スポーツ業界研究・仕事内容や求人状況、今後の動向を解説
スポーツ業界とは
健康志向の高まりやアウトドアブームなどの影響で、スポーツ業界の市場規模は拡大しています。
2017年から2018年にかけた主要企業12社の売上高の合計は、1兆1,407億円を記録しています。
もっとも2013年から2015年までは増加傾向が著しいものでしたが、2015年移行は成長が横ばいになってきています。
また国内においては、少子高齢化や人口減少の影響を受けて、市場が縮小しているスポーツが出てきているのが実情です。
中長期的な国内市場の将来性を憂慮して、最近のスポーツ業界は海外展開を積極的にしています。
たとえば、アシックスはここ10年で海外売上高が2倍以上になっており、ミズノも欧州やアジアを中心に海外展開に熱心に取り組んでいる最中です。
海外展開に積極的な現状から、スポーツ業界への就職や転職は、外国語のスキルや海外で働いた経験や留学経験などがあると有利になっています。
ただしスポーツ業界は企業数が比較的少なく、大手は10社程度であり、採用人数も多いとはいえないので、狭き門といえるでしょう。
もっともスポーツ用品をはじめとして、競技場の運営やヘルスケア、健康補助食品など、事業は多岐にわたりますので、自分の得意分野との接点を持てる可能性も高い業界です。
スポーツ業界の役割
スポーツ業界は、スポーツをするあらゆる人に道具やスポーツをする場所、食品にスクールなど、必要とされるすべてのものやサービスを提供する役割を担っています。
実際、野球やサッカー、ゴルフなどを楽しもうと思ったら、シューズやボールなどはもちろん、場所や設備も必要になります。
スポーツ業界がないと楽しめるスポーツは極端に少なくなることでしょう。
したがって、スポーツを楽しむだれしもが、スポーツ業界の企業による物品や場所などの恩恵を受けているといっていいでしょう。
また、プロスポーツ選手や大きなイベントは、大きな社会的な影響力があります。
人気選手の影響を受けて、スポーツウェアやスニーカーといったアイテムがファッションに取り入れられるなど、新たな需要を創造することも珍しくありません。
上記のように影響力のあるスポーツの話題を有料放送やメディアを通じて提供することで、娯楽的な側面を満たす役割もスポーツ業界の役割だといえるでしょう。
20代で正社員への就職・転職
スポーツ業界の企業の種類とビジネスモデル
スポーツ業界というと、ナイキやアディダスといったスポーツメーカーをイメージすることが多いでしょう。
しかし、同じスポーツメーカーの中でも、多くのスポーツ用品を扱う総合メーカーと、1つのジャンルの競技に特化した専門メーカーに分けられます。
また、スポーツ業界にも卸や小売店があり、中にはプライベートブランドを販売している企業もあるのです。
ここでは主要なビジネスモデルを以下の3つに分類して、スポーツ業界の企業を紹介していきます。
・総合スポーツメーカー
・専門スポーツメーカー
・卸・小売企業
総合スポーツメーカー
一般的にスポーツメーカーの企業と聞いてイメージされる企業の多くが、総合スポーツメーカーといっていいでしょう。
野球やサッカーといったメジャーなスポーツに必要な製品を自社で作っています。
基本的に総合スポーツメーカーは大手企業ですので、海外ブランドの製品をOEMで販売したり、海外展開に積極的だったりするのも特徴的です。
代表的な総合スポーツメーカーとしては、以下の企業があげられます。
・株式会社アシックス
・ミズノ株式会社
・株式会社デサント
専門スポーツメーカー
テニスや卓球、ゴルフといった特定のスポーツに特化して商品を製造販売しているのが、専門スポーツメーカーです。
専門性のあるスポーツにおいては、競技に必要なアイテムからウェア、情報誌などまで広く網羅しており、独自の技術も確立しているため、新規参入の障壁を高くしています。
専門にしているスポーツの競技人口が安定している間は業績も安定しますが、スポーツにはブームがあるので、需要を創造する役割も担っています。
専門スポーツメーカーとしては、以下の企業があげられます。
・株式会社シマノ
・マジェスティ ゴルフ株式会社
・株式会社タマス
卸・小売企業
スポーツ業界における卸・小売企業は、国内外のスポーツ用品を仕入れて販売しており、プライベートブランドを確立している企業もあります。
大規模な店舗を多数展開する企業から、小規模ながら専門性を持って特定のスポーツ用品を集めて販売する企業に分けられるのも特徴です。
なおミズノのように、製造から卸、小売までを自社で一貫して行っている企業も中にはあります。
スポーツ業界の卸・小売企業としては、以下が上げられます。
・株式会社エスエスケイ
・ゼビオホールディングス株式会社
・株式会社アルペン
スポーツ業界の職種
スポーツ業界は、メーカーや小売が中心ではありますが、スクール事業なども運営しているため、インストラクターといった職種もあるのがユニークです。
業界で独特なものとメインになる職種をふくめて、以下の職種を紹介していきましょう。
・販売職
・スポーツ用品の企画開発職
・インストラクター
販売職
基本的に、メーカーや小売が中心の業界ですので、販売職が多い業界となります。
特に、小売店で働く場合は、同じジャンルの商品でもメーカーごとに特徴が違いますので、多くの知識をみにつける必要があるでしょう。
また、1つのスポーツの中でも戦略やスタイルに流行がありますので、日々勉強が必要です。
スポーツ用品の企画開発職
ラケットやボール、ウェアにシューズといった各スポ-ツ用品の企画と開発を担当する職種です。
各スポーツの専門知識はもちろん、業界の動向にそったデザインや発想が求められる職種でもあるので、根本的なスポーツへの興味が問われます。
さらに競技者は成績を伸ばせたり、勝てたりする製品が求めていますので、企業の行く末を担う重要な職種でもあります。
インストラクター
他業種のメーカーなどに少ない職種として、スポーツインストラクターが上げられます。
特定のスポーツやトレーニングを教えること自体が仕事になりますので、体育大学や専門学校を卒業した人が多いです。
なお昨今は健康志向の高まりから需要が伸びており、さまざまな人がジムやスクールに来る傾向が強まっています。
スポーツや体に対する専門知識だけでなく、どんな人とでもコミュニケーションが取れる能力なども必要です。
スポーツ業界のやりがい・魅力
やりがい
プロスポーツ選手になれずとも、生涯を通してスポーツに携わっていきたいという人にとっては、インストラクター職などは大きなやりがいを感じられることでしょう。
また、最新の技術や素材、理論を使って、より成績を伸ばしたり勝率を上げたりすることを日常的に目指している業界です。
日々より良いものを作って、結果を確認し、さらに良いものを作っていくという物作りが好きな人に、スポーツ業界の開発職は向いています。
待遇
スポーツ業界の主要企業の平均年収は、おおよそ570~580万円程度で推移しています。
飛び抜けて利益率の高い商品があるわけではありませんが、海外展開や国内での市場規模が安定していることから、平均よりもやや高めの給与になっているようです。
特に業界大手であるシマノやアシックスといった企業は、平均年収が700万円や800万円を超えており、メーカーや小売としては良い待遇が期待できます。
将来性への期待
国内の市場規模は横ばいですが、健康志向の高まりからフィットネスの需要が増しています。
フィットネスジムや健康食品、関連商品などを中心にスポーツ業界の規模は微増していくと考えられています。
特に、消費カロリーやGPS機能が装着されたスマートウォッチは好調で、スポーツ愛好者のニーズを捉えた商品を今後も出せれば、業界の未来は明るいでしょう。
スポーツ業界の雰囲気
基本的に、なにかを販売して利益をあげるビジネスモデルですので、コミュニケーション能力が高い人が集まっている傾向にあります。
また、開発職などでも実際に商品を使う選手と二人三脚で商品を作っていくことも多いですし、インストラクター職などは特にコミュニケーション能力が問われます。
したがって、社交的な人が業界内に残る傾向にあり、明るく活気のある雰囲気の企業が多いです。
スポーツ業界に就職するには
就職の状況
スポーツ業界に新卒で就職するのは、比較的難易度が高いとされています。
というのも、スポーツが好きで仕事にしたい人が大勢就職を希望するにも関わらず、採用人数は多くないからです。
たとえば、業界大手で有名企業でもあるミズノ株式会社の2020年度の採用予定人数は、31~35名です。
従業員数は5,000名をこえていますから、採用人数の少なさが感じられることでしょう。
また、販売やスポーツ施設の運営、各種スクールなど事業の数が多いので、自分自身の強みと希望職種を結びつけてアピールする必要があります。
狭き門の中に、優秀な人が大勢募集してくる業界だと覚えておくべきでしょう。
就職に有利な学歴・大学学部
スポーツ業界の就職に有利な学歴や学部は、なんといっても体育学部やスポーツ関連の学部です。
もちろん、研究開発職などでは理系学部が優遇されるといった例外もあります。
しかし、基本的にスポーツとの接点がなかったり、好きではなかったりする人が、就職を目指すのは難しいです。
また、販売職や営業職での就職を目指すなら、スポーツショップでのアルバイト経験などが優遇される傾向もあります。
また、スポーツで利益を上げるのがスポーツ業界の企業です。
単純にスポーツだけをやってきているだけでなく、経営やマーケティング、販売の目線を養っていれば、評価してもらえます。
就職の志望動機で多いものは
スポーツ業界の志望動機で多いのは、スポーツに対する熱意やどのようにスポーツを盛り上げたいかなどをアピールするものです。
あくまでも競技者としてではなく、裏方としてスポーツをする人たちを支えるのが、スポーツ業界のミッションなことを忘れてはいけません。
どのようなスポーツをしてきて、今後はどのように関わりたいかや、スポーツ界隈を盛り上げていくために企業で何をしたいのかを志望動機に盛りこんでください。
たとえば、アルバイトでしていたインストラクターで、スポーツの楽しさを共有することにやりがいを感じ、正社員として本腰を入れて仕事にしたいといった志望動機が代表的です。
スポーツ業界の転職状況
転職の状況
新卒の募集人数が少ないスポーツ業界は、中途採用の募集も多いとはいえません。
求人がない時期もありますので、スポーツ系のセミナーや交流会に参加しながら知識を深めたり、人脈を築くきっかけを持ったりしながら、中長期的に取り組むべきでしょう。
また、スポーツ業界専門の転職サイトやエージェントサービスもありますので、ぜひ活用してください。
転職の志望動機で多いものは
スポーツ業界が狭き門であることは、企業の採用担当者もよくわかっていますから、元々スポーツ業界で働きたかったという熱意は基本的にアピールしたいところです。
一方で、スポーツ業界で日々行われているのは、スポーツでははなくスポーツビジネスなことを忘れてはいけません。
スポーツへの根本的な熱意と、社会人として何ができ、スポーツ界隈にどうやって貢献するのかを志望動機にまとめるといいでしょう。
転職で募集が多い職種
中途採用で多いのは、営業や販売職などが中心です。
最近では、健康志向の高まりからフィットネスジムの需要が堅調で、トレーナーやジム運営などの職種の募集もあります。
もっともスポーツ専門番組やメディア製作者、ライターなど、職種が多岐にわたる業界でもありますので、常にアンテナをはって応募できそうな職を探すのも重要です。
どんな経歴やスキルがあると転職しやすいか
インストラクター職などに転職したいなら、資格が必要になることも多く、過去にアルバイトなどで実務経験があるのが望ましいです。
また、基本的には商品やサービスの販売で利益を上げているビジネスモデルが多いので、販売や運営、海外への販路拡大などをしてきた経歴は歓迎されます。
職種自体は多いので、スポーツへの想いと利益を上げるまでの筋道に、自分のスキルや経験が活かせないか考えてみるといいでしょう。
スポーツ業界の有名・人気企業紹介
株式会社アシックス
日本を代表する大手総合スポーツメーカーです。
シューズに強みを持っている企業で、特にマラソンやバレーボールでは高いブランド力をもちます。
ちなみに、海外の売上比率が高く、フローバル企業としても知名度があります。
ミズノ株式会社
幅広いジャンルのスポーツ用品やウェアを手掛けている総合スポーツメーカーです。
とりわけ野球用品においては圧倒的なシェアを誇っているのが特徴です。
また、長年にわたってスポーツ振興に力を注いでいる企業でもあります。
株式会社デサント
大阪市に本社を置くスポーツウェア専門の企業であり、2017年から2018年の売上高は、1,411億円を誇り、業界全体でも3位です。
ウェアを提供するスポーツのジャンルは多く、アジアや北アメリカにも進出しています。
ちなみに、2010年のバンクーバーオリンピックの日本選手公式スポーツウェアを手掛けた企業でもあります。
スポーツ業界の現状と課題・今後の展望
競争環境
国内市場は、少子高齢化や人口減少から徐々に縮小すると考えるのが自然なので、海外での競争が主流になっていくと考えられています。
実際、野球やサッカーといったメジャーなスポーツでも少子化の影響が見てとれる現状です。
海外のアディダスやナイキ、アンダーアーマーといった有名ブランドと、いかに戦っていくかが、スポーツ業界全体の課題になっていくでしょう。
最新の動向
国内外のフィットネス人気が高まっており、スマートウォッチや体組成計などで新製品が活発に展開されています。
背景には健康志向の高まりがあり、消費カロリーの測定やスマートフォンと連携しての体の状態の変化や睡眠状態の記録などができるようになっています。
上記のように、単純に成績や勝率を上げるといった需要以外を掘り起こしていく傾向は、今後も続くでしょう。
業界としての将来性
スポーツをする人がいなくなる状況は考えづらく、業界の需要は今後も安定してあると考えられます。
また、競技以外のスポーツであるフィットネスなどに取り組む人が増えているのも追い風です。
しかし、中長期的にみると国内市場は、人口減少と少子高齢化のあおりを受けます。
海外メーカーといかに戦い、シェアを獲得できるかによって、業界全体の規模や労働者数が決まっていくことでしょう。
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