プロ野球の入団テスト(プロテスト)の応募条件や内容についてわかりやすく解説
狭き門ではありますが、ここで実力や才能を発揮できれば、プロ野球選手になる道が開けるかもしれません。
この記事では、プロ野球選手への道を切り開くためのプロテストについて解説します。
プロ野球のプロテストとは?
NPB各球団が実施する入団テスト
プロ野球の球団には必ず「スカウト」がおり、いつでも日本全国の才能ある選手を見つけようとしています。
有望な高校生や大学生などの野球選手をスカウトして、卒業後に自分たちの球団に入団してもらうことを目指しているのです。
しかし、その中には埋もれてしまっている選手も存在するかもしれません。
そこで、より多くのプロ野球選手志望者に向けて、NPB(日本野球機構)の各球団が実施するのが「プロテスト」です。
プロ野球界では、このテストを「入団テスト」と呼ぶことが一般的です。
入団テストは、いわば受験生たちがプロ野球選手として活躍するための才能・資質を持っているかどうかを判断するための試験といえます。
プロテスト合格後はドラフト指名を目指す
かつてのプロ野球界ではドラフト外での入団も認められていたため、プロテスト(入団テスト)に合格すれば直接球団と契約できました。
しかし、現在ではドラフト外での入団は認められていないことから、入団テストに合格した選手は、その年のドラフトで指名されて入団を目指す必要があります。
入団テストの概要は毎年8月ごろに発表され、テスト自体は9~10月ごろに行われることが多いです。
なお、入団テストは必ずしも全球団で行われるわけではありません。
実際には入団テストを実施していない球団も多い一方で、最近では読売ジャイアンツ(巨人)、広島東洋カープ、西部ライオンズなどが積極的に開催しています。
また、NPB(日本野球機構)と異なった団体が運営する以下の「独立リーグ」でも、入団テストが行われています。
- 四国アイランドリーグplus
- ルートインBCリーグ
- 九州アジアリーグ
- 北海道フロンティアリーグ
- 関西独立リーグ
2022年には、お笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行さんが入団テストを受け、「栃木ゴールデンブレーブス」に入団し話題となりました。
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プロテスト(入団テスト)の応募条件
入団テストの応募条件は球団によって異なることがありますが、年齢や身長などの条件がよく見られます。
最近の入団テストでは、一般的な応募資格として、身長が175センチ以上で、男子の場合は17歳から24歳までという条件があります。
高校生の場合は、都道府県の高校野球連盟にプロ志望届を提出し、大学生の場合は所属する大学野球連盟に提出する必要があります。
また、両方とも来春に卒業する見込みであることも応募条件の一部です。
クラブチームや社会人チームに所属している選手の場合は、所属チームの監督や関係者から受験を許可されていることが必要です。
具体的な条件は、8月ごろになったら各球団の公式ウェブサイトをチェックすると良いでしょう。
そこに詳細な情報が掲載されています。
例として、2022年に行われた埼玉西武ライオンズ入団テストの応募資格は以下のようになっています。
- 2023年4月1日時点で18歳以上24歳まで
- 高校野球部在籍者は、来春卒業見込みで高野連へのプロ野球志望届完了者
- 大学野球部在籍者は、来春卒業見込みで所属連盟への退部届、志望届完了者
- 企業社会人チーム在籍者は、所属連盟の退部届完了者
- クラブ社会人チーム在籍者は、監督など関係者から受験を了承されること
- その他、2022年度新人選手選択会議指名対象者。
なお、プロ野球の入団テストは、各球団が定める条件を満たしていれば、一般の人でも受けることが可能です。
プロテスト(入団テスト)の試験内容
1次試験
プロテストの内容は球団によって違いはありますが、基本的には1次試験と2次試験に分けて行われます。
1次試験ではほぼ必ず50メートル走と遠投が行われます。
50メートル走では、一般的には6.3〜6.5秒以内を目指し、遠投では90〜95メートル以上を目指す必要がある場合が多いです。
1次試験に合格しないと、2次試験を受けることができません。
2次試験
2次試験では、多くの場合投手はピッチング、打者は打撃と守備のテストが行われます。
投手は、実際にマウンドに上がり、ピッチングの技術や球の制球力、球速などを評価されます。
打者は、バッティングと守備のテストが行われます。
バッティングでは、球団によってはバッティングマシンを使用したり、実際の投手が投げる場合もあります。
ここで打撃の技術や適切な打球の取り方などが評価されます。
また、内野手や外野手に特化したシートノックも行われ、内野手は内野の守備プレーを、外野手は外野のプレーを披露する機会が与えられます。
これによって、フィールディングや送球の正確性、守備範囲などが評価されます。
これらの野球技術を総合的に評価し、合否が決まります。
その後、2次試験の合格者の中から、実際の試合形式のテストが行われる場合もあります。
このテストでは、本物の試合に近い状況でのプレーが求められます。
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プロテスト(入団テスト)の合格率・難易度
合格者が一人も出ないこともある
優秀な野球選手は、プロテストを受けるまでもなく、各球団のスカウトにすでに見つけられていることが多いのが現実です。
そのため、プロテストでは、受験者が50〜100人いても合格者が一人も出ないこともよくあります。
たとえば、過去の巨人の入団テストの参加者数と合格者数を見てみましょう。
- 2015年:参加者82人、合格者2人
- 2016年:参加者84人、合格者6人
- 2017年:参加者75人、合格者8人
- 2018年:参加者85人、合格者9人
- 2019年:参加者64人、合格者0人
2022年では、エントリーのあった150名のうち、二次試験を受験したのは27人、合格したのは投手2人、野手2人と報道されています。
かつては各球団がドラフトで指名できる選手の人数に制限があったため、ドラフト外での入団が多く、入団テストは非常に重要な意味を持っていました。
しかし、現在はドラフトでの指名人数に制限がないため、スカウトが目をつけた選手が基本的には指名される傾向にあります。
そのため、入団テストはスカウトの補助的な役割になっているのが実情です。
基準を満たしても合格できない場合も多い
入団テストでは、基準を満たしているにもかかわらず合格できない人も存在します。
基準はあくまで基準であり、たとえば50メートル走の場合、スタートの仕方や走るフォーム、遠投の場合は投げるフォームやボールの飛距離など、細かい要素がチェックされます。
実際に入団テストを受ける選手の中には、最初からスカウトが目を付けていた選手をテストに呼び、その能力を評価するというケースもあります。
入団テストは単純に基準をクリアすればよいというものではなく、総合的な能力や素質が重要視されます。
したがって、入団テストの結果は単純な合否だけではなく、選手個人の総合的な評価に基づいて決まることが多いのです。
球団の意向とマッチするかが合格のポイント
球団が補強したいポジションやタイプは、年ごとに変化します。
例えば今年は、「長距離砲がほしい」とか「足の速い選手を補強したい」といったように、チームの方針によって求められる選手のタイプは異なります。
その年の球団が必要としているプレースタイルや特徴に、自分がマッチしているかどうかが大きなポイントとなります。
チームが必要としているポジションや役割に自分が適している場合、その年のプロテストで注目される可能性が高くなります。
球団はチームの強化を図るために、選手のスキルや特徴を総合的に評価し、戦力補強を行います。
自分自身の特徴や強みをしっかりと把握し、球団が求めるタイプに合致するようなプレースタイルを持つことが、プロテストでの成功につながるかもしれません。
プロテストとトライアウトの違い
野球のプロテストは、まだプロ野球の球団に所属していないアマチュア選手が参加するテストです。
これは、プロ野球選手としての才能や能力を評価し、球団からのスカウトや契約の機会を得るために行われます。
一方、トライアウトは、すでにプロ野球の球団に所属している選手が参加するテストです。
これは、解雇された選手や自由契約選手が、他の球団に採用されるかどうかを試す場所です。
トライアウトでは、選手の実力や状態を確認し、他の球団からの注目を集めることが目的です。
また、プロテストは各チームが独自に行うのが一般的ですが、12球団合同トライアウトは、日本野球機構(NPB)に所属する全12球団が一緒に行います。
なお、合同トライアウトで合格しても、すぐに契約が決まるわけではありません。
その後、各球団が個別に選手をテストし、契約するかどうかを決めます。
合同トライアウトは一般のファンも見学することができるため、多くのファンが集まって、テレビでも放送されるようになり、注目されるイベントになっています。
プロ野球選手のプロテスト・入団テストのまとめ
プロテストは各球団が毎年秋ごろに実施しますが、必ずしも全球団が開催するわけではありません。
プロテストで身体検査や体力テスト、そして打撃や守備、ピッチングなどの試験科目に合格し、ドラフト会議で指名されれば、プロ野球選手になることができます。
ただし、プロ野球選手を目指す人はたくさんいますし、プロテストを受ける人も多いため、合格率は決して高くありません。
プロ野球選手になる主要なルートは、在学中などにスカウトの目に留まりドラフト会議で指名されることが一般的であるため、そのルートも含めて進路を考えていくことが大切です。