生活支援員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「生活支援員」とは
高齢者や障害者の生活を多方面からサポート
生活支援員は、高齢者や障害者など日常生活の手助けを必要とする人に対し、施設などでさまざまなサポートを行う職種です。
生活支援員の活躍の場は障害者支援施設、地域活動支援センター、高齢者の介護施設のほか就労移行支援事業所、就労継続支援事業所などさまざまで、職場によって仕事内容が変わります。
無資格でも生活支援員になれますが、高齢者や障害者に対し直接支援をすることが多いため、介護や障害などに対する正しい知識が求められます。
【高齢者施設・老人ホーム】
高齢者施設や老人ホームでは、衣類の着脱や食事、入浴など生活のサポートが中心で、施設によっては介護が主な仕事となることも多いです。
加えて、レクリエーションや趣味の活動の指導、利用者やその家族の相談対応、サポート内容な体制の計画や調整など、施設を利用する人に対しさまざまな業務を行います。
【障害者支援施設】
障害者支援施設では、利用者の障害の程度を踏まえながら、健康管理や生活のサポートを行います。
【就労移行支援事業所】
一般企業への就職を目指す人が利用する就労移行支援事業所では、就労場必要な生活の習慣を身につけさせ、技能習得の支援を行います。
企業等に就労することが困難な障害者が利用する就労継続支援(A型)事業所では、障害の程度に合った活動機会を提供し、必要な訓練を行います。
企業等に就労することが困難な障害があり、雇用契約を結んで働くのも難しい人が利用する就労継続支援(B型)事業所では、就労に必要な知識や能力向上のためのサポートをします。
「生活支援員」の仕事紹介
生活支援員の仕事内容
身の回りから就労までをサポート
生活支援員の仕事は、高齢者や障害者など一般的な生活をするのが難しい人に対し、身の回りのことから就労に至るまで、さまざまな角度から自立をサポートすることです。
具体的な業務内容としては、施設などを利用する高齢者や障害者が、日常生活を安心・安全に送ることができるようサポートし、創作活動や生産活動を通して身体機能や生活能力の向上を目指します。
また、農耕・園芸や陶芸、木工、紙工、織物といった就労に関わる生産活動の指導もします。
そのほか、施設を利用する人やその家族からの相談にのったり、施設スタッフや医療関係者などと連携して問題解決をしたりすることもあります。
施設によっては、施設の入退所に関わる手続きや各関係機関との連絡・調整をはじめ、介護職員と同様に介護まで担当します。
「生活支援」というと生活のすべてをサポートすると思われがちですが、本人ができることはできるだけ自分でやらせる、できなかったことを訓練によってできるようにさせることも大切です。
高齢者や障害者がより自立した生活を送り、自分らしく毎日を過ごすことができるよう、さまざまな角度から支援していきます。
生活支援員になるには
福祉系の資格を取得していると有利に
生活支援員になるために、特別な学歴や資格などは必要ありません。
「未経験歓迎」とする求人も多いため、福祉業界で働きたい人には比較的ハードルが低い職種です。
とはいえ、まったくの未経験から仕事を始めるのは大変です。
一般的には、大学などで福祉や介護を学び、社会福祉士や精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格を取得するのが近道です。
<参考ページ>
厚生労働省
公益財団法人社会福祉振興・試験センター
近年は、より専門的な人材を雇用したい目的から、これらの資格を必須とする施設も見られます。
とくに高齢者・老人ホーム、身体障害者施設で働く場合は、社会福祉主事任用資格または社会福祉士の資格修得者が優遇される傾向にあります。
また、介護福祉士実務者研修や介護職員初任者研修などを受け、介護経験があればなお良いでしょう。
ただし、大学で教員免許を取得したり、心理学。教育学・社会学を履修したり、短大や福祉系の専門学校卒でも就職できる場合が多いです。
就職を目指すにあたっては、各施設の採用試験に合格する必要がありますが、福祉人材センターなどを利用して就職する人もいます。
法人の場合、医療法人、社会福祉法人、NPO法人など形態はさまざまで、各法人で求められる資格や経歴、採用試験の内容などは大きく異なります。
また、公立の施設で働きたい場合は公務員試験に合格する必要があります。
生活支援員の学校・学費
大学を卒業して資格を取得するケースが多い
生活支援員になるために特別な資格は必要ありませんが、「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」といった関連資格は、福祉系の四年制大学を卒業して取得するケースが多いです。
福祉系の四年制大学へ通う場合はその大学にもよりますが、入学金や施設費を含めた初年度の授業料平均が約120万円、2年目以降からは、平均約80万円の学費を納めていきます。
一方、無資格でも働けるところも多く、福祉系の短大や専門学校を卒業してすぐ働けるところも多いです。
早く現場で働けるメリットもありますが、将来的に福祉業界でしっかりとキャリアを築きたいと考えている場合、4年制大学で専門知識をじっくりと勉強するという人が多いようです。
生活支援員の資格・試験の難易度
キャリアを積みたいならぜひ資格取得を
生活支援員として働く場合国家資格である「社会福祉士」や「精神保健福祉士」、もしくは民間資格である「社会福祉主事任用資格」の取得をしていると非常に有利です。
これらの資格がなければ、働くことができないわけではありませんが、福祉業界でキャリアを積んでいきたいのであれば、ぜひ取得を検討しましょう。
「社会福祉士」や「精神保健福祉士」の資格を取得するためには、まず国家試験の受験資格を得る必要があり、大きく分けると4つのルートがあります。
・社会福祉系の4年制大学を卒業する
・社会福祉系の短大を卒業し、取得していない指定履修科目の履修や相談援助業務の実務(1~2年)経験を積む
・一般大学を卒業後に一般養成施設等で学ぶこと、また一般短期大学を卒業後に相談援助業務の実務(1~2年)を積む
・大学や短大などに進学せず、相談援助業務の実務を4年経験し、一般養成施設等で学ぶ
民間資格である「社会福祉主事任用資格」を取得するための方法はいくつかあります。
代表的なものとしては、カリキュラムを行う大学などで社会福祉に関する3科目を履修する、あるいは指定養成期間で1500時間の研修を修了する方法です。
「社会福祉主事任用資格」は試験を受ける必要はがないため、他の資格より取得しやすいですが、所定の講習会等に長期間通わなくてはならないため、取得には努力と根気が必要です。
なお、生活支援員は利用者の送迎や、相談業務で自宅を訪問する機会も多いため、普通自動車運転免許を取得しているとよいでしょう。
生活支援員の給料・年収
給料は勤務先によって差があるが全体としてはやや低め
生活支援員の給料は、勤務先の種類や規模経験などによって異なります。
一般的には大学卒の正社員の場合20万〜30万円、臨時職員の場合13万〜15万円程度が相場とされ、全体的に平均給与がやや低めといえるでしょう。
ただし生活支援員が介護職員などを兼務する場合、別途手当がつくこともありますし、スキルアップして資格をとると、月に5,000円~15,000円程度の資格手当が出ることもあります。
また、事業所により名前は違いますが、副主任(サブリーダー)、主任(リーダー)などに昇進すれば、月に10,000円〜30,000円程度の役職手当が支給されることも多いです。
近年は、介護・障害者福祉に関しても民間企業が参入し始め、勤務先によって大きく給料や待遇に違いがあることも少なくありません。
また、生活支援員のなかには介護職員としての業務を兼務する人も多く、介護業務では夜勤が日常的に入ると、その分夜勤手当がついて給与水準がやや高くなる場合があります。
生活支援員の平均年収・月収・ボーナス
厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、生活支援員の平均年収は、44.4歳で371万円ほどとなっています。
・平均年齢:44.4歳
・勤続年数:8.2年
・労働時間/月:164時間/月
・超過労働:4時間/月
・月額給与:263,600円
・年間賞与:550,600円
・平均年収:3,713,800円
出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」
※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。
生活支援員の勤務先の規模別の年収(令和5年度)
生活支援員の年収は規模が大きくなると若干増えるようです。
10〜99人規模の事業所に勤める生活支援員の年収は352万円、100〜999人規模は380万円、1,000人以上規模は383万円、10人以上規模平均は371万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「介護職員(医療・福祉施設等)」で介護職員など他職業を含むデータです。
※賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。
生活支援員の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)
生活支援員の年収は、年齢が上がってもあまり変わらない傾向にあります。最も年収が高い世代は、40~44歳の406万円です。
全年代の平均年収は371万円となっています。
上記グラフの基タイトルは「介護職員(医療・福祉施設等)」で介護職員など他職業を含むデータです。
国家公務員として働く生活支援員の給料・年収(福祉職俸給表)
一部の生活支援員は、国家公務員として、国立障害者リハビリテーションセンターなど国が運営する社会福祉施設で勤務する人もいます。
国家公務員の生活支援員の給料は、法律にもとづく「福祉職俸給表」に沿って支給されます。
生活支援員の現状と将来性・今後の見通し
高齢化社会によって需要は拡大している
高齢化を迎えている日本では、自立して生活できない高齢者や障害者は、今後もさらに増加していくとみられます。
生活支援員の活躍の場・需要はより増えていくでしょう。
生活支援員は未経験からでもチャレンジしやすい職種であり、経験を積むにつれて「主任」などのリーダー職や、「サービス管理責任者」などにキャリアアップしていくこともできます。
ただし、高齢者や障害者に関する施設は、勤務先によって給料や待遇、仕事の内容などが大きく異なるのも実情です。
生活支援員として安定して働き続けてキャリアを築いていきたいのであれば、就職先の労働環境をしっかりと調べておくとともに、資格取得を目指すなどスキルアップの努力が必要でしょう。
生活支援員の就職先・活躍の場
高齢者施設または障害者施設が中心
生活支援員の活躍の場は、高齢者や障害者の生活分野・就労分野が中心です。
高齢者に対して仕事を行う場合は、老人ホームやグループホームなどの介護福祉施設などがおもな就職先です。
高齢者の生活援助や介護が仕事の中心で、介護職員として就職し、ある程度専門的な知識と経験を積んだのち、生活支援員になるケースが多く、介護士と同様に夜勤をすることもあります。
一方、障害者を支援する場合は、障害者支援施設(通所・入所)、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所(A型・B型)などが就職先です。
障害者の生活介助や就労のサポートなどが主な仕事となり、近年はとくに知的障害者施設の求人が多くなっています。
生活支援員の1日
高齢者施設では夜勤があることも
生活支援員の1日は、勤務先の種類によって大きく変わります。
高齢者施設では、夜勤をすることもあります。
ここでは障害者施設で就労訓練を行う生活支援員の場合をご紹介します。
生活支援員のやりがい、楽しさ
誰かの役に立った実感を得やすい
生活支援員のやりがいは、利用者の生活に寄り添った仕事で「ありがとう」と感謝の声を聞ける機会が多いことです。
「これまでできなかったことが一人でできるようになった」など、訓練やサポートの成果が見えやすい仕事なのも、生活支援員の魅力といえるでしょう。
また、経験を積むとキャリアアップの選択肢が広がるのもこの仕事の良いところです。
たとえば生活支援員としての経験を積んで「サービス管理責任者」や、国家資格の「社会福祉士」「精神保健福祉士」「介護福祉士」を取得する人もいます。
経験を重ねることで将来への道が多方面に開けていくことが、仕事のやりがいにもつながります。
生活支援員のつらいこと、大変なこと
精神的・肉体的にハードな仕事
生活支援員の仕事は生活に密接したものだけに、どうしても肉体的・精神的にハードなものになりがちです。
排泄の介助や後始末をするなど不衛生な仕事もありますし、障害のある人を移動させたり介護したりする際には非常に体力を消耗します。
また、障害がある人の中にはコミュニケーションがうまくとれないため、パニックを起こしたり大声を出したりなど突発的な事態も多く起こり、体力的・精神的に消耗しやすいです。
また、高齢者や障害者にとって欠かせない必要な仕事であるにもかかわらず、給料が低めに抑えらえており、ハードな仕事に給料が見合っていないと考える人は非常に多いです。
生活支援員に向いている人・適性
臨機応変な対応ができること
生活支援員は、介護や支援、そして社会福祉に関する知識や技術が欠かせません。
これらは大学などで学べるほか、未経験からでも経験を積んでいくことができるため、あまり心配することはないでしょう。
また、施設内のスタッフの意見をまとめたり、利用者やその家族との調整を行ったりすることもあるため、コミュニケーション能力があり、臨機応変に対応できることが求められます。
近年、生活支援員を必要とする施設は増加傾向にあり、利用する高齢者や障害者も増えています。
一人ひとりの状態や考え方に合わせた支援を行い、柔軟に対応できる人材であれば、大いに活躍できるでしょう。
生活支援員志望動機・目指すきっかけ
福祉に関する知識を生かしたい
生活支援員の志望動機として比較的多いのは、福祉系の大学や専門学校を卒業し、その知識や経験を生かして働きたいというものです。
新卒であれば学校で学んだことをそのまま現場で行かせるため、将来像や目標などを踏まえて志望動機を考えるとよいでしょう。
未経験や異業種からの志望動機は、前職や身の回りの出来事など何らかのきっかけで福祉に興味をもったという人が多く、まとめる際は興味を持った経緯や前職での経験をアピールする人が多いです。
生活支援員に限らず、福祉職全般は一般企業よりも人柄を重視する傾向にあるため、素直さや誠実さをアピールしつつ、自分の言葉で志望動機をしっかりと語れるようにしておきましょう。
生活支援員の雇用形態・働き方
パート等短時間勤務も多い
生活支援員の雇用形態は、正社員や正職員といった正規雇用のほか、アルバイト・パートなどの非正規雇用も多いです。
事業所によっては正規職員よりも非正規職員のほうが多いケースも少なくありません。
とくに障害者施設や就労支援に関わる場合、日中短時間だけのサービスのニーズも大きく、短時間勤務での求人も多く見られます。
正規職員になると給料や待遇面では安定していますが、非正規の場合は残業や夜勤が免除されるなどの面もあり、自らの経験や希望のライフスタイルなどに合わせて働くことができるといえるでしょう。
アルバイトやパートからはじめ、経験を積むうちに正規職員へとステップアップしていく人もいます。
生活支援員の勤務時間・休日・生活
施設や事業所にって異なる
生活支援員の勤務時間は、勤務先施設や提供する介護サービスの種類などによって異なります。
たいていの場合は朝9:00頃から夕方18時頃までとなりますが、高齢者施設など24時間体制の場合は、介護士と同様に夜勤(当直)が入ることもあります。
休日は多くの場合土日となりますが、勤務先によっては曜日固定、シフト勤務など不規則になる場合も多いです。
障害者施設や就労施設の場合は、基本的に日勤のみの勤務体系で、利用者がいる時間帯や送迎時間が決められているため、一定の時間内で働けます。
一方で人手不足の職場では残業が多くなる場合も珍しくなく、仕事内容がハードであるため給料に見合っていないと感じる人もいます。
生活支援員の求人・就職状況・需要
求人数は増加傾向にある
近年、障害者総合支援法が制定されるなど、高齢者や障害者が自立した生活を送れるように制度が整備されつつあります。
生活支援員は、こうした人たちのために働く職業であり、これから高齢化が進むにつれ、いっそう活躍の場が増えていくと予想されます。
実際、現在も求人も多く地域によってはなり手が不足しているところも少なくありません。
これは、生活支援員という職業が「介護士」や「社会福祉士」に比べると認知度が低いことや、給与水準の低さなどが理由と考えられます。
未経験から始めることができるため、福祉職の中では比較的ハードルは低いと言えますが、仕事の大変さなどから早期に離職してしまう人も多いようです。
生活支援員の転職状況・未経験採用
未経験からの転職も多い
生活支援員は、他の職業から転職したという人も多いです。
もともと介護や福祉などの資格を持って、同業種から転職する人もいますし、まったくの未経験から転職するという人も少なくありません。
生活支援員は、短時間勤務のパートや非正規雇用も多く、短時間だけ働きたい、1から介護や福祉の仕事にチャレンジしてみたいという人にもハードルが低いようです。
もともと介護や福祉などに興味があったという人もいれば、自分自身の家族などが施設を利用し、生活支援員の仕事に興味を持ったという人もいます。
採用側も、経験よりも人柄を重視する傾向があるため、前職が何かに関わらず採用されるチャンスは大きいといえます。
生活支援員と介護職員の違い
仕事内容に大きな差はない
生活支援員と介護職員は現場の場合、仕事内容にほとんど違いがありません。
生活支援員は、必要な資格など定められていないため、無資格でもその職種につくことは可能です。
介護職員も無資格からでもはじめられますが、業務範囲が限られてくるため、介護職員初任者研修などで専門的な知識・技術を習得する人が多いです。
基本的に生活支援員は高齢者や障害者を対象としていますが、介護職員は高齢者を対象にすることが多く、介護職員の方が勤務先の選択肢は広いです。
なお「介護福祉士」の国家資格を取得していると、生活支援員、介護職員のどちらでも働くことができます。