設備施工管理の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「設備施工管理」とは
建物の設備に関わる施工管理者
設備施工管理とは、空調や排水、給湯、消防設備など、ビルや商業施設といった建物の設備に関わる施工管理者のことです。
仕事の依頼があると、まずは見積もりをとり利益計算をし、打ち合わせをして正式に受注をします。
設備工事を行う際には、後期に間に合うよう工程を管理し、スケジュールを組みます。
ほかの業者と打ち合わせをして、作業の順序や段取りをするのも施工管理の仕事です。
また、設備工事を施工するための図面を作成し、使用する材料を選定し、現場で指示を出すこともあります。
実際に施工者として、自ら配管の設計や取り付けなどの作業をすることも珍しくありません。
さらに、施工中や施工終了後には品質の基準を満たしているか、是正箇所がないかチェックし、現場を検査します。
現場を管理しながら実務も行うことが多いため、管理者としての側面と技術者としての側面を両方持っています。
扱う設備には、冷暖房や空調、給排水や給湯の設備工事などのほか、ダクト工事や浄化槽、ガス配管、衛生設備など、建築物によって担当する内容はさまざまです。
設備施工管理の需要は非常に高く、建設業全体としても人手不足と高齢化が問題になっているのが現状です。
「設備施工管理」の仕事紹介
設備施工管理の仕事内容
工事全体に関わるものすべてを管理する仕事
設備施工管理には、大きく6つにわけられます。
・電気の引き込み、分電盤の配置、コンセントの配置などの電気設備
・水道管、排水管、ガス管などの配管設備
・エアコン、換気設備、排煙設備の空調設備
・電話線やネット回線の通信設備
・工場の機械設備
・消火設備や消火栓の設置、非常用エレベーターの設置といった消火設備
こうした現場で「4大管理」と呼ばれる工程管理、品質管理、原価管理、安全管理といった仕事を行います。
工程管理は、工事が納期に間に合うよう、作業のスケジュールを管理することです。
品質管理は、設備が求められた基準や品質に沿っているかをチェック、管理することです。
原価管理は、与えられた予算内で工事が終わるよう、資材の発注や工程を考えることです。
安全管理は、現場で働く作業員の安全を守ることです。
そのほかに、書類作成や業者との打ち合わせなど、設備施工管理の仕事は非常に多種多様です。
同じく現場を管理する仕事に「現場監督」がありますが、現場監督は実際の工事現場での作業の管理が中心で、常に現場で指示を行います。
設備施工管理は、工事全体に関わるものすべてを管理するため、常に現場で仕事をするわけでなく、書類作成や事務手続きといったデスクワークも行います。
建設業界は、震災の復興工事や都市の再開発などの工事で、建設ラッシュを迎えています。
設備施工管理はどのような建築物をつくるにも必ず必要な仕事であるため、今後もニーズは高く、必要不可欠な仕事といえます。
設備施工管理になるには
入社して1から学ぶこともできる
設備施工管理として働く場合、就職先によって仕事内容は大きく変わります。
事業内容はさまざまであるため、電気、機械、空調、給排水などどのような設備を扱うか、どんな仕事をするのかをしっかりと確認しておきましょう。
特別な資格は必要なく、まずは就職して実務経験を積んでいくのが一般的なルートです。
電気工事を管理するには電気工事施工管理技士、配管の施工管理をするには管工事施工管理技士、通信設備の施工管理をするには電気通信工事施工管理技士などが必要です。
ただし、これらは必要に応じて取得すればよく、あらかじめ持っている必要はありません。
経験を積んで、施工管理技士など資格を取得すればよりキャリアアップしていくことができますし、経験を生かしてより条件の良いところに転職する人も多いです。
建築や建設系、工業系、機械系の大学や専門学校を卒業した場合はより優遇されますが、興味関心があれば、未経験者からでもスタートすることは十分可能で、女性もか活躍しています。
設備施工管理は、建築業界全体の高齢化により人手不足がさけばれており、積極的に若い人を採用しようとしています。
不景気により人材が流出したり、ベテランが高齢のため引退したりしているなかでも、建築物は次々とつくられており、仕事はむしろ増加傾向にあります。
これから仕事をはじめたいという人には非常にチャンスのある仕事だといえます。
設備施工管理の学校・学費
建設・建築系の学校を卒業していると有利
設備施工管理は建築・建設系の学校を卒業した人に有利な仕事です。
大学や専門学校でこうした勉強をしている場合は、採用されやすく現場でもすぐに知識や技術を生かすことができるでしょう。
ただし、こうした勉強をしていないからといって設備施工管理になれないわけではありません。
先輩の元について一から勉強するという人も多いです。
また、「2級施工管理技士」の受験資格を得るには、大学の建築系学科を卒業後1年以上の実務経験、指定学科以外の場合は卒業後1年6カ月以上の実務経験が必要です。
もし将来ステップアップするために資格取得を考えているのであれば、進学先を選ぶ際にも当てはまる学校を検討するとよいでしょう。
設備施工管理の資格・試験の難易度
施工管理技士を持っていると有利に
「施工管理技士」は施工管理職の国家資格です。
工事現場には施工管理技士を置くと法律で決まっているため、施工管理技士の資格を持っている人は非常に重宝されます。
業界全体として施工管理技士が不足していることもあり、資格があれば給料が高くなったり、転職に有利になったりします。
1級と2級では受けられる工事の大きさが違い、下請け専門業者の場合は2級でも工事を請けられますが、元請け会社や公共工事の受注をする場合は1級の資格が求められます。
なお、2021年から、施工管理技士の資格の中に「技士補」という資格が追加されています。
また、施工管理には多くの種類の資格がありますが「土木」「電気工事」「設備系」など細分化され、大半は実務経験などが必要となるため、仕事に合わせて取得をしていきます。
設備施工管理の給料・年収
経験を積めば積むほど給料はアップ
厚生労働省が行った2018年の賃金調査をみると、建設業に従事する人の平均年収は509万3,000円となっており、一般的なサラリーマンの年収と比べると若干高めになっています。
ボリュームゾーンは400万円~600万円ほどと考えられますが、これは施工管理を行う企業の規模や、建築・土木・電気などの分野によっても異なります。
一般的な求人を見ると未経験者のスタート金額は月給20万円~25万円程度、 経験者の場合は30万円~50万円程度とされていることが多いです。
これは設備施工管理の仕事において経験者が求められているためで、経験を積めば積むほど給料はアップしていきますし、よりよい給料や待遇の企業に転職することも可能です。
大手の建設会社やゼネコンに就職すると給料はよく安定していると考える人も多いかもしれません。
大手企業は携わる現場の規模が大きく給与水準が高いことは確かですが、規模が小さな企業でも工事費用に対し利益を大きくし、社員に還元しているところもあります。
また資格の有無でも給料に差が付き、会社によっては資格を持っていることで手当が付くところもあります。
施工管理の資格には1級と2級がありますが、どちらの資格を持っているかによって数千円~数万円程度の資格手当が支給されます。
より給料をアップさせたいのであれば、資格を持っておくことは必須といえるでしょう。
設備施工管理の現状と将来性・今後の見通し
設備施工管理を目指す人にはチャンス
現在、設備施工管理の仕事をする人は減少傾向にあり、多くの企業が人材を欲している状態です。
求人数は多いものの応募者は少なく、採用に困っている企業も少なくありません。
今後も震災や災害の復興、都市の再開発などには欠かせない仕事であるため、高い需要が続き、売り手市場が続いていくでしょう。
特に土木、電気、設計などの知識があり、資格を取得していれば給料や待遇のいい求人も非常に多いです。
これから設備施工管理を目指したいという人であれば非常にチャンスの時期といえ、若いうちに資格を取得しておけばキャリアアップもかなうでしょう。
設備施工管理の就職先・活躍の場
設備施工を専門にする企業が多い
設備施工管理の就職先は、ゼネコンやハウスメーカー、デベロッパー、設備施工を専門にする企業が多いですが、土木工事や電気工事、水道工事を行っている企業でも採用している場合があります。
設備施工管理の役割は幅広く、「空調」「給排水」「消火設備」などそれぞれを専門にやっているところもあれば、さまざまな仕事を幅広く手掛けているところもあります。
なお、建設会社、工務店、内装工事業者、リフォーム会社、不動産会社などでも働ける場合があります。
現場では多くの技術者(職人)たちが協力して働いているため、設備施工管理はその人たちをまとめ、安全かつスケジュール通りに工事が進むよう管理していくのが仕事です。
設備施工管理の1日
デスクワークと現場仕事を繰り返す
設備施工管理の仕事は、基本的には見積の書類や図面の作成で、常に現場に出ているわけではありません。
打ち合わせがある場合は朝から現場に出ることもありますが、仕事内容によって1日の流れは変わり、午前中はデスクワーク、午後は現場に出る、ということもあります。
なお、現場の引渡し前は一番忙しい時期になり、残業が多くなりがちです。
設備施工管理のやりがい、楽しさ
建物工事に必要不可欠な仕事
設備施工管理の仕事のやりがいは、スケールの大きい工事に携わる機会が多いことです。
商業施設や集合住宅、ときには公共工事に携わることもあり、自分がした仕事が後世までのこり、多くの人に利用されることは、設備施工管理のやりがいであるといえるでしょう。
また、設備施工管理は建築や建設の際にどの分野においても必要不可欠な存在です。
人々の生活がある限りニーズが減ることはなく、将来性もある仕事ということは魅力のひとつです。
経験を積んだり資格を取得したりすれば、その分だけキャリアアップしていく仕事であり、給料や待遇が頑張っただけ伸びていくのも、大きなやりがいとなるでしょう。
設備施工管理のつらいこと、大変なこと
残業が多く長時間労働になりがち
施工管理の仕事は、あらかじめ工期が決められており、施主に引き渡す日が決まっています。
そのため間に合うようにしっかりとスケジュールを組んでいきますが、さまざまな理由によって工期が遅れている場合は、遅くまで残って残業をしたり、休日出勤して仕事をしたりすることもあります。
設備施工は、どうしても工程の最終的な場面に行われることが多いため、天候やトラブルなどにより工程に遅れが生じれば、それを取り返すために激務となることもあります。
また昼間は現場で働き、その仕事が終わった後に会社で事務作業をするという人も多く、長時間労働になりがちなこともこの仕事の大変なところです。
設備施工管理に向いている人・適性
誰からでも好かれやすい人
施工管理は、業者や職人などさまざまな人とコミュニケーションをとる機会が多いため、人柄がよく、誰からでも好かれるという人が向いています。
打ち合わせなど交渉の場も多く、なかにはベテラン職人など気難しい人を相手にすることもあります。
そんなときにも周囲と円滑にコミュニケーションがとれ、人から信頼を得られる人は施工管理に向いているでしょう。
また、管理者として工事に関わる人たちをひっぱっていくリーダー気質の人にも向いています。
設備施工管理は長期間にわたることも多いため、目標に向かってこつこつと努力を重ねられる人、安全管理や品質管理などでていねいな仕事ができる人も向いているでしょう。
設備施工管理志望動機・目指すきっかけ
大学や専門学校での学びから
施工管理を目指すきっかけとしては、大学や専門学校などで勉強するうちにこの仕事を知り興味を持ったという人が多いです。
新卒の場合は、これまでの経験や自分の性格をどのように生かしたいかを中心に伝えるとよいでしょう。
とくに若い世代では、体力やリーダーシップが求められるため、こうしたことをアピールすることが大切です。
入社後に資格取得を目指したいという意欲を伝えることもアピールにつながります。
転職の場合は、前職の経験をどれだけ生かせるかがポイントとなります。
施工管理以外でも、建築や建設関係で働いたり、勉強したりした経験があればエピソードを交えてアピールするとよいでしょう。
設備施工管理の雇用形態・働き方
正社員以外の働き方が広がる
設備施工管理として働く場合、これまでは現場を管轄する建設会社やゼネコンに正社員として採用され、仕事をするのが一般的でした。
しかし近年では正社員だけでなく派遣社員、フリーランスとして働き活躍する施工管理も出てきています。
建設業界・工事の現場に設備施工管理が非常に不足しており、採用側も設備施工管理の経験がある人を多く求めているため、さまざまな雇用形態で活躍する人が増えてきました。
フリーランスの場合は、仕事の自由度や選択肢が上がる一方で、仕事の数も収入額も正社員に比べると不安定になってしまいます。
派遣社員は案件ごとの契約更新が多く、高い時給で働けることから近年増えつつあります。
設備施工管理の勤務時間・休日・生活
残業は多めで長時間労働の現場も
設備施工管理は長時間労働になりがちな職業と言われます。
これには業務量の多さと、建設業界の人手不足が背景にあります。
設備施工管理は、工程管理、安全管理、原価管理、品質管理4つが主な仕事です。
現場に足を運んで状況をチェックしたり、指示を出したりするだけでなく、会社での事務作業や打ち合わせなど非常に業務量が多く、どうしても長時間労働になってしまうのです。
また、慢性的な人手不足により、設備施工管理が抱える仕事量が増えることも原因の一つです。
激務というイメージがあるため、新しい人材が入ってこないという現状もあります。
一方で働き方改革が進められ、働きやすい環境が整いつつある企業も増えてきています。
設備施工管理の求人・就職状況・需要
求人は非常に多く有資格者は引く手あまた
設備施工管理の求人は非常に多く、人手不足が深刻化しています。
とくに大きな企業や大手では有資格者である施工管理技士が足りないために、仕事を遅らせるということが発生しています。
そのためまったくの未経験からでも採用をする企業が増えており、とくに施工管理技士の資格を持っている人であれば、よりよい待遇と給料で迎えられる可能性が高いでしょう。
工事に必要な設備施工管理を採用できないために、派遣社員などで補うほか、なかには会社を廃業せざるを得ない建設会社もあります。
今後もこうした状況が続けば、日本の建設業界全体が停滞してしまうため、国や業界を挙げて人材を増やそうと努力しています。
設備施工管理の転職状況・未経験採用
未経験からの転職もできる
設備施工管理には、転職でなる人も非常に多いです。
求人が非常に多いため、未経験からでもチャレンジできる企業は多くあり、施工管理技士の資格があれば非常に有利となるでしょう。
未経験からの場合、先輩からの指導のもと経験を積み仕事を覚えていきます。
研修制度や教育体制が整った企業や、資格取得支援をしている企業も多いため、こうした企業を探してみるとよいでしょう。
建築や建設に関わるというと「体育系」のイメージがありますが、実際に肉体労働をすることは少なく、コミュニケーション能力を発揮できる仕事です。
もちろん女性で働いている人もおり、前職に関わらず採用のチャンスはあります。
設備施工管理は激務? 残業は多い?
徐々に改善されつつある
設備施工管理は長時間労働や残業が多いというイメージがあります。
そもそも建設業では土日休みの現場は少なく、厚生労働省の調査によると、週休二日制をとっている企業は全体の1割以下です。
また、建設業全体として年間労働時間が全産業よりも336時間多いというデータもあり、労働時間が非常に長いということがわかります。
しかし、国はこうした現状を受け、長時間労働の是正をはじめとした「4改革」を推進しています。
とくに大手ゼネコンなどでは人手不足もあり、待遇改善に積極的で、安定した環境で働けるところも増えてきています。