専門職大学院とは

大学院には「専門職大学院」と呼ばれる機関があることをご存知でしょうか。

一般的な大学院と専門職大学院はどのようにちがうのか、専門職大学院にはどのような種類があるのかをまとめました。

大学卒業後の進路として、あるいは社会人になってから学びを深める場合の選択肢として、専門職大学院について知りたい人はぜひ参考にしてください。





専門職大学院とは

21世紀に入って、科学技術の発展や社会のグローバル化がますます加速し、高度な専門職人材の需要がいっそう高まるようになりました。

こうした需要に応えるべく2003年に新設されたのが専門職大学院です。

専門職大学院にはどのような特徴があり、どういった知識・技能を学ぶことができるのか、概要を確認しておきましょう。

専門的な職業能力を有する人材を育成

従来の大学院は主に研究者を養成するための機関であり、学術的な研究に主眼が置かれてきました。

これに対して、専門職大学院が目指すのは現場で活躍できる専門的な知識や技能を持つ人材の育成です。

専門職大学院の教育目的は職業能力の養成にあることから、高度な実務能力を身につけたい学生やスキルアップを図りたい社会人が数多く通っています。

専門職大学院は2020年5月現在で全国に118校あり、国公立、私立のほか、株式会社立の大学院があります。

《専門職大学院数》

種別 大学数
国立 61
公立 7
私立 47
株立 3
合計 118

参考:文部科学省「専門職大学院制度の概要」

仕事で生かせる実践的で高度な知識・技能を学べる

専門職大学院では仕事の実務で生かせる実践的な知識・技能の習得を目指しています。

一般的な大学や大学院では学術的な研究に主眼が置かれており、カリキュラムで扱われる内容が社会に出てから直接的に生かせるとは限りません。

一方、専門職大学院では実践的な業務遂行能力を習得することを目的としたカリキュラムになっていますので、実務に生かせる知識・技能を習得できるのが大きな特徴です。

そのため、大学の一般教養のように広く浅く学ぶのではなく、特定分野で必要とされる知識・技能に絞り込まれたカリキュラムとなっています。

社会人学生にも配慮がなされている

一般的な大学院では研究に専念することを前提としたカリキュラムとなっているため、社会人が仕事を続けながら通うのはあまり現実的とはいえないケースも多々あるのが実情です。

これに対して、専門職大学院は大学の学部から進学する学生だけでなく、社会人がスキルアップやキャリアアップを目的として通うケースも多く見られます。

そのため、平日夜間や土曜日に授業科目を集中させた時間割構成とするなど、社会人が通うことを想定した配慮がなされています。

平日の日中は仕事をしている社会人であっても、仕事を終えてから受講できる時間帯に授業が開催される大学院も多いことから、仕事との両立を図りやすい仕組みになっています。

専門職大学院と修士課程のちがい

専門職大学院は4年制大学を卒業し学士を授与された人を対象とする教育機関です。

標準修業年限は2年(法科大学院の法学未修者コースは3年)であることから、同じように2年を目処に研究を進める修士課程とよく比較されます。

しかし、専門職大学院と修士課程にはいくつか大きなちがいがあることに注意が必要です。

実務家教員が配属されている

一般的な大学院の修士課程では大学院教授が指導教員となります。

大学院教授は教員であると同時に自身も研究者であり、学術的な世界で研究に打ち込んできた人材といえます。

一方、専門職大学院では産業界や実業界で活躍する実務家が教員を務めています。

理論に留まらない実務の最前線に関する知見を、実務家教員から直接学べる点が修士課程と異なります。

株式会社が設立した専門職大学院が存在するのも、産業界・実業界での知見が重視されていること表れといえるでしょう。

実習や事例研究など実践中心の教育

専門職大学院の授業は特定の職業分野に特化した実践的な教育を重視しています。

そのため、授業も実習や事例研究をはじめ、フィールドワーク、ワークショップ、ロールプレイングといった実践的な方法で進められます。

一般的な大学院においても実習や事例研究が行われることはありますが、あくまで研究を進める上で必要に応じて実施されるといった位置づけです。

専門職大学院では実践を主軸とした授業を展開することにより、実務において役立つ知識・技能を習得することができます。

修了時に授与される学位のちがい

修士課程を修了すると修士の学位が授与されます。

これに対して、専門職大学院を修了すると専門職大学院を修了したことを証明する学位が授与されるというちがいがあります。

具体的には、教職大学院を修了した場合は「教職修士(専門職)」、法科大学院を修了した場合は「法務博士(専門職)」といった学位が授与されます。

こうした学位によって、高度な専門知識・技能を身につけてきた人材であることの証明になります。

別の言い方をすると、修士課程を修了した場合と専門職大学院を修了した場合とでは、学位のちがいによって区別されます。

専門職大学院を修了すれば一般的な修士課程を修了した場合と完全に同じ学位が授与されるわけではない点に注意が必要です。

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専門職大学院の種類

専門職大学院は職業分野の専門性に特化した知識・技能の習得を目指していることから、学べる分野によってさまざまな種類があります。

下に挙げるのは代表的な専門職大学院の分野ですが、これら以外にも臨床心理や情報、原子力といった分野の専門職大学院があります。

法科大学院

弁護士裁判官、検察官といった、いわゆる法曹を養成することを目的とする専門職大学院で、ロースクールとも呼ばれます。

他の専門職大学院の標準修業年数が2年であるのに対して、法科大学院では3年となっており、修了時には法務博士(専門職)の学位が授与されます。

司法試験を受検するには法科大学院を修了するか、または予備試験に合格するか、いずれかの資格が必須とされています。

予備試験の合格率は平成30年度で3.9%と非常に低いことから、実質的には法科大学院を修了して司法試験を受けるケースが大半です。

教職大学院

教員養成に特化した専門職大学院です。

大学の教育学部で学んだ知識・技能をより深め、教育現場において生かせる専門的なレベルまで高めていきます。

将来的に学校経営において中核的な役割を担うスクールリーダーの養成も目的としており、教員を指導する教員を育成する機関ともいえます。

教員免許の第一種免許状を取得している場合、教職大学院を修了することで専修免許状を取得することができます。

専修免許状の取得が可能な点に関しては、教育学系の修士課程と同様です。

教職大学院によっては、教員免許を持っていない人が3年間で第一種免許と専修免許状を同時取得できるカリキュラムを設置しているケースも見られます。

経営専門職大学院(MBA)

事業戦略、マネジメント、マーケティング、財務・会計といった、ビジネスに直結する専門知識の習得を目指す専門職大学院です。

経営学修士は欧米においてはMBA(Maste of Business Administration)と呼ばれることから、日本版MBAなどと呼ばれることもあります。

マネジメントスキルを高めたい社会人や経営層へとステップアップした人材から人気が高く、社会人が仕事を続けながら修了を目指すケースもよく見られる分野です。

技術経営専門大学院(MOT)

技術と経営を融合させた分野の専門的知識を学ぶための専門職大学院です。

MBAに理系的要素が加わり、エネルギー、バイオ、ナノテクノロジー、ITといった今後のビジネス環境において看過できない重要な分野の知識を深めます。

技術を経営に生かしたい人や、経営感覚を養いたい技術者などから注目されている分野です。

専門職大学院によっては、理系の大学院並みに技術を重視したカリキュラムを整えているケースも見られます。

会計専門職大学院

主に公認会計士を目指すための専門職大学院で、会計大学院と呼ばれることもあります。

昨今の企業会計において欠かせないITの知識をはじめ、論理的かつ高い倫理にもとづいた判断ができる会計のプロフェッショナルを目指します。

また、会計と密接な関係にあるファイナンス実務の教育に注力している会計専門職大学院も見られます。

会計専門大学院を修了することにより、公認会計士試験の短答式試験4科目のうち、財務会計論・管理会計論・監査論の3科目が免除となります。

この記事のまとめ

専門職大学院は一般的な大学院とは異なり、実社会での実務に生かせる知識・技能に特化して学ぶことができる機関です。

専門性の高い実務能力を身につけたい人や、スキルアップ・キャリアアップを目指す社会人まで、幅広い層が通っています。

将来、スペシャリストとして活躍していきたい人にとって、学ぶ機会を得るための有力な選択肢の1つとなるでしょう。

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