歴史学者・歴史研究者になるには? 仕事内容や年収、必要な学歴や資格についても解説

「歴史学者」とは

歴史学者・歴史研究者になるには? 仕事内容や年収、必要な学歴や資格についても解説

歴史を後世に残すために、歴史を研究し論文や著書として発表する

歴史学者とは、歴史を後世に残すために、残された資料を基に文章にしたり、歴史を研究したりしてその成果を論文や著書として発表する人のことです。

歴史学とは、過去の史料をもとに史実を検証し、歴史上の事実やそれらに関連する研究を行う学問です。

多くの歴史学者は、歴史上すべての事柄を調べるわけではなく、自身の関心や専門性に従って時代や史実を設定し、それに合った調査や研究を行います。

主な分野としては、日本史、東洋史、西洋史、考古学などがあり、それぞれが政治や経済、芸術文化、民俗などに分かれ、専門的な研究をしています。

歴史学者はそれぞれ歴史をどう見るか?という「歴史観」を持っており、その違いによって、同じ事実でも解釈が異なるのが特徴です。

歴史学者になるには、大学の史学科などに進学して修士号・博士号を取得し、その後大学等に所属し研究を続ける方法が一般的です。

また、教師などの仕事に就きながら、個人で郷土や地域の歴史について調べる「郷土史家」なども存在します。

「歴史学者」の仕事紹介

歴史学者の仕事内容

歴史に関する研究をして、論文を発表する

歴史学者とは、大学や研究機関などで、歴史についての研究を行う人のことをいいます。

歴史学者は日本史、東洋史、西洋史、考古学などそれぞれ対象とする時代や国をもっており、さらに政治制度・経済活動・芸術文化・信仰宗教などと、研究の対象はさらに細分化されます。

主に文書や残されたものから過去の事実を調べ、論文や著書として発表することを仕事とします。

それだけではなく、先人たちがどのような解釈をしていたか、他の学者はどのような見方をしているかなど、さまざまな研究を行っていきます。

史料の読み方はもちろん、どのような視点からアプローチするか、どのように読み解くかは人それぞれであり、同じ事実でも学者によって見方が異なるのが歴史学の特徴です。

歴史学は、過去におこったすべての事柄が研究対象となるため、研究の仕方やジャンルは実にさまざまです。

また、政治や経済をはじめ、ファッションやトレンドなどの民俗、演劇や絵画などの芸術など、現代の私たちの生活に通じるものも多くあります。

歴史学者になるには

大学に所属して研究を続ける形が一般的

歴史学者を目指す際は、大学で歴史学を専門的に学ぶことからはじまります。

その後、博物館など歴史に関わる施設に就職したり、研究室に残って研究を続けたりするのが一般的です。

歴史学を専門に学びたい場合は、文学部の史学科や歴史学科などへ進学するとよいでしょう。

歴史学は非常に幅広いジャンルを扱うため、どの国のどの時代の何を専門に研究するか、あらかじめ決めておくことが大切です。

専門にしたい分野が決まっていれば、それを専門に研究する研究室や教授を調べて進学するのが歴史学者への近道です。

ただ、大学以外の就職先としては、博物館など教育施設の学芸員や職員がありますが、求人はあまり多くありません。

博物館で働く場合は、大学在学中には学芸員資格を取得する必要があります。

資格は大学で決められた学芸員課程の単位を修得し、文部科学省で行う資格認定試験に合格すると取得できます。

こうした職種に就けなかった場合、教師として歴史を教えながら余暇で研究をしたり、自治体の職員として歴史的文化財の仕事に関わったりする方法もあります。

歴史の知識を生かせる職業はさまざまありますが、歴史学者として身をたてることは非常に難しい道のりであることを覚悟しておきましょう。

歴史学者の学校・学費

大学で歴史を専攻する

歴史学者として働くうえで、絶対に必要な学歴はありません。

ただし、本格的に歴史を研究したいのであれば、まずは歴史学部、史学科などがある大学で学ぶのが一般的です。

すでに専門とした時代や地域、事柄が決まっているのであれば、その分野に強い研究室や教授がいる大学を選ぶとよいでしょう。

社会学科や文化財学科などで歴史を学べることがあるため、学部・学科名だけにとらわれずに、幅広い視野で進路を選択するとよいでしょう。

ただし、大学だけでは歴史学者になるまでの知識は深められないため、大学院へ進学し研究を重ねる人が大半です。

修士号や博士号を取得し、実績を残さなければ、大学で研究を続けることはできません。

歴史学者の資格・試験の難易度

学芸員になるには資格が必要

歴史学者になるために特別な資格は必要ありません。

ただし、博物館など特定の場所で仕事をする場合は資格が求められることもあります。

博物館に勤務する際には、国家資格である学芸員資格が必要です。

国が定める博物館に関する科目を置く大学や短大で、学芸員の課程を履修し、卒業すると資格を取得することができます。

歴史を専門とする大学は課程を置いていることが多いため、あらかじめ調べておくとよいでしょう。

このほか、試験認定、論文や業績によって判断される無試験認定などの方法で取得が可能です。

また、大学や学部によっては、社会や歴史の教員免許を取得できるところもあります。

歴史学者の給料・年収

どこでどのような働き方をするかによって変わる

歴史学者の給料は、どこでどのような働き方をするかによって違いがあります。

大学で歴史について研究する場合も、立場によって大きな差があります。

国の調査によると、令和5年の大学教授の平均年収は約1075万円、平均月収は約67万円というデータがありますが、これは経験を積んだ人のみです。

大学で助教や講師となる場合、初任給は28万円~35万円前後、ポスドクや研究員の場合は、年収200~300万円ほどにとどまる場合もあります。

さらに研究のために自腹を切ることもあるため、裕福な生活が送れるのは一握りといえるでしょう。

教育施設等で学芸員となる場合、月給15万〜20万、年収250万〜400万円ほどがボリュームゾーンです。

公立施設に就職し、公務員の身分となれば安定した給料が得られますが、学芸員などの専門職は非常に競争率が高いため、就くことができるのはごく一部の人に限られるでしょう。

一方で、契約職員など非正規の人も多いのが現状で、不安定な仕事を続けながら研究に励まなくてはならない人もいます。

働く場所や働き方によっては、時間だけでなく金銭面でも両立が難しい場合もあるということを覚悟しておきましょう。

実際に研究を続けるために、塾の講師や発掘のアルバイトなど別の仕事をしながら金銭を工面している人もいます。

歴史学者の現状と将来性・今後の見通し

活躍のチャンスが多い分野

歴史はまだ解明されていない事象が多い分野です。

さまざまな事象には毎年のように新説が登場し、最新の機器を使うことで過去の事象が明らかになることも非常に多いです。

最新の研究により、教科書に掲載されていたような歴史的な事実が塗り替えられることも珍しくありません。

歴史の研究対象は多岐に渡るため、これから歴史学を学んだり研究したりする人にも、大いに挑戦し甲斐のある分野だといえるでしょう。

ただし、不景気で教育や研究に関する予算が削減され、歴史学者の需要が減っていることも事実です。

歴史的な事実を発見できるという醍醐味がある一方で、結果を出せなければ不安定な立場となることを覚悟する必要があります。

歴史学者の就職先・活躍の場

全国の大学や博物館など

歴史学者の就職先は、主に大学や博物館 などです。

歴史学者になる場合は、大学から大学院修士課程に進み、さらに博士課程を経て博士号を取得し、そのまま研究室に所属するのが一般的です。

大学以外には、博物館や歴史館などの教育施設、歴史専門の出版社、研究機関の史料室などさまざまな活躍の場があります。

国内で歴史学を専門としている大学や研究機関は少ないため、就職は狭き門 となります。

調査対象となる現地で研究を行うため、海外へ留学したり、活動の場をうつしたりする人も多いです。

また教師として歴史を教えながら、休日を利用して、個人的に歴史の勉強や研究活動に勤しむ人も少なくありません。

歴史学者の1日

授業の合間に論文の執筆をする

歴史学者の1日は、働き方によって違いがありますが、ここでは大学で研究をする1日の例を紹介します。

8:30 出勤
研究室に出勤し、授業内容の確認や資料の準備を行います。
9:00 講義
歴史の授業を行い、専門分野についてわかりやすく伝えます。
10:40 論文の執筆
授業の合間は研究室で論文を執筆します。
必要な史料を読み込んだり、研究に必要な事務作業を行ったりもします。
12:00 昼食
12:30 取材対応
専門分野についての取材依頼があったため対応します。
歴史の魅力を伝えるのも歴史学者の仕事です。
14:00 授業準備
14:40 講義
歴史を専攻する学生が集まるため、指導にも熱が入ります。
16:30 学生の指導
学生の研究内容についてアドバイスをしたり、卒業を控える学生には論文の指導をしたりします。
17:30 会議に出席
大学の教授会や運営会議などは授業後に行われます。
19:00 帰宅
論文の執筆中などは、深夜まで研究室にのこり研究することもあります。

歴史学者のやりがい、楽しさ

歴史を解き明かす楽しさ

歴史学者の多くは「歴史を深く知りたい」「過去の出来事や文化を解き明かしたい」という知識欲を持った人ばかりです。

歴史学者は、自分の好きな歴史を紐解く楽しさに魅力を感じています。

歴史上にはまだ解明されていない謎も多く、研究対象は国内だけでなく世界にも広がっています。

自分自身が興味関心を持つ分野をとことん突き詰めていけること、そして誰も知らなかった事実を解き明かすことは、この仕事の大きなやりがいでしょう。

さらに、自分が発見したことを発表したり、身に付けた知識を多くの人に知ってもらったりすることで、歴史の魅力を伝えることもやりがいの一つです。

歴史学者のつらいこと、大変なこと

成果を上げられないつらさ

歴史学は既にある史料やものを読み解いていくため、先行研究が進んでいることも多く、思うような成果をあげられないことも多いです。

世界を揺るがすような歴史的な発見がされることは、現代では滅多にありません。

限られたなかで研究を進めたり、結果を残したりするためには、深い知識や実力が必要で、研究者となってからも常に勉強をし続ける必要があります。

また歴史学は日本ではなじみ深いものではなく、歴史を学んだからといって優遇されることはほとんどありません。

研究が続けられる就職先も限られているため、思うように研究できない、成果を上げられないという理由で歴史学者の道をあきらめてしまう人も多いです。

歴史学者に向いている人・適性

歴史や過去の出来事に興味関心を持っている人

歴史学者になる上では、何よりも歴史に関する興味関心が欠かせません。

歴史には、未だ改名されていな事実が多いため、未知のものを知りたいという知的好奇心や新しい研究にチャレンジしたいという好奇心が不可欠です。

ただし、研究を進める上では自分自身で手掛かりを見つけたり調査をしたりしなくてはならず、結果がすぐに出ることはほとんどありません。

好きなものにとことん熱中できる人、こつこつとした日々の研究が苦にならないという人が向いているでしょう。

また研究対象となる国や時代、事柄が非常に幅広いことから、歴史だけでなくさまざまな事柄に造詣が深い、知識欲があるという人にも向いています。

歴史学者志望動機・目指すきっかけ

歴史に興味を持ったきっかけはさまざま

歴史に興味を持った背景は人によってさまざまです。

学校で歴史を習って興味関心を持った人、特定の好きな時代や人物などがある人などが多くなっています。

また、歴史や歴史上の人物をテーマにした漫画や映画などのメディアから影響を受けた人もいます。

歴史は研究対象が幅広いため、文学や考古学、古典や伝統文化などを勉強しているうちに、本格的に歴史を研究したくなったという人も少なくありません。

歴史学者を目指したきっかけは人それぞれですが、おのおのがそれぞれの研究対象と向き合い、未だ謎である歴史を紐解きたいと考える目標は同じです。

歴史学者の雇用形態・働き方

歴史学者の活躍の場は少ない

歴史学者として生計をたてられるだけの収入を得られる働き方は非常に限られます。

まず考えられるのは大学で研究を続け教授を目指す道ですが、正規採用されるのは成果を出すことができたごく一部の人のみで、多くは不安定な身分で研究を続けています。

また、博物館などの施設で働く場合や研究機関などに所属する場合も、求人が非常に少ないのが現状です。

こうした狭き門を突破するには、実力だけでなく、運やコネクションも必要だといえるでしょう。

そのため、非正規やアルバイトなどの立場で研究を続ける人や、本業を持ちながら趣味で研究をする人、学校の教師となる人なども少なくありません。

歴史学者の勤務時間・休日・生活

就職先によって働き方は異なる

歴史学者として大学に勤務する場合、講義や会議などの予定に合わせて働くことになります。

勤務時間は朝から夕方までとされているのが一般的ですが、決まった予定がなければ自由に調整することができ、好きな時間に研究をすることができます。

また、論文の執筆や学会などの予定がある場合は、深夜まで研究に没頭することも可能です。

一方、博物館や研究施設などで働いている場合は、一般的な会社員と同様の働き方です。

博物館の場合は、土日祝日も開館しているところが多いため、平日が休みとなることが多く、休日は就職先によって大きく変わるといえるでしょう。

有名な歴史学者

各分野で活躍する歴史学者

有名な歴史学者としては、まず日本中世史の第一人者である網野善彦が挙げられます。

これまで農民中心だった歴史学を非農民の観点から紐解き『「日本」とは何か』などの著書も大ヒットしました。

網野の歴史研究や歴史観は「網野史学」と呼ばれ、後世の歴史学にも大きな影響を及ぼした存在です。

日本近現代政治史が専門の伊藤隆も知られています。

昭和戦前期政治史研究の重鎮と呼ばれ、史学界に多くの問題提起を行いました。

国際日本文化研究センター准教授の磯田道史は日本近世・近代史・日本社会経済史を専門とする歴史学者です。
『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』『天災から日本史を読みなおす』などの著書で数々の賞を受賞しています。

歴史家と歴史学者の違い

明確な違いはない

かつて歴史がまだ学問として確立されていないころ、歴史を学んだり研究したりする人はすべて「歴史家」と呼ばれていました。

近代になり歴史が学問として認められるようになると「歴史学者」という呼び方が一般的になりました。

これは、歴史を体系的に学べるようになったことや、大学等で歴史を研究する学者が増えてきたことが影響しています。

ただし、「歴史家」と「歴史学者」の明確な区別はありません。

一般的には、大学の教員など歴史学を本業としている人を「歴史学者」、それ以外を「歴史家」と呼ぶ傾向にあり、趣味で郷土史を研究する郷土史家や歴史に詳しい人を「歴史家」とする場合もあります。