民俗学とは? 大学で学ぶことや就職先は?





民俗学の概要・理念

民俗学は、地域社会で育まれてきた文化や慣習を言語化し、記録していく学問です。

人々の生活の中には、文字化されていないものの脈々と受け継がれ、わずかずつ変化している文化や慣習が存在します。

その多くは長い歴史の中で形成されてきたものですが、いつどのようなきっかけで始まったことなのか、明確になっていないものも少なくありません。

民俗学では、こうした地域社会の文字化されづらい歴史の断片を見つけ出し、その変遷を探るとともに、現代の暮らしにも受け継がれている特性を分析・研究していきます。

具体的には、地域のならわしやしきたり、言い伝えといったように、現代の暮らしの中にも受け継がれているものから、すでに失われつつあるものも含めて民俗学の研究対象となります。

こうした地道な研究によって、現代を生きる私たちの暮らしの在り方や、現代社会にもつながる課題や先人たちからの警句を見出していくのが民俗学の役割の1つと言えるでしょう。

民俗学で学ぶこと

民俗学の研究対象となる地域社会のならわしや言い伝えの多くは歴史書などに記録されているものではなく、そこで生きる人々の間で語り継がれてきた口承文化であることがほとんどです。

そのため、民俗学の研究は主にフィールドワークによって行われ、現地での聞き込みを通じて掘り起こした記録の積み重ねが基礎資料となります。

日本の各地域で伝承されたきた文化の多くは、高度経済成長期に大きくその姿を変え、中には消滅の危機に瀕しているものも数多く存在します。

民俗学ではこれらの文化を客観的に分析し、文字化して記録していく方法論について講義や実習を通して学びます。

現地調査における精度や情報量が重要な意味を持つため、とくに1・2年次には調査手法そのものを習得することが求められます。

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民俗学の大学での授業科目の例

民俗学概論

民俗学とはどのような学問で、どういった手法によって地域の文化・慣習を調査し記録していくのか、先人の研究事例を参照しながら学んでいきます。

地域文化論

特定の地域(多くは自身の生活圏)において、伝承されてきたならわしや言い伝えについて理解を深め、客観的に分析するプロセスを習得します。

地域科学論

地域社会について、哲学文学言語学心理学法学経済学社会学といった文系の領域に留まらず、化学物理学生物学といった理系の学問分野の知識も駆使して分析します。

地域調査法

フィールドワークにおいて調査を行う際に必要とされる手法や記録方法について学び、フィールドワークの実践に備えます。

民俗学のレポート・テーマの例

民俗学のレポートは、特定の地域について論じるものと、ある文化的特性や言い伝えに焦点を絞って論じるものに分けられます。

テーマは現代にも通じる馴染み深いものを取り上げたものから、言い伝えやならわしをテーマにしたものまで、多岐にわたります。

  • 現代の俗信について
  • 日本の小人伝説
  • 水神祭りの変遷
  • 昔話における「禁忌」について
  • 団地観の変遷と団地生活の実態

民俗学と関連する学問

民俗学と関連性の高い学問に文化人類学があります。

民俗学が主に日本国内の各地域を研究対象としているのに対して、文化人類学はアジアの諸地域など海外の文化を研究対象としているのが特徴です。

歴史学とも関連がありますが、歴史学が古文書や過去の建造物といった史料を元に研究するのに対して、民俗学は文字化されていない庶民的な伝承を研究する点に違いがあります。

また、民俗学においては多様な視点から地域社会を分析することが求められるため、哲学・文学・言語学・心理学・社会学をはじめ、文系・理系の区別なく多くの学問の研究手法や成果を参考にすることがあります。

民俗学を学んで就職に有利な業界・仕事

民俗学そのものは就職やビジネスに直接活かせる実学ではありませんが、フィールドワークで得た知見や経験、行動力といった能力を活かせる仕事は多くあります。

取材やインタビューを数多く経験することから、マスコミ業界の記者や編集者を目指す際には有利に働くことが考えられます。

また、対人折衝能力を発揮することが求められる営業職やコンサルタント、接客や販売といった職種も、民俗学を学んだことで得た素養を活かせる可能性があるでしょう。

学芸員を目指すのであれば、民俗学の研究を通じて体得した知識を活かして働くことができるはずです。

民俗学は実学ではないことから、就職時に有利になる要素があまりないと言われることがありますが、実際には活かすことができる知見や経験が数多くあります。

研究のプロセスで必ず人と関わる必要がある学問領域ですので、どのような仕事をする上でも必要とされる対人コミュニケーション力や折衝能力が身につくと言えるでしょう。

民俗学の知識は人生でどう役立つ?

歴史に記録されているのは時の為政者や権力者の生涯やその思想ですが、庶民が生きている地域社会にも脈々と受け継がれてきた歴史が確固として存在します。

民俗学を学ぶことを通して、先人たちの知恵や子孫に託した思いを受け止めることで、現代を生きる私たち自身の暮らしを大切にし、文化を受け継いでいく心を育むことにつながるでしょう。

また、フィールドワークを通じて未知の状況に遭遇した場合も冷静に対処し解決策を摸索する対応能力が身につくはずです。

こうした能力は汎用性が高く、これからの人生で予測不能な事態に見舞われたときでも落ち着いて対処する力をもたらしてくれるでしょう。

民俗学を通じて先人の文化や思想に触れることは、私たち自身の生き方について深く考えることに他ならないのです。

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