化粧品業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説

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化粧品業界とは

化粧品業界に属する企業では、おもに化粧品の「企画・製造・販売」に関わる事業を展開しています。

日本の化粧品業界には大手企業から中小ベンチャー企業まで、たくさんの企業が存在していますが、その代表的な存在となるのが「資生堂」「花王」「コーセー」といった大手化粧品メーカーです。

こうした企業の多くが商品の企画・製造・販売を一貫して行なっており、複数のブランドを立ち上げています。

このほか「OEMメーカー」といい、他社のブランドのために化粧品を企画・製造し、ブランドへ卸すことを主力事業とする企業や、化粧品の原料を専門的に製造する中小規模のメーカー、また欧米など外資系の化粧品メーカーも存在します。

化粧品は人々にとっての生活必需品でもあり、安定した需要があります。

とくに、近年の日本の化粧品業界はインバウンド(訪日外国人)需要が大きく、その影響で市場は成長傾向にあります。

ただし、人口減少による国内市場の縮小が予測されるなかで各社は海外展開に力を入れ、海外での売上比率は年々拡大しているようです。

化粧品業界は女性の割合も比較的高い業界であり、国内はもちろん、世界を舞台に活躍できるチャンスも大きく広がっています。

化粧品業界の役割

化粧品業界における代表的な企業となる化粧品メーカーでは、化粧品の企画・製造・販売に関連する事業を手掛けています。

世の中のニーズや流行を見極めて、どのような商品を作るのか企画するところからスタートし、原料を組み合わせて工場で化粧品を作り出します。

化粧品は人の肌に触れるものとなるため、安全・安心な材料を使う必要があります。

また、人々の「美しくなりたい」という希望を叶えるための商品になるため、デザイン性やファッション性も求められてきます。

そのため、コストをできるだけ抑えながらも、安定して質の高い商品を作り出すための研究や調査も日常的に行われています。

完成した商品は、営業や販売などの仕事に携わる人たちによって百貨店や直販店舗などの店頭で売られたり、あるいは通販などを通じて消費者の元に届きます。

化粧品業界の企業の種類とビジネスモデル

国内大手企業

化粧品業界に属する企業は、事業内容や扱う商品の種類もさまざまで、たくさんの数があります。

その代表的な存在となるのが、「資生堂」「花王」「コーセー」といった日本の大手化粧品メーカーです。

こうした大手化粧品メーカーの多くが商品の企画・製造・販売を一貫して行なっており、複数のブランドを立ち上げています。

また、ファンデーションや口紅といった「メイクアップ商品」をはじめ、化粧水や洗顔料などの「スキンケア商品」、ボディクリームなどの「ボディケア商品」や香水などの「フレグランス商品」、このほか紙おむつや洗剤・入浴剤といった「家庭用商品」などまで、幅広い商品を取り扱うことも、国内の大手企業の特徴です。

また、化粧品メーカーの販売チャネル(どのような場や方法で販売するか)としては、「百貨店系」「量販店系」「通信販売系」「訪問販売系」などが挙げられます。

大手化粧品メーカーでは複数の販売チャネルを持ち、大きく事業展開をする企業が目立ちます。

中小ベンチャー企業や特定の部分に強みを持つ企業

規模がそこまで大きくない企業の場合、自社で工場を持たずに「原料の製造」や「企画・ブランディング」のみを行うなど、工程の一部分に特化した事業展開をする企業が目立ちます。

たとえば「アンチエイジング株式会社」や「一丸ファルコス株式会社」などは、化粧品の原料となるものを専門的に製造・販売するメーカーです。

このほか「OEMメーカー」といい、他社のブランドのために化粧品を企画・製造し、ブランドへ卸すことを主力事業とする企業もあります。

例を挙げると、「日本コルマー」という企業は、化粧品や医薬部外品に属するOEMメーカーとして国内最大手にあたります。

このほか、「東洋ビューティ」「ホシケミカルズ」「ミリオナ化粧品」といったさまざまなOEMメーカーがあります。

外資系企業

日本の化粧品業界には、「ロレアル(フランス)」「ユニリーバー(イギリス・オランダ)」「エスティ・ローダー(アメリカ)」といった有名な外資系化粧品メーカーも多数参入しています。

化粧品業界は、高い技術力やファッション性が求められる産業であり、日本や欧米など先進国での発達が目覚ましいことが特徴です。

日本でも欧米各国の外資系メーカーが市場を拡大させていますが、最近では「アモーレパシフィック(韓国)」などアジア圏の外資系化粧品メーカーも進出し、世界的に見ても伸びを見せています。

化粧品業界の職種

ひとつの化粧品を作り出すには、とてもたくさんの人の力が必要になります。

ここでは、化粧品業界の特有の職種のうち代表的なものを紹介します。

研究開発

研究開発では、化粧品製造に有効な素材や成分について研究を深めたり、さまざまな原料の組み合わせを考えて化粧品の調合を考えたりします。

色や質感だけではなく、使用感や機能性なども踏まえてベストな化粧品を生み出します。

既存製品の成分分析や新製品の開発をするための土台となる仕事に携わります。

マーケティング商品企画

市場調査をはじめとするマーケティング活動を行い、さまざまなアイデアを取り入れながら、世の中に求められる新商品を企画します。

商品コンセプトやターゲットを定め、研究やデザインなどの各部門や外注先とも連携しながら商品開発を進めていきます。

また、商品の印象を決定づけるパッケージデザインなども検討します。

生産管理

原料や資材など、製造をするうえで必要となるものの発注や調達業務を専門的に担当します。

商品の売れ行きデータを見ながら製造計画を組み、無駄のないように、かつ不足が出ないように発注をかけなくてはなりません。

おもに工場での仕事となりますが、安定的な生産ができるように管理する重要な役割を担います。

品質管理・薬事担当

化粧品は「薬事法」という法律に基づいて製造・販売されなくてはなりません。

薬事担当に携わる人は、製品の名称や広告物・販促物などについて、すべて薬事的な決まりが守られているかを厳しくチェックします。

品質担当者は、品質を保つために必要な成分分析を行ったり、万が一、販売した商品に不具合やクレームがあった場合には、その商品の成分をあらためてチェックしたりします。

美容部員(ビューティーアドバイザー)

百貨店や直販店舗などの店頭に立ち、お客さまに商品を販売する仕事です。

確かな商品知識を持っていることはもちろん、お客さま一人ひとりの肌の状態をカウンセリングしたうえで、お客さまのニーズに応えられる最善の提案をします。

化粧品業界のやりがい・魅力

安定した需要があり、海外でも活躍できる仕事

化粧品は、人々の暮らしに密接に関連する商品であり、どのような時代でも一定の需要があります。

高齢化社会が進むにつれて化粧品業界は厳しくなっていくのではないかといわれることもあるようですが、「年齢を重ねても美しくいたい」と考える人は増えており、シニア世代や高齢者向けの化粧品は順調に売れています。

今後も安定した成長が期待できるでしょう。

また、日本の化粧品は海外でも人気が高く、世界中の多くの国・地域で日本産の化粧品が日常的に使われています。

とくに近年はグローバル展開に力を入れる化粧品メーカーも増えているため、海外との取引に携わったり、海外赴任をして現地で生活をしながら働くなど、グローバルに活躍していきたい人にとっては大きなやりがいを感じられるでしょう。

女性が働きやすい業界

化粧品は、とくに女性にとってなくてはならない生活必需品だといえます。

化粧品業界で働きたいと考える女性は多いですが、いざ仕事を始めてからも、大好きな化粧品に関わっていられる毎日に充実感や満足感を覚えている人が多いようです。

また、女性が多く活躍している業界だからこそ、「女性にとっての働きやすさ」を大事に考え、福利厚生や待遇面に反映させている企業が目立ちます。

たとえば積極的に有給が取得できる体制づくりや、結婚・出産後も安心して無理なく働き続けられる制度を取り入れるなど、さまざまな工夫によって、女性もイキイキと仕事を続けながらキャリアアップを目指すことができます。

化粧品業界の雰囲気

化粧品業界では、他の業界に比べても女性の比率が大きいことが特徴です。

企業や職場によっては従業員の7割程度が女性ということもあるとされ、華やかで明るい雰囲気の中で仕事ができるでしょう。

また、美容やヘルスケアなどの分野に興味がある人が集まっており、職場では日常的に新しい化粧品の話題で盛り上がったり、流行を追いかけたりするのが好きな人も比較的多いようです。

もちろん、化粧品業界で活躍する男性も大勢います。

とくに大手の化粧品メーカーでは、研究開発・商品企画・営業・マーケティングなど、さまざまな職種に携わるチャンスがありますし、日本全国あるいは海外で働くチャンスも得られます。

規模の大きな企業になればなるほど、さまざまな職種の人と関わる機会が多くなるでしょう。

化粧品業界に就職するには

就職の状況

化粧品業界は、学生にとって根強い人気がある業界のひとつです。

大手化粧品メーカーの場合、新卒採用については毎年実施しているところがほとんどです。

会社の中核を担う存在として幅広い仕事に携わる人材は「総合職」として採用されることが多く、「大卒以上」の学歴が求められるのが一般的です。

さらに総合職では、営業・マーケティング・商品開発・企画・海外事業・広報などの職種に関わる「事務系」と、研究職や生産技術職などに関わる「技術系」の2種類の区分で採用試験が実施されています。

最近の化粧品業界は全体として成長傾向にあり、新規での人材採用が大きく減るとは考えにくいでしょう。

また、海外展開に力を入れる企業が増えていることから、広い視野を持ち、グローバルに目を向けて活躍したい人は好まれるかもしれません。

就職に有利な学歴・学部

化粧品業界へ就職し、大手メーカーの総合職として幅広く専門的な業務に携わっていきたいのであれば、基本的に「大卒」の学歴は必須といえます。

中小企業であれば高卒でも採用される可能性はゼロではありませんが、大卒の人のほうが就職しやすいのは確かです。

なお、百貨店などでお客さまに商品を販売する「美容部員」については、高卒でも積極的に受け入れている企業があります。

ただし、その場合は契約社員からのスタートということも多く、派遣社員やアルバイトとして働いている人も少なくありません。

また、化粧品業界への就職で有利な学部・学科は、就職後どのような仕事をしたいのかによっても変わってきます。

採用試験においては、事務系では「学部・学科不問」であることがほとんどですが、より専門性が求められる技術系については「応用化学」「機械工学」「電気・電子工学」など、理工学系の学部・学科出身者を対象とした採用が行われることが一般的です。

そのため、とくに技術系に進みたい場合には、大学進学までに将来やりたい仕事をイメージして進路を決定することをおすすめします。

就職の志望動機で多いものは

化粧品業界への就職を目指す人は、もともと「化粧品やメイクをすることが大好き」という人が多いようです。

普段から、店頭でさまざまな化粧品をチェックして実際に試してみたり、新商品の情報はこまめにチェックしていたりするような人もいます。

また、志望先企業のブランドや商品を愛用しており、化粧品業界のなかでも特定の企業で働きたいという思いがとても強い人もいるようです。

ただし、志望動機を実際に考える際には「ただ化粧品が好き」というだけではなく、「その会社で何がしたいのか」「仕事を通じてどう世の中に貢献し、何を世の中に届けていきたいのか」といったことまできちんと説明できる内容にすることが大切です。

化粧品業界の転職状況

転職の状況

化粧品メーカーでは、新卒者を対象とした定期採用のほか、既卒者を対象とした中途採用も積極的に行われています。

従業員数が多い企業では、定年退職などを含めた一定の退職者も出るため、年間を通じて中途の募集がかけられていることも多くあります。

すでに社会人経験があり、これから化粧品メーカーで働きたいという人にも、チャンスは十分にあるといえるでしょう。

ただし、安定した給与や待遇が期待できる大手化粧品メーカーは人気が高く、本社勤務の職種は相当な高倍率になることも多々あります。

転職を考える場合には、企業側が求める人物像と自分のスキルをしっかりと照らし合わせ、入念な準備をして試験に臨む必要があるでしょう。

転職で募集が多い職種

中途採用は新卒採用とは別枠で求人が出されることもあれば、新卒と同じ採用枠で試験が実施されることもあり、企業によって考え方が異なります。

いずれにしても、中途の場合は「営業(セールス)」「マーケティング」「経営管理」といった形で職種別で募集がかけられることが多いことが特徴です。

この背景には、できるだけ即戦力になれる人を採用したいという企業側の思いがあるようです。

転職者を対象とした求人のなかでは、自社商品を広めていく「営業」のほかに、「美容部員」の求人が比較的多く見受けられます。

美容部員は基本的に百貨店や直販店舗での勤務となり、販売員としての要素が強くなります。

美容部員の場合、事務系・技術系の職種とは異なり、高卒以上の学歴があれば応募できる場合が多く、経験もさほど問われません。

有利になる経歴やスキル

化粧品業界へ転職する際に、同じ化粧品業界での職務経験は必ずしも求められません。

ただし、中途採用の場合、基本的に一から社内教育によって育て上げることを前提とする新卒とは異なり、すでに業務経験のある人、すなわち即戦力になれる人が求められる傾向にあります。

したがって、たとえば営業職に応募するのであれば、何らかの営業経験があるとプラスの評価になるでしょう。

とくに外資系メーカーはもともと経験者を中心に採用するところが多く、セールスであればセールス、マーケティングであればマーケティングの実務経験が求められることがほとんどです。

学歴については、スキルや職務経験によって「不問」とされることもありますが、本社勤務となる職種の場合には、基本的に新卒と同様「大卒以上」の学歴が求められます。

化粧品業界の有名・人気企業紹介

資生堂

1872年創業、1927年設立。連結売上高10,948億円、従業員数38,640名(2018年度)

グループ84社(2018年12月31日現在)を持つ化粧品業界最大手企業。

海外展開を加速させており、約120ヵ国の国と地域に進出済み。海外では中国・米州・欧州・アジアパシフィックなどでの売上があり、日本以外の売上高は約60%にのぼる。

資生堂 ホームページ

花王

1887年創業、1940年設立。連結売上高15,080億円、従業員数7,655人(2018年12月期)

一般消費者に向けた「化粧品」「スキンケア・ヘアケア」「ヒューマンヘルスケア」「ファブリック&ホームケア」の4つの事業分野と、産業界のニーズに対応した「ケミカル」事業を展開する。

化粧品事業の売上高比率は、2018年12月時点で18.5%。

花王 ホームページ

コーセー

1946年創業。売上高3,033億円、従業員数7,758名(連結・2018年3月期末)

化粧品の製造販売を中心に、独自性と付加価値のある高級化粧品を強みとした事業展開を行う。

化粧品事業を大きく分けると、企業名を冠した「コーセーブランド」と、独自性の高い多彩なブランド群である「インディヴィデュアルブランド」 の2つに大別して展開する。

コーセー ホームページ

化粧品業界の現状と課題・今後の展望

競争環境(国内・国外)

ここ数年、化粧品業界はインバウンド(訪日外国人)消費によって順調な成長が見られます。

ECサイトを使った化粧品の購入も活発に行われており、販売コストを抑えながら、さまざまな消費者のニーズに合わせた豊富な商品・ブランド展開をする企業が目立っています。

現在、化粧品業界は比較的堅調であるといえますが、この先の国内市場は人口減少の影響を受け、厳しい状況になってくることが考えられます。

また、医薬品や化学メーカー、また大手スーパーマーケットなど他業界からの参入も活発に行われており、よりいっそうの競争激化が起こりうる可能性は高いです。

こうしたなか、アジア諸国などでの海外展開・新規の市場開拓を積極的に進める企業が目立ち、海外の売上比率を高めることでさらなる成長を目指す動きが出ています。

業界としての将来性

化粧品業界におけるインバウンド需要はしばらく続くことが期待できますが、一時期に比べると訪日外国人の消費の勢いが弱まっているという声もあり、今後の業界の動向には注意が必要でしょう。

価値観の多様化や高齢化社会が進む現在、ますます注目が集まっているのが「男性用化粧品(スキンケア化粧品など)」や「シニア向け化粧品(アンチエイジング化粧品など)」です。

今後は、従来の業界のターゲットであった若い女性以外の人に向けた新たな化粧品の企画・開発がさらに積極的に行われていき、そうした分野で売上を伸ばす企業が増えるかもしれません。

多くの他業界と同様に国内市場の縮小は避けられない状況ですが、人(とくに女性)が存在する以上「化粧をしない」ということにはなりにくく、業界としては景気に左右されにくい一面もあります。

厳しい競争を見越して、販売チャネルの多様化や積極的な海外展開を推し進め、順調に成長している企業も出ています。