警備員になるには
警備員は学歴や特別な資格が必要な職業ではありません。
ただし、それらが不要だからといって仕事内容も簡単であるとはいえません。
本記事では、警備員になるために必要な情報をまとめて紹介します。
警備員になるまでの道のり
新卒で警備会社に就職
現在、警備会社の採用活動は新卒学生へのウェイトを高めています。
高校や大学を卒業したばかりの人を新卒採用し、現場や裏方の両方を幅広く体験させることで将来の幹部候補生に育てるという考え方です。
近年では警備員へのニーズが高まっているため、新卒採用も増加傾向にあり、学生の中には有望な就職先として考える人も多いそうです。
就職試験に合格すると正式採用日から研修がしっかりと行われ、それぞれの現場に出て行きます。
中途採用で警備会社に就職
新卒学生へのウェイトが高まっているとはいえ、警備会社は慢性的に人手不足のため中途採用も活発に行われています。
特に中小規模の警備会社は中途採用のほうが圧倒的に多いケースも少なくありません。
中途採用求人の探し方は簡単で、求人サイトや求人雑誌、または新聞の求人広告ページなどにある求人に対して応募をして、採用試験を受けます。
採用率は高く、現場に入る前には必ず研修を受けます。
20代で正社員への就職・転職
警備員に必要な資格や検定は?
研修が必要
警備員になるために必要な資格はありません。
ただし警備業法では、新規に警備員を採用して現場に送り出す際には所定の教育を受けさせなければならないと規定されているため、警備会社へ就職すると決まったカリキュラムの教育を受ける必要があります。
具体的には警備業法21条第2項に記載があり、警備に関する各種資格を持っている人や経験者、元警察官などは一部が免除されたり、教育に要する時間が短縮されたりするなど、細かく規定されています。
警備員や警察官の経験がない場合、「上記対象以外の一般警備員」というカテゴリーの研修を受けることになります。
この教育では、以下のようなさまざまな知識と技術を習得します。
- 護身具の扱い方
- 護身術
- 心肺蘇生
- 法令知識
警備の仕事は身の危険にさらされることもあるため、きちんと研修を受け警備のスキルや知識を身につけなくてはならないのです。
さまざまな警備業務検定
警備員には特別な資格がなくても仕事に就くことができますが、警備に関する資格はたくさんあり、それらを取得しておくと就職・転職時に有利になる場合があります。
具体的には以下があります。
- 施設警備検定
- 空港保安警備検定
- 交通誘導警備検定
- 雑踏警備検定
- 貴重品運搬検定
- 核燃料運搬警備検定
これらの資格は講習や終了考査を受けるほか試験でも取得できるため、実務未経験者が取得することも不可能ではありません。
ですが、警備員の資格のほとんどは、有資格者を一定の比率で配置しなければならないという決まりがあるため、警備員の仕事を長く続けていくためには必須です。
ある現場に警備員が10人配置されている場合、最低1人は所定の資格を持っていなければならないというケースは多く、それぞれの業務や現場に応じて必要な有資格者は法律で定められています。
たとえば、大きな幹線道路で交通誘導をしている警備員は「交通誘導検定」という資格の2級以上を持ち、この資格を持っていない人は国道や高速道路などの交通誘導に携わることができないと定められています。
施設警備検定
施設警備とはショッピングセンターやアミューズメント施設などで、盗難や火災などのトラブルが起きないかを警備する仕事で、その業務に関する検定です。
2級と1級があり、2級の場合は18歳以上であれば誰でも受験ができ、警備業務が未経験でも受験できます。
空港保安警備検定
空港内での保安警備や機内でのハイジャックなどが起きないように警備する仕事の検定です。
飛行機内に持ち込む手荷物検査を行う際に必要な資格で、空港での警備業務をしたい人に必要な資格です。
交通誘導警備検定
道路工事や工事現場などで、歩行者や車を安全に誘導する仕事に関する検定です。
2級は誰でも受験することができ、1級は2級に合格後1年間実務経験を積んだ人が受験できます。
雑踏警備検定
大型のイベントや野外でのイベント、お祭りなどの雑踏で人がスムーズに移動できるように誘導する仕事に関する検定です。
貴重品運搬検定
貴重品を運搬する際の警備に関する検定で、貴重品の運搬は警備会社からの需要も高い仕事です。
銀行ATMなどから現金を輸送する際、現金輸送車には必ず有資格者をおかなくてはなりません。
テレビなどで高額の商品を扱ったり、貴重な芸術品を扱ったりする際にそばで監視している警備員も、この貴重品運搬検定の資格を取得した警備員です。
核燃料運搬警備検定
核燃料の運搬を警備する業務に関する検定です。
警備員指導教育責任者
こうした資格のほかに、警備員の指導に関する指導者向けの資格もあります。
警備員の知識やスキルを指導・教育することができる資格です。
この資格があれば、警備会社のなかで新人を指導できるポストに就いたり、給料がアップしたりするため、警備員としてキャリアアップを目指す人にとっては持っておきたい資格です。
警備員になるための学校の種類
警備員という仕事では学歴はほとんど重視されないため、どの学歴からでも比較的採用されやすいのが特徴です。
高卒の人も大卒の人もいますが、大卒で幹部候補として採用されると、将来的にはマネジメントへ進む道が開けるでしょう。
20代で正社員への就職・転職
警備員になるまでにどんな訓練や研修をする?
警備員の教育・訓練の内容
デビューまでには30時間を超える研修がある
警備・警察未経験者の方が該当する「一般警備員」は、新任教育では基本教育と業務別教育でそれぞれ15時間以上、現任教育では基本教育が3時間以上、業務別教育が5時間以上と定められています。
これらを合計すると、最低でも38時間以上の研修が必要ということになり、一般の警備会社では、4日から5日の日程で集中的に研修を行います。
基本教育
教育・訓練の内容は多岐にわたり、基本教育では、講義と実技があります。
テキストやDVDを使って警備業務の基礎を学び、敬礼や駆け足などの警備の基本や緊急時に大声を出す訓練など、警備員としての基礎的なふるまいを習います。
業務別教育
業務別教育では、実技に必要な教育が行われます。
- 常駐の警備
- 交通誘導警備
- 貴重品運搬警備
- 身辺警備
- 機械警備
など
警備員が持つ警戒杖の使い方や護身術、「さすまた」という護身具を使った身の守り方や捕縛方法などを学びます。
その他には火災に備える消火器の使い方や人命救助法、心肺蘇生、防犯カラーボールの使い方、関係する法令の知識なども学びます。
業務別研修では、15時間の研修時間のうち、8時間は実際の現場での実地教育を受けることが認められています。
現任教育
現任教育は、現在すでに警備員として働いている人が受ける研修です。
現任教育は半年に1度行われ、年に2回、それぞれ基本教育3時間以上と業務別教育5時間以上、1年で16時間以上の研修を受けることが義務付けられています。
警備員として新しい知識やスキルを身につけることはもちろん、新しい法令や現場に合った知識を身に付け、専門性を高めていくことが目的とされています。
教育・訓練は実践で役立つか
警備員になる上で受けた教育や訓練がそのまま役に立つことはあまりありません。
護身術や捕縛方法などについては、実際あまり使う機会はないといってよいでしょう。
ただし、万が一のために、その方法を知り知識やスキルを身につけているということが大切なのです。
いざというときのための知識を身に付けていることで、自信をもって警備業務を行うことができます。
近年ではモニターやセンサー、遠隔操作での警備を行うところも増えてきているため、こうしたIT機器の操作を知っているということも仕事上で役に立つでしょう。
警備員に向いている人
警備員は「ガードマン」といわれることがあるように、場所や人を「守る」仕事です。
守る仕事に必要な資質は、なんといっても責任感や使命感です。
自分の持ち場をしっかり守れる人は信頼を勝ち取り、次第に大きな現場を任されるようになるなど仕事の幅が広がります。
警備員のキャリアプラン・キャリアパス
会社によって考え方は異なりますが、新卒の正社員として採用された人は入社後の数年間は現場の警備業務に就き、その後は本社で幹部候補としての仕事を任されるのが一般的なようです。
警備員といっても、雑踏警備・交通警備など警備の内容は会社によっても異なるため、自分のキャリアプランをイメージしながら就職先を考えるとよいでしょう。
また、警備に関する資格を取得することで仕事の幅を広げ、キャリアアップする方法もあります。
警備員の雇用形態
警備員には、警備会社と直接契約を交わしている正社員の警備員、アルバイトの警備員などさまざまな雇用形態があります。
雇用形態による仕事内容の差はほぼありませんが、正社員の場合はシフトの作成や人員の配置など、警備業務だけでなく管理職としての仕事を任される場合もあります。
正社員の警備員
警備員は、公安委員会の認定を受けた民間の警備会社の社員です。
新卒・中途採用ともに求人は多く、未経験可・年齢性別不問というところも多いようです。
ただし新卒採用の場合は、数年現場を経験し、管理職候補として勤務することもあります。
入社すると規定の研修を受けたあと、各現場に配置されます。
近年はITやAIが発達したことも有り、警備会社で要請がないか待機したりコントロールセンターから監視をしたりする場合もあります。
アルバイトに比べると、正社員は特定の現場に出勤することが多く、施設警備の場合はひとつの施設に勤め続けることも珍しくありません。
また、現金輸送や要人の警備など、警備員として重要度や専門性の高い仕事ができることも魅力です。
正社員はこうした重要な任務を担えるという面でやりがいも大きく、アルバイトに比べると収入も高めなので、中途採用でも人気があります。
派遣の警備員
一般の人材派遣会社が警備員を現場に派遣することは原則として禁止されています。
警備業務は危険が伴う仕事であるため、派遣会社の目が行き届かないところで労働者の安全が確保されない、間接的な雇用が望ましくないと考えられているためです。
警備業務に関して定めている警備法においても「警備業務の適正な遂行を確保するために、警備業者が警備員を直接雇用して業務上および身分上の指導監督を行い、自らの責任において業務を処理すること」とされ、派遣会社が警備員を派遣することはこれに違反します。そのため警備業務はすべて請負形態で業務を行うことが求められています。
派遣社員としてイベントや施設内での手荷物検査や巡回、犯罪・事故の警戒、交通整理などの業務を求められた場合は注意が必要です。
アルバイト・パートの警備員
正社員と比べ、アルバイトは採用されやすく自分の都合で働きやすいというメリットがあります。
アルバイトの場合はその日ごとに出勤する現場が違い、さまざまな現場を転々とするのが一般的です。
慣れないうちは大変かもしれませんが、さまざまな現場に足を運び警備員として経験を積んだり、毎日新鮮な気持ちで業務にあたったりすることができます。
18歳以上であれば未経験でも比較的容易に働くことができ、日払いで給料がもらえたり、一日だけでも気軽に働いたりできるため、学生やダブルワークをする人が警備員のアルバイトをすることも多いようです。
ただし、アルバイトの場合はどれだけ経験を積んでも昇給や資格取得に対する待遇が少なく、日給や時給がアップルすることはまれですが、勤務態度が認められれば、正社員登用制度がある企業の場合アルバイトから正社員になれる場合もあります。
警備員を目指せる年齢は?
警備員は、他の職業と比較しても転職が多い職業です。
未経験からでも健康状態がよく意欲的であれば、警備員として一からやっていくことは可能で、実際に定年を迎えてから警備員として働く高齢の方も少なくありません。
ただし年齢が上がると正社員として雇用されにくく、アルバイトとして働く人もいるようです。
もし警備員として転職し、キャリアアップを目指したいのであれば、少しでも若いうちに行動したほうがよいでしょう。
警備員は高卒から目指せる?
警備員は学歴が必要な仕事ではないため、高卒からでも警備員になることはできます。
ただし18歳未満の者は警備業務に就くことができないと法律で決められています。
仕事内容や警備会社によっては、採用は20歳以上とするところもあるため注意が必要です。
警備員は女性でもなれる?
女性の社会進出がめざましい昨今、警備員の世界でも女性の活躍は確実に広がっています。
職業柄、体力があり力が強い男性のほうがよいというイメージがあります。
しかし、最近ではスーパーやショッピングセンターなど、女性客が多い現場については、女性警備員を表に立てて、男性警備員は何かあった時に駆けつける態勢にしているところも多いようです。
女性警備員のニーズが高まるにつれて、今では一定比率は女性警備員を確保する採用活動を行う警備会社が増加しているようです。
警備員になるにはのまとめ
警備員になるために必要な資格や特別に必要な知識などはありません。
高校や大学などの卒業後に警備会社に就職をし、会社の研修を受けて現場に出るようになれば、その時点で1人の警備員の誕生です。
警備会社の採用活動は男女とも積極的に行われているため、警備員になることはさほど難しくはないでしょう。
ただし、ときに多少な危険を伴う警備を担当することもあるため、警備員になってからしっかりとスキルを身につける努力が求められます。