自動車業界(読了時間:14分31秒)

自動車業界とは

クルマには、軽自動車・コンパクトカー・セダン・ミニバンから、トラックやバスといった商用車まで、さまざまな種類があります。

自動車業界では、それら豊富な種類の「4輪自動車」の開発や生産を行っています。

「トヨタ」や「日産」といった大手自動車メーカーは、1930年代より自動車産業への参入を始めていましたが、本格的に日本の自動車業界の成長が始まったのは第二次世界大戦後です。

戦後の1950年代より、「トヨタ・クラウン」、「日産・ダットサン」といった乗車モデルの生産が開始され、徐々に国内の一般家庭にも自動車の普及が進んでいきました。

その後、高度経済成長期に自動車は大きく普及し、質の高い日本車は国内のみならず海外でも高いシェアを持つようになりました。

国内最大手の「トヨタ」にいたっては、海外の「フォルクスワーゲン」、「ゼネラルモーターズ」といった巨大資本と肩を並べる、世界的な自動車メーカーにまで成長しました。

そうして今現在、日本の自動車産業は68兆円規模にまで成長し、500万人以上の人が働く巨大な産業となっています。

この規模は国内の産業の中でも最大級であり、自動車業界は日本を代表する基幹産業として、我が国を支えています。

自動車業界の役割

自動車において最も重要視されるのは、運動性能や快適機能以上に「安全性」です。

1トンを超える金属の塊を何十km/hもの速度を出し走行させますので、自動車は一つ間違えれば人の命を奪います。

したがって安全性を常に追求し、交通事故の少ない自動車社会をクルマづくりから目指すことが自動車業界の役割となります。

昨今は、高齢化社会の到来により、年配ドライバーによる事故も増えてきています。

年配ドライバー向けの安全装置を積極的に搭載するなど、時代に合わせた安全性の追求も今後より必要になってくるでしょう。

また自動車はガソリンを燃焼させることで、多くの「排気ガス」を出します。

近年は改善されてきましたが、かつては自動車の排気ガスが社会問題となっていた時代もありました。

引き続き排気ガスを削減し、よりクリーンな自動車社会を目指すこともこの業界のミッションとなってきます。

自動車業界の企業の種類とビジネスモデル

自動車業界の一般的なビジネスモデル

自動車業界の中心にいるのは、自動車メーカーです。

「自動車メーカー」は、クルマの設計・開発・生産などを一括して行います。

「自動車部品会社」は、自動車メーカーへクルマ用の部品を納めることで利益をあげます。

「自動車販売会社」は、自動車メーカーが生産した新車を店頭で販売し、中間利益を得ます。

このように自動車業界にはさまざまなタイプの会社がありますが、それらを中心で纏めているのはトヨタ・日産・ホンダといった自動車メーカーです。

自動車メーカー主要6社

国内自動車メーカーは、「トヨタ」「日産」「ホンダ」「SUBARU(旧富士重工)」「三菱自動車」、この6社が主要メーカーとなります。

これらの企業は、自動車メーカーとしてコンパクトカー・セダン・ミニバン・スポーツカーまで幅広いタイプの車種を手掛けています。

またこの6社は企業規模自体が大きく、たくさんの子会社・関連会社をもちます。

軽自動車メーカー

軽自動車メーカーとしては、「スズキ」「ダイハツ」「三菱自動車」があげられます。

これらの企業は、主に「軽自動車」や「コンパクトカー」に強みを持つ自動車メーカーであり、日本の軽自動車市場はこの3社がシェアを独占しています。

またこの3社は、軽自動車の「OEM契約」を大手自動車メーカー各社と結んでいます。

[軽自動車のOEM契約]
・スズキ→マツダ、日産、三菱などへOEM
・ダイハツ→トヨタ、スバルなどへOEM
・三菱自動車→日産へOEM

大型車メーカー

大型車メーカーとしては、「日野自動車」「いすゞ自動車」「三菱ふそう」などがあげられます。

これらの企業は、トラックやバスといった「大型車」に強みを持つ自動車メーカーです。

一般ユーザーにも車両を販売もしていますが、メインとなる顧客は物流会社やバス会社といった運送関連の法人となります。

海外勢力について

海外の大手自動車メーカーとしては、「フォルクスワーゲン(ドイツ)」「ダイムラー(ドイツ)」「ゼネラルモーターズ(アメリカ)」「フォード(アメリカ)」などがあげられます。

これらは日本国内では馴染みが薄いですが、いずれも長い歴史をもつ巨大な自動車メーカーです。

海外でのシェアは大きく、国内自動車メーカーが海外戦略を進める上での大きな壁となる存在です。

また近年は、「上海汽車(中国)」、「現代自動車(韓国)」といった中韓の自動車メーカーも、安い価格を武器に着々とシェアを伸ばしており、新たな脅威となってきています。

自動車業界の職種

一つのクルマを作り上げるにもたくさんの人の力が必要になり、職種もさまざまなものが用意されています。

ここでは、自動車業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。

設計開発

「設計開発」は、自動車メーカーにて、これから新しく作るクルマの仕組み・仕様・スペック・機能などを考え、設計していく職種です。

エンジン・シャーシ・トランスミッション・電気系統など、設計する箇所は多岐に及びます。

もちろんそれを一人で行うわけではなく、社員それぞれが専門分野をもち、分担して設計を行っていきます。

理系出身の学生が活躍しやすい職種であり、とくに「機械工学」や「自動車工学」を学んだ学生であれば、知識を活かしやすいでしょう。

企画・マーケティング

「企画・マーケティング」は、自動車メーカーにて、自動車に関する商品企画・マーケティング・販売促進広告宣伝など、幅広い業務に携われる職種です。

こちらは文系の学生が活躍しやすい職種であり、華やかな一面もある職種のため競争率も高めです。

自動車メーカーには大きな地盤やネットワークがあるため、コラボ商品の企画など、アイデア次第でさまざまなことにチャレンジもできるでしょう。

生産管理

自動車メーカーは、各地に生産工場を持っており、自動車の大量生産を行っています。

「生産管理」は、生産工場の生産体制の設計・生産ラインの管理・人員の管理・材料の管理などを行う職種です。

各地の工場でいかに自動車を効率よく生産できるかを考え管理していく、縁の下の力持ち的な職種となります。

カーデザイナー

「カーデザイナー」は、自動車メーカーにて、これから開発するクルマの見た目をデザインする職種です。

外観やボディを担当する「エクステリアデザイナー」、車内の内装を担当する「インテリアデザイナー」の大きく2つに分けられます。

単に美しさだけでなく、空力抵抗や機能性も考えつつデザインする必要があります。

狭き門となり、主に美大や芸術系の学部で「プロダクトデザイン」「インダストリアルデザイン」「カーデザイン」などを学んだ学生が対象となります。

自動車業界のやりがい・魅力

高度な製品を造り上げられる

自動車というのは3万個以上の部品からなる複雑な機械製品です。

また、安全性能、運動性能、燃費性能などあらゆる観点を交え造り上げますので、専門的な知識も必要となります。

自動車はそれだけ高度な製品であり、一台のクルマを造るにも多大な苦労が生じます。

それは同時にやりがいともなり、モノづくりが好きな人にとってはチャレンジしがいのある業界といえるでしょう。

また自動車という高度な製品を開発した経験は、いずれ他の工業製品のエンジニアに転職する場合にも好感されやすく、将来のキャリアアップも有利に進めやすいです。

待遇が良く親族からも喜ばれる

自動車メーカーはどの会社も大企業ですので、平均年収・福利厚生・退職金などの待遇が良いです。

管理職クラスになれば、年収が1000万円を軽々と越えることもあります。

また、これまで国内経済を支えてきた自動車メーカーは日本の象徴ともいえ、高い知名度と信頼を築きあげています。

特に年配の世代からの信頼は厚いため、自動車メーカーに就職すれば、親御さんや年配の親戚などから喜ばれることも増えるでしょう。

チャレンジできる環境がある

自動車メーカーは、自分たちでクルマを開発し生産する「メーカー」であるため、産業ピラミッドの頂点に位置します。

その上にいるのは基本的にお客さまのみであり、たとえば下請け会社のように上から細かく指図してくる会社がありません。

したがって自社の判断で決定できることが多く、比較的自由にチャレンジできる環境が自動車メーカーにはあります。

特に「トヨタ」や「日産」といった大手自動車メーカーは、常に新しいことにチャレンジしている社風でもあるため、チャレンジ意欲のある人にとってはそれに応えてくれる良い環境といえるでしょう。

自動車業界の雰囲気

かつての自動車業界は、車好きや機械好きが高じて入社してくる男性社員がその多くを占めていました。

しかし昨今は、車好きだけでなく、自動車メーカーのもつグローバルな地盤に惹かれて入社してくる社員も増えました。

また男性だけでなく女性社員も増えています。

社内のグローバル化も進んでおり、日本人だけでなく多くの外国人の社員も国内のオフィスで働いています。

現在の自動車業界は、性別や出身国さえ異なるさまざまな人が働いており、実にバラエティ豊かです。

多くの価値観に触れたい人にとっては、適した環境といえるでしょう。

自動車業界に就職するには

就職の状況

自動車業界の多くの会社は、新卒者を対象とした定期採用を行っています。

大手自動車メーカーであれば、毎年400人〜500人程度の新卒社員を採用しています。

新卒採用では、以下大きく3つのコースに分けられ募集されることが多いです。

技術職コース

技術職コースは、先端研究・設計開発・量産開発・生産技術品質管理・デザインなど、技術的な仕事を将来行いたい人向けのコースです。

※なお技術職コースの場合、「〇〇分野の研究開発」といったように、応募時に職種・配属先を具体的に指定できる採用方式も用意されています。

事務職(総合職)コース

事務職コースは、商品企画・マーケティング・営業企画・生産管理・調達・販売事業支援・法務・人事などの仕事を将来行いたい人向けのコースです。

一般職コース

一般職コースは、各部署での一般事務・会計簿記・秘書CADオペレーターといった、定型サポート業務を将来行いたい人向けのコースです。

※トヨタでは一般職を「業務職」という名称で扱っています。

自動車メーカーは、理系・文系問わず、学生の就職先として常に高い人気を誇ります。

昨今の景気回復により、トヨタや日産は毎年500人以上もの新卒社員を大量採用していますが、それでも全国から学生の応募が殺到しますので、狭き門となります。

優秀な経歴を持つ学生も多々応募してきますので、自動車メーカーに採用されるには入念な準備が必要となってきます。

「インターンシップ」や「工場見学」など、就活前に開催されるイベントへの参加も評価に含まれることがありますので、こちらも併せて参加しておきたいところです。

就職に有利な学歴・大学学部

有利な学歴や学部は、募集コースによって異なってきます。

技術職コースで有利な学歴・学部

技術職コースでは、高専卒・4年制大学卒以上の学歴を対象としている企業が多いです。

また明確に制限はしていないものの、基本的には理系の学生を対象としています。

有利になる学部は、機械・航空・精密・電気・電子・情報・化学・金属・人間工学など、理工系学部です。

技術系コースの場合は、学生時代に学んだ専門知識や研究テーマなども評価の対象となることがあります。

事務職(総合職)コースの有利な学歴・学部

事務職コースは、4年制大学以上の学歴を対象としている企業が多いです。

事務職コースでは、学部で有利不利が生じることは基本的にありません。

とはいえ傾向としては、法律・経済・経営・商・外国語などの学部出身者が採用されることが割合としては多いです。

大手自動車メーカーは「ジョブローテーション制度」を用意しており、事務職の場合はさまざまな業務や部署を経験して成長してくのが一般的です。

したがって事務職の場合は、専門的なスペシャリストではなく、オールラウンドに活躍できる総合的なポテンシャルの高い人材が求められます。

一般職コースの有利な学歴・学部

一般職コースは、短大、専門学校以上の学歴を対象としている企業が多いです。

一般職コースでも、学部で有利不利が生じることは基本的にありません。

就職の志望動機で多いものは

自動車業界への就職を目指す学生には、自動車メーカーのグローバルな魅力に惹かれている人が多いです。

たとえば「世界各国で事業を展開する御社に入社し、国内と海外の橋渡し的な人材になりたい」「御社のグローバルな地盤を活かし、発展途上の国にクルマを届けたい」などがあげられます。

いまや日本の自動車メーカーは世界をリードするグローバル企業ですので、車が好きというよりも、そのようなグローバルな魅力に惚れ込み志望する学生が増えてきています。

ただし、そのようなグローバルな面を強調して志望するのも決して悪いわけではありませんが、それだけでは弱い部分もあります。

「その会社で仕事として何がしたいか」、「将来どのようになりたいか」、「どのように会社に貢献したいか」の部分まで掘り下げた上で伝えるのがよいでしょう。

転職の状況

自動車業界では、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした「中途採用」も行われています。

「トヨタ」「日産」「ホンダ」といった大手自動車メーカーは、新卒サイトに引けを取らないほど豪華な中途採用サイトを用意し、中途社員を積極的に募集しています。

昨今の景気回復を受けてか求人の母数も多く、最大手の「トヨタ」では数十職もの中途求人が随時募集されています。

とはいえ自動車メーカーは、中途採用者に対しても求めるハードルが高いです。

「〇〇分野で〇年以上の業務経験」、「TOIEC〇〇点以上」など、経歴やスキルに対して細かく指定があります。

また中途採用でも圧倒的な人気を誇り、全国から応募が殺到します。

したがって、いくら求人の母数が増えているからといっても、簡単に転職が成功する業界とはいい難いです。

転職の志望動機で多いものは

自動車業界へ転職を目指す人には、「〇〇なクルマをつくりたい」と具体的な目的を掲げて志望する人が多いです。

たとえば「よりエコロジーな電気自動車をつくり上げるため、高いEV技術をもつ御社を志望した」、「より安全性の高い車をつくり死亡事故を減らしたいため、安全分野を得意とする御社を志望した」などがあげられます。

同業他社で同じ分野の経験があり、より自分の目的を実現できる環境をもとめて他社に転職する人が多く、志望動機もおのずとそれに基づいた具体的なものになりやすいです。

転職で募集が多い職種

自動車業界の転職で募集が多い職種は「技術職」です。

かつ、ここ最近特に募集が増えているのは、人工知能技術・コネクテッド・自動運転・車載通信システムといった「先進技術」の分野です。

これらの分野は世界中の自動車メーカーが血眼になって技術競争を繰り広げており、人手も不足している分野です。

それこそ優秀な技術者であれば、よい待遇で迎え入れてくれるでしょう。

どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか

自動車メーカーの中途採用では、基本的には経験者を前提としています。

「自動車業界での経験あり」、「〇〇業務において〇年間の勤務経験あり」、「TOEIC〇〇点以上」などさまざまな制限があり、専門的な職種になるほど制限は厳しくなっていきます。

ただし、それと同時に「第2新卒」の募集も積極的に行っています

第2新卒に該当する若い人であれば、経歴やスキルは多少乏しくても、それに勝る魅力があれば採用されることもあります。

自動車業界の有名・人気企業紹介

トヨタ自動車株式会社

1937年創業。連結売上高30兆2256億円、連結従業員数370,870名(2019年3月期末)、国内最大手の自動車メーカーです。

代表的な「クラウン」、「カローラ」といったセダンにはじまり、コンパクトカー、ミニバン、SUVまで幅広い乗用車を手掛けています。

なお、軽自動車の「ダイハツ」、大型トラックの「日野自動車」はトヨタの子会社にあたります。

この他にも総計800社を越える子会社をもち、巨大なトヨタグループを形成しています。

トヨタ自動車株式会社 ホームページ

日産自動車株式会社

1933年創業。連結売上高11兆5742億円、連結従業員数138,893名(2019年3月期末)、国内準手の自動車メーカーです。

1999年に倒産の危機に見舞われましたが、ルノー社との資本提携結び、カルロス・ゴーン社長による新体制の下、大復活を遂げた会社です。

2017年には、「ルノー日産三菱アライアンス」グループとして世界シェア1位を達成しました。

トヨタ同様、幅広いタイプの乗用車を生産していますが、併せて「フェアレディZ」、「GT-R」といったピュアスポーツモデルの開発を続けているのも日産ならではの特徴です。

日産自動車株式会社 ホームページ

ホンダ(本田技研工業株式会社)

1948年創業。連結売上高15兆8,886億円、連結従業員数219,722名(2019年3月期末)、国内準大手の自動車メーカーです。

ホンダも幅広いタイプの乗用車を生産していますが、FF(前輪駆動車)の占める割合が高いことが特徴的です。

また、自動車の他に2輪バイクや航空機の生産も行っており、2輪バイクのシェアにおいては、国内トップ&世界トップの座に君臨しています。

ホンダ ホームページ

自動車業界の現状と課題・今後の展望

EVの普及が進む

ハイブリッドカーの影に隠れ、これまでなかなか陽の目あたらなかった「EV(電気自動車)」ですが、近年は性能もアップし、着実に普及が進んでいます。

2018年には「日産ノート・e-POWER」が好調なセールスを記録するなど、日本国内でもEVが身近な存在になってきました。

海外ではEVで一躍有名になった「テスラモータース」が、引き続き堅調な成長をみせています。

「ポルシェ」などのスポーツカーメーカーさえもEVに参入する動きを見せており、今後はEV市場でのシェア争いに注目が集まるでしょう。

100年に一度の大改革がはじまる

自動車業界は「100年に一度の大改革の時代」に入ったといわれています。

今後の自動車業界は「電動化」、「自動化」、「コネクテッド」、「シェアリング」の4つが大きなテーマとされており、それに向かっての大改革が始まる節目に入っているのです。

「今後の自動車はスマホのような電子端末と化す」、「購入ではなくシェアする時代に入る」などさまざまな計画が立てられており、自動車の在り方そのものが大きく変わる可能性もあります。

自動車メーカー各社はそのような時代の変化に対応するため、コネクテッド技術やAI技術などの先進技術の開発を急ピッチで進めています。

技術競争に勝ち抜けるかも今後の焦点となってきます。

業界としての将来性

自動車業界にとって大きな課題となっているのが「若者の車離れ」です。

かつての時代のように車はステータスシンボルにはならず、かつ費用もかさむため、若い世代から見放されつつあるのが現状です。

このまま若者の車離れが進み、国内の自動車需要が減っていくと、自動車メーカーにとっては大きな痛手となってきます。

ゆくゆくは自動車業界を志す若者さえ減り、業界の存続自体も危うくなる恐れもあります。

今一度若者たちの興味を刺激し、車の需要を回復させることも、今後の大きな課題となってくるでしょう。

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