金融工学とは? 大学で学ぶことや就職先は?

金融工学の概要・理念
金融の世界においては、将来どのようなリスクが生じるのかが不透明であり、いかにリスクを避けて効率的に収益を得るかが重要な課題となります。
金融工学は、確率や統計などの数学的手法を用いてこうしたリスクを分析する数理工学の一分野です。
金融工学の歴史は、1950年代にアメリカのH・M・マルコビッツがリスクとリターンを数学的に定義した上で、資産運用においては分散投資が有効であることを統計学的に証明したことが発端となっています。
近年では、よく知られている理論としてフィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズが提唱したブラック・ショールズ・モデルが挙げられます。
オプション価格算出のための理論式を提唱したこの理論に対して、1997年にノーベル賞が授与されています。
このように、金融工学は予測不能と思われがちな金融商品などの将来的なリスクについて、数理的アプローチによって分析し、理論として確立することを目指す学問領域です。
金融工学で学ぶこと
金融工学は大学においては工学部で扱われるのが一般的です。
ファイナンスを数理的アプローチで研究する分野には数理ファイナンスと金融工学があり、前者は純粋数学的な側面が強く、後者は数理工学的側面が強いと言われています。
数理ファイナンスで提唱されたモデルや理論に対して、現実の金融市場において生じる可能性のあるリスクやその管理について、より実証的な視点から検証・分析していきます。
そのため、金融工学を学ぶにあたっては金融経済全般に対する知見が求められると同時に、数学や物理学の知識も高いレベルが求められることになります。
金融工学において必要とされる確率過程論や時系列解析といった数理的手法を学び、現実の金融資産のリスク管理を行うための方法論としてまとめることを目指します。
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金融工学の大学での授業科目の例
金融経済論
金融商品の価格形成や投資行動、企業の資本構成などを分析対象として研究します。
確率過程論
時間の経過とともに確率変数が変化する理論を学び、株価や為替の変動などに応用する手法を研究します。
時系列解析
過去のデータから継続的な時間変動を分析することで、将来の予測を行う方法について学びます。
統計物理学(統計力学)
熱力学において物質の性質を統計平均的な法則で分析する手法を、金融の分野に応用する方法を学びます。
計量ファイナンス
企業の財務指標や保険統計といった金融データの分析を通して、情報を体系化された知識へと高める方法を探求します。
金融工学のレポート・テーマの例
金融工学のレポートにおいては、現実の金融市場で起きていることに対し、いかに数理的手法を駆使して分析や予測を行うかを論じます。
金融商品や資産管理についての知識と、統計学をはじめとする数学・物理学の知識の両面が必要とされます。
- 株価変動のファットテイルとハイピーク
- 経済の不確実性とリアル・オプションについて
- 債務超過期間を考慮した割引債価格評価モデルについて
- 風速デリバティブのオプションプライシング
- 価格決定の閾値モデルによるLevi分布の生成
金融工学と関連する学問
金融工学の研究対象となるのは金融商品や企業の財務諸表などであるため、経済学や経営学との関連性は高く、これらの学問の知識も不可欠なものとなっています。
また、金融を数理的アプローチによって分析する上で数学の知識は欠かせません。
金融とは別の分野で培われてきた理論を応用することも少なくありません。
物理学における熱力学の理論を統計分析に応用する統計物理学はその代表的な例です。
さらに、投資家の行動や消費者の購買行動を考慮する上で、心理学や社会学の知識が求められることもあります。
金融工学を学んで就職に有利な業界・仕事
金融工学の専門知識を活かせる業界としては金融業界が中心となります。
一例としては、銀行(政府系、都市銀行、信託銀行、投資銀行)、証券会社、保険会社、資産運用会社などが挙げられます。
近年はFinTechの動きが注目されていることから、FinTech関連の開発を行うベンチャー企業や開発会社という選択肢もあり得るでしょう。
職種としては、戦略コンサルタントやアナリスト、シンクタンク研究員、証券外交員、銀行員などが想定されます。
保険会社において保険商品の設計を担うアクチュアリーなどの職種も、金融に関する専門知識とともに数学の能力が求められる職種ですので、金融工学で学んだ知識を活かすことができるでしょう。
こうした職種は金融に関する知識だけでは太刀打ちできないことから、経済学や経営学を学んできた人材よりもさらに専門性の高い知識を有する人材と見なされることも多く、就職において有利になる可能性が高いと言えます。
金融工学の知識は人生でどう役立つ?
デリバティブなどの金融関連商品は細分化が進み、消費者にとって難解なものになりつつあります。
金融資産の管理や運用をしていく場合はもちろんのこと、こうした金融商品の購入を検討する上においても、金融工学で学んだリスク分析の知識は大いに役立つでしょう。
また、金融工学は金融という不確実性に満ちた世界を数理的に分析する学問です。
私たちが生きていく上で、先の見通しが立ちにくい不確実な状況はいくらでもあります。
こうした状況を客観的に分析し、自分なりの見通しを立てていく上でも、金融工学のアプローチを応用することができる場面があるはずです。
変化の速い時代だからこそ、不確実性の中に一定の法則や理論を見出だす力が求められているのです。
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