【バーテンダーアーティスト】「自分のため、人のために想いを込めてカクテルを創る」 増田タカノリさん

好きを仕事にしてる人を紹介するインタビュー記事。
今回は、バーテンダーとしてあらゆる表現を行う世界初のバーテンダーアーティスト・増田タカノリさんからお話を伺います。

バーテンダーアーティストの活動内容

「バーテンダーアーティスト」とはどのような職業でしょうか?

自分のため、お客様のため、一杯一杯に『想いを込めて』カクテルを創るのが「バーテンダーアーティスト」です。

また、その想いを一人でも多くの人に届けるために、日々バーテンダーアーティストとして表現できることを研究しています。

そうやってアップデートされていった学びを、お客様の前で表現する。

バーテンダーアーティストと聞くと、一見派手に感じるかもしれませんが、このように常に課題解決や研究を繰り返しながら、地道に表現者として活動しています。

バーテンダーアーティストの具体的な活動内容について教えてください。

バーテンダーという媒体を使い、様々な表現の場で活動してます。

宴会や学祭、テーマパークなどのパーティーやイベントで、ショーとしてカクテルづくりを披露するパフォーマンス業務。

技を披露しながらカクテルをつくる「フレアバーテンディング」の指導を学校や芸能人、パフォーマーなどに行う講師業務。

バーテンダーアーティストとして培ってきた知識を活かして、店舗コンサルタント・アドバイザーや、セミナー業務、商品PRや各種メーカーへのカクテル提案・販売促進業務なども活動しています。

また、カクテルづくりのパフォーマンス表現を“創作”する活動も行っています。

カクテルそのものを創作することもあれば、カクテルづくりとアートを融合させて作品を生み出すことも。

また、バーテンダーの要素にダンスや楽器演奏、芝居など様々なジャンルの要素を加えて、常に新しいパフォーマンスを創出しています。

これらの取り組みが広まったことで、テレビ、Web、新聞、ラジオなどメディア出演の業務もしています。

バーテンダーアーティスト以外にも、バーテンダーという職業を活かして、モデル業務を行ったり、役者やタレントとして舞台に立ったり…さらには、ワインソムリエとしての活動や、ボランティア活動など、自分のため、人のために出来ることを多岐に渡り行っています。

お仕事で海外に行かれることも多いのでしょうか?

現在は年に最低2度、1~2ヶ月ほど海外で活動を行なってます。

特に、昨年から海外での活動の比重を多くしているところです。

海外ではバーテンダーに問わず、表現のマーケットが確立されているので、海外で活動するほど可能性を感じています。

近年やっと、海外のアーティストフェスティバルや芸術祭、イベントなどにオファー頂けるようになりました。

また、自分自身のプロモーション活動として、海外で実際に体験し学んだバーやお酒の文化を、自分のコンテンツ(ブログ、SNSなど)で情報発信しています。

海外は日本と比較しても表現者が活動しやすい場であり、沢山の学びが得られる場でもあります。

今後もコネクションとコミュニケーションを駆使して、海外での仕事を増やしていきたいと考えています。

バーテンダーアーティストの収入

これらの活動が現在の収入に結びついているのでしょうか?

はい、そうですね。

特に、現在はバーテンダーショーなどのパフォーマンス業務と、ケータリングカクテルサービスの出張バーテンダー業務が収入のほとんどを占めています。

ただ、これからはこの収入のバランスを改善して、新しい業務やプロジェクトに手を伸ばしたり、お店のプロデュースなどもしたいと考えています。

現在もかなり様々なことをされている印象ですが、さらに新しい取り組みに挑戦するんですね。

いかに時代の流れを読んで、その時代に生きる人たちのニーズに合ったものを提供できるかを常に考える必要があると思っています。

私自身、バーテンダーアーティストの仕事を始めた時、3年で食べていくことが出来なければ、バーテンダーアーティストは辞めて、自分のお店を構えようと考えていました。

しかし、始めたタイミングが良かったこともあり、バーテンダーアーティストを始めて2年目くらいで食べていくことができた。

時代の流れを読みながら、今はバーテンダーアーティスト一本で収入を得ることができているので、これからもそれは変わらずにやっていこうと思っています。

バーテンダーアーティストになったキッカケ

なぜ、それほどまでバーテンダーへの道に進みたいと思ったのでしょうか?

大学時代、先輩に連れられて、初めてバーに行きました。

そこで、稲妻のようなものが身体に走ったのです。

格好良い大人の社交場を体感したとともに、バーテンダーさんに作ってもらったカクテルの味に感動。

この日を境に、バーテンダーの世界に一気に惹かれて、志すことを決めました。

大学卒業後には、アメリカのニューヨークでお店を構えていた女性オーナーが経営するバーに就職。

いくつかの店舗を経営されていたため、入社してから研修の一環として、オーセンティックバー(格式ある正統なバー)、世界中からアーティストが出演するライブバー、ホテルシェフ創作ワインレストラン、大正コンセプトカフェの4店舗で働きました。

ここでは、接客、料理、お酒、ワインなど飲食のイロハを学び、研修終了後は運よく希望のバー勤務となったんです。

今思い返してみるととてもすごい環境だったのですが、経営者をはじめ、医者、弁護士政治家、スポーツ選手、芸能人などがお客様として来るような場所で、取り扱うお酒やグラスなども素晴らしいものばかり。

そんなバーで3年間バーテンダーの修行に打ち込み、様々な方々のサポートのおかげで、バーテンダー全国大会カクテルコンペティションへの出場ができるようになりました。

ということは、はじめはバーテンダーアーティストではなく、バーテンダーとしてお仕事されていたんですね。

そうなんです。

バーテンダー全国大会カクテルコンペティションへの出場が決まった同年頃に、フレアバーテンディングの技術が日本に入ってきて、そこからバーテンダーのパフォーマンスに興味を持ち始めました。

当時は、バーテンダーがボトルを投げて回すパフォーマンスは業界的にご法度でした。

ただ、私は多くの人にバーテンダーとして注目を集めるには、フレアバーテンディングの技術は強みになると確信したのです。

そして、フレアバーテンディングの技術を学ぼうと、勤務していたバーを退社し、フレアバーテンダーの門を叩きました。

なんと運良く、現・全国フレアバーテンダー協会会長が経営するフレアバーで住み込み修行できることに。

当時はフレアバーが少なかったこともあって、フレアバーテンダーを目指す人たちが全国から集まり、住み込みで切磋琢磨しながら修行しました。

良い環境に恵まれ、フレアバーテンダーの大会で徐々に入賞や優勝の結果を出すのですが…フレアバーテンダー一本で勝負している若い人たちと、バー勤務しながら練習している私(当時27歳)とでは、技術がどんどん離されていくことに気づいたのです。

そこで、世界最高峰であり憧れでもあった、アメリカ・ラスベガスで開催される世界大会『レジェンド』の出場を目標に定め、勤務していたバーを退社。

2年ほど実家にこもり練習に明け暮れました。

そして、ラスベガス世界大会で総合3位の成績を収め、目標であった『レジェンド』の出場を果たしました。

凄まじい信念をお持ちですね。そこから、バーテンダーアーティストの片鱗が見えてきたということですか?

バーテンダーアーティストの輪郭が少しずつ浮きぼられてきたのは、独立してから10年経った現在、やっとという感じですね。

2009年にバーテンダーとフレアバーテンダーの技術を生かし、ショーバーテンダー(出張バーテンダー)として、お店を開業せずに独立。

この頃もバーテンダーアーティストと名乗っていたのですが、表現者としての世界を知れば知るほど自分の表現力がまだまだ足りないことを悟りました。

なので、まずはバーテンダーという媒体をベースに新しい表現やジャンルに挑戦し、可能性を広げるように努めたという感じです。

それが功を奏し、最近やっとバーテンダーアーティストとして名乗れるようになってきました。

バーテンダーアーティストの楽しさ、つらさ

バーテンダーアーティストの活動をする上で、どのような場面で楽しさを感じていますか?

単純に、人に喜んで頂けたときですね。

自分のやりたい表現でお客様(クライアント)が喜んでもらえること、さらにそれでお金を頂けること。

こんな幸せなことはないと思っています。

そして、人との出逢いもでしょうか。

仕事を通じて沢山の人に出逢わせていただけてる、これは私の人生の宝です。

また、自分自身の成長を感じられた時にはとても嬉しく感じますね。

去年よりも美味しいカクテルを作れたり、去年よりもいいショーができたり、去年よりも新たな表現に挑戦できたり、そういう場面は楽しさもやりがいも感じます。

あとは、行ったことのない場所へ行くことができることも楽しみの一つとなっています。

世界各国、日本各地の、美味しい食べものや観光に触れることも大好きなので、色んな場所に行った際には自分へのご褒美も欠かしません(笑)

逆につらいな、大変だな、と思うことはありますか?

バーテンダーアーティストとしてお客様の前に立つ際は、毎回が真剣勝負という点でしょうか。

一度の失敗で、培った信頼・実績が一瞬でなくなってしまう場合もあります。

なので、最高のイメージはもちろんですが、最低のイメージも同時に持つようにしています。

経験値がカバーしてくれる部分もあると思いますが、いつ何時どんなトラブルが起こるかわからないので、様々なシミュレーションはしておきます。

でも、基本的にポジティブ思考なので、苦労や大変なシチュエーション、逆境に立たされるほど燃えて楽しんでしまうんですよね(笑)

例えば、昨年単独でヨーロッパ横断パフォーマンスを達成した際には、最終地点のギリシャ・アテネでバックごと盗難被害にあってしまって…パスポートもショー道具も全て取られてしまったのですが、ここで「どう乗り越えてやろうか?」とちょっと楽しくなってしまいました。

それくらいには、本当にポジティブなんです。

そんな自分が、もしこの仕事をしていることに、苦労やつらさを感じたときは、この仕事を辞めるべきときだと考えています。

バーテンダーアーティストとしての目標

今後、バーテンダーアーティストの活動を通して目指していることを教えてください。

一日一日を大切に、さらに周りの人たちに感謝する。

その意識を持ちながら『楽しく生きていくこと』が私の目標です。

そのため、具体的にどのような活動をしていきたいかというと、色々あるのですが…バーテンダーアーティストとして新たな分野で挑戦し確立していく。

本を出版すること、個展を開くこと、まだ行ったことのない国でショーをすること、新たな価値を生むカクテルを創作し続けること、自分のアイデアでお店をプロデュースすること。

そして、自分のような分野の人を育てて、活躍できる場をつくっていきたいです。

これらの活動を通して、自分に関わったすべての人がハッピーになれるよう努力していきたいと考えています。

未来のことを考えるととても楽しみなんですよね。

10年前の自分、まさか今こんな風になっていると想像できていなかったと思います。

毎日自分のやりたいこと、そして目標に対して全力でやってきた結果が今の自分を作り上げてきました。

そういう意味でも、これまで同様に自分のやりたいこと、目標には素直に進み続けていきたいですし、そうやって進んでいった先の自分がどうなるのか楽しみです。

好きを仕事にしたい人に向けてメッセージを

最後に、好きを仕事にしたい方へメッセージをお願いします。

好きを仕事にする一番の近道は、「好きなことを仕事にして生きている人のマネすること」だと思います。

分野・ジャンル問わず、マネできそうなことがあれば、とにかくインストールしてやってみる。

色々な人の話を聞き、色々な分野の本を読む。

そして、そこから学んだことを、必ず自分流にアレンジしていくことが重要です。

好きを仕事にすることで、自分だけではなく周りの人をどのように喜ばせることができるのか、どうすればその好きを深め続けることができるのか、を自分で考えて、自分流に突き詰めていければ道は必ず拓けます。

今の時代、好きなことがある、熱中できるものがある、ということはとてもラッキーで幸せなことです。

好きなことがある人は全力で突き詰めていけばいいですし、好きなことがまだ見つからない人は、焦らずまずは興味を持ったことにチャレンジしてみると良いと思います。

合わなければすぐに辞めても大丈夫。

とにかくまず挑戦してみることこそ、自分の道を見つける最大の近道であり、唯一の方法です。

周りの価値観に左右されず、自分の思った道をまっすぐ進んで下さい!!

その行動の全てが貴方の人生になると思います。

増田さんが魅力的だと感じる国3選

1. スペイン(バルセロナ)

ヨーロッパの街並みや建造物はどこも繊細、緻密で素敵ですが、私が特に好きなのはガウディやピカソを輩出したこの国。

サクラダ・ファミリアを見れば、他の追随を許さないその存在感に魅了されます。

2. アメリカ(ラスベガス)

良い意味でわかりやすい国アメリカ。

特にショービジネスの街ラスベガスは、スケールにいつも圧倒され、エンターテイメントに携わる者としてはマストな場所だと思います。

3. インド(バラナシ)

人間の全てがそこに垣間見えるような、とても人間臭さの残る素晴らしい場所ですね。

さらに、生きること、文化、価値観などについて色々考えさせられます。

もし、自分に子供ができたら必ずみせたい場所でもあります。

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