クリエイティブディレクターの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「クリエイティブディレクター」とは
新聞広告やテレビCMなど、さまざまな広告に携わる「広告制作現場の責任者」
クリエイティブディレクターは広告業界に属する仕事です。
依頼された広告プロジェクトに対し、プランナーやデザイナー、コピーライターなどのクリエイティブチームを統括し、広告が公開されるまでの制作をスムーズに進めていくのがおもな役割となります。
クリエイティブディレクターが携わる広告には、雑誌や新聞広告、テレビCMなどさまざまな種類がありますが、なかでも近年はWeb広告や動画広告の市場が拡大しています。
そのため業界全体としては景気に大きく左右される分野であるものの、Web・動画関連を中心に今後も安定した需要が見込める仕事です。
なお、所属する企業やプロジェクトの規模によっても必要なスキルは異なりますが、制作現場を監督する立場である以上、豊富な経験と知識がなければクリエイティブディレクターは務まりません。
そのためまったくの未経験からクリエイティブディレクターになる人はほとんどおらず、デザイナーやコピーライターなどで十分な実績・経験のある人が目指す職業だといえるでしょう。
「クリエイティブディレクター」の仕事紹介
クリエイティブディレクターの仕事内容
クライアントの要望を聞きながら広告制作の現場を仕切っていく
クリエイティブディレクターは、端的に言えば「広告制作の責任者」です。
魅力的な広告を作り上げるために、まずはクライアントの希望を聞き、魅力的な企画を立ち上げることからその仕事は始まります。
クライアントにヒヤリングする
まずはクライアントがどんな広告を望んでいるかのヒヤリングを行います。
クライアント自身も漠然としたイメージしか持っていないケースも多いため、どういった層に対して広告を出したいのか、その結果どんな効果を得たいのかなどを言語化していきます。
クライアントの要望を叶えられるような魅力的なアイディアを出せることも、クリエイティブディレクターにとって重要なスキルの一つでしょう。
スタッフを集めてディレクションを行う
どんな広告にしていくかの方向性が定まったあとは、広告制作に必要なスタッフを集めてディレクションを行っていきます。
具体的には、依頼内容にあわせてデザイナーやコピーライター、写真家、エンジニアなどのクリエイティブチームを取りまとめ、完成期日に間に合うようにプロジェクトを進行させていきます。
現場には多くのクリエイティブスタッフが必要となるため、それぞれのスタッフの配置や進捗管理を行うのもクリエイティブディレクターの大切な役割です。
クライアントからヒアリングした要望がクリエイティブスタッフにしっかり伝わっているかを確認しつつ、大きな効果が得られる広告を制作できるよう現場を指揮していきます。
クリエイティブディレクターになるには
まずはコピーライターやデザイナーなどで実績を積む
クリエイティブディレクターは、企業が展開する制作物全般の進捗管理を行う責任の大きい仕事です。
制作物のジャンルは雑誌広告からテレビCM、Webサイトなど多岐にわたり、それらの企画立案から完成まで、まさにプロジェクトの根幹部分を担当します。
これらの仕事を滞りなく遂行するには、広告分野に関する幅広い知識や経験、人脈などが必要となるため、未経験からクリエイティブディレクターを目指すのは現実的ではないでしょう。
そのため、まずはコピーライターやグラフィックデザイナーなどのクリエイターの実績を積んでから、クリエイティブディレクターになるのが一般的な流れです。
クリエイティブディレクターを目指す人の最初の就職先としては、広告代理店や広告制作会社、デザイン事務所などが挙げられます。
なお、クリエイティブディレクターになるのに必要な資格はありません。
大学の専攻についてもさまざまな学部出身者が活躍しており、そういった保有資格や出身学部などの要素よりも「現場での経験」/が何より求められる仕事です。
そして広告分野についての専門知識はもちろん、社会のニーズをとらえる力や人の心理を考察する力なども求められるため、できるだけ幅広い分野に興味関心を持っていることが大切です。
クリエイティブディレクターの学校・学費
広告制作で必要な知識を学んでおくと有利
クリエイティブディレクターは何より現場経験が重視される仕事であるため、学歴についてはそれほど重視されていません。
大卒や短大卒、専門学校卒などさまざまな学歴をもった人がクリエイティブディレクターとして活躍しています。
このように通わなくてはいけない学校はありませんが、広告制作で必要になるグラフィックデザインなどについて学んでおくと就職時には有利でしょう。
卒業後に目指す仕事の一つにクリエイティブディレクターを掲げている専門学校も多く、そのような専門学校の学費は1年間で100〜150万円程度が相場です。
クリエイティブディレクターの資格・試験の難易度
必須の資格はないが、実務で役立つ資格はある
クリエイティブディレクターになるのに必須の資格はありませんが、持っていると実務で役立つ資格は存在します。
ここでは、クリエイティブディレクターを目指す人におすすめの資格を3つ紹介します。
アドビ認定エキスパート(ACE)
アドビ認定エキスパート(ACE)は、アドビ(Adobe)の製品ごとに行われる認定試験です。
この資格を取ることで、PhotoshopやIllustratorといったアドビのソフトウェアを使いこなせる技術や知識を証明できます。
これらのソフトウェアはクリエイティブ職なら必ず使いますので、持っていれば仕事に役立つでしょう。
Photoshopクリエイター能力認定試験・Illustratorクリエイター能力認定試験
アドビのソフトウェアのなかでも、とくにPhotoshopとIllustratorに関するスキルをアピールしたい場合にはこれらの資格を取るとよいでしょう。
それぞれ、PhotoshopとIllustratorにおけるコンテンツ制作スキルを認定する資格です。
Photoshopクリエイター・Illustratorクリエイターのどちらの試験も「スタンダード」と「エキスパート」の2種類が設定されています。
エキスパートはスタンダードよりも難易度が高いため、まずはスタンダードの取得からチャレンジするのが一般的です。
DTPエキスパート
DTPエキスパートは、誌面のレイアウトやカラープロセス、印刷工程など、DTPに関する幅広い知識を証明するための試験です。
そもそもDTPとは、パソコンを用いてチラシや冊子などの印刷物をデザインし、制作することを意味します。
紙媒体がメインの業界でクリエイティブディレクターを目指す場合には、このDTPについての知識も押さえておく必要があります。
→参考:公益社団法人日本印刷技術協会
クリエイティブディレクターの給料・年収
本人のキャリアや能力によって年収が大きく変動
求人サービスなどの調査データから、クリエイティブディレクターの平均年収は480万円〜550万円程度になると考えられます。
クリエイティブディレクターは広告やプロモーション作成に関わる総責任者です。
仕事量も多く、また製作進行に問題があれば責任を問われる立場ですが、その分年収面はグラフィックデザイナーなどのクリエイターに比べて高くなっています。
ただし所属する広告代理店や制作会社の規模によって、もらえる金額には大きな幅があります。
また所属企業だけでなく、本人のキャリアや能力によって年収が大きく変動するのもクリエイティブディレクターの特徴です。
大手広告代理店で名前の知られているようなクリエイティブディレクターの場合は、年収1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
とはいえ、広告代理店などで最初から「クリエイティブディレクター」としてキャリアをスタートできるケースはほとんどありません。
基本的には、まずはコピーライターやグラフィックデザイナーなどのクリエイターの実績を積んでから、クリエイティブディレクターを目指していくことになります。
将来的に高収入が期待できる職業ではありますが、そこに至るまでは超えなければならないハードルがあると考えておきましょう。
クリエイティブディレクターの現状と将来性・今後の見通し
Web広告や動画広告の分野で需要が高まっている
クリエイティブディレクターの属する広告業界は、景気に大きく左右される分野です。
とくに近年は雑誌や新聞といった紙媒体を買う人が少なくなっているため、誌面広告の市場は以前よりも縮小しています。
反対に、インターネットを使った広告キャンペーンは非常に盛んです。
スマートフォンやタブレットの普及にともない、Web広告や動画広告を中心に企業の広報活動は多様化をみせています。
このようにWeb上の広告案件は増加傾向にあるため、その分野に精通したクリエイティブディレクターには今後も安定した需要が見込めるでしょう。
クリエイティブディレクターの就職先・活躍の場
広告代理店や広告制作会社、出版社などに所属
クリエイティブディレクターの就職先は、広告代理店や広告制作会社、出版社、デザイン事務所などが代表的です。
それらの企業に所属し、雑誌・新聞広告やテレビCM、各種イベントの企画から制作までを監督します。
このように企業に属して働くのが一般的ですが、なかには実績を積んだのちにフリーランスとして活躍している人もいます。
とはいえ、最初からクリエイティブディレクターとして働けることは基本的にありません。
まずはコピーライターやCMプランナーなどの仕事で10年~20年ほど経験を積み、広告制作全体を取りまとめられるだけの知識・経験を身につける必要があるでしょう。
クリエイティブディレクターの1日
クライアントや社内スタッフと打ち合わせしながら仕事を進める
ここでは、広告制作会社で働くクリエイティブディレクターの1日を紹介します。
クリエイティブディレクターのやりがい、楽しさ
広告キャンペーンの企画から完成まで関われること
クライアントからの要望に対して、どんな内容の広告を作り上げていくか、どの媒体を使うのかなど、広告キャンペーンの全体像を練っていくのがクリエイティブディレクターの仕事です。
広告の企画段階から完成まですべての過程に関われる仕事であり、その分責任も大きいですが、無事に広告キャンペーンが成功したときには大きな達成感を得られます。
また公共の場で自分が担当した広告を見ることもあり、そういったタイミングにも達成感や喜びを味わうことができるでしょう。
クリエイティブディレクターのつらいこと、大変なこと
クライアントとクリエイターの板挟みになること
クリエイティブディレクターはまずクライアントからの要望を聞き、それをもとにコピーライターやグラフィックデザイナーなどのクリエイターを取りまとめて、プロジェクトを進行していきます。
そのためクライアントとクリエイターの板挟み状態で働くことになり、両者に意見の食い違いなどが起こった際には、間にいるクリエイティブディレクターに大きな負担がかかります。
またクライアントから指定された納期を守るために、繁忙期には徹夜で仕事を進めなければいけないケースも少なくありません。
精神的にも体力的にもタフさが求められる仕事といえるでしょう。
クリエイティブディレクターに向いている人・適性
コミュニケーション能力が高い人
クリエイティブディレクターにまず求められるのは「高いコミュニケーション能力」です。
広告制作に関わるさまざまなスタッフを管理しながらスムーズに仕事を進めていくためには、各担当者とこまめに連絡を取り合い適切な指示を出していかなければなりません。
また、広告キャンペーンによってどんな効果を期待しているのかをクライアントから聞き出す際にも、コミュニケーション能力は必須となるでしょう。
そのほか「マネジメントスキル」や「リーダーシップ」も持ち合わせている必要があるなど、総合的に高い能力が求められる仕事です。
クリエイティブディレクター志望動機・目指すきっかけ
クリエイター職からキャリアアップしたい
もともとコピーライターやグラフィックデザイナーなどのクリエイター職で働いていた人が、キャリアアップとしてクリエイティブディレクターを目指すケースが多くみられます。
デザイナーなどは、ディレクターから指示された内容に沿って作業を行うことがほとんどですが、クリエイティブディレクターは広告アイディアそのものを提案していく仕事です。
そこにやりがいや面白さを見出せる人が、クリエイター職からクリエイティブディレクターへのステップアップを目指します。
またクリエイター職に比べて年収もアップする傾向があるため、その点もクリエイティブディレクターを志望するきっかけの一つでしょう。
クリエイティブディレクターの雇用形態・働き方
正社員以外の雇用形態で働く人も多い
クリエイティブディレクターの雇用形態は、必ずしも正社員とは限りません。
正社員ではなく契約社員でクリエイティブディレクターの募集をかけている企業も多く、その場合は1年間など決められた期間内のみプロジェクトに参画します。
ただし契約社員から正社員への登用制度を設けている企業も少なくないため、実力を評価してもらえれば正社員になるチャンスは十分にあるでしょう。
そのほか、さまざまな実績・経験を積んだのちにフリーランスとして活躍しているクリエイティブディレクターもいます。
クリエイティブディレクターの勤務時間・休日・生活
就職先の広告代理店や制作会社などによって異なる
クリエイティブディレクターの勤務時間や休日は、就職先の広告代理店や制作会社などによって異なります。
一般的には勤務時間は9:00〜18:00前後、休日は土日休みの週休2日制の企業が多いのですが、実際にはこの通りにいかないケースも珍しくありません。
そもそも広告業界は全体的に多忙な業界であり、クリエイティブディレクターも同様に忙しさを感じる場面は多いでしょう。
クライアントから急ぎの広告制作を頼まれるケースもあるため、そういった場合には長時間の残業が続くことも覚悟しなければなりません。
クリエイティブディレクターの求人・就職状況・需要
需要は高いが、未経験から応募できる求人はほとんどない
大手求人サイトなどを使えば、クリエイティブディレクターの募集を見つけること自体はそれほど難しくありません。
さまざまなWebサービスの成長とともに広告市場は年々伸び続けているため、それにともない広告制作を管理・進行するクリエイティブディレクターの需要も高まっています。
とはいえ、まったくの未経験から応募できる求人はほとんどないのが現状です。
多くの場合で、応募資格には「広告ディレクションの実務経験がある人」「デザイナーまたはアートディレクターの実務経験のある人」などの条件が設定されています。
クリエイティブディレクターの転職状況・未経験採用
デザイナーやコピーライターからの転職が多い
未経験からクリエイティブディレクターへ転職するケースは少なく、そもそも未経験可としている求人もほとんど見つからないでしょう。
一般的には、デザイナーやコピーライターなどのクリエイター職で実績を積んできた人が、そのステップアップとしてクリエイティブディレクターを目指します。
同じ会社内でキャリアアップする場合もあれば、別の会社の募集に応募する場合もあります。
会社の規模によって必要なスキルなどは変わってくるため、転職を考える際には仕事内容を詳細に確認しておくことが大切です。
なかなか募集が見つからない場合は、アシスタント業務から携われる求人を探してみるのも一つの方法です。
クリエイティブディレクターとアートディレクターの違い
アートディレクターはデザイン制作の「現場監督」
クリエイティブディレクターと似た仕事に「アートディレクター」があります。
アートディレクターは、Webサイトや広告、雑誌などの制作物における「ビジュアル面の責任者」です。
具体的にはグラフィック制作の企画段階から一貫して制作に携わりつつ、デザイナーなどクリエイターたちのディレクションを行い、ビジュアルを作り上げていきます。
一方クリエイティブディレクターは、広告制作全体を取りまとめる「プロジェクト全体の責任者」といえるでしょう。
イメージとしては、アートディレクターはデザイン制作の「現場監督」、クリエイティブディレクターはプロジェクト全体を見る「総監督」と表すことができます。
ただし小・中規模の会社では、どちらかの職種の人が両方のポジションを兼任しているケースも多くみられます。