海事代理士の現状と将来性
貿易に関わる重要な仕事
海事代理士は、日本にさまざまある法律専門職のなかでも、海事に関する法律の専門家として活躍することができる資格です。
知名度はさほど高くありませんが、行政書士、司法書士などと同じような国家資格であり、社会的な評価はしっかりと確立されているといえるでしょう。
海事代理士は、そのおもな業務内容から「海事に関する行政書士・司法書士・社会保険労務士」といわれることもあり、海事に関連する申請や届出、船舶登録や登記、船員に関する労働関係の処理といった幅広い仕事を手掛けることができます。
海事の法律は貿易業にも大きく関わっていく重要なものとなっており、海事代理士はつねに一定の需要がある仕事といえます。
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専業で働くのは難しい
しかし現状では、海事代理士はこの資格のみの専業で働くことは難しいといわれています。
その理由としては、まず活躍できるエリアが限られることが挙げられます。
海事代理士は海事に関係する仕事を行うため、どうしても港湾に近い場所で、かつある程度の規模の都市でビジネスを手掛ける必要が出てきます。
また、海事代理士の業務範囲は司法書士、行政書士、社会保険労務士といった他の士業系資格と若干重なっているところもあるため、海事代理士だけの強みが発揮しにくいのです。
そのため、すでに行政書士や社会保険労務士などとして活躍している人が、プラスアルファの知識を備えるために海事代理士になるケースが大半を占めているのが実情です。
将来性は?
近年は不況の影響で、日本の海運会社が安価な外国籍の船舶を使うことが増えています。
これにより必然的に日本の船籍を持つ船が減ったため、海事代理士の職務は窮地に立たされているといわれます。
この先も不況から抜け出せる保証はなく、将来性にも不安を拭えません。
こうした背景からも、やはり海事代理士の資格のみで独立開業を目指すのは難しいといえるでしょう。
行政書士や司法書士、社会保険労務士などの資格を併せて取得するなど、仕事の幅を広げる手段が必要になるでしょう。
海や船がこのうえなく好きで海事代理士しか取りたくないという人の場合、他の職業と兼業しなければ収入の安定は見込みにくいといえます。
実際、船舶売買の仲介業など別の仕事をしながら海事代理士としての知識も生かしている人も多いようです。