歯科技工士の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
歯科技工士の業務スケジュール
普段、通っている先の歯科クリニックや病院で、直接患者さんは歯科技工士と出会うことは普通ありません。
それゆえ、歯科技工士がどのような一日の流れで業務に携わっているのか、イメージできない方もいるのではないでしょうか。
製作にあたる歯科技工士というと、一日中、朝から晩まで作業所にこもって入れ歯や詰め物などの歯科技工物を作り続けている、といった印象を持つかもしれませんが、実際にはそれだけではありません。
技工所によっては意外に患者さんと触れ合うこともあったり、営業活動で外回りをするシーンもあり、歯科技工士は、専門のものづくりである歯科技工の仕事以外にもいろいろな業務を行なっています。
歯科技工士の仕事の流れ
大きな歯科技工所になると、営業担当者がいて歯科クリニックや病院を回る場合もありますが、小規模な技工所では歯科技工士自らが取引先の歯科クリニックに出向いていきます。
出向いた先の歯科クリニックや病院では、仕上がった歯科技工物の納品を行います。
歯科技工物を渡して終わりというわけではなく、だいたいは担当の歯科医師と確認をし、問題点や懸念点がないかなどの情報交換をします。
また、つぎの新しい注文を受けるため歯型を取った模型を回収したり、新たな材料や素材について話をしたりといったこともします。
営業周りで患者さんと触れ合うことはありませんが、複雑な依頼を受けて実際の患者さんの口内の様子を同席して確認させてもらう必要があるときや、装着するときの印象を聞く場合に立ち会うことがあります。
また、歯の色調を記録する必要があるときにはデジタルカメラで撮影したり目でチェックしたりして患者さんの希望に沿っているか確かめながら感想や要望を引き出します。
普段、患者さんと出会うことがない歯科技工士にとってダイレクトに生の声を聞くことができる貴重な機会であり、治療の現場に触れることができる良いチャンスでもあります。
歯科技工所に帰ると、受けた製作注文の仕事をこなしていきます。
最近は歯科からくる健康を重要視した噛み合わせを重視する傾向にありますので、とくに理論的なことからしっかりと組み立てて仕事をしていきます。
また、患者さんの年齢や性別をチェックして、入れ歯や義歯が浮き立たないように注意しながら製作していきます。
3D技術が進んでいるため、コンピュータで立体の設計図を作ったりデジタルデータで口腔内の立体画像を見たり、また3Dプリンタで歯科技工物のトライアルを作ったりといった作業もします。
その他、歯科技工の講習を受けに行ったり、一般市民向けの啓発運動に携わったりもします。
20代で正社員への就職・転職
歯科技工所で働く歯科技工士のスケジュール
歯科クリニックで働く歯科技工士のスケジュール
歯科クリニックに勤務する歯科技工士は、院内ラボと呼ばれる歯科クリニック内に併設された技工室に出勤します。
クリニックによっては、院内に部屋がある場合や同じビルの別の階、また物理的に別の場所に離れてラボを構えている場合などさまざまです。
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歯科技工士の勤務時間・休日
納期に追われて仕事をすることが多い
一般的に、歯科技工士は勤務先の歯科技工所での就業時間に合わせて仕事をします。
提携している歯科クリニックや病院などとのやり取りも発生するため、通常朝から18時ごろまでの一般的な就業時間であるケースが多いといえます。
歯科クリニックや口腔外科で歯科医師が患者さんの歯を削るなどの治療をしたあと、歯の型を取った歯型模型が歯科技工所へ送られてきます。
歯科技工士は、その歯型をもとにして削られた後の歯にきれいに詰め物や被せ物、入れ歯などがおさまるよう、素材となる金属やセラミックなどを専用器具を用いて加工・製作し、完成したら発注元の歯科医院へ納品します。
その製作物は患者さんの次の治療スケジュールに合わせてあらかじめ納期が決まっていることが多いため、製作が重なった場合には納期に間に合わせるために残業などが続いたり、長時間労働になってしまうことが少なくありません。
歯科技工士は忙しい?激務?
厚生労働省の平成30年度の賃金構造基本統計調査によれば、歯科技工士の平均年齢40.3歳で勤続年数10年とした場合の平均的な労働時間は月間173時間、超過時間である残業は月間10時間程度となっています。
一方、平成25年度の賃金構造基本統計調査によれば、歯科技工士の平均年齢36.7歳で勤続年数10年とした場合の平均的な労働時間は月間178時間、超過時間である残業は月間19時間程度となっており、現在、就業環境は若干ではありますが改善されているとみることができます。
しかしながら、これはあくまでアンケート上の結果であり、歯科技工士の勤務時間の実態は依然として厳しいものとなっているケースも少なくありません。
病院や歯科医院からの依頼に合わせて注文の納品日に合わせなければならないことは変わらないため、時間外であっても長時間残業をしなければならないことも多いからです。
とくに歯科医師からの信頼が厚い、繁盛している歯科技工所であればあるほど急ぎの仕事も多くなり勤務時間が長めになる傾向が強いようです。
なかには残業時間が100時間を超えるようなところもあるようです。
歯科技工士の休日
歯科技工所などで働く歯科技工士の場合、基本的には休日はしっかりと取れるようになっています。
しかしながら納期や仕事の量次第によっては、残業や休日出勤で対応しなければならない場合もあることは否めません。
また、独立開業して歯科技工所を持ち社員を雇った経営者でもある歯科技工士であっても自分自身も技術者として作業にあたることも多く、なおのこと休みがなくなるといったケースも多いようです。
日本歯科技工士連盟の資料によると、歯科技工所のうち週休2日制(完全週休2日制または週休2日制)を導入しているのは全体の40%にも満たない一方、週休一日制が続いている事業所も4分の1ほど存在しています。
また、歯科医院は水曜日や木曜日が休みであったり土曜日は半日診療だったりするため、歯科技工所も提携先の歯科医院やクリニック、病院などに合わせて休日をシフト制にしたり休みを振り替えたりして対応しています。
朝も早出が多かったり夜も遅くなったりと労働時間の面では大変です。
コツコツと作業することが苦でない人でないと、歯科技工士として働くことは厳しいかもしれません。