翻訳者(翻訳家)になるには? なるまでのルートや資格、仕事にするまでを解説
翻訳者には決まった資格は必要ないため、誰でも目指すことは可能です。
ただし、語学力はもちろん、言語圏の文化や歴史、宗教などへの理解も必要な職業です。
この記事では、翻訳者のなり方を詳細解説し、仕事の取り方や学校の選び方、また「将来仕事がなくなるって本当?」といった疑問も解決します。
翻訳者になるには?資格や留学は必要?
翻訳者になるにあたって資格や留学経験は必須ではありませんが、高い語学力とその言語の文化的背景への理解が必要です。
したがって、翻訳者は、大学の外国語学部出身であったり、留学経験があったりする人も多いです。
この章では、翻訳者になる方法を詳しく解説していきます。
翻訳者になるには
翻訳者になるにあたって、決まった資格・免許、また卒業が必要な学歴はありませんから、目指すルートは人それぞれです。
ただし、相当に高い語学力が必要になってくるため、翻訳者は必然的に大学・短大の外国語系学部出身者が多くなっています。
学校卒業後の進路は、大きく「就職する人」と「フリーランスになる人」に分かれます。
翻訳専門会社や一般企業の社内翻訳者として就職できれば専任の翻訳者として働くことができますが、求人数は多くありません。
また、実務経験がない人を雇ってくれる会社はとくに少ないのが実情です。
そのため、新人翻訳者は翻訳会社、派遣会社、クラウドソーシングなどに登録し、スポット(単発)で仕事をもらう働き方を選ぶのが一般的です。
翻訳者の仕事を得るには?
翻訳者は、翻訳専門の会社に就職する場合を除き、自ら仕事を獲得する必要があります。
翻訳者の仕事を得る方法には次のようなものがあります。
✔翻訳者の仕事を得る方法
- 翻訳専門の会社に登録する
- クラウドソーシングで請け負う
- 翻訳のコンテストに応募する
- SNSやブログなどで翻訳活動を公開する
翻訳専門の会社に登録するには、翻訳レベルを判断するための「試験(トライアル)」に合格する必要がありますから、受験時点で一定以上の翻訳力を身につけておく必要があります。
一方、クラウドソーシングでの仕事は単価が低いものが多いですが、実績づくりになり、はじめの仕事獲得の場としてはハードルが低めです。
このほか、翻訳会社や新聞などでは翻訳のコンテストを行っていることがあり、なかには賞金が出るものもあります。翻訳コンテストでの実績があれば、仕事を獲得しやすくなるでしょう。
SNSやブログなどで自分が翻訳した作品を載せて仕事を得る、という方法もあります。
翻訳者になるのに必要な語学力の目安は?留学経験は必須?
翻訳の仕事は多く分けて次の3通りあり、求められる語学力が異なります。
- 文芸翻訳:書籍、歌、雑誌など文芸作品の翻訳
- 映像翻訳:海外の映画やドラマの翻訳
- 実務翻訳(産業翻訳):学術書、契約書、マニュアルなどビジネス向けの翻訳
一般的に、翻訳者になるには、一定以上のTOEICやTOEFL、IELTSのスコア、英検準一級以上の資格などが求められます。
文芸翻訳や映像翻訳はとくに、教科書では習わないようなネイティブの独特な言い回しなどにも通じていることが望ましいです。
文化、政治、経済といったその国や地域の文化的な背景を知り、適切な翻訳をすることが求められるからです。
留学経験があれば、その国独自の文化を肌で感じられるため、いきいきとした表現で翻訳ができるでしょう。
一方で、実務(産業翻訳)翻訳は、語学力そのものも大切ですが、医療・金融・IT・法律といった専門的な分野についての知識・実務経験が求められやすいです。
翻訳者になるために役立つ資格と学校選び
翻訳者の資格・試験
翻訳者になるために必須の資格はありませんし、資格を取得したからといって、直接的な雇用や仕事を得られることにつながるわけではありません。
ただし、翻訳に関する語学関連の資格を持っておくと客観的な語学力の証明になり、アピール材料にできます。
翻訳者として企業や翻訳会社に所属して仕事を行う場合は、雇用者が求人要件として英検資格やTOEICの点数、あるいは会社が主催するトライアル試験の合格を基準とすることもあります。
翻訳関連の民間資格としては次のものがあります。
✔翻訳者向けの資格
- JTA公認翻訳専門職資格基礎試験(日本翻訳協会)
- JTA公認翻訳専門職資格試験(日本翻訳協会)
- JTFほんやく検定(日本翻訳連盟)
翻訳専門学校や翻訳スクールで学ぶ
翻訳者を目指し、また実際に翻訳者として仕事をしていくには、外国語学部のある大学や語学教育に強い短大への進学、また翻訳専門学校や翻訳スクールで勉強するなどの進路が挙げられます。
たとえば、翻訳専門校のフェロー・アカデミーでは「リーズナブルな受講料」「仕事に繋がる充実のサポート」「マンツーマンの添削指導」などの特徴があり、効率的に翻訳者になるための勉強をすることができます。
大学で学ぶ・留学する
外国語系の大学もしくは一般大学の外国語学部では、語学の成り立ち、歴史・宗教的な背景、文化圏独自の慣習などまで広く学べるカリキュラムになっていることがあります。
また、在学中に留学の機会を得ておくと、そこで得た経験は、翻訳者として仕事をする際に役立つでしょう。
翻訳者として質のよい翻訳をするには、その言語が使われている国の文化や歴史などの背景までも知っておくことがプラスになるからです。
実際にその国に身を置き、目や耳、肌で体感できることはたくさんあります。
通っている学校に留学制度がある場合は、ぜひ利用を検討してみるのをおすすめします。
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翻訳者の将来性とキャリアプランは?
「AIが発達したら、将来は翻訳家の仕事がなくなるのでは?」翻訳家を目指す際に、不安に感じる人もいるかもしれません。
この章では、翻訳者の将来性とキャリアについて解説します。
翻訳者の仕事が将来なくなる?
翻訳者の仕事が将来なくなるほど、AIの翻訳能力はそこまで高くありません。
翻訳の仕事は、単純に単語から単語へ置き換えることではありません。
文脈に沿って適切に訳すこと、たとえば登場人物の性格や年齢に合わせた口調などを自然に、かつ高度に表現することなどは、今のAIにはできません。
100年後、となると話は別かもしれませんが、当面の間は翻訳者の仕事はなくなりませんし、むしろ最近では国際化が進み、翻訳が求められる仕事は増加傾向にあります。
一方、簡単な翻訳であればAIを活用した翻訳もできるようになっているため、今後は順調に仕事を続けられる人と、そうでない人の差がさらに大きく開いていくかもしれません。
医療や金融の専門知識を持ったり、日本語の表現力を磨いたりすれば、将来も活躍し続ける翻訳者になれるでしょう。
翻訳者は食えないって本当?翻訳者のキャリアプラン
翻訳者は、一般的な企業に勤務するよりも、フリーランスとして個人で働くスタイルを選ぶケースが多いです。
腕一本で仕事を進め、実績を積みながら翻訳者だけで生計を立てていくのはそう簡単なことではありません。
翻訳者としてのレベルをひたすら上げてストイックに仕事を受けていくことが、翻訳者の一般的なキャリアパスです。
このほかに道があるとすると、語学力を生かした別の仕事にも携わる道が挙げられるでしょう。
たとえば、翻訳者として仕事をしながら専門語学の講師をする、といった兼業での働き方です。
大学や専門学校などで講師として語学を教えたり、個人で英語の講師業に携わったりしながら、本業の翻訳に他の経験をフィードバックする人は案外少なくないようです。
また、「通訳」と「翻訳」を両立するケースもあります。
国家資格である「通訳案内士(通訳ガイド)」資格を取得しておくと、通訳として活躍する可能性も広がります。
もちろん、ひたすら翻訳一本で一生食べていこうと考えることもできます。
翻訳者になりたい!私にも目指せる?
「翻訳者を目指したいけど、今からでは遅いかな?」「私に翻訳者の適性があるかな?」
この章では、このような疑問を解決していきます。
翻訳者になるには年齢制限がある?
翻訳者という職業には、はっきりとした年齢制限はありません。
新卒で翻訳会社や映像会社などに就職するパターンもありますし、子育てでしばらく仕事から離れていたお母さんがもともと得意だった語学力を生かし、勉強をし直してフリーランスとして翻訳者の職を得る場合もあります。
また、翻訳者は人の生活と密に関係している語学を扱う仕事なので、使われる言語や題材は時代の流れとともに変わります。
常にアンテナをはり、情報を多角的にとらえ、柔軟に最新のものへとアップデートしていく必要があります。
また、翻訳の対象となる題材のジャンルによっては、今までの人生経験やコミュニケ―ション能力が生かされることも十分にあり得ます。
必ずしも年齢が若い人が好まれるわけではありません。
年齢よりも意欲があるかどうか、実力があるかどうかといったことの方が重要視される職業といえるでしょう。
企業勤務を目指す場合は年齢に注意
翻訳者は、フリーランスで仕事をバリバリしている人が多くいます。
年齢関係なく腕一本で活躍できる仕事ですが、理想の働き方によっては、ある程度、年齢のことを考えなくてはならない場合があります。
たとえば、企業に所属する「産業翻訳者」として働くケースです。
会社が高度な翻訳の能力を要求している場合、社員として雇われるのには、その業界での経験や、成熟した翻訳スキルが必要となります。
したがって、ある程度の年齢に達していることが有利になる場合があります。
もちろん、ただ年齢を重ねていればいいわけではなく、相応のスキルや経験が求められてきます。
翻訳者は即戦力になれる人材が求められがちなので、若く、翻訳者として駆け出しの場合は十分な対応能力がないとみなされてしまうこともあります。
一方、ある程度年齢が高い場合、採用時に「40歳未満であること」など年齢の制限が出てくることがあります。
一般社員の就職に年齢制限があるように、翻訳職でも年齢によって採用が制限されるケースが多く、これは契約社員や派遣の形で働くとしても同じです。
フリーランスであれば年齢関係なく働きやすい
実力が飛び抜ければ関係なし
フリーランスの場合は生活が不安定になりがちな反面、年齢のハンディは少なくなります。
クライアントも、翻訳を注文する際にいちいち翻訳者の年齢指定は行いませんので、何歳になっても活躍できるチャンスはあります。
また、翻訳で実力を見せることができれば、多少若くても認めてもらえるでしょう。
ただし、経験があるほうがクライアントは安心するので、仕事をもらいやすい面はあります。
長年翻訳にたずさわってると信用ができたり、太い人脈や「お得意先」のようなものもでてきます。
クライアントとの間で信頼が積み上がると、単価を高くしてもらえたり、優先的に仕事を回してもらえたりすることもあります。
単価を上げていく努力を
単価が低くても数をこなして生計を立てるスタイルで働く翻訳者もいます。
これは実績がない場合のひとつのやり方ではありますが、年齢を重ねていくにつれて苦しくなってくるでしょう。
若い時は何度も徹夜したり、1日中パソコンをにらみながら作業しても無理はきくかもしれません。
しかし多少年がいくと体力的に厳しくなってきます。
ただでさえ翻訳者は大量の映像や文書を見たり、家に閉じこもって運動不足になりがちだったりするため、気をつけないと健康を害しやすいです。
数をこなすだけでなく、専門性を磨き、実績がつくような仕事をしていくことも大切です。
そうすれば年齢が上がるとともに単価アップも目指せるでしょう。
翻訳者に向いている人の特徴3つ
翻訳者に適性がある人は、次の3つに当てはまります。
- 必要な情報を的確に収集できる人
- 外国の文化にも関心が強く、継続して勉強を続けていける人
- デスクに向かって長時間作業ができる人
必要な情報を的確に収集できる人
専門学術書やマニュアルなどの実務翻訳では、新しい情報に出会う機会が多々あります。
そのため、もし翻訳過程で不明なことや疑問点が見つかれば、すぐに調べるフットワークの軽さが必要です。
そのときはインターネットの情報をうのみにすることなく、文献なども利用しながら正しい情報をつかむことが重視されます。
翻訳者は言葉のプロであり、誤訳は許されません。リサーチ力は、とくに実務翻訳をするうえで必須のスキルです。
外国の文化にも関心が強く、継続して勉強を続けていける人
書籍などの文芸翻訳や、映像に字幕を出す映像翻訳では、相手の国の文化や風習、歴史や考え方をはじめ、最新の流行などまで知っていないと適切な翻訳ができません。
何気なく交わされる会話の言い回しの一つひとつに、作者の伝えたいことが隠されていることもあります。
より翻訳の精度を上げるためには、その国の言語の背景にあるものを深く理解する姿勢を忘れず、常に学んでいくことが大切です。
また、翻訳者が年収を上げていくためには、いかに効率よく翻訳できるかにかかっており、ITスキルを身につける努力も必要です。
1単語ずつ、すべてテキストで訳すという方法だけでは時間がかかりすぎます。翻訳支援ツールを適切に使いこなし、納期を短くして時給を上げていく意識が重要です。
デスクに向かって長時間作業ができる人
翻訳者の仕事は、長時間机に向かってコツコツと行う作業が大半です。
じっくり集中して正確に、適切に翻訳し、確認をして、原稿を仕上げていきます。
また、翻訳者はフリーランスで働く人が多く、収入は基本的に「成果報酬」です。そのため、年収を上げていくには、集中してたくさんの翻訳をこなしていく必要があります。
最後まで手や気を抜かず、精度を保ちながら机に向かい続ける忍耐力がないと、ひとつの翻訳をやり遂げることは難しいでしょう。
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翻訳者になるには|まとめ
翻訳者になるにあたって、決まった方法や資格はありません。
仕事の獲得方法も人によってさまざまです。
しかし、翻訳者には高い語学力はもちろん、文化や歴史的背景の理解、最新情報のキャッチアップなど継続した勉強が不可欠です。
実力主義の業界で厳しい一面もありますが、自らが翻訳した作品が世に出たときの喜びは非常に大きく、やりがいもある仕事です。