騎手エージェントの仕事とは

騎手エージェントの仕事とは

騎乗依頼を仲介する代理人を「エージェント」と呼ぶ

騎手と、馬主や調教師との間で、騎乗依頼を仲介する人のことを「エージェント」と呼んでいます。

ひとりの騎乗エージェントが担当できる騎手の人数は、3人プラス若手騎手1人と定められています。

騎手エージェントを務める人は、馬券の購入や譲り受けることを禁止されています。

また、馬主登録を受けていたり、馬主に雇用されている人は騎手エージェントをすることはできないと定められています。

いずれも、公営ギャンブルの公平性を保つために定められているルールとなります。

かつて、騎手は、いずれかの厩舎に所属していました。

騎乗する馬は、その厩舎が世話する馬か、調教師の人脈などによって決まりました。

1990年代になると、厩舎から独立し、フリーとなる騎手が増え、騎手は自分で騎乗する馬を探すようになりました。

実力のある騎手には、当然ながら騎乗依頼が殺到します。

自分で乗りたい馬を選べる一方で、馬主や調教師とのしがらみで騎乗せざるを得ないケースも出てきます。

また、ふつうの騎手は、騎乗機会を求めて、ふだんから馬主や調教師とお付き合いしておく必要がありました。

そんな中で、騎乗依頼を仲介する「エージェント」を導入したのは、岡部幸雄騎手でした。

レースに集中したいというのがきっかけ

岡部騎手は、所属厩舎の都合で、乗りたい馬に乗れないという不満から、1984年にフリーとなりました。

「名手」と呼ばれる実力騎手でしたので、所属厩舎とすれば、自分たちの管理する馬に優先して乗ってほしいというのも当然の願いでした。

しかし、フリーになると、今度は騎乗依頼が殺到します。

その対応だけでも多くの時間を取られるようになり、レースに集中したいという理由で、競馬新聞の記者に代理人として騎乗依頼の仲介を頼むようになったのです。

これが、日本における騎手エージェントの始まりとされています。

その後、岡部騎手の影響で、フリーランスとなる騎手が増えると、競馬新聞や競馬雑誌の記者を中心に、騎乗依頼を仲介する「エージェント」が増えていきました。

騎手エージェントのメリット、デメリット

エージェントが騎乗依頼することで、騎手は、人脈やしがらみに左右されることなく、実力のある騎手が強い馬に乗れるというメリットがあります。

エージェントへの支払いは、騎手や調教師がレースで得る賞金から当てられるのが一般的です。

エージェントになっているのは、競馬新聞や競馬雑誌の記者を中心に、競馬場やトレーニングセンターへ自由に出入りできる人たちです。

JRAへの届け出が必要で、エージェント1人につき、騎手3人と減量騎手(新人の見習騎手)1人を担当することができます。

エージェント自身には馬券の購入や、馬券を譲り受ける行為が禁止されています。

しかし、エージェント自身の職業が競馬記者である以上、騎手への騎乗依頼に関する情報や経緯を知った上で新聞や雑誌でレースに関する記事を書き、予想もするということになります。

このため、競馬の公正確保の点から、「記者がエージェントを務めるのはいかがなものか」という批判もあります。