航空整備士になるには? どんな資格が必要?
航空整備士になるまでの道のり
中学卒業~高校
航空整備士は、「航空機」という複雑で高度な機械を扱う職種であるため、それに関する専門知識・スキルを身につけなくてはなりません。
中学卒業後は、機械・工学・航空学などを学べる高校に進むと、早くから航空整備士としての基礎を固めやすいでしょう。
数は少ないものの「日本航空高等学校」など、最近は高校で「航空科」を設置する学校も誕生しています。
高校卒業後は、そのまま「未経験可」「未資格者可」で採用している航空会社に就職し、見習いとして整備経歴を積みながら航空整備士の国家試験を目指す方法もあります。
ただし実際のところは、高卒のまったくの未経験者、未資格の人が航空整備士として就職するのは極めて難しく、現実的ではありません。
そのため航空整備士を目指す学生の多くは、航空整備士向けの大学や専門学校に通い、より専門的な知識と蓄え資格を取得したうえで、航空会社や航空整備会社に就職するのが一般的です。
高校~大学、専門学校
航空整備士を目指すにあたっては、国土交通大臣により「指定航空従事者養成施設」や「航空機整備訓練課程」として指定されている大学や専門学校で学ぶのが一般的です。
そのような学校で学ぶと、航空整備士の国家試験を受験する際の「受験資格」が緩和され、よりスムーズに試験合格を目指せます。
とくに指定航空従事者養成施設においては、実地試験免除の特典が得られるため、在学中の早い段階から「二等航空整備士」や「二等航空運航整備士」などの国家資格の取得が可能です。
さらに最近は、航空現場でのインターンシップ実習することで、最上位となる「一等航空整備士」の資格を在学中に取得できるコースを用意する学校も増えてきています。
養成施設で知識や資格を習得し、卒業後はJALやANAなどの「航空会社」ではなく、JALエンジニアリングやANAラインメンテナンステクニクスなど航空会社が委託する「航空整備会社」に航空整備士職として就職するのが代表的なルートです。
一般的な4年制大学から技術総合職を目指すルート
指定を受けていない一般的な4年制大学の航空整備コースや大学の理工系学部に進学し、航空整備の道を目指す人もいます。
とくにJALやANAなどの大手航空会社の「技術総合職」を目指す場合においては、4年制大学卒の学歴が求められ、難関校出身の志望者も多数押し寄せてくるため、就職を有利に進めるためでは、偏差値の高い4年制大学を卒業した方がよい場合もあるようです。
また技術総合職の場合、整備のスペシャリストとしてずっと現場で働き続けるのではなく、将来的には現場から離れ、技術部門を取りまとめるゼネラリストとしての立場にキャリアアップしていく形となるため、その点も理解しておく必要があります。
高卒で航空整備士になるには
高卒者の採用は多くない
航空整備士の大量採用が行われていた昭和40年~50年代頃は、高卒者を航空整備士として採用することも珍しくはなかったようですが、現在は、高卒者を採用する会社は数が限られてきます。
とくにJALやANA系列の大手航空整備会社の場合、新卒採用の対象者は工業高等専門学校卒や航空専門学校卒、もしくは大学・大学院卒となっています。
つまり、高卒の人の場合は学歴の段階で弾かれてしまうことも多いです。
また、プロの航空整備士として働くには高度な専門知識が必要であり、さらには「二等航空整備士」や「一等航空整備士」といった国家資格も求められてくるため、やはり専門の学校で基礎を学んできた学生が求められる傾向です。
そのため航空整備士を目指す学生の多くは、高校卒業後、国土交通大臣により「指定航空従事者養成施設」や「航空機整備訓練課程」として指定されている大学や専門学校に進学します。
在学中に関連知識を身につけ、最低限の資格を取得したうえで整備会社などに就職するのが一般的なルートです。
高卒者が航空整備士になるには?
高卒者が専門学校や大学に進学せず、航空整備士として就職するのは極めて難しいのが現状です。
ただし100%不可能というわけはなく、いつくかルートは用意されています。
未経験可の整備会社に就職する
JALやANA系列の「大手」の航空整備会社は、高卒者を採用することは少ないです。
一方、昨今は航空整備士の人手不足が進んでいることもあり、中小やベンチャーの航空整備会社であれば、「未経験可」「学歴不問」「無資格可」「年齢不問」などの条件で求人を出している会社もちらほらと見られます。
そのような未経験可、学歴不問の整備会社であれば、文字通り高卒の未経験者であっても就職することは可能です。
ただし、航空整備士として本格的な航空整備業務を行うには、「二等航空整備士」や「一等航空整備士」といった国家資格が必要です。
したがって未経験で採用された場合は、基本的には整備の補助作業などを行う見習い整備士としての扱いになるでしょう。
航空自衛隊や官公庁の整備士を目指す
高校卒業後、「航空自衛隊」や「海上保安庁」の採用試験を受けて入隊し、航空機整備員になるという道もあります。
ただし、配属先は適性などによっても判断されることがあり、確実に航空機整備員の職に就ける保証はありません。
また、高校卒業後「警察」や「消防」といった官公庁の航空隊を目指すルートもあります。
警察や消防の採用試験も高卒で受験できるため、学歴的にはなんら問題はありません。
ただし、こちらも必ずしも航空隊に配属されるとは限らず、訓練に耐えうるだけの強い覚悟や熱意も必要です。
このように、航空自衛隊や官公庁に採用され航空整備士を目指すルートもありますが、やはり不確定要素が多くなり、適性に応じて航空整備とはまったく異なる部署に回される恐れもあります。
確実に航空整備の仕事に就きたい場合は、高校卒業後、国土交通大臣により指定を受けている大学や専門学校で航空整備について学び、その後は航空整備会社の「航空整備士職採用」で就職したほうが確実性は高いでしょう。
「航空科」を用意する高校も存在する
数は少ないものの、高校の段階から航空整備について学べる学校もあります。
たとえば山梨県にある「日本航空高等学校」は、日本では極めて珍しい「航空科」を設置する高等学校です。
同校の「航空科 航空工学コース メカニック専攻」では、航空整備士・設計技術者などのエンジニアを目指すための専門的な教育が行われており、エンジンや機体の整備実習を通して、機体の構造や航空力学を学ぶことができます。
小学生、中学生のうちから航空整備士を目指している人の場合は、このような専門的な高校に進学し、早くから基礎を身につけておくという道もあります。
20代で正社員への就職・転職
航空整備士の資格・難易度
資格は必要か?
航空法でも定められている通り、航空機の整備するには、国家試験に合格して航空整備士の国家資格を取得する必要があります。
雑用的な補助作業であれば資格がなくても行える場合もありますが、部品交換や修理など、本格的な整備業務に携わるには、その業務に応じた国家資格が必要となってきます。
入社時の段階では必ずしも資格が必要となるわけではありませんが、いずれ一人前の航空整備士としてひとり立ちしていくには、働きながら「二等航空整備士」や「一等航空整備士」の国家資格の取得を目指す必要があります。
なお、航空整備士を目指す学生のほとんどは養成施設に入学し、在学中に資格を取得した上で整備会社へ就職しているのが実際のところでもあります。
資格の種類
航空整備士の国家試験としては、以下5種類が存在します。
<航空整備士の国家試験>
・一等航空整備士:大型機(旅客機や大型ヘリコプターなど)の整備全般に携われる。一等航空運航整備士としての業務も行える。
・一等航空運航整備士:大型機における「ライン整備」などの運航に関わる軽微な整備に携われる。
・二等航空整備士:小~中型機(小型の飛行機やヘリコプターなど)の整備全般に携われる。二等航空運航整備士としての業務も行える。
・二等航空運航整備士:小~中型機における「ライン整備」などの運航に関わる軽微な整備に携われる。
・航空工場整備士:航空機の部品の整備する際に必要となる資格。
たとえば、空港でジャンボジェット機のような大型旅客機の整備に携わりたい場合には、最終的に「一等航空整備士」を目指す必要があります。
新聞社やテレビ局などで小型ヘリコプターの整備に携わりたい場合であれば、「二等航空整備士」以上の資格を目指す必要があります。
なお、「〇〇航空整備士」は整備全般に携われる上位資格で、「〇〇運航整備士」はライン整備のような軽微な整備にのみ携われる下位の資格です。
資格の合格率や難易度
航空整備士試験の合格率については、試験を運営する国土交通省側が非公開としているため、合格率の具体的な数値から難易度を測ることはできません。
とはいえ、「指定航空従事者養成施設」などの学校では、毎年100%の合格率を叩き出しているところがほとんどであり、十分な教育を受ければ合格は現実的な試験ともいえます。
ただし、専門的な内容を問われる国家試験であるため、内容的には決して簡単ではなく、実務経験があったとしてもまったく勉強をしなければ合格は難しいでしょう。
就職後に資格取得を目指す人もいますが、その場合は仕事から帰宅後に毎日何時間も勉強する日々になることは避けられません。
航空整備士になるための学校と学費(大学・専門学校)
航空整備士になるための学校の種類
航空整備士の学校の種類
高校卒業後、航空整備士になるために通う学校の種類としては、大きく以下3種類に分けられます。
・指定航空従事者養成施設
・航空機整備訓練課程
・一般的な4年制大学の理工系学部など
航空整備士を目指す学生の場合、国土交通大臣により「指定航空従事者養成施設」や「航空機整備訓練課程」の指定を受けている大学や専門学校で学ぶのが通例です。
その他、指定を受けていない一般的な4年制大学の理工系学部や航空コースなどで学ぶルートもあります。
ただしこちらは航空整備士職として就職するというよりも、4年制大学卒の学歴を活かし、JALやANAなどの航空会社の「技術総合職」に就職したい人向けのルートとなってきます。
航空整備士の学校には通う必要はあるか?
大手の航空整備会社や航空会社の場合、新卒採用時に次のような学歴的制限を設けていることが多いです。
<新卒採用と学歴>
・大手航空整備会社の「航空整備士職」採用:高等専門学校、航空専門学校、4年制大学または大学院で、航空整備分野を学んだ学生が対象
・大手航空会社の「技術総合職」採用:4年制大学または大学院の理系学部・学科を卒業または修了見込みの学生が対象
大手系の航空整備会社や航空会社を中心に、このような学歴的制限が入ることがあるため、高卒の人が航空整備士として就職するのは難しいのが現実です。
また、航空整備士は専門性が問われる仕事であるため、たとえ高校卒業後「未経験可」、「学歴不問」のような整備会社に就職できたとしても、まったく基礎知識のないまま航空整備に携わるのは現実的でない部分もあり、苦労も伴います。
したがって、航空整備士を目指す学生の多くは、高校卒業後は航空関連の専門学校や大学に進み、専門知識や資格を取得した上で就職活動をするのが一般的です。
航空整備士の学校に通うと資格も取得しやすくなる
学校に通うことで、航空整備士の国家資格が取得しやすくなるという大きなメリットもありあります。
航空整備士試験を受験するには、一定年数の「整備経歴」が受験資格として必要です。
前述した「指定航空従事者養成施設」や「航空機整備訓練課程」の指定を受けている学校で学ぶと、本業としての実務経験がなくとも、学業が整備経歴としてカウントされるため、より早くに航空整備士試験を受験できます。
<学校の種類と受験資格への影響>
・指定航空従事者養成施設:学業が整備経歴として認められる。かつ実地試験が免除となる。
・航空機整備訓練課程:学業が整備経歴として認められる。
・一般的な4年制大学の理工系学部など:学業は整備経歴として認められない。
努力次第では、在学中に「二等航空整備士」や「一等航空整備士」の資格を取得することも可能で、資格を取得していれば就職活動もより有利に進められるでしょう。
航空整備士になるための「指定航空従事者養成施設」
学校の特徴
「指定航空従事者養成施設」は、国土交通大臣から航空整備士の教育施設として指定を受けている学校を指します。
<指定航空従事者養成施設に該当する学校>
・中日本航空専門学校
・国際航空専門学校
・千葉職業能力開発短期大学校
・日本航空専門学校
・東日本航空専門学校
・崇城大学
・大阪航空専門学校
・株式会社JALエンジニアリング 人財開発部
・全日本空輸株式会社 整備センター教育訓練部
最新の養成施設一覧は以下よりご確認ください。
国土交通省 航空従事者の養成について
指定航空従事者養成施設では、航空整備に関する知識や技術スキルを学べ、航空整備士試験合格に向けたカリキュラムも組まれています。
ほとんどの指定航空従事者養成施設は、航空整備士試験において、毎年100%の合格率を叩き出しています。
メリット・デメリット
指定航空従事者養成施設で学ぶと、学業が「整備経歴」としてカウントされます。
これにより、航空整備士試験の受験資格として必要となる整備経歴を満たせて、在学中に「二等航空整備士」などの資格試験を受験することが可能です。
昨今は、航空現場でのインターン実習することで、最上位の「一等航空整備士」を在学中に受験できるコースも用意されています。
さらに指定航空従事者養成施設で学ぶと、航空整備士試験における「実地試験」が免除になる大きな特典もあります。
一方、デメリットとしては、指定航空従事者養成施設は全国で9校ほどしかなく、数が限られていることです。
このため、学校によっては定員オーバーとなることもあり、また自宅の近くに指定航空従事者養成施設がない場合は、引っ越しや一人暮らしを考える必要も出てきます。
学費について
学費は、学校によって多少上下しますが、目安としては年間100万円~120万円程度が相場です。
たとえば、指定航空従事者養成施設として有名な「中日本航空専門学校」の学費は年間で約120万円で、3年制となるため入学~卒業までの学費総額は約360万円です。
学校やコースによって、2年制、3年制、4年制(4年制大学の指定航空従事者養成施設)は変わってくるため、入学前に何年制かをよく確認しておく必要があります。
航空整備士になるための「航空機整備訓練課程」
学校の特徴
「航空機整備訓練課程」も「指定航空従事者養成施設」と同じく、国土交通大臣から航空整備士の教育施設として指定を受けている学校を指します。
航空機整備訓練課程として指定を受けている学校は以下のようなところがあります。
<航空機整備訓練課程に該当する学校>
・成田つくば航空専門学校
・第一工業大学
航空機整備訓練課程においても、航空整備に関する知識や技術スキルを学べて、航空整備士試験合格に向けたカリキュラムも組まれています。
メリット・デメリット
航空機整備訓練課程で学んだ場合においても、指定航空従事者養成施設で学んだ場合と同じように、学業が「整備経歴」としてカウントされます。
このため、学校に通わず航空整備士試験を受ける人に比べ、数年早くに整備士試験を受験できるようになるメリットがあります。
ただし、航空機整備訓練課程の場合は、指定航空従事者養成施設のように「実地試験」は免除になりません。
デメリットは、こちらも学校の数が少ないことであり、平成27年時点で航空機整備訓練課程に該当する学校は、全国で「成田つくば航空専門学校」と「第一工業大学」の2校しかありません。
通うにしても、ほとんどの人は学校の近くへの引っ越しや一人暮らしの算段をする必要となり、入学までのハードルは高いといえるでしょう。
学費について
航空機整備訓練課程の学費も、年間100万円~120万円程度が相場です。
なお「成田つくば航空専門学校」は3年制の専門学校、「第一工業大学」は4年制の大学となるため、それぞれの年数に応じた学費が必要となります。
航空整備士になるための大学(理工学部など)
学校の特徴
国土交通大臣から指定を受けていない一般的な4年制大学の理工学部や航空コースなどで学び、卒業後に航空会社の「技術総合職」などを目指すルートもあります。
一般的な4年制大学の場合は、現場で使えるような実務的なスキルが学べるというよりも、理論をアカデミックに身につけることが可能です。
また4年制大学では、他の学部・学科の授業なども受講できるため、幅広い一般教養を学べます。
メリット・デメリット
一般的な4年制大学に進むメリットは、航空会社の「技術総合職」への就職で有利になることです。
JALやANAなど航空会社は、技術総合職の採用をしており、技術総合職として採用されると適性に合わせて各技術系部門に配属されます。
そのうちの整備部門などに配属されると、航空会社の社員として航空整備の仕事に携われます。
技術総合職の採用基準は「4年制大学または大学院の理系学部・学科を卒業または修了見込みの方」と設定している航空会社が多いです。
したがって、技術総合職を目指す場合には、専門学校よりも4年制大学を卒業した方が学歴的に就職有利に進めやすいという利点があります。
とくに大手航空会社は難関大学出身者が多数応募するため、できるだけ偏差値の高い大学に進学したほうが就職活動をスムーズに進めやすいでしょう。
また、4年制大学卒の学歴は他業種や他業界への就職際にも武器となり、仮に在学中に航空整備以外の分野に進路変更した場合でも有効活用できます。
一方でデメリットとしては、国土交通大臣から指定を受けていない一般的な4年制大学の場合、学業は整備経歴に一切含まれないことです。
仮に一般的な4年制大学を卒業後、航空整備士試験を受験する場合には、整備現場で実務に携わり、「二等航空整備士であれば整備経歴3年以上」「一等航空整備士であれば整備経歴4年以上」の整備経歴を積む必要が出てきます。
学費について
4年制大学の学費の目安は、「国立大学」の場合は4年間で約250万円、「私立大学」の場合は4年間で約400万円~550万円程度です。
学費が足りない場合には「奨学金制度」などを検討してみるのもよいでしょう。
航空整備士の学校選びのポイントは?
「指定航空従事者養成施設」で学んだほうがメリットは多い
「一等航空整備士」や「二等航空整備士」の国家資格は、できるだけ早いうちに取得するに越したことはありません。
資格取得を考えた場合、学業が整備経歴として認められ、実地試験も免除になる「指定航空従事者養成施設」で学ぶのがやはり確実で早いルートです。
なお、指定航空従事者養成施設の「崇城大学」や、航空機整備訓練課程の「第一工業大学」などは4年制大学となり、資格対策ができる上で同時に大学卒の学歴も得られるため、JALやANAなどの「技術総合職」を目指すことも可能です。
「技術総合職」を目指す場合の注意点
最初からJALやANAなどの「技術総合職」一本で決めている人の場合は、難関の4年制大学などに進学し、学歴を武器に技術総合職を目指す方法も選択肢に入るでしょう。
ただし、技術総合職の場合「整備部門」に配属されれば航空整備の業務に携われますが、
「品質保証部門」「技術部門」「機体計画・部品計画部門」など他の部門に配属となった場合、残念ながら航空機の整備を経験することは難しいです。
また、仮に整備部門に配属となった場合でも、技術総合職の場合は各部署をローテーションしながらゼネラリストとしての経験を積んでいくことが多く、将来的には技術部門の管理職の立場に就く形となるため、整備一本でキャリアを重ねていくことは難しくなります。
もしも航空整備士として、現場のスペシャリストとしてのキャリアを歩んでいきたい人は、航空会社の技術総合職ではなく、航空整備会社の航空整備士職として採用されるほうが適しているでしょう。
20代で正社員への就職・転職
航空整備士に向いている人
航空整備士に向いている人の性格的な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
<航空整備士に向いている人の特徴>
・責任感のある人
・誠実で嘘をつかない人
・時間を守れる人
・勉強し続けられる人
・手先が器用な人
とくに重要になってくるのは、1つ目の「責任感のある人」です。
航空整備は完璧な仕事が求められ、もしも離陸前の航空機の整備漏れや整備ミスがあると、墜落事故や死亡事故に発展する恐れもあります。
航空機は自動車のように簡単に停止できるものではないため、離陸前の整備に求められる責任は極めて大きく、航空整備士は多くの乗客の命を預かっている意識を持って働く必要があります。
したがって、普段から責任感をもち誠実に物事と向かい合える人、またその重い責任に耐えられるだけのメンタルのある人がこの仕事に向いています。
航空整備士のキャリアプラン・キャリアパス
一人前になるまでのキャリアパス
一人前の航空整備士になるうえで、「一等航空整備士」の資格を取得することが、目先の大きな目標になってくるでしょう。
入社後は、先輩のOJTを受けながら現場での整備経験を磨きつつ、一等航空整備士の勉強もあわせて進めていきます。
一等航空整備士の資格を取得すると、大型機の整備も含めた幅広い整備業務に携わるため、晴れて航空整備士としてのスタートラインを切れます。
なお、養成施設などに通わずまったくの未経験で就職した場合ですと、一等航空整備士の受験資格を得るために、最長で4年間の期間が整備経歴として必要です。
一人前になった後に必要な努力
一等航空整備士の資格を得ても、あくまでスタートラインに立ったに過ぎません。
「ボーイング〇〇〇」「エアバス〇〇〇」など、航空機の機体別の資格も用意されており、整備士としての幅を広げるにはそれら機体別の資格も取得していく必要があります。
その他にも、「ライン確認主任者」「出発確認主任者」「装備品確認主任者」などの社内資格も用意されており、キャリアアップするには社内資格の合格も目指す必要が出てきます。
そのように航空整備士には数多くの資格が用意されており、資格にあわせてキャリアアップの制度が細かく定められている整備会社も多く、常に資格勉強の努力が求められる大変さがあります。
同時に、頑張ればそれだけ評価される環境でもあるため、それが航空整備士たちの向上心にも繋がってもいるようです。
資格だけに限らず、実務の腕も日々磨いていく必要もあります。
航空整備士の仕事は職人的な意味合いも強く、プロフェッショナルな腕を身につけるには長い年月が掛かります。
テクノロジーも常に進化してもいるため、何歳になっても腕を磨くことに終わりはなく、第一線で活躍するには、常に新しい技術を吸収する姿勢と向上心が求められてきます。
その先のキャリアプラン
資格を取得し、経験を積むことで、将来的には「大型機の整備に携われる」、「高度な技術が必要なドック整備やショップ整備に携われる」、「海外の空港などで整備に携われる」など、活躍の場が広がっていきます。
また、ゆくゆくは整備士たちを纏める管理職にステップアップできるケースもあります。
もちろん現場の整備士としてキャリアを歩んでいく道も用意されており、定年まで現場の第一線でプロフェッショナルな整備士として活躍することも可能です。
その他にも、航空機メーカーの開発職など、航空整備の経験を生かし類似する職業に転職する道もあります。
航空整備士を目指せる年齢は?
航空整備士試験を受験するには年齢の下限制限があり、二等航空整備士は19歳以上、一等航空整備士は20歳以上でなければ国家試験を受験できません。
一方で上限の年齢は制限されていないため、極端にいえば何歳になっても航空整備士の資格を取得し、航空整備士として働くことも可能です。
航空整備士の業界は高齢化が進んでおり、現在、航空整備士の中心層は40代~60代の中高年層となってきています。
同時に、航空整備士の人手不足が進行しつつあり、経験のある整備士に対して定年後再雇用も積極的に行われているような状況であることから、年齢が高いからといって働けない仕事ではありません。
とはいえ、未経験で航空整備士を目指す人の大半は10代~20代の若年層となり、また航空整備士が一人前になるまでには長い年月を要します。
30代~40代に入ってから航空整備士を目指すことは不可能ではないものの、相応の苦労が伴いますので、目指す年齢は早いに越したことはありません。
航空整備士は女性でもなれる?
航空整備士はもちろん女性でもなることは可能です。
就職する際にも、企業側が男女別で定員を設けることはなく、性別関係なく採用されています。
航空整備士の国家試験を受験する上でも、男女の性別的な制限はありません。
ただし筋力や身長が低い女性の場合、力の必要な作業や高所の作業などは、苦労することもあるでしょう。
反面、一般的に女性は男性よりコミュニケーションに長けているため、チームワークが求められる航空整備の現場では、女性ならではの気配りのよさなどが生きることもあります。
いずれにしても女性だからなれない職業というわけではなく、現場の第一線で活躍している女性航空整備士も世の中にはたくさんいます。
航空整備士の求人・採用の状況
航空整備士の就職先にはどんなところがある?
特殊なスキルをもつ航空整備士にはさまざまな働きの場があります。
<航空整備士の主な就職先の例>
・航空会社(大手の例:JAL、ANAなど)
・航空整備会社(大手の例:JALエンジニアリング、ANAラインメンテナンステクニクスなど)
・官公庁(警察、消防、海上自衛隊、航空自衛隊など)
・航空機関連メーカー(大手の例:三菱重工業、三菱航空機、川崎重工業、ジャレコなど)
・その他(テレビ局、新聞社、自家用航空機をもつ企業や富豪宅など)
なかでも代表的な就職先といえるのが「航空整備会社」です。
航空会社に所属して航空整備に関わる人は決して多くなく、JALやANAなどが保有する旅客機の整備を行っているのは、それらが委託する航空整備会社の航空整備士であることが多いです。
そのため、航空整備士を目指す学生の多くは、航空整備会社の「航空整備士職採用」を受験することになります。
そのほか「警察」「消防」「自衛隊」などの官公庁でも、たくさんの航空機やヘリコプターなどを保有しており、こちらも航空整備士の就職先です。
航空整備士の求人の状況
全体的な求人の傾向
「大量の人口を誇るベテラン整備士の定年退職」「航空機の発着数増加」「航空整備士を目指す若者の減少」などが影響し、航空整備士の人手不足が進みつつあります。
そのため、業界全体で航空整備士の需要は高まっている傾向です。
しかし、育成にコストのかかる未経験者を採用する会社は決して多くなく、企業側としては、専門の学校で航空整備について学んできた学生、もしくは既に航空整備士として働いた経験のある即戦力となる人材を求めたがります。
航空整備士向けの求人も増加傾向にありますが、その多くは新卒学生や既卒の経験者を対象としたものであり、未経験者向けの求人はかなりに数が限られてきます。
「航空整備会社」の求人状況
「JALエンジニアリング」や「ANAラインメンテナンステクニクス」など、大手の整備会社の場合、毎年数十名の新卒採用が行われています。
学歴としては、航空専門学校・高等専門学校・大学(大学院)などで航空整備について学んできた学生が採用対象となることが多いです。
「航空整備士職」としての採用となるため、志望する学生も専門の教育施設で学んできた学生が多くなります。
なかには、在学中に「二等航空整備士」や「一等航空整備士」の取得した上で志望する学生もいます。
すでに航空整備の基礎を身に付けた学生たちがライバルとなるため、航空整備とは関連性の薄い学部・学科の出身者は、就職活動で苦戦することもあるでしょう。
「技術総合職」の求人状況
JALやANAのような航空会社の「技術総合職」でも、新卒の求人が出される年度が多いです。
一般的に4年制大学または大学院の理系学部・学科で学んだ学生が採用対象となり、採用倍率の高い職種であり、難関大学出身の学生も多数応募するため狭き門といえます。
航空会社の技術総合職は、適性によってさまざまな部署に配属される形となり、航空整備に携わることができるのは「整備部門」などの特定の部門に配属された場合のみです。
また、将来的には航空整備士というよりも、技術部門のゼネラリストとしてのキャリアを歩む形になるため、その点は理解しておく必要があります。
中途採用の求人状況
各社で航空整備士の人手不足が進んでいることもあり、すでに航空整備士の経験や資格をもつ人に対しては積極的に中途採用が行われており、奪い合いが進んでいます。
とくに最近は、発着便が増えているLCC(格安航空会社)系の航空整備士求人が増加傾向です。
経験者向けの求人の場合、「一等航空整備士」の資格を持っていれば優遇されるケースが多く、なかには「二等航空整備士」でも応募できるところもあります。
一方で、「未経験可」「資格不問」「学歴不問」など、未経験者向けに条件を緩くした求人を出す整備会社もあるにはありますが、数としては限られてきます。
航空整備士の就職先の選び方
空港で働くか、空港以外で働くか
「JALエンジニアリング」「ANAラインメンテナンステクニクス」などの航空会社系列の整備会社に就職すると、空港での旅客機の整備に携わることが多くなるでしょう。
空港で働く場合、ジャンボジェット機のような大型旅客機の整備に携われる魅力もありますが、同時に空港では24時間体制の整備が行われているため、3交代制などでのシフト勤務となり不規則な生活が強いられるというデメリットもあります。
一方で、官公庁(警察、消防、自衛隊など)、テレビ局、新聞社などに就職すると、空港ではなく各々の敷地内での整備作業となることが多いです。
空港のように24時間体制の不規則勤務が発生しにくいというメリットがありますが、ヘリコプターなどの小型機の整備が中心となり、空港のように大型機の整備には携わりにくいです。
自分にとってどちらが合っているかよく考慮したうえで選ぶことをおすすめします。
どの分野の航空整備が行いたいか
航空整備会社にもさまざまな種類があり、分野問わず総合的に請け負う整備会社もあれば、それぞれの分野に特化した整備会社も存在します。
たとえば、ANA系列であれば、到着機のライン整備を中心に手掛ける「ANAラインメンテナンステクニクス」、格納庫内でのドック整備を中心に手掛ける「ANAベースメンテナンステクニクス」、航空機の装飾品の整備を手掛ける「ANAコンポーネントテクニクス」など、整備分野別に会社が分けられています。
一分野に特化した整備会社では、その分野に特化した経験を積み、スペシャリストを目指せます。
待遇をチェックする
航空整備会社によって、給料制度、休暇制度、福利厚生などの仕組みは異なります。
手厚い「住宅手当」や「資格手当」が支給される会社、優待航空券などが社員特典として支給される会社など、待遇は会社によってさまざまです。
また、官公庁(警察、消防、自衛隊など)に就職する場合は「公務員」としての採用となるケースも多く、国から公務員としての手厚い待遇が受けられることもあります。
航空整備士の志望動機・面接
航空整備士の仕事は体力的にハードな側面もあるため、「なぜ航空整備士を目指すのか」の部分が明確になっている学生を求めている傾向があります。
したがって、航空整備士を目指す理由を明確にし、具体的に伝えられると、好印象を与えやすいでしょう。
また、航空整備士の業務はひとつ間違えば乗客の命にかかわることもあるため、正確さや丁寧さが求められ、また時間に対してルーズであると務まりません。
そのため、履歴書やエントリーシートの文字1つ1つも正確かつ丁寧に記載し、面接などの時間も遅刻なくしっかりと守る必要があります。
就職先はどのように探したらいい?
就職サイトで探す
新卒学生であれば、「リクナビ」や「マイナビ」といった就職サイト経由で、新卒向けの航空整備士求人にエントリーできます。
JALやANAといった大手の航空会社や大手系列の航空整備会社のほとんどは、リクナビもしくはマイナビからエントリー可能です。
就職サイトは無料で利用できるため、まずはいくつかの就職サイトに登録しておくことをおすすめします。
「就職課」経由で探す
大学や専門学校には「就職課」が設置されています。
就職課では、これから就職活動をする学生に向け、会社情報の提供、進路相談、エントリーシートや履歴書の作成指導、面接の練習などのサポートを行ってくれています。
また、航空整備に関する専門な教育を行っている大学・専門学校には、独自ルートで航空会社や航空整備会社から毎年多くの求人が届くようです。
学校経由で、自分に合った就職先が見つかることもありますので、就職活動時には就職課にも足を運んでおくのがよいでしょう。
各自治体のホームページで探す
警察や消防など官公庁系の航空整備士の募集は、各自治体のホームぺージに掲載されていることがあります。
たとえば「〇〇県 消防ヘリコプター採用」といったように、各都道府県もしくは各市町村のホームページで、航空整備士の採用試験や求人募集の案内が載せられていることがあります。
その自治体に住んでいないとエントリーできないという訳でもありませんから、視野を全国の自治体にまで広げて、希望の求人がないかを探してみるのもおすすめです。