介護職員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「介護職員」とは
介護施設や介護事業所に勤務し、要介護者の日常生活を支援する。
介護職員は、特別養護老人ホームや老人保健施設、デイサービスなどの施設に勤務し、高齢者や身体に障害を抱える人の支援・サポートを行う仕事です。
訪問介護といって、介護サービス利用者の自宅に訪れ、身体介護や生活援助を行う人もいます。
介護関連の資格は「介護職員初任者研修」「介護支援専門員」「介護福祉士」をはじめ多種多様です。
介護保険施設などで介護に直接携わる職員が、上記で挙げたような福祉あるいは医療系の特定の資格を持っていない場合、「認知症介護基礎研修」を受けることが義務付けられています(2024年4月1日~)。
高齢化が進むなか、介護職員の需要は年々増している一方、まだ人手不足の施設が多いのが現状です。
介護業界は、他業界に比べると給料・待遇が恵まれていないといわれることもありますが、経験を積んで上位資格を取得することで、安定した条件で働けるチャンスが広がります。
「介護職員」の仕事紹介
介護職員の仕事内容
要介護者の「身体介護」や「生活支援」を行う
介護職員とは、高齢者や身体に障害を抱える人などの日常生活上の支援・サポートを行う仕事に就く人のことをいいます。
介護関連の資格は「介護職員初任者研修」をはじめ種類が多いですが、介護施設や介護サービス事業者で働く人を総称して「介護職員」と呼ぶことも多いです。
介護職員は、介護の基本的な知識・技術をもち、「身体介護」や「生活支援」に携わります。
保有資格によって携われる業務の範囲は異なるものの、特別養護老人ホームのような入居型施設で働く場合には、食事や入浴のサポートなどを実施し、高齢者を間近で支えます。
デイサービスなど非入居型施設で働く場合は、自宅から施設までの送迎、レクリエーションなどを実施します。
また高齢者の自宅へ訪問介護を行い、身の回りのお世話をすることもあります。
介護職員になるには
介護系の専門的な資格を取得すると業務で役立つ
介護職員になるひとつの方法として、介護に関する資格を取得することが挙げられます。
かつては無資格でも介護施設などで働くことはできましたが、2024年4月1日からは、介護に直接携わる職員のうち、医療や福祉関係の資格を有さない無資格者に対しては「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられています。
(※ただし、卒業証明書により卒業が証明できる福祉系高校の卒業者など、受講が免除されるケースもあります)
要介護者に対してより十分な支援を行いたい場合は、できるだけ医療・福祉系の専門的な知識・技術を習得したほうがよいでしょう。
なお、訪問介護を行うには「介護福祉士」の国家資格取得か「介護職員初任者研修」の修了が条件となります。
また「介護福祉士実務者研修」を修了していると、実務経験は関係なく、介護事業者のサービス提供責任者になることが可能です。
まずは未経験から介護の現場に入り、働きながらこれらの資格取得を目指し、ステップアップしていく方法もあります。
介護職員の学校・学費
介護の勉強ができる学校の種類はさまざま
介護について学べる学校やスクールは多くあるため、取得を目指したい資格を考えてから進学先を決めるのもよいでしょう。
たとえば「介護福祉士」の国家資格取得を目指す場合には、専門学校・短期大学・大学などの定められた養成機関に通い、所定の単位を修めなくてはなりません。
私立の4年制大学では平均400万円程度の学費がかかりますが、福祉や介護に関する幅広い勉強ができますし、介護施設などへの就職・転職時に優遇されることがあります。
福祉系の学校でなくても、介護職員は目指せます。
「介護職員初任者研修」は、各都道府県が指定した養成機関で学べば修了でき、通学制の学校・スクールだけでなく、通信講座も用意されています。
費用は10万円以内が一般的で、いち早く実務に必要な知識・技術を身につけ、現場に出たい人にはおすすめです。
介護職員の資格・試験の難易度
資格ごとに難易度が異なる
介護職員には、さまざまな種類の資格があります。
なかでも比較的とっつきやすく人気があるのが「介護職員初任者研修」です。
この資格は、指定のスクールや講座で学ぶことで比較的短期間で取得が目指せます。
社会人になってから介護業界に入ろうとする場合、まずはこの資格を足掛かりにする人も多いです。
その上位資格としては「介護福祉士実務者研修」があり、こちらを取って3年以上の実務経験を積めば、国家資格「介護福祉士」の受験資格が得られます。
あるいは介護業界で5年~10年以上の実務経験を積み、「ケアマネジャー」資格取得を目指す人もいます。
より上位の資格を取得することで、さらなるキャリアアップも目指せるため、挑戦する人が増えています。
介護職員の給料・年収
給与水準はやや低めだが手当次第で収入アップも
高齢化社会を迎えている日本では、介護職員の需要が年々増しているものの、給料や待遇面はまだ十分ではないといわれることが多いです。
介護職員の給料は勤務先や保有資格、役職などによっても異なりますが、250万円~400万円ほどが平均的とされています。
また、アルバイト・パートなど非正規雇用で働く人もおり、その場合はさらに年収が低くなる場合が多いと考えられます。
全体としては、生活援助よりも身体介護を行う介護職員の給料が高めで、また夜勤のある施設で勤務する場合は、夜勤手当が付くため収入は上がりやすいです。
難易度の高い介護系資格を取得することで、資格手当が上乗せされる施設も多いです。
介護職員の平均年収・月収・ボーナス
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、介護職員の平均年収は、44.4歳で371万円ほどとなっています。
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
介護職員の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
介護職員の年収は規模が大きくなると若干増えるようです。
10〜99人規模の事業所に勤める介護職員の年収は352万円、100〜999人規模は380万円、1,000人以上規模は383万円、10人以上規模平均は371万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「介護職員(医療・福祉施設等)」で生活支援員など他職業を含むデータです。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
介護職員の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
介護職員の年収は、年齢が上がってもあまり変わらない傾向にあります。最も年収が高い世代は、40~44歳の406万円です。
全年代の平均年収は371万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「介護職員(医療・福祉施設等)」で生活支援員など他職業を含むデータです。
介護職員の現状と将来性・今後の見通し
専門的な知識・技術を備えれば将来性は十分
現代では高齢者が増える一方、核家族化が進み、以前のように家の中だけで介護をするのが難しくなっています。
介護ニーズの拡大に応じて民間介護事業者も増えており、介護職員の活躍の場は日本全国多岐にわたります。
現状、介護職員はまだまだ人手不足であるため、経験・キャリア関係なく働き口を見つけやすいです。
とくに専門的な知識・技術を備えている職員は、多くの介護サービス事業者で必要とされています。
ただし介護業界の給与水準や待遇を考えると、難易度の高い資格を取得して少しでも条件のよい事業所への就職・転職を目指すほうが、仕事を長く働き続けやすいでしょう。
介護職員の就職先・活躍の場
入居型施設から非入居型施設まで多様な活躍の場が
介護職員の就職先・活躍の場は多岐にわたります。
入居型施設(施設サービス)だと、公的なものでは特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、民間のものでは介護付き有料老人ホームや住宅型老人ホームなどがあります。
また、非入居型施設(居宅サービス)としては、通所介護(デイサービス)、訪問介護、通所リハビリテーション(デイケア)、短期入所生活介護(ショートステイ)などがあります。
勤務先によって、介護職員に求められるスキル・資格などには違いがあり、業務内容も少しずつ異なりますが、日常生活に不便を抱える人の支援・援助をすることは同じです。
介護職員は他の専門スタッフ(医師、看護師、リハビリ職など)とも連携して、利用者を支えていきます。
介護職員の1日
勤務先によって1日の過ごし方は異なる
介護職員はそれぞれの勤務先で、サービス利用者に対して身体介護や生活支援を行っています。
24時間体制で利用者をサポートする施設では、他の職員とも協力しながら交替で働きます。
以下では、施設で勤務する介護職員のある1日の過ごし方の例を紹介します。
<老人保健施設に勤務する介護職員の1日(日勤)>
介護職員のやりがい、楽しさ
介護を必要とする人を自分の力で助けられる喜び
介護職員の大きなやりがいは、高齢者や障害のある人と触れ合い、自らの手で支えになることができることだといえるでしょう。
介護を必要とする人は、日本全国に大勢います。
介護サービスの利用者を助けることで相手に喜んでもらえる機会も多く、実際に「ありがとう」と笑顔を見せてくれたり、その家族からもねぎらいの言葉をかけてもらったりしたときの充実感は非常に大きなものです。
また、より現実的な点でみていくと、介護職員は人手不足であるため求人数が多く、自らの希望に沿う勤務先を探しやすいのも魅力といえるでしょう。
経験を積んでスキルアップすることによって、より多くの人を支えられるようになります。
介護職員のつらいこと、大変なこと
心身ともにハードな仕事
介護職員の仕事は、いざやってみると想像以上にハードだと感じる人が多いです。
まず挙げられるのは、職場によっては勤務時間が不規則なことでしょう。
24時間体制で動く施設では夜勤が入りますし、休みの日も固定されていないケースが多いです。
身体介護をする際には、体の大きな利用者を支えたり、入浴介護や車いすとベッドの間を移動させたりなどで、かなり体力を要します。
加えて、排泄の介助など決してきれいとはいえない仕事も含まれるため、この仕事に対するやりがいと使命感を自分で見出せないと、ただ苦しいだけで終わってしまう場合があります。
介護職員に向いている人・適性
利用者や周囲の人に対する思いやりの心
介護職員にとって最も大切なことのひとつが、思いやりの心です。
介護の知識・技術はいくらでも学べますが、実際の介助相手となる利用者に対する気遣いや温かな心は、マニュアルや教科書だけでは身につかないところがあります。
介護は決して楽な仕事ではないため、自分が介護をやる理由を明確にし、利用者のために何ができるのかを真摯に考え続けなくてはなりません。
また、介護職員はサービス利用者の家族や、他の職員との関わりも多いです。
本質的に人が好きで、人のために力を発揮することに喜びとやりがいを感じられる人に向いている仕事といえます。
介護職員志望動機・目指すきっかけ
手に職をつけて長く働ける仕事がしたい
介護職員を志すきっかけとして多いのは、「家族など身近な人の介護経験がある」「手に職をつけたい」「社会や人の役に立つ仕事がしたい」などです。
社会の高齢化にともなって介護職の需要は増しているため、資格を生かしつつどこでも働けるスキルを身につけたい、長く働ける仕事がしたいなどの理由で、介護の世界に飛び込む人もいます。
介護職員はたしかに大きなニーズがある仕事ですが、人と深く向き合うため、人間性が重視されます。
採用試験などで志望動機を伝えるときには、介護に対する熱意や意欲、誠実さなどが相手に十分に伝わるよう留意しましょう。
介護職員の雇用形態・働き方
非正規雇用で働く職員も多数
介護職員の雇用形態としては、正社員や正職員などの正規雇用のほか、アルバイト・パートや派遣などの非正規雇用があります。
介護業界では非正規雇用の割合がやや大きいとされ、介護事業所によっては正規職員よりも非正規職員のほうが多いケースが見られます。
とくに訪問介護サービスでは短時間だけのサービスのニーズも大きいことから、非正規のパートとしての求人が多いです。
見方を変えると、介護職員は自らの経験やキャリア、希望のライフスタイルなどに応じて、多様な働き方の選択肢があります。
正規職員のほうが待遇面では恵まれていることが多いですが、非正規職員であれば夜勤が免除されるなど、働き方によって異なるメリット・デメリットがあります。
介護職員の勤務時間・休日・生活
勤務先によっては不規則な勤務体系となる
介護職員の勤務時間は、勤務先施設や提供する介護サービスの種類などによって異なります。
24時間体制で入居者のサポートをする施設の場合、日勤のほか、夜勤(当直)が入ることもあり、複数の職員が交替で働きます。
休日は曜日固定の場合もありますが、不規則になる場合も多いです。
訪問介護やデイサービスを担当する場合には、基本的に日勤のみの勤務体系です。
基本的には事前に決められた時間内で働けますが、人手不足の職場では残業が増えたり、なかなか自由に休みがとれなかったりして、激務と感じている職員も少なくありません。
介護職員の求人・就職状況・需要
日本全国で多数の求人が出ている
介護職員の求人数は、施設や介護サービスの種類を問わず多い部類といえます。
介護サービス利用希望者数に対し、まだまだ介護職員は足りていないのが現状で、日本全国で活躍できるチャンスがあります。
ただし、少しずつ人員が足りてくるにしたがって、より専門的な知識・技術をもつ人材が優遇されてくるかもしれません。
介護系の資格を取得し、客観的にスキルを証明できる人のほうが就職は有利になるでしょう。
待遇面でも難しい資格を取得している人が優遇されることは多いようです。
介護職員の転職状況・未経験採用
未経験からでも転職できるチャンスは大きい
介護職員は、異業種からの転職や、未経験からでも目指せる職業です。
ただ、やはり最低限の介護の知識・技術は身につけておくほうが有利になるため、社会人経験者はまず「介護職員初任者研修」を修了するのが一般的です。
「介護職員初任者研修」を受けていれば訪問介護ができますし、転職先の選択肢も広がります。
その後、介護の現場に入って実務経験を積めば、将来的には介護福祉士の国家資格を取得することも可能です。
一方、無資格者でも介護職員として採用している施設はあるため、先に現場に入り、働きながら資格取得を目指していく道もあります。