小売業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
小売業界とは
スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアに100円ショップなど、さまざまな業態が存在している小売業界。
一般的に年収が低いイメージを持っている人もいますが、業界全体の企業の平均年収は、500万円程度と考えられており、国内で平均的な給与といえます。
もっとも小売業界と一口にいっても、業態が多岐にわたるため、年収が高い企業と低い企業が混じっている点に注意が必要です。
もっとも企業数が多い分、市場規模も大きいため、新卒の採用人数や転職の募集の多さには期待できます。
また、業界全体の売上高も2012年から増加傾向にありますが、業界内で好調な企業と不調な企業の2分化も進んでいます。
具体的には、コンビニやスーパー、ドラッグストアは比較的好調であり、家電量販店やホームセンター、百貨店などは成長が横ばいになってきています。
小売業界の役割
小売業界の社会的な役割を一言でいうと、消費者への製品やサービスを提供することです。
小売業界と似ている業界として商社業界がありますが、商品を提供している相手が違います。
商社が相手にしているのは企業であり、小売業界が相手にしているのは、商品を最終的に使ったり、消費したりしている一般消費者です。
したがって、商品の使い心地の感想などに近いところで働くことになり、そこから消費者が求めているものを適切にそろえ、販売することが大きな役割です。
逆にいうと、上記の役割をはたしてくれる小売業の店舗が存在しない地域に、人々が生活するのは難しいでしょう。
地域に根ざす小売業界の店舗は、地域社会や地域の人々の生活の向上に欠かせない存在といえるのです。
時代とともに、求められる役割が複雑になっていますが、今後も小売業界は地域社会に欠かせない存在であり続けると考えられます。
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小売業界の企業の種類とビジネスモデル
最終的な消費者を相手にする小売業界の企業は、あつかう商品やビジネスモデルによって、種類がいろいろと多くあります。
ここでは、具体的に以下3つのビジネスモデルについて、紹介してきましょう。
・スーパーマーケット
・コンビニエンスストア
・ドラッグストア
スーパーマーケット
スーパーマーケットとは、売り場面積が1,500㎡以上であり、売り場面積の半分以上において、セルフサービス方式を採用している店舗のことを指します。
一般的には、食料品や日用品を扱っていることが多いです。
しかし、小売業界は、消費者のニーズをくんでさまざまな商品を販売するのが1つの役割ですから、輸入食品やワイン、なんらかの高級品などを販売していることも多いです。
スーパーマーケットの代表的な企業は以下のとおりです。
・株式会社イトーヨーカ堂
・株式会社東急ストア
・株式会社ヨークベニマル
コンビニエンスストア
消費者の生活に密着しているコンビニエンスストアも小売業家に属しています。
コンビニエンスストアの特徴は、比較的よく買われ、しかもすぐに消費される商品を多く取りあつかっていることです。
具体的には、加工食品や菓子類、生活雑貨などの割合が多いです。
消費者のニーズが多ければ、生鮮食品を多く取りあつかっている場合もありますが、調理器具なども取りあつかうスーパーマーケットよりも、品数は限定されています。
一方で、宅配便やATMといった生活に必要なサービスが充実しているのも特徴です。
・株式会社セブンイレブン・ジャパン
・株式会社ファミリーマート
・株式会社ローソン
ドラッグストア
他の小売業界の店舗ではあつかえない医薬品を中心に、トイレタリー商品や加工食品、飲料、化粧品などを販売しているのが、ドラッグストアです。
小売業界の中でも好調な成長が続いており、消耗品や加工食品の販売も増えてきています。
店舗がある地域によっては、日本製品のブランド力を活かして、海外からの観光客向けの商品ラインナップにしているケースもあります。
代表的な企業は以下とおりです。
・ウエルシア薬局株式会社
・株式会社コスモス薬品
・株式会社マツモトキヨシ
小売業界の職種
小売業界の職種というと、一般的には販売員をイメージすることが多いでしょう。
しかし実際には、仕入れを担当するバイヤーやプライベートブランドを企画開発する商品企画職など多くの職種が存在しますので、代表的なものを紹介していきます。
販売
特定の店舗での販売や全体的な運営を担当しているのが、販売職です。
ビジネスモデルや企業の方針によっては、品出しやレジ打ちといった業務はパートやアルバイトが担当し、社員はパートやアルバイトの管理をしているケースもあります。
小売業界に多いキャリアパスとしては、販売員から店長、地域マネージャー、スーパーバイザーなどへの昇格があげられます。
バイヤー
各店舗で販売する商品を仕入れる業務を担当しているのがバイヤー職です。
卸売業界に属する企業との折衝業務が基本的な仕事であり、仕入れる数や価格などの交渉を一手に引き受けています。
もちろん、新たな仕入先の開拓や時流にそった商品を仕入れるといった仕事も担当しています。
商品企画
プライベートブランドの企画や開発を主な仕事にしているのが、小売業界における商品企画職です。
小売業界はさまざまなビジネスモデルの企業が多く存在していますが、提供する商品のジャンルが競合しているケースも多いです。
したがって、差別化が重要になってきており、各社オリジナル商品を作り出すことに注力しています。
マーケティング
1つの店舗ではなく、展開している全店舗を対象に販売促進の計画や広告を出したり、顧客調査や競合調査をしたりするのがマーケティング職です。
販売職などと比べると、直接消費者と接する機会は少なくなるでしょうが、基本的には販売職を経験した後にマーケティング職につくケースが多いとされています。
地域ごとの顧客情報を見て、いかに売上などにつなげるかがメインの仕事になります。
小売業界のやりがい・魅力
やりがい
基本的に消費者と近いところで働くので、潜在的なニーズをくみとれることも多く、品揃えに反映させて、売上を向上させるといったやりがいがあります。
また、基本的に1つや少数の店舗のみに関わって仕事をすることになりますので、店長やスタッフと一丸となってキャンペーンなどに取り組む一体感も味わえます。
消費者とのコミュニケーションやチームでの働き方が好きなら、大きなやりがいを感じられることでしょう。
待遇
小売業界の全体的な平均年収は500万円程度ですから、大きな給与は望めませんが、決して待遇が悪いわけでもありません。
販売職だと、肉体労働の業務も多くなりますが、働き方改革で勤務時間自体は短くなっていきている企業も多いです。
一方で、平均継続年数は11年と、定年まで1つの企業で働く傾向はあまりないようです。
平均年齢も39.2歳とメーカーなどと比べると低くなっているのも念頭に置いておくべきでしょう。
将来性への期待
小売業界の売上高は成長傾向にあります。
しかし、国内の人口は減ってきている一方で、観光客が増加しているなど、相手にする消費者が変わってきています。
また、インターネットによる取引も増えてきており、高齢化の高まりや共働きの家庭が増えて、買い物に行く機会が減ってきているといった側面も出てきているのです。
マーケティングの重要性が増し、好調な企業と不調な企業の2分化がますます進んでいくと考えられています。
小売業界の雰囲気
小売業界は基本的に消費者や社内の人と接することが多いので、社交的な雰囲気の人が多い傾向にあります。
たとえば、世話好きな性格だったり、人に親切だったりする人は、小売業界に向いていることでしょう。
また、消費者のニーズをくみとって、売上につなげていくのも重要な仕事なので、流行やトレンドに敏感な人も多いです。
もちろん、根本的に商品を売ることに喜びを感じられる人が多いので、提案能力や対応力のある人も多い傾向にあります。
一方で、休日や深夜にも営業している店舗も多く、販売職になると立ち仕事も多いです。
体力勝負な面は否めませんし、人と休日が合わないといった悩みはつきものです。
また、人と接する仕事が多い以上、クレームやトラブルはさけては通れません。
逆にいうと、信頼関係を築くのが上手かったり、誠実な対応ができたりする人が多いといえるでしょう。
小売業界に就職するには
就職の状況
人手が多く必要である一方で、人件費のコストを積極的に下げていきたいと考えている業界でもあります。
実際、人件費削減へのテコ入れを常に図っている企業も多く、サービスが低下しないラインを業界全体で模索しているのです。
セルフレジといった技術を取り入れているのも人件費削減の動きの1つとなります。
もっとも、完全に販売員が店舗から姿を消すことは考えづらいですし、技術を取り入れ、普及と教育をほどこす人材も必要です。
1つの企業に定年まで務める人が比較的少ない業界なだけに、業界のトレンドに乗り遅れないように、就職後の勉強が重要になっていくでしょう。
就職に有利な学歴・大学学部
小売業界に就職するにあたって、特別な資格や経験は必要ありません。
実際、大卒はもちろん、短大卒や専門学校の卒業者も小売業界で大勢働いています。
とはいえ、日々多くの商品を仕入れて販売する業界であるため、流通や経済、販売や店舗経営、マーケティングといった知識が役に立つのは間違いありません。
したがって、経済学部や経営学部、商学部といった学部卒なら、各企業の方針や職種に合わせてアピールしたいところです。
また、就職に必須というわけではありませんが、販売士という資格を持っていると有利になるとされています。
販売士の資格は、販売と流通のプロの証であり、接客の基本から、経営計画やマーケティングなどを広くマスターしている証拠になるものだからです。
業界内での転職時にも役に立ちますので、小売業界への就職意欲が高いなら、はやめに勉強しておきたいところです。
就職の志望動機で多いものは
小売業界への志望動機で多いのは、実際に業界内で働いた時に、やりがいを感じたというものや業界内でやりたい職種があるといったものです。
直接的にせよ間接的にせよ、多くの消費者と接し、ニーズを考えるのは、小売業界に固有の特徴といえます。
したがって、消費者のことを考えて商品を提供したり、提供する商品を新たに考えたりすることにやりがいを感じたエピソードを話せると就職に有利になるでしょう。
小売業界の転職状況
転職の状況
小売業界は、離職率が比較的高い一方で、人手が多く必要なビジネスモデルなので、転職の募集は通年でされていることが多いです。
実際、厚生労働省のデータによると、2018年の新卒3年以内の離職率は37.7%であり、新卒から1つの企業に勤める人は多いとはいえない状況です。
特に、販売士の資格を持っていると、業界内での転職が容易になる傾向がありますので、時流に合わせて働き先を変えやすい業界といえます。
転職の志望動機で多いものは
小売業界は、比較的人材の流動性が高い業界です。
小売業界への志望動機よりも、なぜその企業を志望するのかといったエピソードが重要視される傾向にあります。
扱っている商材や店舗を展開している地域への思い入れ、ミッションや経営方針といったその企業独自の情報を調べ上げ、自分のエピソードと絡めた志望動機が多いです。
また、販売士の資格を持っていたり、勉強中であったりするなら、ぜひとも志望動機とからめてください。
転職で募集が多い職種
小売業界で募集が多い職種は、なんといっても人手が多く必要な販売職が多いです。
もっともドラッグストアの薬剤師といった専門的な知識や資格が求められる販売職の募集も少なくありません。
また、衣料品や家具、家電といったカテゴリの中から、1種類を専門的に扱い、高品質な商品を低価格で展開するファーストリテイリング化の流れもあります。
販売職をふくめて、小売業界の職種全体に、商材への理解と販売経験などが求められる傾向があることも覚えておきましょう。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
経歴としては、小売業界内での働いた経験が大きな武器になります。
他業界のBtoBの営業経験なども活かせなくはないですが、小売業界はBtoCの業界です。
また、多くても1日で数十人を相手にするBtoBと違って、小売業界で売上を上げる店舗には、比べものにならない人数が来店します。
したがって、小売業界の経験そのものが評価されるのは間違いありません。
もちろん、販売士の資格を所有しているなら、転職しやすいです。
小売業界の有名・人気企業紹介
イオン株式会社
小売業界で圧倒的な売上高とシェア率を誇っている企業といえば、イオン株式会社です。
多角的に事業を展開していることで有名な企業で、郊外に大型のショッピングセンターを展開することで有名です。
国内だけでなく海外にも店舗を拡大しており、マーケティング職などにたずさわれると、インパクトの大きな仕事を担当できることでしょう。
株式会社セブン&アイホールディングス
コンビニエンスストアのセブンイレブンで有名なセブン&アイホールディングスは、業界2位の売上とシェアを誇る企業です。
プライベートブランドに強い企業としても知られており、単純な販売を繰り返すだけでなく、マーケティングに力を入れたからこその業界2位だといえるでしょう。
株式会社ファーストリテイリング
アパレルショップのユニクロで有名な企業です。
国内、海外ともにユニクロが好調であり、世界No.1のアパレル小売企業を目指している企業でもあります。
EC事業にも力を入れており、今後ますますの発展が期待されています。
小売業界の現状と課題・今後の展望
競争環境
小売業界内での好調な業態の企業と不調な企業がはっきりと出てきています。
具体的には、ドラッグストアが特に好調で、百貨店などは苦戦が続いています。
特定の商材に特化している小売企業も多くありますが、上記であげた業態で取りあつかっている商品は、他の業態の小売企業と競合するものも多いです。
特定の店舗に行くための強い理由が、今後は求められていくでしょう。
最新の動向
インターネットを介した販売やセルフレジ、QRコード決済への対応などが小売業界で取り入れられている最新の動向といえます。
小売企業は、消費者のニーズをくみとって、さまざまなものを提供していくのが役割です。
したがって、今後も最新の技術やトレンドを多角的に取り入れていくと考えられています。
業界としての将来性
国内の需要は、人口の減少とともに徐々に落ちていくと考えるのが自然です。
小売業界は、ビジネスモデルはさまざまですが、どの企業も消費者が製品やサービスを買うことで成り立っています。
海外からの観光客による消費の増加が続いてはいますが、いつまで続くかは不透明です。
したがって、中長期的には海外への事業展開やインターネットや新技術の取り入れなど、多角的な取り組みが必要になっていくと考えられています。
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