JAXA職員になるには? 仕事内容や就職、資格などについて解説
「JAXA職員」とは
宇宙に関する基礎研究から開発・利用まで一貫して行う
JAXA(ジャクサ)は「Japan Aerospace Exploration Agency」の略称で、正式名称は「宇宙航空研究開発機構」です。
2003年に、宇宙開発事業団(NASDA)、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)の3機関が統合し、2015年4月には、国立研究開発法人となりました。
JAXAでは宇宙に関する基礎研究から開発・利用に至るまでを一貫して行っており、東京都調布市の本社のほか、筑波宇宙センター、鹿児島宇宙センター、角田宇宙センターなど各地に事業所を設けています。
場合によっては海外に赴任することもあり、研究を進める上でも海外とのやり取りが頻繁に行われるため、英語力は必須といえます。
2016年のデータでは、1,545名の職員が働いており、そのほかに国内外の研究者や大学院生、企業研究者など多くの人がJAXA内で働いています。
職種別では、技術系が71%、教育職が22%、事務系が7%となっており、航空・宇宙に関する勉強をした人だけでなく、さまざまなバックグランドを持った職員が活躍しています。
理系分野出身の人でなくても職員になることはできますが、技術系職員を志望する場合は航空・宇宙のほか物理学や天文学といった学問を高度なレベルで習得しておかなくてはなりません。
「JAXA職員」の仕事紹介
JAXA職員の仕事内容
航空・宇宙に関する多種多様な仕事を担う
JAXAは、航空・宇宙に関するさまざまな研究や開発を行っている日本の公的専門機関です。
日本が行っている人工衛星やロケット、宇宙ステーションの開発、宇宙飛行士の育成・管理などはすべてJAXAが担っています。
そのほか、航空・宇宙に関する研究開発などを専門的に行っています。
JAXAの仕事は技術系と事務系に分かれています。
技術系には、以下のような仕事があります。
・宇宙飛行士の健康管理をする医師
・宇宙空間や宇宙飛行士が浴びた放射線計測をする技師
・航空・宇宙に関するデータを計測する機器を開発する技術者
・宇宙で行う実験のための計画の立案や機器の準備
文系の仕事には、一般的な会社と同じように財務や人事などの仕事があります。
そのほか、JAXA特有の仕事として以下のようなものがあります。
・海外の機関とやり取りして情報収集や仕事の調整をする調査国際部
・JAXAの技術を民間企業で生かすための新事業促進部
・JAXAや研究開発で発見した物事をニュースとして伝える広報部
これらはごく一部であり、実際に航空・宇宙に関する仕事だけでなく、実に多種多様な仕事を担っています。
こうした一般的な職種のほかに、宇宙空間で活躍する「宇宙飛行士採用」、若手研究者にプロジェクトへの参加を求める「任期付プロジェクト研究員採用」などさまざまな職種の仕事があります。
なお、学生向けにはインターンシップを行っているため、宇宙航空に興味のある人は利用してみるのもよいでしょう。
JAXA職員になるには
技術系を目指すのであれば航空・宇宙の学びが必須
JAXAの職員になるために特別な学歴や資格は必要なく、一般的な企業と同様に採用試験を受け、合格することで採用されます。
JAXAの職員は技術系職員、事務系職員の2つの道があり、併願はできませんが、在籍する学部を問わず、技術系・事務系どちらの職種でも応募することができます。
技術系職員は、人工衛星・ロケット等に関わること、宇宙や地球に関する観測やそのデータの利用、情報システム開発や運用、民間企業等との協業による新事業創出などの仕事を担います。
事務系職員は、プロジェクト・研究部門の事務を担当し、一般的な企業と同じように総務、法務、調達、財務、人事、広報・教育などを担当します。
文系出身者で活躍している人も多くいますが、技術系職員を目指すのであれば、大学や大学院で航空・宇宙や物理、天文学などの勉強をしておくことは必須です。
在学中に研究成果を残し、学会で発表をするなど一定の成績を上げておくことも重要で、海外と円滑にコミュニケーションがとれる高い英語力も求められます。
学生向けにインターンシップ制度が設けられているため、興味があれば学生時代のうちにチャレンジしてみるのもよいでしょう
入社後は希望や適性により配属が決められ、約2ヶ月間、新人職員研修が行われます。
また入社後1年間は、新入職員1名につき1人の先輩職員がOJT担当としてつき、実務を通じて経験を積んでいきます。
JAXA職員の学校・学費
学校や学歴の制限はない
2021年のJAXAの採用情報を見ると、必要な学歴は新卒の場合、「2022年3月に大学/大学院等(短大、高専、専門学校を含む)を卒業・修了(見込)の方」となっています。
一般的な企業と同様、特別な学歴は必要なく、誰でも応募は可能です。
ただし、技術系応募者のうち博士後期課程を修了(予定)の人は、研究テーマの説明資料の提出が必要で、大学院を卒業した人の場合は、成績証明書の提出が求められます。
JAXA職員の経歴を見てみると、宇宙工学や航空工学のほか、機械工学、エネルギー学、通信学、地球物理学などさまざまな出身の人がおり、出身大学や経歴によって採用が決まることは少ないでしょう。
なかには教育学や経理、法律、人文学など一見JAXAの仕事には直接関係がないような学びをしている人でも採用されています。
JAXAの仕事というと航空・宇宙に関する研究職をイメージする人も多いですが、文系出身でも得意なことを活かして宇宙開発を支えることができる事務系の仕事は多くあります。
詳しくはJAXAの採用情報を確認し、条件についてはしっかり確認しましょう。
なお、就業経験なしで既卒の場合は、最終学歴卒業(修了)後3年以内、就業経験ありで既卒の場合は、卒業(修了)後7年以内と決められています。
転職を希望する場合は、このように期限が定められているため注意が必要です。
JAXA職員の資格・試験の難易度
専門分野や得意分野を示すひとつの指標
JAXAに採用される際に、特別な制約や条件はなく、資格についても専門分野や得意分野を示すひとつの指標と考えられます。
JAXAの職員は非常に人気が高く、高倍率になるため、より実力を証明するために資格を取得するというのもひとつの方法です。
そのいっぽうで 、たとえ資格がなくても大学や大学院で優秀な成績を残していればそれも十分なアピールになります。
なお、外国籍の場合は、選考に合格した場合でも、入社日までに在留資格証明書を提出することが入社条件となります。
JAXAに入社後は、業務に必要な資格である認められる場合、取得費用の一部が支給されるなどのサポートがあります。
JAXA職員の給料・年収
一般的な研究職とさほど変わりはない
JAXAは、組織形態としては国が運営する独立行政法人であるため、常勤職員の給料は、原則として内閣府などの公務員の給料に準じる形となります。
職員の給与額については、これまでの経験などを考慮した上で、機構の規定により決定されます。
2020年度の初任給を見ると、以下のようになっています。
博士修了:269,800円
修士修了:222,000円
大学学部卒:202,100円
短大・専門学校卒:179,900円
このほかに、地域調整手当、研究開発手当、扶養手当、通勤手当、住居手当などの諸手当が別途支給されています。
なお、昇給は年1回あり、賞与は年2回支払われます。
JAXAの採用情報で公開されている「年収試算」によると、最終学歴が学士の場合、経験年数5年で550万円、10年で640万円、博士の場合は、経験年数5年で640万円、10年で760万円となります。
研究職の平均給与は870万円ほどと発表されており、本部長の平均年収は約1,270万円、課長だと焼く1,100万円、主任研究員だと約870万円、一般の研究員だと560万円ほどとなります。
年収を800万円、ボーナスを月給の4ヵ月分とすると、平均月収は約50万円、ボーナスは約200万円となります。
そこから税金などを差し引いた実際の手取りは、独身者の場合で月額約38万円~40万円、ボーナスが約143万円です。
一般的な企業よりは若干高めではありますが、企業の研究職や大学の研究者と比較すると、さほど違いはないといえるでしょう。
JAXA職員の現状と将来性・今後の見通し
宇宙開発はより身近な仕事に
宇宙産業は、世界的な成長産業であり、JAXAは日本の宇宙開発の一翼を担う機関として重大な役割を果たしています。
かつて宇宙開発といえば、ロケットで宇宙飛行士を宇宙に行かせることが目的でしたが、近年は宇宙に関する実験や研究がすすみ、人類の未来に役立たせようという動きに変わってきています。
とくに「きぼう」では、宇宙でも人々が暮らせるような実験や研究を積極的に行っていますし、JAXAはより私たちの生活に生かせるような宇宙・航空分野の研究開発を進めていくとしています。
近年は衛星の利用により通信サービスや観測サービスが著しく向上しており、宇宙開発はより私たちの身近な仕事となっていくことでしょう。
JAXA職員の就職先・活躍の場
JAXAへの就職
JAXAの職員は、民間の就職サイトなどでは募集されておらず、採用専用サイトを利用して応募し採用される必要があります。
新卒の一般的な就職の場合は、3月頃から専用サイトでプレエントリーが始まります。
JAXAも他の企業と同様にWebでのセミナーや説明会などのイベントを行うので、こうした機会を生かして企業研究をするとよいでしょう。
その後エントリーシートに記入し、期限までに必要な書類を提出(またはアップロード)してエントリーします。
選考は書類選考、Webテストなどの適性検査、面接等が実施されます。
なお、面接選考はWeb面接で行われますが、最終選考のみ原則対面面接が予定されています。
JAXA職員の1日
担当する業務や研究内容によって違いがある
JAXA職員の1日は、担当する業務や研究内容によって大きく異なります。
技術職の場合は作業進度や業務内容によって、帰宅時間は日によって異なり、場合によっては夜間勤務をすることもあります。
JAXA職員のやりがい、楽しさ
プロジェクトが成功したとき
JAXA職員のやりがいのひとつは、大きなプロジェクトを成功させたときや、目標を達成できたときです。
宇宙や航空に関わるプロジェクトは年単位で行われることも多く、世界中の研究者や技術者があつまり、協力して成功を目指します。
何年もかけてプロジェクトを完遂したり、必要なデータを採取できたりしたときには、チーム全体で喜びを分かちあいます。
ロケットの打ち上げに成功するなど、喜びに包まれるJAXAの様子を見たことがある人も多いでしょう。
一方で、思ってもいなかったことが起こったり、思うような結果にいかなかったりしたときにも「なぜこうなったのか」と考える新しいきっかけとなり、謎を解き明かすためのモチベーションがアップします。
JAXA職員のつらいこと、大変なこと
長い年月のかかる仕事
JAXA職員の大変なところは、宇宙や航空開発には長い年月がかかることです。
ひとつのプロジェクトを実行するにも、まず必要なデータをとるために何か月もかかったり、機器の開発に一年以上かかったりすることは珍しくありません
ひとつの実験を行うのにも半年以上かかることもあり、なかなか結果が出なかったとしても根気強く努力を続ける中長期的な視野が必要です。
また、どれだけ緻密に計算を重ねたとしても、思うようなデータが出なかったり、実験が失敗してしまったりすることもあります。
想定していなかった事態が起きた場合に、たとえ本筋とは関係がなかったとしても、その現象がどうして起こったのかを考えなくてはならないことも大変なところです。
JAXA職員に向いている人・適性
根気強さがあり努力を積み重ねられる人
JAXA職員に向いている人は、根気強くこつこつと努力を続けられる人です。
JAXAというと宇宙飛行士をはじめとした非常に花形の仕事というイメージがありますが、宇宙・航空開発では長い時間をかけてプロジェクトを行ったり、機器を開発したりすることも多いです。
そのため、結果やゴールが見えなかったとしても毎日努力ができる人、長い時間集中力を保てる人が向いているといえます。
ときには夜遅くや夜間に実験や観測を行うこともあるため、体力があればなおよいでしょう。
また、これまでになかった新しい分野の研究に着手することも多くあるため、チャレンジ精神のある人や、新しい知識や最新の技術をどんどん取り入れられる向上心がある人も向いています。
JAXA職員志望動機・目指すきっかけ
民間企業にはないJAXAならではの魅力
JAXAへの志望理由の大半は、宇宙や航空への興味関心です。
宇宙に関わる仕事をしている企業や宇宙開発に携わる企業は、民間でもありますが数は少なく、JAXAと協力して研究開発をしているところも多いです。
さらに民間企業の場合、その部門に配属されなければ宇宙開発に関わることができないことも多いため、JAXAのように多くの職員が直接宇宙開発に携わることができる機関は非常に少ないです。
そのため、宇宙や航空に携わりたい人の多くがJAXAを志望しています。
またJAXAは国の機関であり、研究の成果は国のために活かされます。
宇宙・航空分野の研究が進むことで、通信や放送だけでなく、防災や自然環境などさまざまな分野に貢献できることもJAXAならではの魅力といえるでしょう。
JAXA職員の雇用形態・働き方
多くは正規職員
JAXAの職員は基本的に正規採用の職員ですが、まれに「事務支援職員」といって任期付きの採用がある場合があります。
「短大または専門学校卒業以上の学歴又は同等の専門知識・技能を有すること。」等いくつかの条件がありますが、正規職員よりもハードルが低めとなっています。
年度ごとに採用されることが多いですが、採用日から通算して原則3年以内であれば契約更新が可能で、特別な事情として理事長から認められれば5年まで延長されます。
そのほか、任期付プロジェクト研究員が募集されることもあります。
募集研究テーマごとに1名ずつ採用され、年度毎の雇用契約を締結し、最大3年から5年まで働くことができます。
JAXA職員の勤務時間・休日・生活
定められた勤務時間以外にも柔軟な働き方ができる
JAXA職員の勤務時間は、始業が午前9時30分、終業が午後5時45分と決められており、途中午後0時15分~午後1時休憩時間とされています。
しかし、プロジェクトや研究の内容や進捗状況によっては必ずしもこの時間内ではおさまらず、残業をすることもあります。
場合によってはフレックスタイム制度を利用することもできますし、そのほか在宅勤務制度、時差勤務制度なども整備されています。
なお、休日に関しては完全週休2日制を採用しており、祝祭日も休みとなります。
そのほか、年末年始(12/29~1/3)、年次有給休暇(最大20日)、慶弔休暇、ワークライフバランス休暇(7日)などがあり、産前産後休暇、育児休業、介護休業などの制度も整えられています。
JAXA職員の求人・就職状況・需要
毎年定期的に採用が行われる
JAXA職員の新卒採用は、毎年定期的に数十名の求人があり、2022年度では、技術系・事務系併せて40名程度の採用が見込まれています。
このほか、任期付プロジェクト研究員、経験者、障がい者の採用については通年を通して行っており、それぞれ募集される職務ごとの区分に分かれています。
それぞれの区分で若干名または1名という厳しい選考になりますが、通年を通し求人情報は公開されているため、ホームページをこまめにチェックしてみるとよいでしょう。
また、特任教授などを公募で採用するする教育職や、外部から高度な知識や専門性を有する任期制職員(招聘職員)は、不定期で募集があります。
JAXA職員の転職状況・未経験採用
中途採用もあるが採用人数は少ない
JAXAは中途採用も定期的に行っており、基本的には「短大・高専・専門学校卒業以上」の学歴を持ち、実務経験3年以上があれば文系・理系問わず採用されます。
とくに「事務支援職員」という任期付きの事務補助であれば、文系出身者でも中途採用される可能性は大いにあります。
ただし新卒は数十名単位で行われるのに対し、中途採用の場合は職種により1名程度しか採用していません。
JAXAの新卒定着率は95%を超えているといわれ、なかなか退職する人がいないため中途採用が少なくなっています。
とくに技術系ではもともと倍率が高い上に専門的な知識を求められることも多く、職務によってはTOEIC700点以上の英語力が必要とされます。