JICA職員の需要・現状と将来性
JICA職員の需要と現状
ODAの規模は1997年ピーク時の約半分
JICAのプロジェクト予算として国から提供されるODA(政府開発援助)は、2020年度は5,610億円でした。
2019年度に比べて増額となりましたが、1997年ピーク時の11,687億円と比べると約半分の規模にまで削減されています。
ODAは国民の税金を原資としているため、日本国内の経済状況が不安定な時期には削減される傾向にあります。
とくに2011年の東日本大震災以降は、被災地復興支援にあてられる予算が優先されるようになり、ODAに対する世間の目はより厳しくなったといえるでしょう。
「国内の被災地復興も不十分なのに、他国に税金を使用するのはおかしいのでは」という考え方が強まっているためです。
このような状況のなか、JICA職員はODAの使い道を明確にした無駄のないプロジェクト運営が求められています。
日本の経済状況との関係
JICAのプロジェクト予算であるODAが国民の税金を原資としている以上、日本の経済状況はJICAの事業内容に大きく影響します。
経済状況が悪化して日本全体の税収が減れば、ODAにさける予算がなくなってしまうからです。
とくに日本は少子高齢化の問題を抱えており、労働人口が減少し税金の担い手が減っていく状況にあるため、JICAにとっても先の明るい状況とはいえないでしょう。
このような日本国内の状況に加えて、途上国との友好関係や貿易関係など、各国との関係性もJICAの活動方針に影響を与えます。
JICA職員への入職を考える人は、「日本国内の経済状況」と「日本と各国との関係性」の両面に目を向けておく必要があるでしょう。
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JICA職員の将来性
現在JICAには約1,900名の職員が在籍していますが、今後大幅な予算の削減やプロジェクト数の減少などが起これば、職員数や新規採用数は減っていく可能性が考えられるでしょう。
また外部専門家へのアウトソーシングや非正規職員の採用拡大など、不況下のなかで民間企業が推し進めてきた手法に積極的に取り組んでいくことも考えられます。
このようにJICA職員の雇用環境には大きな変化が起こる可能性がありますが、依然として高い能力が求められる職業である点は変わりません。
複雑なプロジェクトをスムーズに進めていける高い進捗管理能力や、頻繁の海外出張に耐えられる強靭な体力が必要であり、こうした人材を確保するうえで待遇面が大きく下がる事態は起こりにくいでしょう。
JICA職員の今後の活躍の場
JICAの開発途上国支援プロジェクトは、インフラ整備や人材開発など、支援対象国の公共の利益に重点を置いています。
しかしここまで説明してきたような予算縮小にともない、大規模プロジェクトの量産が難しくなっているのが現状です。
そこで今後の展開として、製造・市場の両面で開発途上国への進出が著しい民間企業との連携を深めていくことが考えられます。
そうなれば「支援対象国の利益」「日本国の利益」「JICAに協賛する民間企業の利益」という3方への目配りが必要になり、プロジェクト運営はより複雑性を増していくでしょう。