全国通訳案内士になるには
全国通訳案内士の国家試験合格を目指す
全国通訳案内士になるには、国家試験である全国通訳案内士試験を受けて国家資格を取得する必要があります。
まずは、年に一度実施される試験を受け、合格することがスタートラインです。
受験資格はとくに制約がなく、得意な外国語さえあれば誰でもチャレンジできる資格です。
学歴や年齢も関係なく、平成28年度(2016年度)には13歳という合格者も出ています。
ですが、筆記試験だけでなく口述試験もありますし、外国語の能力に加えて日本の地理や歴史、文化、産業に関する深い知識も求められてくるため、難易度の高い試験となっています。
なお、外国人も受験をすることができます。
受験可能な外国語は英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語・イタリア語・ポルトガル語・ロシア語・韓国語・タイ語の10ヶ国語となります。
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通訳ガイドから通訳案内士、そして全国通訳案内士へ
以前まで、この仕事はおもに「通訳ガイド」と呼ばれ、免許を申請するシステムでした。
しかし法改正により、2006年4月からは「通訳案内士」の名称がついた資格職へと変わり、さらに2018年1月、改正通訳案内士法の施行によって、「全国通訳案内士」へと生まれ変わりました。
現在、日本国内で外国人観光客の通訳案内の仕事をするにあたって、全国通訳案内士の資格が絶対に必要というわけではありません。
無資格であっても有償ガイドとして働くことができますが、全国通訳案内士と名乗って働くには資格取得が必須であり、また国家資格を持っていることでガイドとしての採用時に優遇される可能性もあります。
全国通訳案内士の学校・スクール
通訳案内士の学校、スクールとは?
全国通訳案内士になるには、まず全国通訳案内士の国家試験を受けて、国家資格を取得する必要があります。
この試験には受験資格がないため、年齢・性別・学歴・国籍などに関わらず、誰でも受験することが可能です。
全国通訳案内士は、専門学校などの特別な学校を出ていなければなれない職業ではないため、一見、ハードルが低そうに思えるかもしれません。
しかしながら、実際には語学力のほか、日本の地理や歴史・文化・産業と、通訳案内の実務に関する深い知識まで求められる難易度の高い試験をパスしなければなりません。
これらの知識は独学で身に付けることも可能ですが、簡単でないことは確かです。
そのため、試験対策を目的として、全国通訳案内士の学校やスクールに通い合格を目指す人も多くなっています。
全国通訳案内士の学校・スクールの種類
ここからは、全国通訳案内士の学校やスクールの特徴について紹介します。
全国通訳案内士の学校やスクールとは、言いかえれば、全国通訳案内士の国家試験合格を目指すための学校ということになります。
全国各地に民間の学校やスクールが複数存在していますが、その中でもおもに外国語系の学校や、通訳・翻訳者の養成スクールなどで、全国通訳案内士関連の講座が開かれています。
各校によってカリキュラムは異なり、さらに通学日数や講義の時間帯、学費もそれぞれ違います
通学コースのみならず、DVDやインターネットを使った在宅学習(通信学習)ができるコースを置く学校もあります。
なお、通訳案内士の試験は「1次試験(筆記)」と「2次試験(口述)」があり、学校によっては2次試験対策のみのコースを設けていることも珍しくありません。
いくつかのコースの中から、自分に合ったものを選び、合格を目指していく人が多いようです。
全国通訳案内士の学校・スクールで学ぶこと
全国通訳案内士の学校やスクールでは、国家試験の出題内容に基づく講義が展開されます。
1次の筆記試験対策としては、外国語(英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語のうちいずれか)のほか、日本地理、歴史、一般常識についての講義が主となります。
新たに設置された、通訳案内の実務に関する試験対策も行われます。
2次の口述試験対策に関しては、外国語を使ったプレゼンテーションの練習、外国語でのコミュニケーションなどに関する講義が中心となります。
学費や諸費用はどれくらい?
学費は学校やスクールによって異なりますが、単発で講座を受講する場合は1回当たり1万円程度から、通学する場合は1年間で20万円~40万円前後となることが多いようです。
DVDやインターネットによる通信講座を受講する場合、日本地理、歴史、一般常識、通訳案内の実務をあわせて10万円~15万円程度という学校もあります。
学費に関しても学校や講座によってだいぶ異なるため、カリキュラムと照らし合わせつつ、よく比較して選ぶようにしてください。
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全国通訳案内士試験は独学で合格できる?
語学力以外の知識も必要
資格取得のための勉強には、時間とお金がかかるものです。
とくに若い世代にとっては、学校やスクールの受講費用は負担になってしまうことも多いでしょう。
「全国通訳案内士試験」は難関の試験といわれますが、学校や講座を利用せず、独学でこの試験に合格する人たちもいます。
その場合、かなりの努力が必要なのはもちろんですが、まずは受験する外国語について、ある程度の力があることが前提になります。
最も厳しいのは、1次の筆記試験でしょう。そのなかでも得意な外国語試験ではなく、日本語による地理や歴史、一般常識、通訳案内の実務のテストで得点することがカギとなります。
インターネットをフル活用する
まずは、インターネットで拾える、無料教材を活用してみましょう。
2011年、多くの通訳関係者に惜しまれながら閉校した「ハロー通訳アカデミー」のサイトでは、高い評価を得ていた独自の教材を、無料で公開しています。
これまでの過去問も掲載されており、受験を考えている人なら活用すべきサイトです。
ほかにも、無料でテスト問題を載せているサイトはいろいろありますし、実際に独学で合格した人のホームページやブログなどを参考にし、どういう教材を使ったのか、どんな勉強をしたのかをとことん調べてみるとよいでしょう。
経験者の知恵に勝るものはありません。
勉強のためのヒントがきっと見つかるはずです。
英検1級も目指してみる
英検1級を持っていると、外国語の筆記試験(英語)が免除になります。
英語で受験する場合だけですが、もし可能であれば、同時に勉強することがおすすめです。
万が一、英検のほうが不合格になっても、学習したことはそのまま全国通訳案内士の勉強に活かせます。
英語力を向上させるうえでも、英検の勉強は決して無駄にはならないでしょう。
英語を選択する人は、ぜひ英検も目指してみてください。
法改正にともなう新試験の対策を
全国通訳案内士の試験は、法改正によって試験の出題科目や試験範囲などが変わる可能性があります。
つねに最新の情報をチェックし、試験対策を行うことも合格への近道となります。
書店などで購入できる市販のテキストもいくつか出ており、そこでは新たな出題傾向に基づいた解説や問題が掲載されています。
とくに、平成30年度試験から新たに設置された「実務」科目の対策もしっかりしておきましょう。
全国通訳案内士の試験について
全国通訳案内士試験は年に一度、通常、8月下旬から9月上旬に、全国の主要都市で1次試験(筆記)が実施されます。
それに合格した人は、11月下旬から12月上旬にかけて、2次試験(口述)を受けることになります。
1次試験に比べると、2次試験を受けられる場所は限られています。
受験にあたっては、全部で10種類ある外国語の中から一つを選択します。
その言語が得意であることはもちろん、日本の歴史や文化を中心に、幅広い知識が求められます。
合格後の手続き
見事、2次試験に合格した後は、都道府県に名前や住所を登録します。
登録が完了すると「全国通訳案内士登録証」が発行され、それをもって全国通訳案内士として仕事ができるようになります。
とはいえ、合格したばかりの人にとっては、何から始めていいのか分からないものです。
観光業に関連する多くの会社や団体が、全国通訳案内士の新人研修や説明会をおこなっていますので、参加してみるのもよいでしょう。
全国通訳案内士として働く
全国通訳案内士の国家資格を取得した後は、フリーランスで仕事をする人がほとんどです。
日本観光通訳協会や旅行代理店などに通訳案内士として登録することによって、仕事を紹介してもらうことができます。
働き方はさまざまで、旅行会社に営業したり、通訳の派遣会社に登録するなど、自分をアピールしながら仕事をもらうことになります。
経験の有無によって、紹介される仕事の量が変わってくるため、新人のうちは仕事内容を問わず、経験を積む必要もあるでしょう。
正社員として安定した待遇で働ける場所を見つけるのは簡単なことではないようです。
全国通訳案内士登録者数
全国通訳案内士の登録者数は、平成5年から毎年徐々に増え続けています。平成5年では約5,000人でしたが、平成27年には19,033人まで増えています。
全国通訳案内士の今後の見通し
日本政府は外国人観光客を増やす取り組みを続けています。
日本文化への興味が高まっているということもあり、外国人観光客は増加している傾向にあります。
全国通訳案内士の合格者数も徐々に増えてきており、ガイドをできる人が増えてきました。
一方で、全国通訳案内士は都市部に偏っており、地方で働ける人材の不足や、英語以外の外国語を扱える人(とくにアジア圏の言語)が足りていないことが課題として掲げられています。
通訳案内士が全国通訳案内士という資格へと変わり、無資格者でも有償ガイドを行うことが認められるようになったことで、全国通訳案内士の有資格者にとっては差別化がしやすく、ガイドとしての能力をより証明しやすくなるかもしれません。
今後は、アニメやマンガなどの日本のポップカルチャーを紹介できる人や、増加する中国人観光客専門のガイドなど、全国通訳案内士のそれぞれが特色を出していくことが必要になっていくでしょう。
全国通訳案内士の採用・募集状況
派遣会社などへ登録する人が多数
全国通訳案内士の就職活動で最も多いのが、通訳の派遣会社や団体に登録することです。
全国通訳案内士の国家資格さえ持っていれば、登録を受け付けてくれるところはたくさんあります。
登録後は、全国にいる登録者のなかから、通常、ツアーの行き先となる土地にいる人に派遣会社や観光団体から仕事の依頼が来ます。
条件や日程などの面で折り合えば、受注となります。
ただし登録先によっては、経験の長いベテランに紹介がいきやすいこともあるようです。
また、事前に研修の受講が必要な場合もあるため、情報を調べながら、最初はできるだけ多くの会社や団体に登録を行ったほうがいいでしょう。
自分自身で営業活動をすることも可能
全国通訳案内士の仕事をメインに、収入を増やしたいと思うのなら、ただ依頼を待つだけではなく、自分の足で行動することも大切です。
たとえば、旅行会社に営業をかける人がいます。
その際は、なるべく旅行業界の繁忙期(おもに3月から11月)を避けて、アポを取ったほうがいいでしょう。
とくに全国通訳案内士試験の合格発表後の時期は、面談の依頼が殺到するようです。
言語によっては、すぐに人手がほしい会社がないとは限りません。
新人であっても、得意分野を明確にし、できるだけ自分を売り込む材料を用意して、仕事を頼みたくなるようなアピールをしたいものです。
インターネットを活用する
いまでは、インターネットを使って情報を発信することもできます。
ホームページを立ち上げたり、Facebookなどの世界と簡単につながるSNSを利用して、通訳案内ができることをPRするのも手です。
海外から、直接問い合わせが来ることもあり得ます。
全国通訳案内士は信用が重要な要素となる仕事であるため、経験がある人に依頼が偏る傾向にあります。
仕事をたくさん得るには、とにかく行動を起こして、仕事をできる機会を一つでも多く手にすることが大事だといえるでしょう。
難関の試験にパスして、ようやく取得することができる全国通訳案内士の資格ですが、現状では、安定して働ける先が多く用意されているわけではありません。
全国通訳案内士として活躍したいのであれば、資格を生かした仕事を得る大きなポイントとなるのは自分の行動力といえます。