菓子業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
菓子業界とは
菓子業界には、菓子メーカーをはじめ、菓子の専門商社、洋菓子などの菓子を製造・販売する販売専門店などが含まれます。
お菓子はチョコレートにせんべい、スナック菓子、洋生菓子など、ジャンルによってその時々で需要の変化が見られますが、消費者にとって比較的購入しやすい価格帯の商品が多く、トレンドを取り入れた商品展開もしやすいため、景気の影響を受けにくいもののひとつです。
さらに近年は、訪日外国人旅行者の増加に伴って、訪日外国人旅行者による菓子類の購入量が右肩上がりに増加。
農林水産省が観光庁の「訪日外国人消費動向調査」をもとに推計したデータによると、2013年は617億円だった訪日外国人旅行者のお菓子の購入額が、2017年には1,589億円にまで増えています。
砂糖や小麦など輸入原材料の価格高騰や少子高齢化による将来的な市場規模の縮小は予想されるものの、高齢者向けなど時代のニーズに応える商品の開発や、海外市場への展開次第では、さらなる成長が期待できる業界です。
菓子業界の役割
お菓子は私たちが物心つく頃、あるいはその前から、私たちの心を和ませたり、元気づけたり、安心を与えてくれたりする存在です。
菓子業界の役割とは、例えば、安心・安全な素材を使用する、アレルギーのある人でも美味しく食べられる、多くの人が求めやすい価格を維持するなど、お菓子がこれらも私たちにとって変わらぬ存在であるよう、伝統を守りながらも変化し続けることでしょう。
また、近年では食品ロスが社会問題となっていますが、菓子業界についても例外ではなく、返品の数は他業界よりも多いといわれています。
仕入れ過多を防ぎ返品数を減らす、賞味期限の表示方法を見直すなど、嗜好品であるからこそ、適切な量を供給することもまた菓子業界におけるミッションです。
20代で正社員への就職・転職
菓子業界の企業の種類とビジネスモデル
菓子メーカー
お菓子の製造と、それにともなう企画、原料調達、研究、開発、営業などを行っています。
「江崎グリコ」や「森永製菓」などの大手メーカーをはじめ、「白い恋人」で知られる「石屋製菓」といった地方のメーカーなど、その数は国内だけでも無数に存在し、新規参入のしやすい業界としても有名です。
また、スナック菓子やチョコレート、米菓など多ジャンルのお菓子を展開し売上を伸ばすメーカーがある一方で、例えばスナック菓子を専門とした「カルビー」のように、特定のジャンルで圧倒的なシェアを誇るメーカーも多く存在します。
専門商社
専門商社は全国あるいは海外の菓子メーカーから商品を仕入れ、スーパーやコンビニエンスストアなどの販売業者へ商品を卸す業者のことを指します。
具体的には菓子メーカーの商品の在庫を確保し、需要に応じて小売店へ必要な数量を納品する倉庫のような役割をしており、さまざまなメーカーから発売される商品の情報を把握し、売り場作りの提案なども行います。
また、プライベート商品の企画や開発も行っており、「コンフェックス」や「高山」「清種」などが有名です。
販売専門店
洋菓子や和菓子などを専門に扱い、店内や工場で製造、店頭で販売を行うお店です。
個人が経営するいわゆる「街のお菓子屋さん」もあれば、「シャトレーゼ」や「もち吉」「とらや」など、路面店やデパートなどを中心に全国展開をするチェーン店もあり、扱うジャンルは多岐にわたります。
お祝いの品や手土産として利用されることも多く、最近ではネット販売に力を入れていたり、カフェのようにイートインコーナーを設けている店舗もあります。
菓子業界の職種
菓子業界ではお菓子という共通項はあるものの、菓子メーカー、専門商社、販売専門店と、その業態によって仕事内容はさまざまです。
以下では、菓子業界の代表的な職種についてご紹介します。
マーケティング
新商品の企画や、既存商品の顧客拡大を目指して商品戦略を立案、実行する仕事です。
デパートや駄菓子屋などさまざまな場所での市場調査や、試作品についての打ち合わせ、パッケージデザインの提案など、多方面と関わりながら仕事を進めます。
コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力、リーダーシップなどが求められます。
研究開発
マーケティング関連の部署と協力をしながら、原料の選定、製法や配合の研究、試作づくりなどを行う仕事です。
市場調査などのフィールドワークや資料作成といったデスクワークをすることもあります。
また、商品の研究開発とは別に、商品を製造するための設備の研究開発もあります。
設備の研究開発では、生産性の向上を目指した設備の開発や生産ラインの設計などを行います。
営業
スーパーマーケットや百貨店などの本部に新商品やおすすめ商品の商談をしたり、売り場づくりの提案を行います。
他にも店舗巡回や売り場視察、見積もり書や企画書の作成など、業務は多岐に渡ります。
自社製品のみを扱うか、さまざまなメーカーの製品を扱うかが菓子メーカーの営業職と専門商社の営業職の大きな違いです。
パティシエ
さまざまなスイーツ(洋菓子)を作ったり、新商品の開発などを行う仕事です。
販売専門店をはじめ、ホテルのレストランや結婚式場など、勤務先はさまざまであり、ひとつの工程だけを担当するケースや、全ての工程を担当するケースなど、勤務先によって具体的な仕事もさまざまです。
毎日同じ品質のお菓子を作る必要があるため、技術と正確さが求められます。
菓子業界のやりがい・魅力
子どもから大人まで、みんなを笑顔にする仕事
お菓子は老若男女問わず多くの人に愛されるものであり、私たちにとって非常に身近な食べ物です。
そのため、自分が携わった商品を選んでいる人を見かけたり、子どもが嬉しそうに食べている姿を見かけたりと、日常のさまざまな場面で自分の仕事の成果を実感することができるでしょう。
また、多くの人に支持されるお菓子は、何年、何十年と作り続けられることも珍しくなく、自分が携わった商品が、世代を超えて愛される喜びには特別なものがあります。
ひと息つきたい時、盛り上がりたい時、気持ちを伝えたい時など、お菓子のある場所には必ずといっていいほど笑顔や喜びがあり、菓子業界の仕事はその笑顔や喜びを作る一員となれる、非常に魅力的な仕事です。
海外展開という伸びしろに期待
現在、国内では菓子業界に限らず食品業界全体が人口減少による将来的な市場の縮小から逃れられない状況となっています。
一方、世界全体でみると今後も人口は増え続けることが予想されており、新たな市場を求めて、国内の菓子メーカーでは江崎グリコや明治、森永製菓、カルビー、亀田製菓といった大手企業が続々と海外進出を行っている状況です。
しかし各社ともに海外での売上比率は全体の10%前後と非常に低い状態であり、まだまだ市場拡大の余地があります。
近年は外国人旅行者によるお菓子の購入額が増加傾向にあるため、日本のお菓子に需要があることは明らかであるため、各メーカーのさらなる海外展開が期待されます。
菓子業界の雰囲気
働く人の特徴として、やはり菓子業界ということでお菓子が好きな人が多く、休憩時間には好きなお菓子が食べられる、といった職場も多く見られます。
業界全体として若い社員の割合も比較的高めで、明るく和気あいあいとした雰囲気の職場が多いようです。
また、菓子メーカーを中心に、産休育休の制度が充実している、定時に帰りやすい、休みが取りやすいなど、女性が働きやすい環境であるという声が多く聞かれます。
さらに、有給が取りやすかったり、プライベートと仕事をきっちりと分けることができるといった声も聞かれます。
販売専門店では、百貨店などのテナントに出店していることも多く、お店や客層も落ち着いた雰囲気であることが多いようです。
菓子業界に就職するには
就職の状況
菓子メーカー、専門商社、販売専門店ともに新卒採用を実施している企業が多く見られます。
菓子業界は景気の影響を受けるなどして下火になることはあっても需要がなくなるということはなく、比較的安定している業界といえます。
また、お菓子は私たちの生活に馴染み深いものであるため「お菓子が好き」という理由から志望する人の数も相対的に多く、特に大手の菓子メーカーについては例年倍率が高くなる傾向にあります。
募集職種は、総合職をはじめ、マーケティングや研究開発、営業、デザイン、広報、人事、経理などさまざまです。
販売専門店においては、販売はもちろん、店舗内に勤務するパティシエや、工場での菓子製造といった職種も募集されています。
就職に有利な学歴・大学学部
菓子メーカーや専門商社の場合は大学院卒・大卒・短大卒・高等専門学校卒・専門学校卒を対象としてることがほとんどです。
一方、販売専門店での販売や製造、パティシエといった職種では高卒でも応募可能なケースが少なくありません。
菓子メーカーで研究開発や生産管理などの職種を志望する場合は、理系の学部や機械工学、電気・電子工学系の学科が就職には有利です。
同じ菓子メーカーでも営業やマーケティングといった職種や専門商社の場合は、全学部・全学科を対象にしていることが多いようです。
なお、パティシエや和菓子職人といった仕事に就く場合は、あらかじめ製菓専門学校や調理師専門学に通い基本的な知識や技術を身に付けておくことが一般的となっています。
就職の志望動機で多いものは
お菓子が好きという理由はもちろんのこと、多くの人を笑顔にし、幸せな気持ちにできるお菓子という存在に魅力を感じて菓子業界を志望する人が多いようです。
さらに、お菓子は小さな子どもでも馴染み深い食べ物であるため、「子どもの頃から好きだったものに携わりたい」「子どもたちを笑顔にする仕事をしたい」「世界中の子どもたちに日本のお菓子を食べてもらいたい」といった志望動機も多く見られます。
そして、パティシエや和菓子職人といった製造系の職種もまた子どもたちの憧れの職業であり、子どもの頃からの夢であったり、お菓子作りが大好きといった理由でこれらの職種を志望する人は非常に多いです。
菓子業界の転職状況
転職の状況
新卒に大変人気の高い業界ということもあり、菓子メーカー、専門商社ともに大手と呼ばれる企業では中途採用枠はかなり少ない状態です。
そのため、菓子業界への転職を考える場合は、地方メーカーや中・小規模のメーカーを中心に就職活動を行うことになることがほとんどでしょう。
パティシエなどの製造系の職種では技術や即戦力を求めているため、経験者を歓迎する傾向にあります。
技術を磨くためや、健康面や給与面などの理由から転職をする人も多い業界であるため、募集の数は必然的に多くなっています。
転職の志望動機で多いものは
前職も食品業界だったからという理由や、食品業界の中も菓子業界は比較的安定しているからといった理由から菓子業界を志望する人が多いようです。
また、パティシエなど製造系の職種の場合は、以前から料理が好きだったから、ものづくりに憧れてという人も多い傾向にあります。
志望職種に関わらず、やはりお菓子は小さな頃から馴染みのある食べ物であるため、「好きなことを仕事にしたい」と転職を考えた時に、菓子業界は選択肢として浮上しやすい特徴があります。
転職で募集が多い職種
転職の場合はパティシエなどを含む製造や販売、営業、マーケティングなどの職種が中心となり、研究開発系の職種は極めて少ないといえるでしょう。
ただし、企業サイトに掲載されていない求人であっても、転職エージェントを通して募集を行っているケースもあるため、特定の職種に絞って転職活動を行いたい場合は、企業サイト以外の転職サイトなどもまめにチェックしておくことをおすすめします。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
やはり食品業界、さらには同業種での実務経験があれば転職には有利でしょう。
また、技術が求められるパティシエも、実は特別な資格は必要ありません。
ただし、「菓子製造技能士」や「製菓衛生士」「食品衛生責任者」などの資格を取得しておくと、お菓子作りや食品の扱いにたいして一定の知識があることを証明できます。
なお、菓子メーカーや専門商社の場合は、運転免許を必要としている企業も多いです。
菓子業界の有名・人気企業紹介
江崎グリコ
1922年創業、1929年設立。連結売上高3,502億7,000万円、連結従業員数5,381人(2019年3月時点)。
国内最大手の老舗菓子メーカーで、チョコレートやスナック菓子などの菓子類のほか、レトルト食品なども展開しています。
「おいしさと健康」を企業理念とし、「ポッキー」「ビスコ」「プッチンプリン」など数多くのヒット商品を発売しています。
コンフェックス
1906年創業、1950年設立。連結売上高2,451億円、連結従業員数995人(2018年3月時点)。
全国に拠点を置き、菓子の流通卸売を中心に、商品の企画開発や製造、小売り、輸入事業などを展開しています。
2004年からは伊藤忠商事と業務提携を行っています。
シャトレーゼ
1954年創業、2010年設立(新設分割)。売上高543億円、従業員数1,000人(2018年3月時点)。
洋菓子や和菓子、アイスクリーム、パンなどの製造・販売を行い、フランチャイズ店舗を全国に展開しています。
卵や牛乳、水、果物といった製品づくりに必要な材料の多くを自社の契約農家や農場から直接仕入れ、自社工場で製造しています。
菓子業界業界の現状と課題・今後の展望
競争環境
菓子メーカーでは、江崎グリコやカルビー、森永製菓など売上高1,000億円超の大手メーカーが業界全体の8割以上のシェアを占めており、残りの2割以下は地方のメーカーなど無数の中小企業によって構成されています。
また、菓子業界では、和菓子は中村屋や井村屋、飴はカンロや春日井製菓といったように、総合的な売上高は他社より低くても特定のジャンルでは圧倒的なシェアを誇るというケースが非常に多く、各ジャンル内での競争が繰り広げられています。
海外事業については大手メーカーでもまだまだ展開の余地がある状況のため、展開次第では、今後飛躍的に売上を伸ばすメーカーが登場する可能性もあるでしょう。
最新の動向
近年の動向としては、お菓子そのものの内容も去ることながら、パッケージに工夫が凝らされたものが多く見られます。
特に、コンビニエンスストアで見かけることの増えたチャック付のパウチタイプのパッケージは、持ち運びに便利な点や、袋を立てた状態で食べられるなどの理由から人気を集めています。
また、キャラクターとコラボレーションしたパッケージや、中身は同じでもパッケージのデザインが異なる商品、さらにはレンジで温めて食べるポテトチップスのような食べ方さえも提案するものも登場しており、大手メーカーを中心に付加価値を狙った展開が広がっているようです。
業界としての将来性
お菓子は嗜好品ではあるものの、多くの人々の生活にしっかりと根付いているため、今後もお菓子の需要だけが大きく落ち込むようなことは考えにくいでしょう。
また、お年寄りや子ども向けの柔らかいお菓子や、少量で持ち運びしやすいタイプのお菓子など、時代のニーズに合わせた商品展開を続けることで、さらなる飛躍も期待できます。
外国人旅行者による需要の高さを見る限りでは、海外でのニーズも十分にあると考えられるため、大手メーカーを中心とした海外事業の拡大が注目されます。
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