森林インストラクターの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「森林インストラクター」とは
森林の仕組みに熟知した「森の案内人」。森林での安全な楽しみ方を人々に伝える。
森林インストラクターは、森林での安全な楽しみ方や過ごし方、森の仕組みなどを教え、野外活動の指導・アドバイスを行う「森の案内人」です。
森林浴や、バードウォッチング、山菜採り、林間学校などのインストラクションを行ったり、森林の重要性や自然の厳しさなどを伝える役割を担っています。
NPOやアウトドアガイドなどで森林インストラクター業務を行うことで収入を得ている人もいますが、ボランティアで活動している人が大半です。
「森林インストラクター」と名乗るには、「森林インストラクター試験」に合格することが必要です。誰でも受験することは可能ですが、合格率は40%ほどであり、自然に関するさまざまな知識が問われます。
「森林インストラクター」の仕事紹介
森林インストラクターの仕事内容
森での過ごし方や楽しみ方を教える
森林インストラクターは、森林での安全な楽しみ方や過ごし方、森の仕組みなどを教え、野外活動の指導・アドバイスを行う「森の案内人」です。
具体的には、動植物の知識を教えたり、森の仕組みについて教える森林ガイドや、バードウォッチングやキノコ・山菜採り、森林浴などの森林内で行う活動にインストラクターとして同行したり、林間学校や自然教室などの指導を行うこともあります。
自然環境は私たちを癒し楽しませてくれる一方で、少しの気の緩みや軽卒な行動が命に関わる重大な事故に繋がることもあります。
そのため、自然に対する正確な知識や的確に状況を判断する森林インストラクターは重要な仕事です。
また、森の魅力を多くの人に発信し、里山と都市とをつなぐ重要な役目も担っています。
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森林インストラクターになるには
森林インストラクターの資格取得が必須
森林インストラクターは国家資格ではありませんが、森林インストラクターを名乗って仕事をするには、社団法人全国インストラクター協会が主催する資格試験に合格し、同協会が作成する名簿に登録される必要があります。
地方自治体やNPOなどで働く人もいますが、森林インストラクターとして就職することは難しく、協会を通して仕事の依頼があった際に活動する人が多いです。
しかし、ボランティア団体やアウトドアショップなど、さまざまなところでその知識や技術を生かすことができるでしょう。
森林インストラクターの学校・学費
自然や植物について学ぶ
森林インストラクターになるために特別な学歴は必要ありません。
また、森林インストラクター試験に合格することに特化した大学や専門学校はありません。
しかし、森林や林業、植物学等について専門に学ぶことができる学科を持つ大学は全国にたくさんあります。
森林インストラクターを目指すのであれば、こうした専門学校や大学で広く自然や植物についての知識を学んでおくと、資格取得や実際に業務に就いたときに役立たせることができるでしょう。
森林インストラクターの資格・試験の難易度
合格率は40%以下と狭き門
森林インストラクターの合格率は40%以下になることも少なくなく、独学で資格を取得するのはなかなか難しい資格です。
そのため試験対策ができる通信教育講座もあります。
ただし通信教育では実技部分を補うことが難しいので、積極的に自然観察会や森林ボランティア活動などに参加するなどの対策が必要になります。
また森林インストラクター協会では資格を取得するために必要な知識や技術を学ぶことができる養成講習を開講しているため、効率的に学びたい方はこれを利用するのも一つの方法です。
森林インストラクターの給料・年収
収入が見込める仕事ではない
森林インストラクターの資格を得ても、それだけですぐに仕事が始められたり就職ができたりするわけではありません。
森林インストラクターは、ボランティアで活動する人も多いため、それほど収入が見込める仕事ではありません。
地方自治体へ就職すれば地方公務員として給料も待遇も安定していますが、活躍できる部署は限られるので、ごく限られた人のみでしょう。
なお、民間企業やNPOで依頼を受けて単発で仕事をする場合は、日給数千円から1万円程度が相場となっているようです。
関連記事森林インストラクターの年収はいくら? 給料についてくわしく解説
森林インストラクターの現状と将来性・今後の見通し
既存の活動にとらわれないアイデア
現在、森林インストラクターという仕事はまだ発展途上です。
知名度も低く、生計を立てるための収入を得るのは難しい状況です。
そんな中で森林や自然環境で働いていくには、森林インストラクターの資格だけにとらわれずに新たな需要を作り上げる必要があります。
医療と森林を結びつけた森林セラピーなど、他の分野との連携し新たな仕事の場を広げていく必要があるでしょう。
既存の活動にとらわれない斬新なアイデアを持ち、さまざまな分野と連携した需要を生み出していくことが、今後の森林インストラクターには求められます。
森林インストラクターの就職先・活躍の場
公の機関やNPOなど
森林インストラクターの活躍の場は、公的機関と民間企業とがあります。
まず、公の機関は、都道府県の農業課や林務課、国立公園のビジターセンターなどの職員として就職する方法があります。
民間企業に就職するのであれば、アウトドアショップで働いたり、森林でのツアーを組む会社で働いたりする方法があります。
最近ではNPOでも同様に活動している人たちがいるため、視野を広げれば実にさまざまなところに活躍の場が広がっているといえるでしょう。
森林インストラクターの1日
季節や天候の影響を強く受ける業務スタイル
森林インストラクターの仕事は、自然に触れる仕事であることから「季節」や「天候」の影響を強く受けることになります。
春から秋にかけては四季それぞれの特色を盛り込んだ仕事を行いますが、冬は対人業務が少なくなる傾向にあります。
休日や行楽シーズン、長期休暇などのタイミングでツアーの依頼などが舞い込んでくることが多く、平日に休暇をとる森林インストラクターが多いです。
<国立公園で働く森林インストラクターの1日>
6:00 起床
9:00 出勤
10:00 ガイド開始
12:00 昼食
13:00 資料作り
16:00 自然教室の打ち合わせ
18:00 退勤
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森林インストラクターのやりがい、楽しさ
里山と都市の架け橋に
近年では都会育ちの子も多く「虫を捕まえたことがない」「山菜を採ったことがない」「川で泳いだことがない」というような子も珍しくありません。
このような子どもたちに、バードウォッチングや山菜取り、森林浴などを通して森林の魅力やその役割を伝えるのも、森林インストラクターの仕事のひとつです。
仕事を通して、子どもたちに森林に興味を持ってもらえたり地球環境を守る心を養ってもらえたりするのが、森林インストラクターにとって何よりも嬉しいことです。
森林インストラクターのつらいこと、大変なこと
お客さまの安全を守る
自然というのは、わたしたち人間に突然牙をむくときがあります。
山の天気は変わりやすく、晴天だと思っていたのに突然激しい雨が降ることもありますし、その雨が川の氾濫や土砂災害を引き起こすこともあります。
自然の中で活動をするということは、常に危険との隣り合わせなのです。
森林インストラクターは、こうしたことを頭に入れながら、常に「お客さんの命を預かっている」ということを忘れず、責任の重さを感じながら仕事をしなければなりません。
森林インストラクターに向いている人・適性
プレゼンテーション力と危機管理能力
森林インストラクターは、小さな子どもからお年寄りまでさまざまな年齢層のお客さまにわかりやすくて面白いガイドをしなくてはなりません。
プレゼンテーション能力があり、人に何かを伝えるのが得意!という人ならば、こうした仕事も上手にこなすことができるでしょう。
またそれだけでなく、自然の猛威についてもしっかりと教えたり、先回りして危険を予測し慎重に行動できたりする危機管理能力の高い人でなければ、森林インストラクターは務まりません。
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森林インストラクター志望動機・目指すきっかけ
アウトドアや自然が好き
この仕事を志す人は、「キャンプが好き」「動植物に興味がある」「山登りが得意」など森林に愛着があるアウトドア派の人が多いことが特徴です。
森林インストラクター自身が、森林のことを深く理解し愛する心を持っていなければ、その楽しさを伝えることはできないでしょう。
またアウトドアや自然が好きな人たちにとっては、大好きな自然に囲まれながら働くことができる森林インストラクターの仕事は、何よりも刺激的で楽しい仕事だといえ、やりがいも感じられるでしょう。
森林インストラクターの雇用形態・働き方
ボランティアの募集も多い
森林インストラクターの仕事は、アルバイトやボランティアによって行われていることも多く、ガイドは食事代や宿泊費程度しかもらえないということもあります。
ボランティアではなくても、ガイドやアクティビティのインストラクターはそれほど多い報酬を得られるわけではなく、給料としては低い金額になってしまうこともあります。
アルバイトを掛け持ちしたり季節によって観光地を転々としたりしながら、森林インストラクターを務める人も少なくありません。
森林インストラクターの勤務時間・休日・生活
週末や長期休暇が多忙に
森林インストラクターの仕事は、週末のほうが忙しいと言えます。
集客のため、どうしても土日や祝日に仕事が集中するのです。
同じ理由で、春休みや夏休みのような長期休暇も忙しくなります。
このため、休みは平日に取ることになったり、ツアーの少ない冬にまとめて休むことになったりというのが一般的です。
また、季節や天候によっても仕事量が左右されやすく、働いている森林・自然の状況や悪天候によって仕事がなくなることも少なくありません。
森林インストラクターの求人・就職状況・需要
森林インストラクターの求人は少ない
森林インストラクターを目指す場合、「森林インストラクター」としての求人はほとんどないということをまず頭に入れて置かなくてはなりません。
森林インストラクターだけで生計を立てられる人はほとんどいないため、都道府県の職員や民間企業で働きながら、森林インストラクターとしての仕事をすることになります。
森林インストラクターとして働く勤務先は、大自然があり多くの人が訪れる場所に限定されるので、人気の観光地や世界遺産ではインストラクターが集中していて倍率も高くなっているようです。
森林インストラクターの転職状況・未経験採用
幅広い年齢層にチャンスが
森林インストラクターの求人には年齢制限があまりないことも特徴です。
資格を取得し、体力に自信さえあれば、誰でも森林インストラクターとして働くチャンスがあります。
森林インストラクターの仕事は土日祝日がメインですが「平日に参加できる人」「泊まり込みで参加できる人」を募集していることもあります。
このようなケースでは、定年退職後に活動しているような年配の方や、比較的時間に自由のきく大学生などが活躍していることも多いようです。
森林インストラクターは、年齢に関わらず転職しやすいといえるでしょう。