技術経営専門職大学院(MOT)とは

かつてはモノづくり先進国と言われた日本ですが、近年は国外勢に押され続けています。

高い技術力を持ちながら、技術を経営に生かせていないことに原因があると指摘されることがあります。

こうした状況を打開すべく注目を集めているのが技術経営専門職大学院(MOT)です。

技術経営専門職大学院とはどのようなことを学べる機関なのか、入試や学費、進学するメリットについてまとめました。





技術経営専門職大学院(MOT)とは?どんなことを学べる?

経営に関する修士課程としてMBAが有名ですが、MOTについて詳しいことは知らないという人もいることでしょう。

技術専門職大学院(MOT)で学べることやMBAとのちがい、なぜ今MOTが注目されているかについて確認していきます。

技術経営専門職大学院で学べること

技術専門職大学院は経営の知識に加え、専門的な技術面での知識を有する人材を育成する機関です。

経営戦略、人事・組織、マーケティングといったMBAで学ぶ分野に加えて、技術戦略や研究開発マネジメント、知的財産戦略といった技術面の知識も学ぶことができます。

《技術経営専門職大学院で学べる分野の一例》
・企業戦略
・組織論
・知的財産権
・バイオ技術
・ヘルスケア技術
・ナノテクノロジー
・エネルギー戦略
・環境ビジネス戦略
金融工学
・イノベーション

経営学を土台としながらも、技術をマネジメントする技術経営の視点を重視し、技術的な知識を経営に生かすための戦略を学べるのが大きな特徴です。

MOTとMBAのちがい

MBAは経営学修士号であり、経営学の大学院修士課程を修了することで授与される学位です。

一方、MOTはManagement of Technologyの略で、技術経営修士号と訳されますが、MBAのように学位の名称ではない点に注意が必要です。

MOTとMBAには経営に関して重複する部分も多々ありますが、MOTは技術をベースに新たな価値創造ができる人材の育成を目指している点がMBAと異なります。

すでに産業化している分野をマネジメントするMBAに対して、MOTは研究開発をいかに事業化し、産業に結びつけるかを重視します。

技術的な観点から市場ニーズをとらえる手法や、新たな技術を経営に生かすビジネスモデルを構築する方法など、創造性に焦点が当てられている点がMOTの特徴といえます。

MOTが注目されている時代背景

グローバル社会の到来に伴い、日本企業は激しい競争に晒されています。

しかし、かつて日本のモノづくりを支えてきた企業は大半が中小企業であり、製造の過程で生まれたノウハウを経営資源として生かし切れていないといわれています。

各社が自社の技術を経営資源として活用・継承していくには、技術を適切にマネジメントできるスペシャリストが不可欠です。

こうした時代背景において、技術の産業活用や事業化に関する専門的な知見を有するMOT人材の輩出が求められています。

優秀なMOT人材を育成していくことは、日本の技術力を有効に活用するとともに、グローバル社会において競争に打ち克っていく上で急務といえるでしょう。

技術経営専門職大学院の入試と学費

技術の活用による創造的な経営を体現するスペシャリストの養成機関として注目を集めているMOTですが、入学するにあたってどのような試験が実施されるのでしょうか。

また、専門職大学院である以上、通うためには学費を納める必要があります。

技術経営専門職大学院に通うとしたら、、学費はどのくらいかかるのでしょうか。

技術経営専門職大学院入試で行われる試験

技術経営専門職大学院は大学入試とは異なり、志望理由書による書類審査や小論文試験、口頭試問などが重視されます。

専門職大学院によっては試験科目に英語が入っていることがありますが、TOEICなどのスコアを提出することで合否が判断され、筆記試験は実施しないケースが多く見られます。

小論文では思考力を問うテーマが出題されるケースが多く、企業経営やマーケティングに関する問題が出題されることもめずらしくありません。

技術や経営学に関する専門的な知識を問うというよりは、大枠で学部レベルの知識があれば合格することは可能です。

志望する専門職大学院の過去問を入手して出題傾向を把握し、小論文試験対策を講じておくようにしましょう。

技術経営専門職大学院の学費

国立大学の技術経営専門職大学院の学費

国立大学の技術経営専門職大学院は入学金・授業料が一律で決まっており、どの教職大学院に進学しても学費は基本的に同じです。

《国立大学の技術経営専門職大学院 学費(初年度)》

入学金 282,000円
授業料(年間) 535,800円
初年度納入金 817,800円

私立大学の技術経営専門職大学院の学費

私立大学の経営専門職大学院の場合、進学する専門職大学院ごとに学費に差があります。

同じ大学の学部から進学する際は入学金や施設設備費など、学費の一部を減免する措置を講じている専門職大学院もあります。

経営学系の専門職大学院の中でもMBAは学費が高額になりやすい傾向がありますが、MOTはMBAほど学費が高くないケースがほとんどです。

《私立大学の技術経営専門職大学院 学費(初年度)の一例》

東京理科大学 立命館大学
入学金 200,000円
※出身者は半額
200,000円
※出身者は免除
授業料(年間) 1,170,000円 1,182,400円
その他費用 300,000円 34,000円
初年度納入金 1,670,000円 1,416,400円

技術経営専門職大学院で奨学金は利用できる?

MOTで受給できる奨学金には、大きく分けて日本学生支援機構・特別奨学生・専門実践教育給付金の3つがあります。

日本学生支援機構は一般的な奨学金と同様で、入学後に手続きを行います。

無利息の第一種奨学金と利息付の第二種奨学金の2種類がありますが、第一種奨学金の受給基準にはさまざまな制限があるため、多くの人は第二種奨学金を利用しているのが実情です。

特別奨学生とは、入学前年度に科目履修生として所定の単位を取得した人や、大学での成績が優秀と認められた人に対して支給される奨学金で、大学ごとに規定が設けられています。

専門実践教育訓練給付金とは、社会人が経営専門職大学院で学ぶ場合、要件を満たすと受給できる給付金で、入学前の2月末までにハローワークで手続きを行います。

専門実践教育訓練給付金の支給額は学費の50%(年間上限40万円)で、2年間支給されます。

また、MOT修了後に就職して雇用保険の被保険者となれば自己負担総額の20%(上限32万円)が追加で支給されます。

すべての技術経営専門職大学院が専門実践教育訓練給付金の対象になっているわけではないため、志望する大学院が対象になっているか事前に確認しておきましょう。

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技術経営専門職大学院に進学するメリットと注意点

技術経営専門職大学院への進学を検討している人にとって、進学することでどのようなメリットを得られるのか気になるところでしょう。

また、進学するにあたってどのような注意点があるのか事前に知っておきたいと考える人もいるはずです。

そこで、技術経営専門職大学院に進学するメリットと注意点についてまとめました。

技術経営専門職大学院に進学するメリット

技術を含む無形のアイデアから新たな価値を創出していく能力は、今後のグローバル経済の中でますます重要視されていくでしょう。

技術経営専門職大学院で学ぶことによって、これからの世の中で必要とされる技術・経営の双方の視点から物事を考えられるスペシャリストを目指すことができます。

これにより、将来的により有利な条件で転職しやすくなったり、より高いポジションを目指せる可能性が増します。

キャリアの幅を広げ、充実したものにしていく上で、技術経営専門職大学院で学んだ知識を存分に生かせるはずです。

技術経営専門職大学院に進学する際の注意点

技術経営専門職大学院によって、注力している分野に差が見られることがあります。

とくに顕著なのは、経営寄りの教育に力を入れているケースと技術寄りの教育に力を入れているケースのちがいです。

そもそもMOTは技術と経営を融合した学際的な分野であることから、技術・経営のいずれの分野に注力すべきかは諸説あるのが実情です。

経営寄りの知識を学びたいと思って進学したところ、実際の研究内容は技術寄りの分野が中心だった、といったことになる可能性がないとはいえません。

志望する専門職大学院が自分が知識を身につけたい分野に注力しているかどうか、前もって研究室に問い合わせるなどして確認しておくようにしましょう。

この記事のまとめ

経営学系の大学院としてはMBAがとくに有名ですが、近年は技術的な観点から経営を見直す重要性が注目されていることに伴ってMOTの人気も高まっています。

高い志をもって将来のキャリアプランを立てていきたい人にとって、技術経営専門職大学院は実践的な学びを得るのに適した環境といえます。

MBA取得を検討している人は、MOTという進路についても検討してみる価値は十分にあるでしょう。

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