスキルが必要なことはいうまでもありません。

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産業カウンセラーと臨床心理士の学校・学費の違い

産業カウンセラーと臨床心理士は、なるために通うべき学校が異なります。

産業カウンセラーの場合、学歴不問で目指すことが可能です。

日本産業カウンセラー協会の養成講座を受講し、資格試験に合格すれば、産業カウンセラーの資格を取得できるからです。

よって、資格を取るだけであればどのような学校を出ていても問題ありません。

ただし、心理学の専門的な勉強をするため、あるいは将来的な就職の際に不利にならないために、大学や大学院に進む人も多いようです。

一方、臨床心理士を目指す場合には、大学卒業後に「指定大学院(1種・2種)」を修了するか、臨床心理士養成に関する「専門職大学院」へ進み、修了する必要があります。

これらの学校で心理学の専門的な学びを深めなければ、臨床心理士の試験は受験できません。

産業カウンセラーと臨床心理士の給料・待遇の違い

産業カウンセラーと臨床心理士は、どちらも勤務先や働き方などによって給料・待遇に違いが出ます。

したがって、一概にどちらのほうが給料や待遇がよい・悪い、といったことはいえません。

一般的には、臨床心理士のほうが資格の取得ハードルがやや高いことから、専門性があるとみなされて、よい給料・待遇で雇用されるケースもあるでしょう。

しかしながら、産業カウンセラーの肩書を付けつつ、心理学全般の幅広く高度な知識・カウンセリングスキルをもち、高い評価を受けて大きく稼いでいるような人もいます。

どちらも非常勤として複数の職場を掛け持ちしたり、独立して多方面で活躍したりする人も多く、個人の能力や経験、専門性によって給料が左右されやすい仕事です。

産業カウンセラーと臨床心理士はどっちがおすすめ?

簡単にいえば、「働く人」や「組織」に深く関わっていきたいのであれば、産業カウンセラーが向いているでしょう。

産業カウンセラーは、産業領域に特化して専門性を磨いていき、メンタルヘルスや社内コミュニケーションの健全化などに関わることができます。

ただし、臨床心理士も人によっては、産業領域でのカウンセリング業務に携わっています。

臨床心理士の場合、産業はもちろん、教育、福祉、医療など多様な領域で活躍できるため、産業カウンセラーよりも活躍の場が広いのは確かです。

ただし、どちらの職種も資格さえ持っていれば、必ずよい条件で働ける場が見つかるとは限りません。

資格取得の難易度は高めの臨床心理士ですら、常勤では雇用されず、非常勤の職場を掛け持ちしている人もいるほどです。

カウンセラーをとりまく状況はやや厳しいですから、まずは自身がどのような立場の人をサポートしていきたいのかを考えて、少しでも専門性を高める努力をしたほうがよいでしょう。

場合によっては、産業カウンセラー兼臨床心理士として活躍する道もあり得ます。