競艇選手の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「競艇選手」とは
全国にある競艇場で自身のランクに応じたボートレースに出場し、勝利を目指す。
競艇選手とは、日本全国にある競艇場でボートレースに出場する選手のことです。
競艇選手になるためには、まず「ボートレーサー養成所」と呼ばれる福岡県の競艇選手養成施設で1年間の厳しい研修を受け、競艇選手の試験検定試験への合格を目指します。
養成所の入学試験では、年齢要件のほか、身長・体重などの厳しい制限が設けられるため、事前に確認しておくことが必要です。
競艇選手にはA1、A2、B1、B2の4つのランクがあり、レースの勝率によってランクが決定します。
ランクが高ければ高いほど参加できるレースも多くなり、賞金の金額も高額となるため、高収入が得られます。
競艇選手には定年制度がないため、なかには60代の現役ボートレーサーもいますし、また昨今では女性レーサーも多数活躍しています。
「競艇選手」の仕事紹介
競艇選手の仕事内容
競艇場でボートレースに出場し、勝利を目指す
競艇選手とは、全国にある競艇場でボートレースに出場する人のことです。
競艇は、競馬や競輪、オートレースと並ぶ「公営ギャンブル」の一種で、古くから人々に親しまれてきました。
ボートレースに出場する競艇選手は、1周600メートルの水面を3周疾走し、その着順を競います。
高速で走り抜くことから「水上の格闘技」と呼ばれることもあります。
競艇場は日本各地に24ヵ所存在し、年間を通じて毎日のようにレースが開催されています。
週末や祝日には全国の10会場以上でレースが開催されていることもあります。
ランクが上がると出場できるレースが増える
競艇選手は、日本モーターボート選手会に登録していますが、基本的に身分は自営業のような扱いになります。
また、競艇選手には実力に応じた「ランク」が設定され、実力を高めるとランクがアップし、主催者からのあっ旋によってレースに出場できる機会が増えます。
開催期間中は、レースが開催されている地域の選手宿舎で生活を送ります。
競艇は公営競技であるため、競艇選手は試合の前日から宿舎に入り、家族などとの連絡も含め、外部との接触が不可能な状態になります。
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競艇選手になるには
競艇学校で資格取得のための訓練を受けるのが一般的
競艇選手になるには、国家試験である「競艇選手資格検定」に合格する必要があります。
この資格検定試験は誰でも受験可能ですが、競艇に関する高い能力・技術が求められるため、実質的には特別な訓練を受けなくては合格できません。
このため、一般的には福岡県にある「ボートレーサー養成所(旧やまと学校)」に入校し、競艇選手資格検定試験への合格を目指すのが通常のルートです。
競艇学校の応募資格として、年齢が「15歳以上30歳未満(入学時に中学を卒業していること)」のほか、身長や体重、視力、聴力、その他の健康状態に問題がないかまで問われます。
さらに、試験として学科試験や身体試験なども行われるため、全員が養成学校に入校できるわけではありません。
競艇選手の資格を得るとレースに出場できる
養成所の訓練期間は1年間となっており、全寮制の生活を送ります。
訓練をすべて終え、競艇選手の資格検定試験に合格すると、競艇選手として日本モーターボート選手会に登録します。
決まった勤務先があるわけではなく、基本的には自営業のような形で、レースに出場して勝利を目指します。
競艇選手の学校・学費
養成所では厳しい研修生活の日々を送る
競艇選手を目指すには、通常、競艇選手の養成所である福岡県柳川市の「ボートレーサー養成所(旧やまと学校)」に入学することが第一歩となります。
ボートレーサー養成所は、年に2回の入学式(4月入学と10月入学)があります。
養成所で過ごすのは1年間で、全員が寮生活を送ります。
携帯電話は持ち込み禁止、起床から消灯まで分刻みのスケジュールの下で行動します。
授業は学科と実技、その他に分けられ、学科ではボートレース関連の法規からエンジン、操縦学、整備学、気象学などを学びます。
実技は操縦や整備を学び、その他としてメンタルトレーニングなども実施します。
学費はかからず、無償で研修を受けられますが、研修中は「礼と節」という教訓の下、礼儀や態度、行動まで厳しく指導されるため、よほどの強い意思や自律心がないと、なかなか続かないのが現実です。
競艇選手の資格・試験の難易度
養成所に入学することも簡単ではない
競艇選手になるには、競艇選手の資格検定試験に合格しなくてはなりません。
この検定試験は素人が簡単に合格できるようなものではないため、まずは「ボートレーサー養成所(福岡県柳川市)」に入学し、1年間の授業と訓練を受ける必要があります。
養成所では年に2回の入学試験が実施されています。
1次試験の学科試験はそこまで難しくないですが、2次試験では体力試験や適性試験があり、基礎的な運動能力が問われます。
さらに3次試験では面接や身体検査が実施され、競艇選手の資質や人間性などが判断されます。
最終的な倍率は20倍を超えることもめずらしくなく、養成所に入学すること自体が簡単ではありません。
さらに、1年間の養成所生活では全寮制で、ボートレースに関する基礎知識や技術を徹底的に習得します。
卒業試験を経て、資格検定試験にも合格すれば、ようやく競艇選手としてレースに出場できるようになりますが、ここまでの道のりで脱落してしまう人もいるのが現実です。
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競艇選手の給料・年収
選手としてのランクによって平均年収に差が出る
競艇選手の平均年収は約1500万円と発表されており、この数字だけを見ると、高収入が見込める職業といえます。
ただし、競艇選手は個々の成績・実力によってランクが4つに分けられており、下のランクと上のランクでは年収が大きく異なります。
ボートレースの公式ホームページによれば、2018年時点で、最も下のB2ランクの平均年収は500万円、最も上のA1ランクの平均年収は3000万円です。
ランクが上になるほどグレードの高いレースに出場でき、レースの出場回数も増えるため、収入は高くなりやすい傾向です。
グランプリ(賞金王決定戦)というレースでは、優勝すると1億円の賞金が用意されています。
賞金以外の収入もある
競艇選手の収入は、レースの賞金以外にもあります。
たとえばレースに参加すると日当のほか、宿泊費や開催地までの交通費が支給されます。
また、レースに出場することの出走手当、賞金が出ない4着以下になっても、完走すれば完走手当がもらえます。
ほかにも多様な手当が用意されており、ランクが低い選手でも、ある程度の収入は確保することが可能です。
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競艇選手の現状と将来性・今後の見通し
競艇人気は復調傾向、業界を盛り上げていく力が求められる
競艇選手は、他のスポーツ選手と同じように、個人の実力で勝負する職業です。
成績が悪かったり、大きな怪我をしたりすれば早くに引退せざるを得ないケースもありますが、競艇はスポーツのなかでは比較的長く続けられるといわれています。
バブル経済期以降、競艇の人気は低迷が続いていましたが、近年では復調の兆しを見せています。
競艇場の整備・改修が進んでおり、女性の選手が注目される機会も増え、新しいファン層を取り入れることにも成功しています。
競艇人気が復活すれば、収益を競艇場の整備や選手の賞金、自治体への還元などにも回せるため、競艇選手にとっては明るい話題といえるでしょう。
競艇選手になる道のりは険しく、またトップ選手としてレースに勝つのも簡単なことではありませんが、競艇業界を盛り上げるためにも、才能を感じさせる若い人材が求められています。
競艇選手の1日
レースを中心とした生活を送る
競艇選手の1日の過ごし方は、レースがある日と、そうでない日(練習日)でまったく異なります。
レースの出場が決まると、開催初日の前日に競艇場に入り、レースの準備をしながら選手宿舎で過ごします。
試合当日は1日に2回のレースに出場します。
ここでは、レース開催日の1日の流れを紹介します。
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競艇選手のやりがい、楽しさ
選手としての実力を高め、成績を上げていくこと
競艇は、レースのたびに1着~6着までの順位が決まるため、自分の実力がはっきりと見えやすい世界です。
もちろん、思うような成果が出なければ悔しい思いをしたり、落ち込んだりすることはありますが、逆に、難しいレースで上位に食い込めたときには誇らしい気持ちになれます。
自分の未熟さを思い知らされるなかでも地道な努力や研究を続けて、少しでも成長できたと実感できたときに、やりがいを感じるでしょう。
また、成績がよければ選手としてのランクアップにつながって、よりグレードの高いレースに出場できたり、レースへの出場回数が増えたりします。
ファンからの応援を背に受けると、もっと強い選手になろうという意欲が湧いてきます。
競艇を愛し、向上心がある限り、トップ選手を目指して挑戦する日々そのものに充実感を得られるでしょう。
競艇選手のつらいこと、大変なこと
危険な事故とも隣り合わせの世界で、恐怖感に打ち勝つこと
競艇で最も大変なことは、事故の危険と隣り合わせとなることです。
他のスポーツ選手でもケガのリスクはつきものですが、競艇の場合、衝突や転覆、落水など、とくに危険な場面に直面する恐れがあります。
レース中や練習中の死亡事故も起きていますし、長期のリハビリに取り組まなければならない大ケガをする人もいます。
競艇を続けていると、どこかで恐怖感に襲われる日がくるため、技術を高めることはもちろん、精神的にも強くなければやっていけません。
また、競艇選手は個人の能力がランクとして評価されていきます。
実力がなければランクが落ち、思うようにレースにも出られず、大幅に収入が下がってしまう可能性があります。
競艇選手として第一線で活躍し続けるには、相当な強い意思や努力が不可欠です。
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競艇選手に向いている人・適性
小柄で運動能力があり、負けん気が強い人
競艇選手に求められる要素のひとつとして「体が大きすぎないこと」が挙げられます。
養成所の入学条件でも身長や体重制限が設けられており、簡単にいえば、小柄で体力があって運動能力が高く、状況への対応力のある人が活躍しやすいです。
また、ボートの操作には腕力や体重移動など、体全身を上手に使いこなす必要があるため、強靭な肉体を保つことも必要な能力といえます。
学生時代からモーターボートの操縦経験がある人はほとんどいませんが、何らかのスポーツ経験者で、基礎体力には自信がある人のほうが向いているといえるでしょう。
また、競艇選手になれば、厳しい「競争」の世界に身を置きます。
負けん気がなければやっていけませんし、ケガや事故とも隣り合わせの環境でレースに出るため、強い精神力や挑戦心がある人に向いています。
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競艇選手志望動機・目指すきっかけ
レースを見て感激した経験や、親などの勧めによって
競艇選手の志望動機として多いのは、子どもの頃に競艇選手の姿を見ることがあり、そのときにカッコいいと思ったからといったものです。
競艇は明確に「順位」という勝ち負けがつく競技であり、自分をストイックに磨き上げて勝負する姿に感激し、目指すきっかけになったという人は少なくないようです。
一方、親など身近な大人が競艇ファンで、強い勧めがあって自然と養成所に入ることを目指したという人もいます。
また、競艇は比較的小柄な体格の人でも活躍できるため、自分の体型を生かせるスポーツを探しているうちに、競艇の世界に興味をもつケースも見られます。
競艇選手の雇用形態・働き方
個人事業主として独立した立場でレースに出る
競艇選手になった人は、日本モーターボート選手会には所属するものの、身分としては社員やアルバイトなどではない「個人事業主」です。
選手会から斡旋されてレースに出るものの、あくまでも独立した個人として勝利を目指します。
このため、給料が支給されるわけではありませんし、レースで得た賞金などの収入は自分で管理して、確定申告をしなくてはなりません。
自由な面はあるものの、いつどうなるかわからない、不安定な身分ともいえます。
ただし、選手会では一定の年数を活動した選手には引退時の退職金支払いや、ケガや事故などの際の補償、救済の役割を担っています。
競艇選手の勤務時間・休日・生活
レースを中心に日々の生活スタイルを組み立てていく
競艇選手は、成績によって4つのクラスに分けられ、クラスによって出場できるレースのグレードが異なり、出場回数も多くなります。
たとえば、最上位のA1級の選手では、月に3開催、日数にして12日〜18日で、下から2つめのB1級の選手では、月に1開催、日数にして4日〜6日ほどです。
競艇場は全国に24ヵ所あるため、レースによって日本各地を飛び回ることもあります。
レース前日に競艇場に入ると、不正防止のため、外出や外部との連絡は一切禁止となり、宿舎で規則正しい生活を送ってレースの準備を整えます。
レースがない日は休日となりますが、経験の浅い若手は、最寄りの競艇場が空いている時間に、ボートを借りて練習や勉強をすることもあります。
競艇の世界ではオフシーズンがないため、年間を通じてコンディションを整えていくことが重要になります。
競艇選手の求人・就職状況・需要
養成所を卒業し、試験に合格すれば競艇選手になれる
競艇選手になるには、実質的に、まず福岡県にある「ボートレーサー養成所」へ入学しなくてはなりません。
この養成所での厳しい訓練を乗り越えれば、競艇選手としてデビューできます。
しかし、養成所の入学試験の倍率は非常に高くなりがちで、20倍から40倍ほどになることがあります。
無事に入学できても、1年間かけて基礎訓練や、技術応用訓練を受ける日々が続きます。
礼儀や節度も含め、全寮制で規則正しい生活を送りながら競艇選手として必要なことをみっちりと学び、最終的には卒業試験が行われます。
この卒業試験に合格し、さらに資格検定試験(国家資格)に合格すれば、いよいよプロデビューです。
養成所を卒業した人の資格検定試験の合格率は、ほぼ100%ですが、そこに至るまでの道のりで挫折してしまう人もいます。
競艇選手の転職状況・未経験採用
20代のうちは養成所の受験資格があり、転職も可能
競艇選手は、子どもの頃から一直線で目指してきた人がいる一方、転職によって目指す人も決して少なくありません。
「ボートレーサー養成所」の受験資格は「15歳以上30歳未満」となっているため、たとえば高校や大学を卒業し、20代になっていったん社会に出てからでも、入れるチャンスがあります。
たとえば、2人の子をもつ母親で、競艇界で「グレートマザー」と呼ばれる日高逸子選手も、信用金庫をはじめ、さまざまな仕事を経験してから競艇選手に転職した選手の一人です。
10代で養成所に入る若い子と比べると、20代も半ばになれば体力的には少し苦労するかもしれません。
しかし、社会人を経験していることで精神的に鍛えられているところもありますし、あとはやる気と根気さえあれば、競艇選手に転職することは可能です。
競艇選手(ボートレーサー)になるための条件・身長制限は?
厳しい身体制限があるが、年齢は選手になれば問われない
競艇選手になるためには、さまざまな条件をクリアする必要があります。
まず「ボートレーサー養成所」を受験するためには、「15歳以上30歳未満(入学日において中学校を卒業していること)」という条件をはじめ、以下のような身体条件を満たさなくてはなりません。(※第134期、第135期募集時点)
・身長:175cm以下
・体重:男子は49.0kg以上57.0kg以下、女子は44.0kg以上52.0kg以下
・視力:裸眼で両眼とも0.8以上(コンタクト・フェイキックIOL「有水晶体眼内レンズ」手術は不可)
・弁色力:強度の色弱でないこと
・聴力その他の健康状態:選手養成訓練に支障のない者
競艇では体重は軽いほどスピードが出やすいため、レースの公平さを保つために、養成所に入る時点で体重制限が設けられています。
年齢に関しては、いったん養成所を卒業してボートレーサーになれば、健康である限り何歳まででもレースに出ることが可能です。
現役選手の平均年齢は38歳、在籍の平均年数も25年となっており(※2020年時点)、プロ野球やJリーグなどの他のプロスポーツ選手と比べると、長く続けられるスポーツといえます。
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競艇選手(ボートレーサー)の引退後の生活
引退年齢や現役時代の活躍ぶりによって、引退後の生活は変わる
競艇選手には定年制がなく、強制的に引退されられることもありません。
ただし、デビューして33年が経過して成績が悪すぎると、選手会から引退勧告を受けます。
その頃には50代に入っている人が多いこともあり、成績が悪くなると自ら引退を考える人が多いです。
他のスポーツよりは選手生活を長く続けやすいのが競艇の魅力ですが、引退後の人生に何をするかは、競艇選手にとっての重要なテーマです。
引退年齢が20代や30代であれば、一般企業への転職を目指す人もいれば、学びたいことがあって専門学校や大学などに通う人もいます。
40代以上になると企業への転職は厳しいため、救助艇勤務やボート運び、競艇場の職員やガードマンなど競艇関係の仕事に就く人、あるいは飲食店経営やアパート経営など、自営業者になる人もいます。
競艇選手としてよい成績を残し、現役中に十分な蓄えをしていた人であれば、セカンドキャリアはガムシャラに働かず悠々自適な生活を送ることもできるでしょう。