会計専門職大学院とは

公認会計士を目指す人にとって、資格試験に向けた勉強にはさまざまな方法があります。

専門職大学院として2003年より設置が開始された会計専門職大学院もそのうちの1つです。

会計専門職大学院ではどのようなことを学べるのでしょうか。

また、公認会計士専門学校とのちがいはどういった点にあるのでしょうか。





会計専門職大学院とは?どんなことを学べる?

会計専門職大学院は会計分野を中心に展開される専門職大学院で、「会計大学院」「アカウンティングスクール」とも呼ばれます。

会計のプロフェッショナルを養成する大学院と位置づけられていますが、具体的にどのようなことを学べるのか気になっている人もいるはずです。

会計大学院で学べることや公認会計士国家試験を受験する際にどういった影響があるのかを確認しておきましょう。

会計専門職大学院で学べること

会計専門職大学院は国が公認会計士の増員を目標に掲げたことに伴って創設されました。

そのため、公認会計士国家試験の合格を目指すためのカリキュラムとなっており、会計4分野(財務会計・管理会計・監査・税務会計)を学ぶことを主眼に置いています。

近年は会計監査のグローバル化が進み、国内での会計監査に留まらない専門的な知識を持つ会計士の養成が喫緊の課題といわれています。

また、企業の組織再編やM&Aなど会計の知識が求められる裾野が広がっており、より広範かつ高度な知識を持つ会計士が求められています。

会計専門職大学院では、こうした時代情勢に対応できる公認会計士を目指すにあたって必要な知識を学ぶことができます。

修了者は公認会計士国家試験の一部が免除される?

会計専門職大学院が創設された背景には公認会計士法の改正があります。

2003年に公認会計士法が改正されたことにより、公認会計士国家試験において短答式試験(財務会計論・管理会計論・監査論の3科目)が免除されます。

《公認会計士国家試験の試験科目》

試験方法 必修・選択 科目 配点
短答式 必修 管理会計論 100点
財務会計論 200点
監査論 100点
企業法 100点
論文式 必修 会計学 300点
監査論 100点
企業法 100点
租税法 100点
いずれか
1科目選択
経営学 100点
経済学 100点
民法 100点
統計 100点

試験科目が多く、求められる知識の幅が広範囲にわたることで知られる公認会計士国家試験において、短答式試験の必修3科目が免除されるのは受験生にとって大きな利点といえます。

会計専門職大学院と公認会計士専門学校のちがい

会計専門職大学院は公認会計士の養成を目的としているとはいえ、国家試験対策のみに特化した授業が行われているわけではありません。

会計の理論について体系的に学び、理解を深めることも重要視されています。

一方、公認会計士専門学校では国家試験合格を目的とし、試験対策に特化した授業を行っています。

そのため、会計専門職大学院に通いつつ会計専門学校にも通う、いわゆるダブルスクールで受験勉強にのぞむ人も数多くいます。

公認会計士専門学校のみに通って試験対策を進めることも可能ですが、会計専門職大学院を修了した場合とは異なり、短答式試験が免除されることはありません。

会計全般に関する専門知識を身につけたい場合は専門職大学院、試験対策に特化したい場合は専門学校と考えていいでしょう。

会計専門職大学院の入試と学費

会計専門職大学院に入学する場合、入学試験を受けて合格することが条件となります。

入試ではどのような科目が出題されるのでしょうか。

また、他の専門職大学院と同様、入学・通学するには学費を納入する必要があります。

会計専門職大学院の入試と学費についてまとめました。

会計専門職大学院入試で行われる試験

会計専門職大学院の入試は、受験する専門職大学院によって異なります。

最も多い試験の方式として、口述試験(面接)による審査が挙げられます。

専門職大学院によっては学力試験が課されることもあります。

学力試験では、会計学の基礎的な知識が身についているかが問われる場合と、会計士としての素養を判断するための小論文試験が行われる場合があります。

専門職大学院によっては英語力やIT能力を重視した入試方式が選べることもあります。

他にも、すでに公認会計士国家試験を受験したことがあり、短答式試験に合格している人を対象としたコースが設置されている専門職大学院もあります。

いずれにしても、会計専門職大学院で会計のスペシャリストを目指す上で必要な学力や素養が身についているかどうかが入試では問われます。

会計専門職大学院の学費

国立大学の会計専門職大学院の学費

国立大学の経営専門職大学院は北海道大学大学院と東北大学大学院の2校です。

それぞれの専門職大学院の学費(初年度)は以下の通りです。

北海道大学 東北大学
入学金 282,000円 282,000円
授業料(年間) 535,800円 589,300円
初年度納入金 817,800円 871,300円

私立大学の会計専門職大学院の学費

私立の会計専門職大学院の場合、専門職大学院ごとに学費が異なります。

専門職大学院によっては3年、4年といった長期履修コースを設けている場合もあります。

長期履修コースは在籍期間が長くなる代わりに年間の授業回数が少ない傾向があるため、年間の授業料は2年制の場合よりも抑えられているケースがあります。

ただし、在学中に納入する学費の総額は2年制の場合よりも多くなりますので、修了までにかかるトータルの学費を計算した上で履修するコースを決めることが大切です。

《私立大学の経営専門職大学院 学費(初年度)の一例》

青山学院大学
2年制
関西大学
2年コース
関西大学
長期履修コース
(4年制)
入学金 290,000円 260,000円 260,000円
授業料(初年度) 1,120,000円 1,320,000円 744,000円
授業料(次年度以降) 1,120,000円 1,350,000円 742,000円
その他費用 320,000円 10,000円 10,000円
初年度納入金 1,730,000円 1,590,000円 1,014,000円

会計専門職大学院で奨学金は利用できる?

会計専門職大学院においても、一般的な大学や大学院と同様に日本学生支援機構の奨学金制度を利用することができます。

専門職大学院独自に奨学金制度を設けていることもありますので、志望する大学院に問い合わせておくといいでしょう。

また、社会人が経営専門職大学院で学ぶ場合、要件を満たすと受給できる専門実践教育訓練給付金を受給できる大学院もあります。

ただし、すべての会計専門職大学院が該当するわけではありませんので、志望する大学院が専門実践教育訓練給付金の対象となっているか事前に確認しておきましょう。

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会計専門職大学院に進学するメリットと注意点

公認会計士国家試験は合格率が1割前後と、合格して公認会計士になるのは狭き門です。

国家試験対策に特化した専門学校も数多くある中、会計専門職大学院に進学するメリットはどのような点にあるのでしょうか。

また、会計専門職大学院に進学するにあたって注意しておくべきのはどんな点なのでしょうか。

会計専門職大学院に進学するメリット

会計専門職大学院に進学する最大のメリットは、修了すると公認会計士国家試験で短答式試験が免除される点にあります。

短答式試験に向けた勉強は企業法に絞ることができるため、合否を分けると言われる論文式試験の勉強時間をより多く確保することができます。

また、専門職大学院では専門学校よりも体系的に会計理論を学び、深い理解を得ることができますので、公認会計士として働き始めてからも知識が役立つ場面は必ずあるはずです。

もし将来的に公認会計士ではなく別の道を選ぶことになったとしても、専門職大学院修了という学歴と、会計学修士(専門職)としての学位は残りますので、学んだ期間は無駄にはなりません。

このように、専門職大学院として公的に認められた機関で学ぶことにより、知識の上でも経歴の上でも得られるメリットがあります。

会計専門職大学院に進学する際の注意点

会計専門職大学院での学びが必ずしも公認会計士国家試験への合格に結びつくわけではないと指摘されることがあります。

専門学校のように試験対策に特化した授業が行われているわけではないため、国家試験突破に直接的には寄与しない授業も受ける必要があります。

現に、会計専門職大学院に在学中の人が公認会計士専門学校にも並行して通っているケースは決してめずらしくありません。

専門職大学院に通いながら専門学校も通うとなると、学費の負担は相当な額にのぼります。

このように、会計専門職大学院に通ったとしても、国家試験に合格するには試験対策を別途講じる必要があることを理解しておく必要があります。

この記事のまとめ

公認会計士は士業の中でも人気の高い資格の1つです。

同時に、国家試験の合格率は1割前後と決して簡単に取れる資格ではありません。

会計専門職大学院を修了したとしても、必ずしも国家試験に合格できるわけではありません。

ただし、会計専門職大学院に通うことで会計理論への理解が深まり、将来のキャリアに生かせる知識を得られるのは間違いないでしょう。

公認会計士を目指す人は、会計専門職大学院で学ぶことを選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

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