落語家の階級・格付け
落語家の階級
「真打制度」の課題
プロの落語家が所属する協会としては、東京の「落語協会」「落語芸術協会」「円楽一門会」「落語立川流」、上方(近畿圏)の「上方落語協会」などが有名です。
その同じ協会内における落語家の序列である「香盤」(こうばん)や「真打(しんうち)昇進制度」といった階級や格付けには、非常に繊細な面があります。
完全な実力主義でもなく、いったん真打に昇進してしまうと順位の入れ替わりがありません。
若くして急に人気が出た落語家の処遇が難しかったり、真打に昇進する人数が多すぎたり、分裂騒動の原因となるほどの問題点をはらんでいます。
そのため上方では「香盤」が外部に公開されなかったり、「真打制度」が事実上消滅していたりします。
ただし「真打制度」は落語を学ぶうえで欠かすことのできない制度です。
見習い
落語家を志す人はまず師匠(真打)のもとに弟子入りします。
師匠から入門の許可をもらい、前座登録して楽屋入りするまでのあいだが「見習い」です。
現在は通いの人のほうが多いようですが、場合によっては住み込みで師匠宅の家事、雑用をこなします。
通いでも師匠宅で自ら料理を作り、食事をともにします。
住み込みの場合、家賃は負担せずにすみますが、いずれにしても休みはありません。
前座(ぜんざ)
「見習い」に続く階級です。
師匠宅の家事、雑用も行いますが、師匠が高座(こうざ/舞台)に上がる寄席などの演芸場でも、雑用を任されるようになります。
お茶くみなど楽屋の世話から、寄席従業員が行うような「めくり」(出演者名を書いた札)の出し入れ、色物(落語以外の演芸)の道具の準備と回収、マイクのセッティング、着物の管理などを行います。
そのほか太鼓など鳴り物の演奏や「開口一番」という最初の一席も前座の仕事です。
前座のなかにも階級があり、「立前座」(たてぜんざ)がもっとも古株で、寄席興行の進行について決定権をもち、ほかの前座に指示を出したり、ネタ帳を記録したりします。
二つ目(ふたつめ)
「二つ目」に昇進すると、ようやく落語家として一人前と認められ、師匠宅でも寄席でも裏方仕事をしなくなります。
ただし寄席に出演する機会は非常に限られているため、テレビ、ラジオ、営業などへ売り込みをしたり、落語会を開催したり、自分で仕事を探す必要があります。
真打(しんうち)
最終的な階級が「真打」です。
敬称である「師匠」と呼ばれるようになり、寄席興行の主任(トリ/最終演者)を務めます。
真打に昇進する際には必ずお披露目の特別興行を開催する慣わしになっており、ここで口上を述べることで真打に昇進したと認められます。。
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人間国宝の落語家
人間国宝は3人
人間国宝とは、重要無形文化財の保持者として認定された人のことです。
落語家の人間国宝は少なく、現在は柳家小さん、桂米朝、柳家小三治の3人です。
歌舞伎は既に24人が登録されており、落語家との差は歴然です。
これには、落語は「江戸落語」「上方落語」などわざの細分化が難しいこと、また落語は大衆芸能として保護の対象になっていないということなどが挙げられます。
また、世間からの人気ではなく業界内での実力やポジションも関係してくるため、一世を風靡した落語家でも人間国宝に認定されるのは非常に難しいのが現状です。
五代目柳家小さん(やなぎや こさん)
1995年、初めて人間国宝に認定された落語家です。
滑稽噺を得意とする東京の古典落語家で、落語協会7代目会長を務めました。
立川談志(たてかわ だんし)の師匠であり、柳家花緑(やなぎや かろく)の祖父でもあります。
三代目桂米朝(かつら べいちょう)
落語家として二人目の人間国宝に認定されたのは、三代目桂米朝でした。
2009年には演芸会初となる文化勲章を受章しています。
兵庫県姫路市出身の上方の古典落語家で、現代の落語界を代表する存在であり、上方落語中興の祖あるいは上方落語四天王のひとりとして讃えられました。
テレビやラジオ、映画にも出演し、著作も多数あります。
十代目柳家小三治(やなぎや こさんじ)
2014年、落語家史上3人目の人間国宝に認定されました。
東京都新宿区出身の東京の古典落語家で、落語協会顧問を務めています。
落語家初の人間国宝となった五代目柳家小さんは師匠であり、師弟そろって人間国宝に認定されました。