ブリーダーの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「ブリーダー」とは
動物の繁殖や改良を専門的に行う。特定の血統を守り、次の世代へ引き継がせていく。
動物の繁殖や改良を職業としている人のことを、まとめてブリーダーと呼びます。
趣味が高じて少数の動物を扱う家庭的なものから企業として多くの種類を扱う大規模なものまでさまざまです。
ブリーダーになるための資格はありませんが、開業し販売する際には「動物取扱責任者」の資格が必要になることがあります。
ブリーダーとして企業に就職するというのは難しく、独立開業がメインの職業です。
仕事の自由度は高い一方で、個人で働いている人が多く、動物の世話を一人でしなければならない苦労もあります。
開業となると「取り扱う動物の種類」や「親となる動物の保有数」など、規模の大きさで収入は大きな差があるのが現状です。
生き物を扱う仕事であり、収入よりもやりがいを求める、動物たちの成長を生きがいにできる、生き物を扱うという強い責任感や倫理感を持てる人が向いています。
日本におけるペット業界の市場規模は非常に大きく、動物の繁殖と流通どちらも引き受けられるブリーダーの需要は今後も大きいでしょう。
「ブリーダー」の仕事紹介
ブリーダーの仕事内容
動物の飼育・繁殖・流通などを専門に行う仕事
ブリーダーは、血統書付きの犬や猫など、ペットの飼育・繁殖・流通を専門とした職業です。
仕事内容としては、生まれた赤ちゃんのお世話・産後の母親の健康管理を含む、日常的な動物の飼育がメインです。
交配から出産まで全てを担当し、繁殖させた健康な動物をペットショップなどの市場に流通させたり、個人で直接販売を行ったりします。
近年のペットブームの影響から需要は非常に高く、需要に見合うだけのペットを安定的に流通させるには、子犬や子猫を計画的に繁殖させる必要があります。
ほとんどが小規模生産できる個人での仕事ですが、「ペット業界を根底で支えている」といっても過言ではないでしょう。
ペットに関するさまざまな仕事を担う
そのほかにも飼い主から飼育に関する相談を受けたり、しつけ方・飼い方の指導を行ったりすることもあります。
なかにはトップブリーダーとして特定の種類(血統)の犬を専門にし、ドッグショーなどでチャンピオン犬になるように手がけコンテストや展覧会に参加したり、品種改良の研究を行ったりしている人もいます。
また、ブリーダーは動物を販売することで収入につながるため、販売ルートを開拓したり、動物を適切に飼ってもらえるように説明したりするなどビジネススキルが必要な仕事です。
動物は主にペットショップへ卸すことが多いですが、最近ではホームページなどを利用し、消費者に直接販売するブリーダーも増えてきています。
ブリーダーになるには
知識と信頼性の証である資格取得が推奨されている
ブリーダーという職業に就くのに、必ず資格が必要というわけではありません。
また個人で働く人が大半の仕事なのもあって、学歴もほとんど問われません。
ただしブリーダー業を営む企業に勤める場合は、「高卒以上」の学歴が問われることが多いため注意が必要です。
しかしブリーダーの仕事でお金を得たいなら、動物・交配・繁殖・飼育などの専門的な知識や経験がどうしても必須になってきます。
独学だけでなく専門の教育機関や通信講座などを通して、ブリーダー関連の資格を取得しておくとブリーダーとしての信頼性アップにも繋がります。
ブリーダーは専門知識やノウハウが必要とされる仕事のため、現場に入る前に基礎知識を体系的に学ぶことで、現場での理解がすすみ、活躍するチャンスが広がる可能性があります。
また、すでにブリーダーとして活躍している人に弟子入りし、技術を学び経験を積むといった方法もあります。
独立・開業するには資格が必要
知識や経験が十分に身についた段階で、個人のブリーダーとして独立・開業する人も多いですが、動物を販売するには必須の資格・届け出があります。
ブリーダーとして独立開業するのに必要な資格には、「第一種動物取扱業」と「動物取扱責任者」の資格が必要です。
第一種動物取扱業は、動物の販売などに必要な資格で都道府県や政令指定都市に申請することで取得できます。
動物取扱責任者は、いくつかの要件が必要で、ブリーダー本人が兼務することが多いです。
関連記事ブリーダーになるには? 資格・免許は必要なの?【学校選びから将来性まで徹底解説】
ブリーダーの学校・学費
知識をつけるために動物について学べる学校に通う選択肢も
ブリーダーになるのに、指定の大学や専門学校に通ったりする必要はありません。
高校卒業後すぐにトップブリーダーのもとに現場にアシスタントとして入るか、ブリーディングを専門にしている企業に就職して経験を積むことが可能です。
ただし、動物を扱うこともあり、仕事としてやっていけるだけの知識は必須です。
特に動物の生態・飼育方法・交配方法・流通などは、独学だけでの知識取得は独学では難しいため、動物関連の専門学校や、通信講座などを通して勉強している人が多いです。
学校で学ぶことで就職の際に有利に働く場合も多いため、基礎的なことをしっかり学んでから現場に入るのもよいでしょう。
関連記事ブリーダーになるための学校はある? 勉強することは?
ブリーダーの資格・試験の難易度
独立開業するためには資格と届け出が必要
ブリーダーとして企業に勤めたり、ブリーダーのもとで仕事をしたりする際に特別な資格は必要ありませんが、独立開業して動物を販売するには、以下の資格・届け出が必要です。
第一種動物取扱業:動物の販売などに必要で都道府県や政令指定都市に申請する
動物取扱責任者:第一種動物取扱業者は設置義務がある。ブリーダー本人が兼務することが多い
また「動物取扱責任者」になるには以下の3つのうち、いずれかが該当していなければいけません。
・半年以上の実務経験がある
・1年間以上教育機関を卒業している
・獣医師などの資格を所有している
動物取扱責任者になるには、たとえ実務経験や学校を卒業していなくても、資格でカバーすることができます。
ペットに関するさまざまな資格
ブリーダーの仕事の関する代表的な資格は、「ペット繁殖指導員」という「一般社団法人日本ペット技能検定協会」が認定している民間資格です。
指定のカリキュラムを修了することでライセンスの取得が可能となり、通学だけでなく通信講座で取得できるものもあります。
受験資格は特に必要なく、合格ラインも70%以上ということもあり、しっかりと勉強してから受験すれば決して難しい資格ではないといわれています。
そのほか、犬のしつけや訓練を行うための「ドッグトレーナー」、ペットの毛や爪をカットし整える「トリマー」、「動物看護師」「愛玩動物飼養管理士」などの資格を取得する人もいます。
ブリーダーの給料・年収
実力によって収入には大きな差が
ブリーダーはその実力や雇用形態によって、給料や収入も大きく変わってきます。
たとえばブリーダー事業を行う企業の正社員と、コンテストなどに参加して受賞を目指すトップブリーダーとでは、年収に大きく差がでてくるでしょう。
ただ、動物に関連する企業というのは賃金がそこまで高いわけではなく、30代前半での平均年収は400〜500万あたりであるといわれています。
また個人開業の場合は動物を飼育する為の経費が大幅にかかってくるため、軌道に乗るまでは毎月の収入が予想できません。
サイドビジネスや趣味の延長でブリーダーをしている人もいますが、副業の場合でもうまくいけば、年間50万円〜100万円前後の収入を得る人もいます。
中小企業やアルバイトが多く年収は低め
ブリーダーは個人経営や中小規模の企業が多いため、ボーナスがもらえる企業も少なく、福利厚生が整っていない場合も多いようです。
アルバイトの募集も多い仕事ですが、生き物を扱うという重要な仕事でありながら、時給もほかの職種とほとんど変わりません。
ブリーダーは365日動物のお世話が必要になるため、休みが少なく、ときに長時間労働が必要になる仕事です。
仕事内容に比べると給料は割に合わないかもしれませんが、動物のことを心から好き、かわいいと思える人にとっては、やりがいの大きな仕事といえるでしょう。
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ブリーダーの現状と将来性・今後の見通し
ペット業界は拡大しつつありブリーダーが重宝される
日本におけるペット業界の市場規模は大きいため、今後もペットブームの波とともにブリーダーの仕事も増え続けていくと考えられます。
動物の繁殖と流通どちらも引き受けられるブリーダーは今後も重宝されていくでしょう。
個人であれ企業であれ、ブリーダーとして身に付けた経験を生かせば、ペット業界への就職・転職に大いに役立ちます。
一方で、繁殖させた動物を無許可で販売する人がいるなど、大きな問題を抱えている業界であることも事実です。
近年は動物の命を蔑ろに扱う悪質なブリーダーも一部いることが知られ、社会問題となっています。
ブリーダーは、より動物への愛情と責任を持って業務を行うことが重要視されていくでしょう。
ブリーダーの就職先・活躍の場
ペット業界への就職、または個人での活躍がメイン
ブリーダーの勤務先の種類は、大きく分けて「トップブリーダーのアシスタント」「企業」「独立」の3つに分かれます。
主にペットショップや動物病院など動物に関連する職場で働くことが多く、ブリーダー業をやっている企業でも、「アシスタント」や「アルバイト」としてスタッフを募集していることがあります。
ただし、出産・赤ちゃんの飼育・母体の健康管理・子供の流通などの業務を大規模に行うのは難しいとされており、個人で繁殖や販売を行っているブリーダーが大半です。
なかには、個人で好きな動物を繁殖させて育てたいと、保健所にて「動物取扱業」の登録を行い活動している副業ブリーダーもいます。
ブリーダーの1日
動物の様子を見ながら流動的に働く
ブリーダーは企業に勤めるか、個人で開業するかによっても1日の勤務の流れが大きく異なります。
企業に勤める場合は9:00~19:30頃の勤務時間内でシフト制の勤務になりますが、フリーで働く場合はほとんど個人で働いている人が多く、犬の世話を一人でしなければいけません。
たとえば犬専門のフリーランスのブリーダーの1日の流れは、次のようになります。
<独立した個人のブリーダーの1日>
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ブリーダーのやりがい、楽しさ
動物を愛する人ほどやりがいを強く感じられる
ブリーダーの楽しさや魅力といえばやはり、元気な子犬や子猫を世の中に送り出し、多くの人に新たな出会いと喜びを与えられるという点です。
自分が手塩にかけて育てた動物の出産に立ち会い、新しい命の誕生をその目で見ることができる感動は、そして自分が育てた動物たちが元気に成長した姿を見られるのは、大きなやりがいを感じられます。
またブリーダーとして活躍する人の大半はかなりの動物好きで、「動物と一緒に過ごしている時間が何よりの幸せ」と考えている人も非常に多いです。
毎日ほぼ休みなく動物と一緒に過ごす生活になりますが、動物のそばで生きる喜びを感じられる人にとっては、この上ないやりがいを感じられる仕事といえるでしょう。
ブリーダーのつらいこと、大変なこと
生き物を扱う仕事特有のつらさを味わう場面も
ブリーダーとしてつらいことや大変なことは、思い通りの繁殖ができないこともあることです。
想像していた通りの繁殖ができなかったり、生まれた動物に原因不明の障害が出てしまったり、場合によっては生まれてすぐ病気になり命を落としてしまう可能性もあります。
繁殖が成功したらとても嬉しい一方、うまくいかずに悩んだり落ち込んだりすることも多く、気持ちの強さが求められます。
また、ブリーダーを始めると、自分よりも動物優先の生活です。
個人で営業している人がほとんどのため、遠出や旅行もできない日々は覚悟する必要があるでしょう。
自分の思う通りに休みが取れず、会社員のような形態で働けないことは、この仕事の大変な側面です。
ブリーダーに向いている人・適性
動物への愛と責任をもって仕事ができる人
ブリーダーに向いている人の必須条件として毎日の動物の世話や健康管理を責任持って行えることがあげられます。
近年は無理な交配をさせたり、動物の衛生管理・健康管理をまともに行っていなかったりするというブリーダーが問題視され、劣悪な飼育環境は社会問題化するようになってきました。
よって動物を単なる「商品」として扱わず、我が子のように愛情を持って接することができる人でなくては、この仕事は務まりません。
また取り扱う動物の血統・交配・飼育に関する深い知識を身につけ、飼い方の指導をきちんとアドバイスすることも必須条件です。
動物を飼ってくれた人に対し、「売ったら終わり」ではなくきちんとアフターフォローを行うなど、誠実に向き合おうとする姿勢も重要です。
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ブリーダー志望動機・目指すきっかけ
動物の飼育が好きで仕事としたいケースがほとんど
ブリーダーの志望動機としては、もともと動物が好きで、動物と触れ合える仕事に就きたかったからという人が多いです。
動物に囲まれた生活に慣れていて飼育や健康管理も苦にならず、楽しんで仕事ができるというのは、確かにブリーダー向きであるといえます。
ブリーダーからペットを購入したことをきっかけに、動物を育てて世に出すブリーダーという仕事を知り、憧れを抱くというケースもあります。
ただし、ブリーダーを目指す上で「動物が好き」ということは必須条件であるため、これに加えてなぜブリーダーを目指しているのか、どのような仕事をしたいのかなども深く考える必要があります。
動物を好きになったきっかけなど、自身の経験と結びつけられると、よりよい志望動機になるでしょう。
ブリーダーの雇用形態・働き方
入社後はまず下積みからはじめ、ゆくゆくは開業する人も
新人ブリーダーのうちは、まず先輩やベテランブリーダーに弟子入りして経験を積むのが一般的です。
その雇用形態は職場によって変わりますが、多くの場合はアシスタント係として下積みから始めることとなり、アルバイトや契約社員の立場で働くことも多くあります。
経験を積んで一人でも世話や繁殖ができるようになると、独立して仕事をする人も増えてきます。
近年ではネット技術・ネットサービスの普及によって、ペット仲介業者を介さずに直接的な取引を行えるようになってきているため、個人開業のブリーダーは今後もどんどん増えていくと予想されます。
また、自分のライフスタイルに合わせて働くことができることから、副業や兼業でブリーダーをしている人も少なくありません。
ブリーダーの勤務時間・休日・生活
動物の生活スタイルに人間が合わせながら働く
ブリーダーは比較的個人開業している人が多く、会社勤めではないため固定された休みというのは基本的にありません。
動物の世話をしなければならない都合上、年中無休で働く人が大半です。
動物の飼育と体調管理は徹底しなければならず、さらに多頭飼いを行うとなると、普通にペットを飼うより何倍も大変です。
どうしても生活が動物優先になるので、世話やケアが落ち着いた時間を見計らってその他の仕事を行ったり休んだりするという、仕事とプライベートの境目がつきづらい仕事とも言えます。
当然ながら連休は取りづらく、仮に自分が体調を崩して寝込んでしまったとしても、代わりに動物のお世話をしてくれる人がいないとゆっくり休むことも難しいでしょう。
ブリーダーの求人・就職状況・需要
アシスタントであれば需要は多いが大々的な求人は少ない
求人雑誌などを見ても、ブリーダーの募集はあまり目立っては行われていません。
動物専門学校卒業生や有資格者を対象としているところも多く、一般的には求人を見ることが少ないかもしれません。
ただしブリーディングを行う企業や個人は全国各地にあり、年中無休で動物たちの世話が必要なので、アシスタントやアルバイトを募集するケースも見られます。
インターネットなどでブリーダー募集をしているサイトをくまなく探すなど、自分で積極的に情報を集めることが必要でしょう。
ブリーダーやペット関連の資格を持っていると、ブリーダー業界に関する知識はあるものと見なされるため、採用率はより上がるでしょう。
ブリーダーの転職状況・未経験採用
ハードルは低めだが、業務に専門知識は必須
ブリーダーは国家資格が必要な職業に比べれば、転職のハードルそのものは低めです。
ブリーダーになるために年齢制限はないため、体力に自信があれば何歳でも目指せる職業といえるでしょう。
しかし動物の生態・飼育方法・交配・繁殖などの知識を身につけていないことにはまったく仕事になりません。
ペット関連企業にブリーダーとして転職したい場合は、「ペット繁殖指導員」の民間資格を持っていれば未経験であっても強力な武器になります。
また「ペット業界で働いた経験」や「接客経験」「社会人経験」があれば、その経験を生かして働くこともできるでしょう。
なお、犬や猫の飼育経験がある人は有利になる場合もあるようです。