JETRO職員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「JETRO職員」とは
独立行政法人JETROに勤務する人。日本経済のグローバル化と発展を支援する。
「JETRO」は、正式には「独立行政法人日本貿易振興機構」といい、日本企業の海外展開支援、対日投資・外国企業誘致の促進を軸に、日本経済のグローバル化と発展を支援する役割を担う機構です。
JETROで働く人をJETRO職員といい、全国各地の営業所、もしくは世界70ヵ所以上の海外事務所にて、日本の産業と海外市場や外国企業を結びつける仕事をしています。
JETRO職員になるには、新卒採用試験か社会人採用試験を経て、JETROに採用される必要があります。
新卒採用は毎年30名ほど、社会人採用は流動的ですが毎年数名の採用しかありません。
JETROは、税金を資金として活動する独立行政法人の立場として、ボーダーレス化が進む日本経済と世界市場を結びつける重要な使命を背負っています。
今後もJETRO職員の重要性は増していくと考えられますが、複雑化するニーズに応えるため、職員には高度な専門知識やスキルが求められています。
「JETRO職員」の仕事紹介
JETRO職員の仕事内容
民間とは異なる立場で、日本経済のグローバル化と発展を支援する
JETROの正式名称は「独立行政法人日本貿易振興機構(Japan External Trade Organization)」といい、政府の政策や独自の事業を通して、日本経済と国際経済を結びつける役割を担う機構です。
独立行政法人とは、中央省庁から独立した法人組織で、いわゆる民間の株式会社とは異なる、国との関わり合いが深い立場です。
JETROで働く人をJETRO職員といい、その業務内容は多岐にわたりますが、代表的なものが「日本企業の海外展開支援」です。
たとえば、中小規模の製造メーカーは、ビジネスを海外に展開したいけれども、十分なノウハウやコネクションがないというケースがめずらしくありません。
そのような企業に対し、商談会や海外展示会の開催を通じて販路開拓をサポートしたり、海外進出に伴う諸手続きのアドバイスを行ったりすることが、JETRO職員の仕事です。
JETRO職員の職種の種類
上記のような日本企業の海外展開支援のほかにも、JETROでは、外国企業を誘致して海外からの投資を促進したり、農林水産物を海外にPRしたりと、日本の経済をグローバル化させるための幅広い業務を手掛けています。
JETRO職員の職種は大きく「総合職」と「一般職」に分かれ、総合職は、国内外のフィールドでさまざまな支援事業を主体となって手掛けていき、一般職はその総合職を事務の面から支えます。
このほか、大学院で博士号を得た人が就く「研究職」もあり、研究職はアジア経済研究所にて、おもに南アジア、南アジアの経済・市場・地域研究と調査を行います。
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JETRO職員になるには
JETROの職員採用試験を受け、採用を目指す
JETRO職員になるには、JETROが実施する職員採用試験を受けて採用される必要があります。
JETROの採用試験は、大きく分けると「新卒採用」と「社会人採用」があります。
また、職種は「総合職」と「一般職」で募集が行われていますが、一般職は募集されない時期もあります。
新卒採用の総合職は、4年制大学および大学院を新規に卒業・修了する人を対象としており、学部・学科は不問です。
また、職務経験のある人でも、職務経験が3年未満であれば応募可能です。(2022年度採用の場合)
JETRO職員に求められることは?
JETROへの入構後は、ビジネスマナーなどの新人研修が3週間にわたって実施されるほか、基礎研修、業務実地研修、能力開発講座など、多種多様な教育を受けて、JETRO職員に必要な能力を養います。
そのため、学生時代にどのような勉強をしてきた人でも採用される可能性はありますが、グローバルビジネスに携わっていくため、国際的な感覚は必須です。
英語力もできるだけ高めておくに越したことはありません。
また、総合職の場合は日本全国や世界中で働く可能性があるため、知らない場所でも積極的に行動できる姿勢やバイタリティなども必要です。
JETRO職員の学校・学費
国際経験や国際感覚を備えておくと有利に
JETROの採用試験に応募するには、総合職については4年制大学卒業以上、一般職は短大卒以上の学歴が必要です。
学部・学科に指定はありませんが、業務と関連性の高い経済学部や商学部、法学部、外国語学部、国際関係学部などで学びを深めておくと、やや有利かもしれません。
職務の専門性が高いことから、近年では大学院まで進学した人の採用人数も増加傾向にあります。
また、留学や海外ボランティアなどで、国際経験を積んでおくと有力なアピール材料になるでしょう。
難関大学・大学院の志望者も多数
JETRO職員の出身大学は、東京大学や京都大学、一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学など、国内の難関といわれる国公立・私立大学が多いことが特徴です。
また、海外の大学出身者もいますし、国内でも東京外国語大学や国際基督教大学など、国際感覚の高い大学の出身者も目立ちます。
もちろん、学校名だけで採用が決まるわけではなく、個人の努力次第でどのような大学からでも採用される可能性はあります。
しかし、JETROには「JETROで成し遂げたいことがある」という意欲的な学生が多く志望することから、十分に勉強に励み、有意義な学生生活を送ることが非常に重要になってきます。
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JETRO職員の資格・試験の難易度
資格は必要ないが、学生時代からの入念な準備が必要
JETROの採用倍率は公表されていませんが、一説には100倍前後といわれています。
非常に高倍率ですが、同じ国際協力を行う独立行政法人のJICAは300倍超という話もあるため、相対的に見れば、まだ就職しやすいといえるかもしれません。
しかし、合格者の経歴を見ると、東京大学や京都大学、慶応義塾大学など、名のある有名大学出身者が目立つほか、帰国子女だったり、海外留学経験があったりする人も多いようです。
膨大な志願者と争って数少ない内定を勝ち取るには、学生時代をどう過ごすかが非常に重要です。
JETRO職員の応募資格として資格要件は掲げられていませんが、英語関連の資格の勉強を続けて、基礎的な語学力をアピールできるように準備しておくのは有用でしょう。
JETRO職員の給料・年収
公務員に似たような明確な給与体系
JETROの事業は公共性が高く、また「準政府機関」という扱いであるため、給与体系は一般に公開されるなど、公務員のものに似ています。
人事評価もありますが、基本的には年功序列で棒給表通りに昇級していき、大卒で入構した場合は30代前半で年収500万円前後となります。
決して少ない年収ではないものの、500万円という数字は残業手当などをすべて合算したものであり、業務の専門性などを勘案すると十分とはいえないかもしれません。
ただし、勤務先の安定性や、公務員のように休暇制度や福利厚生が充実していることなどは、JETROならではの魅力のひとつでしょう。
海外駐在時や国内での転勤時には手当が支給される
JETRO職員としてキャリアを積んでいくと、海外事務所への赴任を命じられる機会が出てきます。
海外駐在時には、本俸や国内勤務でも受け取ることのできる諸手当のほか、海外給与と呼ばれる手当が加算されます。
こうしたこともあって、30代前半で年収が800万円前後に達するケースもあるといわれています。
なお、日本国内の転勤の際にも独自の手当が支給されるため、こうしたことを踏まえると、ものすごく高収入にはならなくても、それなりにゆとりのある生活を送れる可能性は高いといえるでしょう。
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JETRO職員の現状と将来性・今後の見通し
グローバル社会においてJETROは重要な役割を担う
JETROは「独立行政法人」として税金を資金源に活動している組織です。
日本の国内市場が縮小傾向にある昨今、中小規模であっても海外展開を目指す企業が増加しており、国内企業と海外をつなげるJETROの存在意義は増しています。
日本政府はグローバル化の推進に注力しているため、JETROの事業予算も当面は安定状態を保つでしょう。
しかし、最近では、国際ビジネスの推進や事業のグローバル化を専門とした民間のコンサルタント会社も出現してきています。
民間との役割を明確にし、JETROの必要性を広く理解してもらうためにも、今後はさらに専門性や経験値の高い学生や、企業経験の豊富な人材を採用するケースが増えていくでしょう。
一方、JETROにおける付随業務が急増していることから、正社員に限らず、派遣社員や非正規雇用の職員を補充するケースも見られます。
さまざまな働き方の可能性があるため、JETROを目指す人は、常に最新のJETROの動きを追っておくとよいでしょう。
JETRO職員の就職先・活躍の場
総合職は日本各地や世界中で活躍する可能性がある
JETROは、東京の本部や大阪本部をはじめ、日本のほとんどの都道府県に拠点を置く組織です。
また、世界の55ヵ国、76ヵ所に事務所を展開しています(2021年4月1日現在)。
全従業員数のうち、国外で働く人も30%~40%程度はおり、非常にグローバルな組織といえるでしょう。
なお、JETRO職員は大きく分ければ「総合職」と「一般職」のカテゴリがあります。
新卒者の場合、総合職は原則として本部の東京で一括採用されますが、その後は国内外問わずあらゆる地域に勤務する可能性があります。
一方、一般職については転居を伴う転勤はないものと規程されています。
JETRO職員の1日
担当業務によりスケジュールが異なる
日本と世界各地のビジネスをつなぎ合わせるJETROが取り扱う業務内容は、多岐に渡ります。
また、勤務先も国内・海外とさまざまであり、総合職や一般職の職員など、多数の職員が活躍しています。
そのため、どのような業務を担当しているかによって、1日の業務スケジュールも大きく異なります。
ここでは、一例として国内で働く総合職JETRO職員の1日のスケジュールを紹介します。
関連記事JETRO職員の1日のスケジュール・勤務時間や残業、休日についても解説
JETRO職員のやりがい、楽しさ
世界中に活躍の場があり、グローバルに働くことができる
JETRO職員として働くやりがいは、常にグローバルを強く意識した仕事ができることです。
民間企業のなかにも、欧米などの主要先進国に事務所を設けているところはさほど珍しくありませんが、JETROの場合、アジアやアフリカなどの発展途上国も含め、国内外に100ヵ所以上の事務所があります。
こうした組織において、日本と海外のビジネスをつなぐために働くJETRO職員は、真の意味でグローバルな仕事に携わる存在といえるでしょう。
とくに総合職として入社すれば、海外各地に転勤の可能性があり、国際経験を積極的に積みたい人にとっては魅力的な職場です。
世界のさまざまな国や地域で活躍し、自分の視野を広げ、キャリアを磨きながら専門性を高めていくことが可能です。
JETRO職員のつらいこと、大変なこと
コンプライアンスの厳しさ、駐在先で不安を覚える人も
独立行政法人であるJETROは、日本政府の代理機関として存在するため、職員に対してもとくに高いコンプライアンス(法令遵守)意識が求められます。
たとえ故意でなくても、JETROとして行った業務が取引国の法律に抵触した場合、外交問題に発展しかねません。
状況によっては、非常に大きな責任やプレッシャーを感じることになるでしょう。
また、総合職のJETRO職員は日本国内のみならず、世界中の事務所で働く可能性がありますが、駐在先によっては日本とはまったく異なる生活環境となります。
とくに発展途上国では治安や生活水準も日本と比べればよくないことが多く、慣れない日々に戸惑うかもしれません。
また、結婚して家族を持ってからは、転勤の多さが、生活上の苦労の要因のひとつになるケースもあります。
JETRO職員に向いている人・適性
JETROの使命に共感できる、向上心が強い人
JETROは組織としての方向性が明確に定まっているため、JETROの使命をきちんと理解し、それに共感・納得できる人が歓迎されやすいです。
国際経験が豊かだったり、政府関係機関にふさわしい法令遵守意識の高い人が職員に向いているのは間違いありません。
ただし、近年では、民間のなかでも海外の事業展開を支援するコンサルタント企業が台頭しており、JETROはそうした企業に対抗すべく、独自のカラーや強みを打ち出す必要性に迫られています。
これからのJETRO職員には、各事業分野の専門性を極め、自信をもって案件を力強く引っ張っていける人が、より求められていくでしょう。
向上心が強く挑戦心がある人、また世界に出ても物怖じしないバイタリティのある人なども、JETRO職員には向いているといえます。
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JETRO職員志望動機・目指すきっかけ
JETROでしかできないことを考えることが重要
JETROを目指す人は、もともと「国際的な組織や機関で働きたい」と考えていたケースが大半です。
「グローバル」や「社会貢献性」などのキーワードも、JETRO志望者からはよく聞かれるものです。
民間企業でも国際的なビジネスに従事できる環境はありますが、加えて国レベルでの規模の大きな仕事をしたいと考えている人が、JETROを目指すことが多いようです。
なお、JETROの職員採用試験では複数回の面接が用意されており、それを突破するためにも志望動機は非常に重要です。
JETROの幅広い業務内容を理解したうえで、ほかの国際的な機関(例:JICAや他の政府組織など)とは異なるJETROの魅力や共感ポイントを述べたり、職員として何を成し遂げたいのかといったビジョンを述べられるように準備しておきましょう。
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JETRO職員の雇用形態・働き方
正規雇用の総合職や一般職のほか、嘱託などで働く人も
新卒で募集されるJETRO職員は、基本的には「総合職」として正規雇用されます。
このほか、年度によっては総合職をサポートする「一般職」も募集されています。
こうした正規雇用の職員のほかにも、社会人採用では、特定分野の専門性を備えた人を対象とした「任期付職員」や、「常勤嘱託員」「非常勤嘱託員」などの募集も行っています。
契約形態によって、待遇や勤務時間などの条件が異なるため、事前によく調べておきましょう。
なお、JETROでは学生や若手社会人などに対するインターンシップを積極的に実施しています。
実際に新興国などに派遣され、現場の第一線で実務に携わることができるため、JETRO職員を目指す人は、職員の働き方を知ると同時に、貴重な国際経験を得られるでしょう。
参加するためには選考を受けなければなりませんが、JETROが気になっている人がチャレンジしてみる価値は十分にあるといえます。
JETRO職員の勤務時間・休日・生活
勤務時間はある程度選べるが、配属先によって忙しさは異なる
JETRO職員の勤務時間はやや特殊で、1日7時間45分の「シフト選択制」です。
具体的には、8:30~17:15、10:00~18:45など、いくつかの候補のなかから始業時間と終業時間を選べるようになっています。
残業量については配属先・部署によってさまざまですが、組織全体として残業量を増やすように取り組んでいます。
休日は土日祝日で、有給休暇や夏季休暇などの制度も整っているため、プライベートは充実させやすいでしょう。
ただ、地方事務所や海外事務所では限られた人員で業務をこなす必要があり、職員1人当たりの負担が大きくなりやすく、残業時間が増える時期があるかもしれません。
JETROではさまざまな配属先があり、海外で働く可能性もあるため、配属先によって忙しさや生活スタイルに違いが出てくると考えておいたほうがよいでしょう。
JETRO職員の求人・就職状況・需要
新卒の総合職は毎年募集されている
JETRO職員の採用人数は、年度によってばらつきがありますが、新卒の総合職で毎年30名~40名前後、一般職で5名前後です。
総合職については毎年募集がなされているものの、一般職は年度によってはまったく募集が行われないケースもあります。
新卒総合職の倍率は100倍ほどになることが多いとされ、高い意識をもって試験準備をしないと、なかなか内定を得るのは難しい状況です。
自分にしかない魅力を具体的に認識し、JETROの業務と関連した形で具体的に自己PRしていきましょう。
今後新卒求人数は減少する懸念がある
JETROの新卒採用は、現状でも決して多い求人数とはいえませんが、今後はさらに厳しくなる可能性があります。
というのも、一部では、一般企業での実務経験がない職員が、企業のコンサルをすることの矛盾を指摘する声も出ているからです。
そのため、今後は、すでにビジネス経験を積んだ人を求める「社会人採用」の枠が拡大し、新卒求人数はもう少し絞られていくかもしれません。
JETRO職員の転職状況・未経験採用
現状の社会人枠は数名程度
JETROでは、社会人採用によって「総合職」「研究職」「アドバイザー職」などの職員の採用が行われています。
社会人の採用人数は合計でも毎年数名程度となっており、職種によっては募集がない年もあります。
転職でJETROを目指す人は、ホームページを逐次確認する必要があるでしょう。
なお、転職に必要な条件も具体的に明示されており、職種によって異なりますが、大卒以上の学歴やビジネスレベルの英語能力などは必須要件です。
また、募集する専門分野での実務経験が求められることがほとんどであり、即戦力になれる優秀な人材を求めていることがわかります。
正規雇用の職員のほか、3年程度の「任期付職員」や、「常勤・非常勤の嘱託職員」などを募集することがあります。
JETROでインターンするには?
若手人材を対象としたインターンシップが行われている
JETROでは、経済産業省委託事業として、一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA)との共同でインターンシップを実施しています。
このインターンシップは、正確には「国際即戦力育成インターンシップ事業」といいます。
本事業の目的は、日本の若手社会人や学生を、開発途上国の政府や民間企業等に派遣して就労体験の機会を与えるというものです。
毎年、だいたい春先から夏にかけて募集・選考が実施され、秋から冬にかけてが派遣機関となります。
募集条件がいくつかあり、年齢については応募時点で「満20歳以上35歳以下」であれば応募可能です。
このほか、日本国籍を保持している人、基礎的な英語力があること(TOEIC700点程度が目安)なども条件となります。
派遣国は、インドやインドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、タイといったさまざまな国で、給料はありませんが、往復の渡航費(航空券およびビザ取得費)支給と滞在費支援があります。
募集の際には詳細情報がJETROの公式ホームページ等に掲載されるため、確認してください。