放課後児童支援員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「放課後児童支援員」とは

放課後児童支援員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

学童保育施設で働く人のための専門資格

放課後児童支援員は、学童保育施設で働く人のための専門資格で、2015年に「子ども・子育て新制度」が開始したことにより作られた新しい資格です。

これまでは、学童保育施設で働く際の資格には特に規定はありませんでした。

現在では制度開始と共に「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」が制定されたことに基づき、学童保育施設では放課後児童支援員の有資格者を1名以上配置することが義務付けられています。

近年、学童保育施設を利用する児童が増え、施設数が増加するにつれて注目を集めている資格です。

なお、学童保育施設で働く職員には「学童指導員」もいます。

2015年以前は、資格についての規定がなかったため、学童保育施設で働く人はすべて「学童指導員」と呼ばれていました。

しかし、2015年4月に放課後児童支援員の資格が新しく設けられ、各施設に対する配置が義務付けられるようになり、有資格者を「放課後児童支援員」、無資格者を「学童指導員」と呼ぶようになりました。

学童指導員と放課後指導支援員の大きな違いは資格の有無だけであり、就労等で保護者のが家にいない児童に対し放課後やや長期休暇中に居場所を提供するという仕事内容に大きな違いはありません。

「放課後児童支援員」の仕事紹介

放課後児童支援員の仕事内容

学童保育施設での児童の保育

放課後児童支援員の仕事内容は、放課後や長期休業中など、家庭に保護者がいない児童に対し、家庭に代わって保育をすることです。

子どもたちが遊ぶ様子を見守ったり、宿題などの勉強をサポートしたり、食事やおやつをとりながら一緒に話をしたりしながら、子ども一人ひとりの性格や特徴を知り、子どもの育成支援をしていきます。

勉強を教えるにしても、一人で黙々とやらせるのではなく、その子の理解度や進み具合に合わせ考えさせたり、疑問を解決する方法を教えたり工夫をします。

また、家庭と連携をすることも大切な仕事です。

小学生同士でもトラブルやいじめは切り離せない問題ですし、近年ではSNSや携帯電話の利用も低年齢化しています。

仕事をしながら子どもを育てている保護者には見えない問題や、普段知ることができない日常の様子や心身の状態を感じ取るのは、放課後児童支援員の得意分野です。

学童保育施設でどのように過ごしているのか、今日はどのような様子だったか、普段と変わった様子はないかなど、保護者と情報交換をすることで安心感を与え、信頼して預けられる環境を整えていきます。

子どもたちにとって、学童保育施設は学校、家庭のほかの第三の居場所ともいえます。

子どもも保護者も安心安全に利用できる場所を提供し、施設を利用する子どもたちの心と体の成長をサポートすることは、放課後児童支援員の大きな役割です。

放課後児童支援員になるには

放課後児童支援員の資格を取得し就職を目指す

放課後児童支援員として働くには、放課後児童支援員の資格を取得しなくてはなりません。

以下の要件のどちらかを満たしていれば、実務経験がなくても資格が取得できます。
・保育士・社会福祉士・幼稚園等の教諭の資格がある
・大学等での社会福祉学等を履修している

一方、実務経験が必要な場合は以下のとおりです。
・高卒以上で2年以上児童福祉事業に従事した場合
・高卒以上で、かつ2年以上児童福祉事業に類する事業に従事し、市町村長が適当と認めた場合(※2,000 時間以上の勤務経験が目安)
・5年以上放課後児童健全育成事業に従事し、市町村長が適当と認めた方(中卒等の方も含む)

参考:東京都福祉保健局

これらのうちどれかの資格取得条件を満たしていれば、各自治体が実施する研修を受講し、放課後児童支援員の資格を得られます。

研修は、放課後児童支援員として仕事をする上で、必要最低限の知識・技能を習得し、それらを実践する際の基本的な考え方や心構えを学ぶことが目的です。

研修日程は自治体ごとに異なり、6分野16科目、24時間のカリキュラムで構成されています。

認定研修の全科目を履修し、すると、都道府県による終了の認定が行われ、都道府県知事名で修了証が交付されます。

その後、放課後児童クラブや放課後子ども教室、民間学童保育などへと就職します。

職員募集をしている自治体や児童クラブは非常に多いため、就職でそれほど苦労することはないでしょう。

放課後児童支援員の学校・学費

社会福祉や教育などを学ぶのが一般的

放課後児童支援員の資格を取得するには、まず高卒以上の学歴が必要です。

資格取得の要件には「大学で、社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学、体育学を専修する学科・研究科、またはこれらに相当する課程を修めて卒業した方」とあります。

また保育士や社会福祉士、幼稚園、小学校、中学校、高等学校または中等教育学校の教員免許などの資格を取得していれば、資格取得の際に実務経験が不要です。

放課後児童支援員を目指すのであれば、あらかじめこのような学部や資格が取得できる学校などの進路を選択しておくと近道となるでしょう。

ただし、まったくの未経験からも実務経験があれば資格取得は可能であるため、こうしたことを学んでいなくても放課後児童支援員になることはできます。

放課後児童支援員の資格・試験の難易度

資格取得にはさまざまな要件がある

放課後児童支援員の資格を取得するには、要件があります。

社会福祉や教育系の資格を取得する、社会福祉などが学べる大学に進み卒業する、実務経験を積む、など、いくつかの要件のうちどれかに該当する必要があるため、あらかじめ調べておくことが必要です。

2020年4月には「5年以上放課後児童健全育成事業に従事した者であって、市町村長が適当と認めたもの」の項目が追加され、要件が緩和されつつあり取得のハードルもさがってきています。

要件を満たすと研修を受講することができ、これをすべて終了すると放課後児童支援員の資格を取得できます。

研修科目は次の6科目で、基本的には6日間にわたって行われます。

・放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の理解
・子どもを理解するための基礎知識
・放課後児童クラブにおける子どもの育成支援
・放課後児童クラブにおける保護者・学校・地域との連携・協力
・放課後児童クラブにおける安全・安心への対応
・放課後児童支援員として求められる役割・機能

日程は各自治体によって異なり、受講は無料ですがテキスト代は別途必要です。

なお、放課後児童指導員資格を持ち働くうちに、さらに実践的・専門的に学びたいという人には、以下の上位資格があります。

・放課後児童育成支援師
・放課後児童専門育成支援師
・放課後児童高度育成支援師

これらは日本放課後児童指導員協会が独自に認定する資格で、放課後児童支援員の資格取得者もしくは取得できる見込みの人のみ受験することができます。

放課後児童支援員の給料・年収

給料アップや待遇改善の動きがある

放課後児童支援員の給料は、正社員の場合月収20万円前後が多くなっています。

放課後指導員の制度が制定される以前の資料ですが、全国学童保育連絡協議会が2014年に行った調査によると、週5日以上勤務する指導員の中で、年収150万円未満の人は46.2%です。

また150万円以上300万円未満の人は31.3%、300万円以上の人は5.4%となっています。

理由としては、学童保育施設で働く人は多くが非正規雇用であること、また放課後から夜間までの短時間勤務が多く、給料が低めに設定されていることなどが挙げられます。

地域や経験年数などによっても異なりますが、給料は低めとされていることをあらかじめ知っておきましょう。

ただし、2019年からは厚生労働省による「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」が始まり、放課後児童支援員の資格設定に伴い、資格取得の推奨と待遇改善を目指す取り組みが積極的に行われています。

放課後児童支援員の資格取得を目指すだけでなく、資格手当として給与を上乗せしたり、勤続年数や経験に合わせて段階的な昇級を行ったりするものです。

具体例としては、資格取得で月額約1万円程度、5年以上勤務の上で指定の研修を修了すると月額約2万円程度、10年以上の勤務で研修を修了した施設長の場合は月額約3万円程度上乗せするとあります。

地域や施設によって導入に違いがありますが、学童保育の需要が高まり、利用する児童が増えるにつれて、放課後児童支援員の給料や待遇もさらによりよいものに改善されていくでしょう。

放課後児童支援員の現状と将来性・今後の見通し

需要が高く、なり手が不足している現状

共働き家庭が増え、放課後保護者がいない家庭が増えていく中で、児童の安全の確保は非常に大きな問題です。

その点で学童保育施設は非常に重要な役割を担っており、令和元年の登録児童数1,299,307人で、前年比64,941人も増加しています。
 
また放課後児童クラブ数 は25,881か所となっており、これも前年比553か所増と急速に増えつつあります。

それでもまだ学童保育施設を利用できなかった児童数(待機児童)も約18000人おり、いわゆる「小1の壁」に直面する保護者が多いのが実態です。

今後はますます放課後児童支援員の人数が増え、その役割は大きくなっていくと考えられます。

家庭や地域社会といった学校外の教育力低下が叫ばれる中、学童保育施設における放課後の充実と放課後児童支援員の活躍はますます重要となるでしょう。

放課後児童支援員の就職先・活躍の場

放課後児童クラブなどの学童保育施設

放課後児童支援員の活躍の場は、放課後児童クラブや放課後子ども教室などの学童保育施設です。

主に共働き家庭などで放課後に居場所がない小学生に遊びや生活の場を提供して、健全な育成を図ることを目的としています。

核家族化が進み、女性の社会進出が活発化することで、放課後保護者が家庭にいない児童が激増し、現在は国の政策課題にもなっており、施設数は年々増えています。

公設の放課後児童クラブには、自治体が運営元となっている「公設公営施設」、自治体が設立して、運営はNPOや民間企業に委託している「公設民営施設」があります。

なお放課後子ども教室は、文部科学省の「放課後子ども教室推進事業」と厚生労働省の「放課後児童クラブ」を一体的あるいは連携して実施しているものです。

放課後児童支援員の1日

児童の集まる放課後から働く場合が多い

放課後児童支援員の勤務時間は、平日は小学校の授業が終わる14時ごろから、学童保育施設の閉所時間までです。

たいていの場合は18~19時頃ですが、施設によっては21時ごろまで開館しているところもあります。

土曜日や夏休みなどの長期休暇は、朝から閉所時間まで交代で勤務します。

11:00 出勤
子どもが来館しないうちに、事務仕事などを行います。
13:00 休憩
14:00 子どもが来館
授業が終わった子どもたちが次々と来館します。
子どもたちを出迎え、出席を確認します。
勉強や遊びを通して子どもたちと交流します。
15:30頃 イベント
読み聞かせや紙芝居などのイベントをしたり、季節に合わせた行事を行ったりすることもあります。
16:00 子どもの帰宅に対応
子どもたちが帰宅しはじめるので、一人一人声を掛けて確認します。
保護者が迎えに来た場合は、今日の様子などを共有します。
18:00 片付けなど
多くの子どもが帰り始めるので、片付けや掃除などをはじめます。
19:00 閉館
最後の子どもが帰宅すると、施錠をして自分も帰宅します。

放課後児童支援員のやりがい、楽しさ

子どもの成長を間近に見られること

放課後児童支援員のやりがいは、子どもたちと生活する中で子どもの成長を実感できることです。

勉強や遊びを通して、これまでできなかったことができるようになったり、一人遊びばかりしていた子どもが集団行動ができるようになったりと、さまざまな変化を見ることができます。

また、子どもと長い時間一緒に生活することで、信頼関係を築くこともでき、ときには保護者や先生には話せないことを打ち明けてくれたり、相談事を持ちかけたりしてくれることもあります。

子どもはそれぞれ個性をもっているので、接し方に正解はありませんが、放課後児童支援員という枠を超えて、ひとりの大人として信頼されたときには非常に嬉しくなるでしょう。

放課後児童支援員のつらいこと、大変なこと

子ども一人一人に合わせた対応が求められる

子どもたちは一人一人個性があり、トラブルなど何かあったときの対応も子どもに合わせそれぞれ変える必要があります。

小学1年生と6年生ではできることや物事の理解度も全く違うため、放課後児童支援員自身がそのことを理解し、適切な対応をとらなくてはなりません。

また近年では学校や家庭でトラブルを起こしていたり、ストレスや問題を抱えていたりする子どもも非常に多いです。

子どもの様子を注意深く見守り、子どもからのSOSを逃さないようにしなくてはなりません。

なかにはお互いをわかり合えるまでかかる子どももいるため、心を開いて信頼を勝ち取るまでには、長い時間がかかることもあり、そのためにさまざまな工夫や努力をする必要があるでしょう。

放課後児童支援員に向いている人・適性

子どもが好きで子どもを理解できる人

放課後児童支援員に向いている人は、子どもが好きで、子どもの視点に立って物事を考えられる人です。

放課後児童支援員の仕事は、子どもの遊びや勉強のサポートだけではなく、子どもの成長を見守ることです。

仕事をするなかでは、子どもが起こすトラブルなどを含め成長過程にある子どものさまざまな感情を受け入れ、理解していかなくてはなりません。

ルールやマナーなどを指導することももちろん大切ですが、子どもがトラブルを起こした時にそれを受け入れ、子どもの視線にたって解決策に導ける人が向いているでしょう。

また、子どもの些細な変化や感情のゆれに気が付きやすい人、突発的な事態が起きた際に臨機応変に対応できる人も向いています。

放課後児童支援員志望動機・目指すきっかけ

子どもと関わる仕事がしたい

放課後児童支援員を目指す理由としては、子どもが好きで子どもと関わる仕事に就きたいというものが圧倒的に多いです。

自分自身が学童保育施設を利用していて、そこで出会った職員に憧れて志望した、学生時代に学童保育施設でボランティアやアルバイトを経験し、本格的に志すようになったという人もいます。

また、放課後児童支援員は非正規雇用や短時間勤務の職員も多く、自分自身の育児の経験を生かしたいという主婦層も非常に多く見られます。

もともと各種教員免許や保育士資格を持っていて、転職や再就職を考えた際に家庭生活と両立しやすいこの仕事を選ぶという人は珍しくありません。

放課後児童支援員の雇用形態・働き方

正社員は少なくアルバイトやパートが多い

学童保育施設で働く職員は、非常勤・臨時・嘱託・パートといった非正規雇用の割合が高いのが特徴です。

厚生労働省が行った2017年の調査によると、学童保育施設で働く指導員は全体で約13万1300人、そのうち常勤職員は約27%です。

離職率も高く、勤続年数1〜3年が半数を占めていますが、これは、非正規で不安定な身分で給料も低めであることが原因だと考えられ、近年はこうした待遇を改善すべく様々な取り組みが行われています。

正社員としてしっかりとした待遇で働ける人はごく一部のみですが、放課後児童支援員として資格を持っている人は正社員として採用されやすい傾向にあります。

一方で、短時間だけ働きたい、家庭と両立して働きたいという人にも門戸が開かれているといえるでしょう。

放課後児童支援員の勤務時間・休日・生活

児童の来館から閉館時間まで

放課後児童支援員の勤務時間は、主に小学校の授業が終わる14:00ごろから、学童保育施設の閉所時間(18:00~19:00ごろ)までです。

主にお昼前後から19:00ごろまでを勤務時間としているところが多いですが、子どもが多く利用する夕方のみの短時間勤務も多く見られます。

また土曜日や長期休業中などは朝から児童が来館するため、8:00~19:00頃まで開館し、シフト勤務としていることが多いです。

なお学童保育施設ではなく、児童会館などで働く場合は小学校の児童だけでなく、地域の未就学児や学生が利用することもあるため、8:00~21:00などより長い勤務時間となり、早番遅番などのシフト勤務になります。

休日は基本的に日曜日としているところが多いですが、施設によって違いがあります。

放課後児童支援員の求人・就職状況・需要

需要は高く求人も多い

学童保育施設は年々増え続けていますが、令和元年の放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況を見ると、利用できなかった児童は全体で18,261人おり、前年と比べても 982人増えています。

核家族化や共働き家庭が増えるにつれて、ますます学童保育施設の重要性は高くなっていくでしょう。

放課後児童支援員の数は98,905人とされ、前年と比較すると8,136人増えており、今後も高い需要が続き、求人も多いと考えられます。

今後放課後児童支援員を目指す人には、活躍するチャンスが増えているといえます。

ただし、学童保育施設が乱立するにつれそのサービスの質や待遇には差が出始めていることが問題視されているため、仕事内容や就業規則をしっかりと確認しておくことが必要です。

放課後児童支援員の転職状況・未経験採用

育児経験を生かしたい主婦層が多い

放課後児童支援員は、転職でなる人も多い職業です。

もともと保育士などの資格を持って働いていた人が転職でなることもありますし、まったくの未経験から指導員の経験を積み放課後児童支援員になる人も少なくありません。

学童保育施設は昼過ぎから夜間までの仕事で、短時間勤務のパートや非正規雇用も多いため、短時間だけ働きたい、子どもがいない間働きたいという主婦層からも人気があります。

育児の経験が生かせることから、福祉や教育の資格を得たり勉強したりしていたものの、出産や育児などで一時的に離職し、再度子どもに関わる仕事がしたいという人からも非常に人気があります。

放課後児童支援員の認定資格研修とは

学童保育の基本を学ぶ研修

放課後児童支援員の認定資格研修とは、放課後児童支援員として放課後児童クラブ等で仕事をしようとする人が、学童保育の基本的な考え方や心得、必要最低限の知識・技能を習得するための研修です。

研修は各自治体によって行われ、基本的にはその自治体にある放課後児童クラブで既に働いているか、自治体に現住所がある人を対象としています。

受講資格にはいくつかの要件があるため、受講対象になるかどうかのチェックが必要です。

研修は4日から6日程度にわたって行われるのが一般的ですが、保育士や教員免許など所有資格により科目が免除される場合があります。

全日程を終了すると、都道府県知事から修了書が交付され、放課後児童支援員として働くことができます。