騎手になるには? 年齢制限やなるまでのルートを解説
騎手になるまでの道のり
競馬学校に入学する
騎手になるには、毎年4月入学の競馬学校で学ぶ必要があります。
JRA競馬学校の場合、約3年の学校生活のうち一年半で乗馬や走路での騎乗など実技のほか、必要なフィジカルトレーニング、関係法規や馬学の専門カリキュラムをこなします。
残りの1年半は実践です。
そのうちの約一年は美浦または栗東のトレーニングセンターで実習。
ここでは調教方法や実戦的な騎乗技術を体得し、残り半年は競馬学校で模擬レースなどを通じて実際のレースにおける騎乗技術を学びます。
騎手免許試験に合格する
3年間の競馬学校生活を終えたら、騎手免許試験に臨みます。
内容は、学力試験(筆記と口頭面接)、騎乗技術、身体検査、人物考査(面接)の4項目です。
この試験に合格して初めて、騎手としてデビューすることができます。
厳しい環境で学ぶ
トップ騎手の武豊さんは、学校での生活を振りかえって「競馬学校で学んだことでいちばん役に立っているのは、我慢すること」と話しています。
武豊さんのころはまだ学校が設立されて間もないころで、先輩・後輩の関係性や生活指導も厳しかったようです。
現在は寮生活の雰囲気などは変わってきているようですが、同じ夢を持つ仲間たちと切磋琢磨し、厳しい世界で生きていくための術を学ぶ大切な環境といえます。
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騎手に必要な資格や免許は? どんな試験がある?
騎手に必要な資格
騎手になるには、「騎手免許」が必要です。
試験は、日本中央競馬会(JRA)と地方競馬全国協会(NAR)がそれぞれ実施しています。
JRAとNARは、競馬法に基づいて農林水産大臣の認可を受けており、「騎手免許」は国家資格となっています。
JRAの騎手免許を取得した騎手は、中央競馬のレースで騎乗できます。
また、NARの騎手免許を取得した騎手は、地方競馬のレースで騎乗できます。
基本的に、両方の騎手免許を同時にもつことはできません。
また、中央競馬の騎手免許をもっていても地方競馬のレースには出られませんし、地方競馬の騎手免許をもっていても中央競馬のレースに出場することはできません。
ただし、近年多くなった指定交流競走には、中央、地方関係なく出場可能です。
中央競馬の騎手免許について
受験の年齢制限は、16歳以上です。
中央競馬の騎手免許には、「平地競走」と「障害競走」があります。
平地競走は、全速力で走るギャロップ(襲歩)によって、純粋にスピードを競う一般的なレースのことです。
障害競走とは、コース上に設置された障害物を飛び越えながらゴールを目指すレースです。
新規に騎手免許を取得しようと思えば、JRAの競馬学校(千葉県白井市)で、3年間の騎手過程を修了するか、JRAに承認されて騎手候補者になる必要があります。
受験者のほとんどが、競馬学校の卒業見込み者か、卒業生です。
地方競馬の騎手免許について
受験の年齢制限は16歳以上です。
地方競馬の騎手免許では、「平地競走」と「ばんえい競馬」があります。
新規に地方競馬の騎手免許を取得しようと思えば、NARの地方競馬教養センター(栃木県那須塩原市)で、2年間の騎手過程を修了するか、NARに承認された騎手候補者になる必要があります。
受験者のほとんどが、地方競馬教養センターの卒業見込み者か、卒業生です。
ばんえい競馬については、養成機関がありません。
まず、厩舎に厩務員として1年以上所属し、馬の扱いや基礎技術を身につけた後、ばんえい競馬が実施する騎手免許試験を受けます。
この試験に合格すると、NARから騎手免許が交付されます。
1年ごとに試験を受けて更新する
騎手資格は、中央競馬でも、地方競馬でも、1年ごとに更新が必要です。
毎年、競馬関係法規と乗馬技術に関する知識や一般常識の試験と身体検査、人物考査を受けて合格すれば、騎手資格が更新されます。
騎手免許とは
騎手免許を交付されて騎手に
騎手免許の国家試験に合格すると、晴れて騎手になれます。
騎手免許は、中央競馬会(JRA)と地方競馬全国協会(NAR)がそれぞれ交付します。
そのため、騎手も、騎手免許の交付を受けると、JRAか、NAR、いずれかの所属となります。
美浦か、栗東の厩舎に就職する
JRAの場合、茨城県の美浦と滋賀県の栗東にトレーニングセンターがあります。
騎手は、どちらかに所属し、その所属先が勤務地となります。
勤務地は、騎手本人の意思で決めます。
現実には、その騎手の出身地に近い方へ所属するケースが多いようです。
騎手は、美浦と栗東のトレーニングセンターにある厩舎に所属します。
そこで、平日は競走馬の調教やトレーニングを行っています。
昔は、騎手志望者が、最初からどこかの厩舎に所属し、ゼロから育てられましたが、現在の騎手は、ほとんどが競馬学校の出身者です。
その競馬学校では、最終学年の3年次に、生徒は厩舎に所属し、調教やトレーニングの技術指導を受けることになっています。
騎手免許を取得した後に所属するのも、競馬学校時代に実地研修した厩舎であることが目立つようです。
最近は、騎手になって数年間経つと、厩舎から独立して「フリー騎手」になるケースが増えています。
しかし、「フリー騎手」といっても、中央競馬の騎手の場合、JRAとトレーニングセンターには所属しています。
地方競馬の騎手は各地の厩舎へ就職する
地方競馬の騎手は、まず、いずれかの地方競馬場に所属します。
地方競馬場は、北海道日高町の門別競馬場から、佐賀県鳥栖市の佐賀競馬場まで15ヵ所あります。
どの競馬場に所属するかは、本人の自由です。
やはり、出身地に近い競馬場を選ぶ騎手が多いようです。
地方競馬の騎手は、各競馬場に所属すると同時に、競馬場に所属する厩舎に所属します。
どの厩舎に所属するかは、騎手の自由です。
地方競馬教養センターの2年次に、実地研修を受けた厩舎を選ぶ人が多くなっています。
地方競馬で、騎手は、どこかの厩舎に所属していなければ、レースで騎乗できません。
そのため、中央競馬のようなフリー騎手は存在しません。
騎手免許試験とは
国家試験にあたる騎手資格試験
競馬で活躍している騎手は、全員が国家試験である騎手資格を取得しています。
日本では、競馬法にもとづいて、農林水産大臣が資格の認可を与えています。
資格を取得していない人は競馬のレースには参加できません。
中央競馬、地方競馬それぞれによって異なる試験が行われています。
どちらかの資格を持っていても、資格を持っていない競馬のレースには参加できません。
中央競馬の資格試験の方が、地方競馬の資格試験よりも難易度が高くなっています。
中央競馬の騎手免許試験
中央競馬の騎手免許試験は、卒業前の1月下旬か、2月上旬の2日間に渡って行われます。
試験内容は、学力の筆記試験、学力の口頭試験、騎乗技術試験、身体検査、人物考査の5項目です。
- 筆記試験は、競馬に関する法律の問題で、満点は100点です。
- 口頭試験は、競馬に関する法律や知識についての質問で、満点は100点です。
- 騎乗技術試験は、発走(100点満点)、単走と併走の走路騎乗(100点満点)です。
障害競走の免許をめざす場合は、走路障害跳び越し(100点満点)の試験も受けます。
筆記、口頭とも試験内容は、競馬学校で習った内容ばかりです。
各試験とも、概ね60点以上で合格とされています。
- 身体検査は、騎手としての業務に支障がないかがチェックされます。
とくに体重と視力が重視され、体重が49㎏以下で、視力が裸眼両眼で0.8以上、かつ、左右とも0.5以上であることが合格条件となっています。
- 人物考査では、騎手としての業務を遂行するにあたり、人格、見識の面で特に支障がないかどうかがチェックされます。
競馬学校で3年間の寮生活を送っていますので、その間に大きな問題を起こしていなければ問題はありません。
地方競馬の騎手免許試験
地方競馬の騎手資格試験については、詳しい内容が公表されていません。
基本的には、筆記と実技、面接で、内容的には中央競馬の試験に近いと考えてよいでしょう。
騎手資格試験の合格率はほぼ100%
中央競馬、地方競馬とも、騎手資格試験の合格率は、ほぼ100%といわれています。
これは、資格試験に合格の見込みのない者は、競馬学校や地方競馬教養センターを卒業できず、資格試験を受けられないからといわれています。
一発試験で受験も可能
中央競馬、地方競馬とも、競馬学校で勉強しなくても、騎手資格試験が受けられます。
条件は、外国で騎手見習いの経験があるか、国内の厩舎に勤務経験があって、受験を認められた者です。
俗に「一発試験」と呼ばれています。
資格試験の内容は、競馬学校の生徒と同じです。
厩舎勤務の場合、見習いとして経験を積む一方、競馬の仕組みや関連法案についても勉強する必要があります。
一発試験で騎手免許を取得するのは、きわめてマレなことですが、全くいないわけではありません。
2019年の試験に合格し、JRAの騎手となった藤井勘一郎さんはシンガポールやマレーシアなど、世界13か国で騎手として仕事をしてきました。
その後、地方競馬で短期免許を取得し日本でもレースに騎乗。
2018年に6度目の挑戦にしてついにJRA騎手免許試験の第1次試験に合格し、第2次試験に臨み、2019年2月に騎手免許試験に合格したことが発表されました。
2020年3月には、念願のJRA重賞初制覇も成し遂げています。
騎手になるための学校
JRA競馬学校と地方競馬教養センター
競馬学校は、中央競馬と地方競馬のそれぞれに設置されています。
中央競馬が「JRA競馬学校(千葉県白井市)」で、地方競馬が「地方競馬教養センター(栃木県那須塩原町)」です。
JRA競馬学校は3年間、地方競馬教養センターは2年間通うことになります。
入試倍率は、どちらも10倍前後と狭き門ですが、JRA競馬学校に合格する方が難しいといわれています。
実際、JRA競馬学校の受験の方が先に実施され、こちらで不合格になると、地方競馬教養センターの入試を受ける受験生が多いです。
JRA競馬学校の卒業生は、中央競馬の騎手免許試験を受験します。
また、地方競馬教養センターの卒業生は地方競馬の騎手免許試験を受けます。
地方競馬で経験を積めば、中央競馬の騎手免許試験を受け、中央競馬に移ることはできます。
乗馬経験の有無は問われない
JRA競馬学校、地方競馬教養センターとも、入学試験の際、乗馬経験の有無は問わないとしています。
どちらの入学試験でも、実際に馬に乗る審査がありますが、乗馬技術のレベルより、騎手としての適性や馬に対する態度などが審査対象となっています。
騎手試験の受験資格と試験内容
入校に関しては筆記試験があり、騎手としての適性検査も行われますが、中央競馬の騎手と地方競馬の騎手とでは若干試験内容が異なります。
競馬学校入校後は競馬のレース、馬についての知識、実際に馬を乗りこなすための実技練習などがあります。
騎手としての知識、技術を身に付けて卒業すると、今度は騎手免許試験が待ち構えています。
馬やレースに関する問題、実技試験、体力測定、適性検査などが行われ、すべての基準をクリアすると騎手として認められます。
馬が大好きな気持ちをアピール
中央競馬のJRA競馬学校、地方競馬の地方競馬教養センターのどちらも、入学試験では面接があります。
面接では必ず自己PRとともに志望動機が問われます。
志望動機は、「馬が好きだから」でも「競馬を見て感動したから」でも「小さい頃から乗馬に親しんできたから」でも構いません。
騎手は常に競走馬と一緒に行動しますから、馬好きでなければ務まらないのです。
とにかく馬が大好きという気持ちが伝わることが何よりも大切です。
競馬の仕組みも頭に入れておく
ただし、注意すべきは、競馬が公営ギャンブルであるという点です。
競馬について「財布の底をはたいて夢を買っている」と言ったのは、詩人の寺山修二ですが、競馬は、ファンが馬券を買ってくれることで成り立っています。
そのため、競馬に関わる人すべてに公正なレース運営が求められます。
「馬が好きだから、騎手になりたい」という志望動機だけでは、物足りません。
公営ギャンブルである競馬界に就職したいと考える以上、まず、競馬の仕組みを知らなければ、話になりません。
未成年者が馬券を購入することはできませんが、競馬がどのように成り立っているかについて頭に入れておく必要があります。
公営ギャンブルへの就職について
一般に、ギャンブルの世界は評判がよくありません。
「競馬」と聞くだけで、毛嫌いする人もいます。
それでも、なぜ、あえて競馬の騎手になりたいのか。
その点も、よく考えておく必要があります。
競馬学校の面接では、保護者の競馬に対する考えもよく質問されるようです。
自分の子供が公営ギャンブルの世界へ進むことについて、どう考えるか、また、なぜ賛成するかについて、親としての意見をまとめておくことが必要です。
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騎手に向いている人
体重が制限以内でなければ不合格
競馬学校の騎手過程への入学条件に、体重制限が設けられています。
年齢によって、「44.0㎏以下」から「46.0㎏以下」まで細かく区切られています。
入学試験の体重測定で、この制限体重を超えていると、その時点で不合格になります。
現在の自分の体重が制限以下か、入学試験日までに制限以下に体重を落とせるか、確認することが大切です。
高い向上心と精神力
騎手は馬の能力を最大限に引き出すための騎乗技術を磨いていかなくてはなりません。
この学びに終わりはなく、引退するときまで試行錯誤は続きます。
武豊さんは、騎乗技術はもちろん、騎乗中に足を乗せるあぶみなど道具にもこだわっています。
いかに馬に負担をかけずに、その馬の最大限の力をレースで発揮させるのか。
そのための努力を惜しまない向上心とあくなき探究心を競馬に燃やせる人は騎手に向いているでしょう。
加えて、レース中に自らの騎乗技術を正確に発揮するための精神力も必要です。
馬券を購入してくれたファン、馬主や調教師の期待も受けて、自分の技術をレースで発揮することが求められます。
大きな舞台でも力を発揮できる、強い精神力が騎手には必要です。
騎手のキャリアプラン・キャリアパス
プロデビュー後は厩舎所属の騎手に
競馬学校を卒業した騎手は、栗東か美浦のどちらかにある厩舎の所属騎手として活動します。
最初のころは、所属した厩舎の馬に騎乗してレースに出ます。
騎手免許取得から5年未満で通算100勝以下の騎手は、「減量制度」が適用され、特別なレースを除いて最大で3キロ(女性騎手なら4キロ)負担重量が軽くなります。
厳しい勝負の世界ですが、こうした制度も生かして勝ちを積み重ね、馬主や調教師の信頼を高めていくことが必要になります。
フリー転向
中央競馬の騎手は、所属厩舎を離れフリーとして活動することができます。
ある程度の実績をつくりフリーになることができれば、所属厩舎以外の馬への騎乗依頼を受けることができるようになります。
騎乗依頼を受けられる可能性が広がる一方、結果を残せなければ騎乗する機会は減少するのがフリーの世界です。
これまでお世話になった厩舎や馬主との関係性も大切にしつつ、能力のある馬を任せてもらえるように人脈を広げていかなくてはいけません。
女性でも騎手になれる?
騎手の仕事は男性だけのものではありません。
男女比で見れば圧倒的に少ないものの、国内外に女性騎手は存在しています。
JRAでは、通算7人の女性騎手が誕生しています。
現在日本で一番の知名度を誇る女性騎手は、藤田菜七子さんです。
2020年4月にはJRA通算100勝を達成しました。
しっかりとした実力に加え、美しいルックスで週刊誌の表紙になることもある競馬界のアイドル的存在でもあります。
騎手を目指せる年齢は?
騎手になるためには、騎手免許の試験に合格する必要があります。
騎手免許の試験を受けるには、競馬学校の騎手過程に入学して勉強しなければなりません。
その騎手過程の入学条件は、中学卒業以上で、「20歳以下(地方競馬)」あるいは「20歳未満(中央競馬)」となっています。
しかし、18歳以上の合格者はほとんどいません。
実際、高校の卒業を待って入学試験を受けるのでは遅いといわれています。
できれば、15歳か、16歳、遅くとも17歳までに競馬学校の入学試験を受けなければ、騎手になるのは難しいです。
ただし、競馬学校に入学できなくても、厩舎に就職し、調教や騎乗を習い、騎手免許試験を受けるという方法はあります。
ですが、競馬関係の法律や馬に関する学問まで独学で勉強するのはかなり大変です。