政治家の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「政治家」とは
国会議員や地方公共団体の議員・議長などの公職に就き、国民を代表して政治に携わる。
政治家とは、国民を代表して政治に携わっている人のことです。
一般的に、衆・参両議院の国会議員、知事や市長など地方公共団体の議員と議長など公職に就く人々のこといいます。
政治家の主な仕事は、法律を作ること(地方議員は条例)、予算を決定すること、政策決定などです。
国や地方の問題解決のために尽力することが役割であるため、大きなやりがいと責任のある仕事です。
政治家になるためには選挙に出て当選しなくてはなりません。
地方議員の場合、当選確率も国政選挙に比べると高く選挙戦にもお金はあまりかかりませんが、国会議員の場合には、支援者やネットワーク(地盤)、多額の資金、知名度も必要となりハードルも高くなります。
国会議員には十分な給与(歳費)が保障されている分、多忙でありまたその職務も国内だけに留まらず、国際感覚と先見性も求められます。
近年は相次ぐ不祥事などから、政治家に対して不信感を抱く国民が増えており、高い問題解決能力を持ち、真のリーダーシップと熱意を持った政治家の登場が切望されています。
「政治家」の仕事紹介
政治家の仕事内容
国民や地域住民の代表として国や地方のために働く
政治家は、国民を代表して政治に携わる仕事の総称で、衆・参両議院の国会議員、知事や市長など地方公共団体の議員・議長など、公職に就いて仕事をする人のことを指します。
選挙によって選ばれたという責任があるため、国や地域、国民や県民・市民のためになる活動は政治家の義務といえます。
国や地方が抱えるさまざまな問題解決のために尽力することはどの政治家にも共通していますが、職種によって具体的な仕事内容は異なります。
国会議員の仕事内容
国会議員の主な仕事は、「法律を作る」「予算の決定」「内閣総理大臣の選出」です。
とくに、国会議員の職場である国会は日本で唯一の立法機関であるため、立法にたずさわるということは国会議員の大きな役割であるといえます。
そのほか、諸外国との交渉、国会への出席、議員会館での来客対応などがあります。
地方議員の仕事内容
地方議員は、国会議員よりも私たちに近い存在であり、地域の問題を解決するために議会で問題を討議し、国の各省庁や国会などに対して意見書を提出するなど、住民の総意として国に働きかけを行います。
また、税金がきちんと使われているか、住民と同じ目線で行政をチェックすることが重要な仕事といえます。
近年はできる限り地方自治体が行政を担い、自主性を持って地域運営を行う地方分権の取り組みが活発化しているため、地方議員が果たすべき役割も大きくなってきています。
政治家になるには
選挙に出るには資金力や地盤、人脈などが必要
選挙に出馬するには
選挙に立候補し、当選すれば政治家になることができます。
そのため、特別な学歴や資格などは必要なく、選挙に出馬すること自体は誰にでもできます。
しかし、実際に当選するためには多くのものを要します。
まず立候補するにあたっては、被選挙権を有していること、届出を行うこと、供託金を積むことの3つが条件となります。
供託金の額は選挙によりますが、たとえば町村長選挙は50万円、都道府県知事選挙は300万円、衆議院比例代表選挙なら600万円です。
これらの条件を満たして出馬し、その上で他の候補者を破って当選するためには、資金力や地元の地盤、知名度など、さまざまなものが必要になるでしょう。
そのため、まずは議員秘書として経験を積んだり、政治塾で勉強したりすることが一般的です。
政治家としてのキャリアアップ
地方議員として政治家のキャリアをスタートした場合、国会議員にステップアップするケースは非常に多いです。
地方議員として働く間に実績を残し、人脈を作っておくことで、選挙に当選しやすくなります。
再度選挙に出馬し、首長(都道府県知事及び市町村・特別区の長)を目指す人もいます。
国会議員の場合は所属政党の要職についたり、閣僚になり日本の中枢を担ったりするケースが多いです。
一度議員になったとしても、次回の選挙で当選できなければ無職になってしまうため、政治家は有権者にアピールできる実績をつくるために懸命に働きます。
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政治家の学校・学費
政治塾で専門的に学ぶという選択肢も
難関大学の出身者が多い
政治家になるために必須となる学歴があるわけではなく、高卒の政治家も少なくありません。
ただ、法律を制定したり改正したりすることが政治家の重要な仕事であり、そのためには広範な法律知識が必要になりますので、政治家を志す人の中には大学の法学部出身者が多いようです。
有権者は、立候補者の経歴を確認し、政治を任せられるべき人物かどうか判断する材料の一つとして、学歴も参考にするため、一般的には大卒の議員が多いでしょう。
とくに東京大学、京都大学、早稲田大学、慶応義塾大学など学力の高い大学出身者は多い傾向にあるようです。
政治家を育成する学校に通う
大学のほか、政治や経済について専門的に学ぶため、民間の政治塾や、各政党が主催する政治塾に通うという方法もあります。
最も代表的なのは松下政経塾で、国会議員や地方議員をはじめ、経営者や大学教授など各界をけん引する人物を輩出しています。
ほかには政党が主催する政治塾もあり、自民党では都道府県支部連合会が「地方政治学校」を開講しており、政治家を目指したい人たちをバックアップしています。
日本維新の会では「維新政治塾」を開講し、各分野で活躍するスペシャリストの講義を受けつつ、衆議院選挙や地方選挙の候補者を育成しています。
政治塾は、内閣総理大臣や閣僚経験者など、多くの政治家を輩出してきた実績がありますので、政治家になるための有力なルートといえるでしょう。
政治家の資格・試験の難易度
年齢制限をクリアすればだれでも出馬できる
政治家になるために学歴は関係ない上に、特別な資格も必要なく、選挙で勝つこと以外に道はありません。
衆議院議員・地方議員・市町村長を目指す場合は25歳以上、参議院議員・都道府県知事を目指す場合は30歳以上が立候補できる条件です。
政治家に定年はありませんので、この年齢基準をクリアしていれば何歳でも目指せますが、所属する政党によっては自主的に定年制を制定している場合もあります。
なお、選挙に立候補する際は、国会議員、地方議員ともに供託金が必要です。
これは当選意思のない人の立候補を防ぐために設けられた制度で、当選するか、一定の投票数を得られれば戻ってきます。
しかしそうでない場合は没収され税金と同じように使われます。
政治家の給料・年収
給料は高額だが決して「お金持ち」ではない
給料は法律で決められている
政治家の給料は、国会議員と地方議員で大きく異なります。
政治家には国会議員や地方議員という分類がありますが、給料はすべて税金から支払われており、国会議員の給料は「歳費」、地方議員の給料は「議員報酬」と呼ばれています。
政治家の給料は法律や条例で決められており、年齢や経験に関係なく支給されますが、非常に高額な年収が支払われており、その妥当性がたびたび議論になっています。
一方で、事務所の運営費用をはじめ、政治家の活動には自腹で負担しなければならない経費も相当額にのぼるため、収入がすべて自由に使えるお金というわけではありません。
国会議員の給料
国会議員の給料は、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」で月額129万4000円と規定されており、役職に就かない議員でも推定2000万円以上の年収を得ているといわれています。
さらに、3人の公設秘書を雇うための費用が支給されるほか、JRの特殊乗車券、国内航空券などのいわゆるタダ券が配布されるなど、国会議員の待遇は非常に充実しているようです。
地方議員の給料
都道府県議会議員や市町村議員などの地方議員の給料は自治体ごとの条例で定められており、総務省により令和2年に出された「議員報酬の実態と財政支援」によると、以下の通りです。
・都道府県議会議員:813,000円
・市議会議員:407,000円(東京都特別区を除く)
・町村議会議員:214,000円
目安として指定都市の市議会議員は約1,200万円、その他市議会議員は約630万円と考えられます。
政治家の現状と将来性・今後の見通し
若い世代とかかわりを持つ政治家が増えていく
日本が抱える課題は多岐に渡り、政治家が解決すべき問題も非常に多くなっています。
また、政治家の報酬は税金であり、給料も高いため国民から厳しい目で見られることが増えています。
政治とお金の問題は報道でたびたび取りざたされており、汚職などの問題が起きるたびに信頼は大きく揺らいでいるため、誠実に政治に向き合う政治家が求められているといえます。
また、政治家に立候補できる年齢は変わっていませんが、選挙権が18歳に引き下げられたことで若い世代が政治に関与する機会が増えています。
政治家も今後は将来を背負っていく世代ともっと関わりを持たなければいけませんし、政治に興味を持つ若者が増え、若い議員も増加する可能性もあるでしょう。
政治家の就職先・活躍の場
国会議員と地方議員で所属先は異なる
国会議員の場合は、衆議院と参議院に分かれています。
日本の国会は二院制をとっており、当然ながら選挙も衆議院選挙、参議院選挙と分かれているため立候補した時点でどちらに所属するかは決まっています。
仕事内容は変わりませんが、どちらかの院のみで国会の意思が決定することはなく、両院それぞれで討議を行い意思が一致してはじめて国会の意思になります。
地方議員の場合、所属党派が分かれますが、二院制に分かれることはなくそれぞれの議会が仕事場となり、意見を述べたり、議題に対して採決を取ったりします。
またそれぞれの市区町村で設けている総務財政委員会、経済振興委員会、生活環境委員会(委員会名は例)などといった委員会に所属するのも地方議員の役割です。
政治家の1日
各種会議に出席しつつ、支援者や団体を回る
政治家のスケジュールは、国会議員なのか地方議員なのか、議会の開催期間中か閉会中かなどの条件によって異なります。
ただ、支援者や支援団体あっての政治家ですので、さまざまな人を訪問したり、来訪に対応することに多くの時間を割くことが一般的なようです。
<ある地方議員の1日>
政治家のやりがい、楽しさ
社会的意義と責任の大きな仕事
政治家は、それぞれの地域や日本に住む人々の暮らしをよくし、日本の将来を発展させていくことが仕事です。
そこには大きな公共性と社会的意義があり、人々の生活に直結する影響力の強さが政治家の仕事の魅力です。
現代の社会には取り組むべき課題が山積みですから、仕事にやりがい不足を感じることはないでしょう。
また、政治家は選挙で選ばれるために公約を掲げ有権者に訴えます。
また政策を実現するには、賛成者の協力はもとより、反対している人たちの説得や関連団体との調整などさまざまなハードルがあります。
しかし、公約を実現したときはこれまでの努力が報われる上に、有権者との約束を守ったという大きな達成感を味わえます。
政治家のつらいこと、大変なこと
選挙に当選し続けなくてはならないプレッシャー
政治家として理念があり、社会をよりよくする明確なビジョンがあっても、それを実行していくためには選挙に当選しなければなりません。
選挙には多額の費用と準備が必要であり誰もが出馬できるわけではありません。
また選挙期間中は街頭演説に有権者巡りをしなくてはならず、寝る間を惜しんで走り回らなければなりません。
そうした苦労を重ねて当選にこぎつけても、息を抜くことはなく、また次の選挙へ向けて政治家としての活動を開始し、結果を残さなければなりません。
選挙に当選し続けられる人は、多くの人から信頼を上げ実績を残したごくわずかな人のみです。
落選すれば一転して無職となってしまい、身分の保証がないという点も、政治家のつらさのひとつといえるでしょう。
政治家に向いている人・適性
責任感があり、コミュニケーション能力に優れた人
政治家は、有権者から選ばれた人々の代表であり、重い職責を背負っているという自覚と責任感を持って業務に当たらねばなりません。
また政治家は、他の議員や支援者、各種団体、諸外国など、さまざまな立場の人と日常的に深く関わっていく仕事です。
それらの人々の意見に耳を傾け、協議し、ときには交渉したり利害関係を調整したりして、問題解決策を見出していかねばなりません。
そのためには、人並外れた高いコミュニケーション能力と、困難な課題に取り組み続ける情熱が要求されるでしょう。
また、多くの問題を提議し解決に導いていくためには、多くの人にそれを訴えるプレゼンテーション能力も必要です。
政治家志望動機・目指すきっかけ
社会問題や地域の政治に関心を抱いたことがきっかけに
政治家の中には、親が政治家で、その地盤を引き継いで政治家となった人もいますが、社会が抱えるさまざまな問題を解決したいと政治家を志す人も大勢います。
少子高齢化や地方経済の衰退など、人々の暮らしに密接した政治課題は多く、それらの問題に実際に直面し、「どうにかしなければ」と強い意思を持って立候補する人も少なくありません。
また、その地域に生活する中で不便を感じ、「もっとよりよい生活ができるようにしたい」「安心安全な暮らしを実現したい」という目標を掲げて志す人もいます。
そうした課題の中には男性より女性のほうが当事者目線に立って考えやすい場合もあり、特に女性の社会進出が欧米よりも遅れている日本では、女性政治家の台頭が望まれています。
政治家の雇用形態・働き方
政治の世界にも「働き方改革」の波が訪れている
国会議員も地方議員も、ただ議会に参加するだけでなく、日頃の勉強や情報収集が不可欠です。
仕事の合間を縫って、勉強会へ参加したり、支持者や団体と交流したりしなくてはなりません。
国民の代表であるため忙しいというイメージが定着していますが、「働き方改革」が社会全体で進む中で、政治家の働き方も変化が訪れてきています。
とくに海外では政治家も家庭や育児などと仕事を両立することは当然と考えられており、日本は遅れをとっています。
まだ子育てをしながら政治家として働く女性は少ないものの、着実に増えてきています。
また、男性にも出産や育児に関する休暇制度が整えられつつあり、今後、政治家を目指そうとする若い世代にはより働きやすい環境が整えられていくと考えられます。
政治家の勤務時間・休日・生活
土日も休みなく、多忙をきわめる毎日
政治家はサラリーマンなどのように、政治家に明確な勤務時間や業務内容が定められているわけではありませんが、多くの人は土日祝日もほぼ休みなく働いています。
平日は議会への出席や支援者回り、各種会合などに出席するなど、朝から晩までスケジュールが詰まっていることは珍しくありません。
国会議員ともなれば、分刻みのスケジュールで早朝から深夜まではたらくこともあります。
また土日祝日は地元に戻り、イベントやお祭りに参加して住民と交流したり、支援者への報告会やパーティを開催したり、勉強会に出席したりする場合が多いです。
政治家は仕事とプライベートの境目がつきづらい仕事でもあり、休日もゆったりと休んでいる暇がないのが実情のようです。
政治家の求人・就職状況・需要
定数は徐々に削減されていく傾向にある
公職選挙法により、国会議員の数は決められています。
海外からするとこれは少ない人数ではありますが、今後少子高齢化がすすむなかでさらなる定数削減が実施される可能性は非常に高いです。
また、地方公共団体の議会の議員の数は、人口に比例して条例で定められています。
地方は都市部に比べると今後より少子高齢化の波を受けやすく、人口が集中する一定の地域を除けば、議員定数は徐々に減少していくでしょう。
国民全体の人口と議員定数の比率で考えると、現在と倍率はあまり変わらないかもしれませんが、今後定数が減少していくにつれ、より政治家になれる人は限られていくでしょう。
政治家の転職状況・未経験採用
社会人経験を経て政治家になる人が大半
政治家になるためには、選挙に当選する必要があるため、ただ公約を掲げていればいいというわけではありません。
選挙に出馬するための資金、当選できる見込みがつくほどの人脈などが必要であるため、まずは官僚や地方公務員などの社会人経験を経て政治家を目指します。
もともと政治に近い部分で働いていた人もいますが、民間企業出身者や主婦だった人など、バックボーンは実に多種多様です。
地方議員や議員秘書などからキャリアをはじめ、知事や国会議員へとステップアップしていく人もいます。
全くの未経験者が政治家を目指す場合は、まずは働きながら民間の政治塾や各政党が主催する政治塾に通い、知識や人脈を身に付けていくルートが一般的です。
政治家・議員の種類
政治家にはさまざまな働き方がある
政治家にはさまざまな種類があります。
市町村や都道府県などの議員を経験し、知事や国会議員となる人も少なくありません。
国会議員は、衆議院と参議院のどちらかの議員として活動し、国会に出席し法律をつくるのが主な仕事です。
都道府県知事は、都道府県の代表で、都議会や県議会などと協力し、円滑な行政運営のために働きます。
都道府県議会議員は、予算や条例の制定・改定などの審議や議決を議会で行うのが仕事です。
市町村長は、地方トップとして、市町村の行政の最高責任者として住民が住みやすい地域づくりに尽力します。
市町村議員は、より地域に密着した政治家で、地域の諸問題を解決するために住民の意見を聞く機会が多いです。