神職・神主・宮司の年収や福利厚生は? 給料はどこから出るの?
神社の規模によっても大きく年収が異なり、小規模な神社の神職は会社員と兼業している人も少なくありません。
また、神職の給料は月収60万円が上限とされているなど、特殊です。
この記事では神職の給料・福利厚生についてまとめています。
神職・神主・宮司の給料と年収
- 多くの神職が年収300万円以下と低めで兼業している人も
- 規模の大きな神社では年収が高い
- 月収60万円が上限
多くの神社の神職は、年収300万円以下で一般の会社員よりも低いのが実情で、地方の神社の宮司は会社員や公務員と兼業している人も少なくありません。
この章では、神職の給料・年収を解説します。
神職の職階とは
年収について紹介する前に、神社に奉職する人の職階をかんたんに解説します。
上記の職階とは関係なく、神社に仕える人のことを「神職」「神主」と呼びます。
一般の会社のように神職にも昇給があり、年収がいちばん高いのが社長にあたる宮司です。
神職の平均年収は会社員より低い傾向
全体的な傾向として、神職・神主の収入はあまり高くはありませんが、神社の規模によって金額は大きく異なります。
- 平均初任給:13万円~15万円
- 大規模な神社:24万円~30万円
- 小規模な神社:~10万円
有名な観光地となっているような大規模な神社では、訪れる人も多く、安定した収入が得られます。
社家ではないのに年収500万円以上の人や、中には1,000万円以上という人もいるようです。
ただし、このような有名神社はごく一部で、ほとんどの神社は中小規模で地域住民が主な参拝客となるため、集客数もあまり伸びません。
集客数にが少ないと収益も低くなるため、神職・神主の給料・年収も低めの水準となっています。
神職の給料は月収60万円が上限
神職の給料は一般企業に勤める会社員同様、勤続年数や役職によって異なりますが、特筆すべき点は神社の収益が神職の収入に必ずしも反映されるわけではないことです。
どんなに収益のある神社であっても、神職・神主の上限は月額60万円という神社本庁の規定があります。(ボーナスは除く)
ただしこの上限月給60万円を得ている神職・神主は全国的にいみても圧倒的に少なく、若年の神職・神主は年収300万円に届かない人も少なくありません。
大半の神職・神主はその階位に応じて、月給20万円〜40万円前後の収入になると考えておきましょう。
神職と会社員・公務員を兼業している人も
地方や規模の小さな神社では、神社経営だけで生計を立てるのは難しいのが実情です。
年収300万円以下の神職も多く、200万円を切ってしまう人もいます。
また、神職・神主としての給料は0円で、会社員として生活費を得ている人もいます。
神社の敷地内に幼稚園や保育園を併設しているところや、学校で教鞭をとる人も少なくありません。
また普段は奉職している神社を本務神社とし、無人の地域の神社の宮司を兼務している神職もおり、決して収入面で待遇が良いとはいえないのが正直なところです。
なお、公務員は一般に副業が禁止ですが、神職は神に仕える「奉仕」とみなされて副業には当たらないため、兼業が可能です。
20代で正社員への就職・転職
神職・神主・宮司の給料はどこから払われる?
日本全国にある神社の90%にあたるおよそ8万社は、伊勢神宮を本宗とする宗教法人「神社本庁」に所属していますが、神社本庁から給料が配分されるわけではなく、それぞれの神社が独立採算で運営しています。
だからこそ、大規模な神社ほど参拝客が多いので神職の年収も増える傾向にあるといえます。
神社の収入源は主に以下の5つです。
- 御祈祷・お祓い
- お賽銭・奉納金
- お守り・おみくじ
- お供え物(現物)
- 土地の運用
ひとつずつ紹介していきます。
神社の収入1.御祈祷・お祓い
神社の収入源は結婚式、七五三、お宮参り、車のお祓いなどの祈祷料が大きな割合を占めています。
一般的なご祈祷で得られる収入の目安は5,000円~10,000円です。
また、家やビル、工場などを建てるときにその土地に出向いて行う「地鎮祭」も収入源の一つ。
一般的な住宅の地鎮祭の料金の目安は30,000円~50,000円です。
神社の収入2.お賽銭・奉納金
お賽銭は1人ずつの金額は5円、10円など小さくても、積もり積もると金額は大きくなります。
例えば、毎年の初詣でたくさんの人で賑わう以下のような神社は、お賽銭だけでも数千万円~数億円の金額になるでしょう。
- 明治神宮:318万人前後
- 成田山新勝寺:311万人
- 川崎大師:308万人
- 伏見稲荷大社:277万人
- 住吉大社:260万人
奉納金とは神社に収めるお金のことで、地元の企業や個人などが納めています。
神社の境内に企業や個人の名前が書かれた木札や灯籠、鳥居などを見たことがある方も多いのはないでしょうか。
奉納金〇万円以上で鳥居を立てられる、といった神社もあります。
神社の収入3.お守り・おみくじ
お守りやおみくじ、絵馬、破魔矢なども神社の収入源で、正月の期間には特に大きな金額になります。
キャラクターとコラボしたお守りなど、神社によって特色のある物を売っていることもあります。
最近では御朱印ブームもあり、御朱印の初穂料も収入源のひとつになっています。
神社の収入4.お供え物
神社には、金銭以外にも多くの供物(くもつ)が奉納されます。
一定期間神前に供えられたあとは、祈祷料の一部として神職・神主に分配されることになるので、現金収入ではありませんが生活必需品の現物収入が入ることも特徴です。
神社の収入5.土地の運用
都心の神社の場合には、土地の一部を駐車場などとして貸して賃料収入を得ていることも。
また、幼稚園や保育園などが併設されている神社もあります。
神職・神主・宮司の福利厚生の特徴
神職・神主の福利厚生も、神社によって異なるのが特徴です。
宗教法人で神職が5人以上いるような中規模以上の神社であれば、以下のような福利厚生が完備されていることも。
- 交通費支給
- 雇用保険や労災保険など社会保険完備
- 階位手当や時間外手当、外祭手当
ただし、ほとんどの神社は小規模で、社会保険が完備されていることは少ないです。
小規模な神社の神職は国民健康保険や国民年金に入ることになり、一般の自営業と同じと考えたほうが良いでしょう。
また、年末年始などは長時間の勤務になることもありますが、神社で働くことは「奉仕」であるため残業手当が支給されないこともあるようです。
神社によっては神前に供えられた米や野菜、酒など奉納品が、祈祷料の一部として神職・神主に分配されることもあり、生活必需品が手に入るのがメリットです。
20代で正社員への就職・転職
神職・神主・宮司はアルバイトでもできる?
神職に興味があるので、アルバイトをしてみたいという人もいると思います。
しかし、神職と呼ばれる人は「階位」という資格が必要で、アルバイトではできません。
神職になるのは正社員のみ
神職・神主は「階位」という資格が必要な職業であるため、アルバイトや派遣社員という概念はありません。
一般社会で就職に相当する奉職先を見つけて働くことになるため、いわゆる正社員として働くことになります。
なお、巫女には階位が不要なので、アルバイトが可能です。
神職でフリーランスという働き方もある
中には、神社に奉職せずに個人で活動するフリーランスの神職・神主も存在しますが、少数派です。
郊外で格安で地鎮祭などを請け負ったり、神道の魅力を伝えるツアーをしている人、エンジニアやライターをするなど活動範囲も幅広いため、給料・年収は人によって異なります。
神職が収入を上げる方法はある?
神職・神主が収入を上げるためには、規模の大きな神社に奉職することです。
給料・年収・ボーナスがどれだけ支払われるかは宮司にかかっているため、一般企業のように営業成績を上げて評価を高めても、それが給料に反映されるわけではありません。
また神職・神主の給料は月額60万円までと決められているため、それ以上の収入を得ることは難しいでしょう。
神職・神主として収入が安定しない場合は、教師や幼稚園運営、会社員と兼業する方法もあります。
「神職・神主・宮司の給料・年収」まとめ
- 多くの神職が年収300万円以下と低めで兼業している人も
- 規模の大きな神社では年収が高い
- 月収60万円が上限
神職の給料は決して高くはありません。地方の小規模な神社では兼業しないと生活が苦しい場合も多いです。
それでも「地域に根ざした神社を守りたい」「先祖代々受け継いできた神社を継ぎたい」といった思いで、神職として奉仕している人は多くいます。