調香師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「調香師」とは
香料を組み合わせ、身の回りのあらゆるものに使われる、新たな「香り」を作り出す。
調香師とは、数千種類にもおよぶ香りの原料を組み合わせて、新しい香りを作る専門職です。
調香師の種類を大きく分けると、食品の香料(フレーバー)を作る「フレーバリスト」と、化粧品など、食品以外の香り(フレグランス)を作る「パヒューマー」があります。
調香師として働くうえで必須の資格はありません。化学や薬学系の大学、もしくは調香を扱う専門学校を卒業後、香料会社や化粧品メーカー、食品会社などに就職するのが、この職に就くための一般的なルートです。
研究職の一種に分類され、専門職として給料・年収は比較的高水準ではあるものの、調香師としての求人は決して多くありません。
とくに日本ではパヒューマーの求人が少なく、フレーバリストが大半を占めているのが現状です。
しかし、最近では香りのついた多種多様な製品が登場し、パヒューマーの新たな活躍の場が生まれています。
「調香師」の仕事紹介
調香師の仕事内容
食品や化粧品などに使用する「香り」を作りだす
調香師とは、香りの原料を組み合わせて新しい香りを作りだす、香りのスペシャリストです。
約6000種類以上あるとされる香料を組み合わせて、食品や日用品、化粧品などの各製品のターゲットやコンセプトなどに応じた最適な香りを作ります。
調香師の仕事では、香料そのものの知識はもちろん、その基本となる化学的な知識、芸術的センスや感覚、時代のニーズや流行を読む力などまで幅広く求められます。
食品メーカーや化粧品メーカー、香料の専門会社などを中心に活躍しており、「研究職」の一種に分類されることが多くなっています。
フレーバリストとパヒューマー
調香師の種類は、大きく2つに分けられます。
・フレーバリスト:口に入るものの香りを調合する(食品、飲料、歯磨き粉、お酒、タバコなど)
・パヒューマー:口に入らないものの香りを調合する(化粧品、石けん、シャンプー、入浴剤、芳香剤など)
フレーバリストは、扱うものの種類が多岐にわたるため、お菓子やタバコなど、ジャンルに分かれて担当します。
口に入る香料を扱うだけに、安全性についても十分に考慮しなくてはなりません。
一方、パヒューマーは、人々の暮らしに不可欠な洗剤や化粧品など、香りそのものを特徴とする商品も多数扱います。
調香師になるには
大学で化学や薬学の勉強をすることが近道に
調香師になるための一般的なルートは、高校卒業後に大学などで化学系の勉強をして、食品会社や化粧品会社、香料会社などへの就職を目指すことです。
必ずしも高い学歴が求められるわけではありませんが、香料に関連性の高い分野である「化学」または「薬学」の勉強をしておくと、就職時には有利になりやすいです。
人によっては大学卒業後、修士・博士課程まで進み、より高度な専門性を身につけて各企業の研究職として就職を目指します。
また、最近では習得した香りに関する知識を生かして、アロマやハーブ関係のショップに勤務する人も増えています。
調香の本場フランスへ留学する道も
調香師のなかでも、海外の一流香水メーカーでパヒューマーとしての仕事をしたい場合は、海外留学をする道も考えられます。
調香の本場はフランスであり、現地では世界的に活躍しているパヒューマーを多く輩出しています。
簡単な道のりではありませんが、日本での求人の大半はフレーバリストであるため、本気でパヒューマーを目指すのなら考えてみるとよいでしょう。
調香師の学校・学費
大学や大学院で化学・薬学を専攻する
日本では、調香師の多くが、食品メーカーや化粧品メーカーの研究部門にて働いています。
そのような場では、調香師には香料に関する有機化学や分析化学などの化学的知識が求められます。
このため、大学または大学院の理系分野に進学し、なかでも農芸化学・生物化学・薬学などを専攻すると有利になるでしょう。
調香を学ぶことのできる専門学校もごく一部ありますが、企業の研究部門の求人は「大卒以上」が募集要件になっていることが多いため、最低でも大学に進学することが推奨されます。
大学院まで進んでさらに専門性を深め、大手企業の研究職として就職する人もいます。
独学で調香を学ぶのは難しい
調香や香りの種類などに関して、ある程度の基礎知識を書籍やインターネットなどを活用しながら、独学で習得することは可能です。
しかし、調香師の業務に必要な数千種類の香りを記憶して、自由に組み合わせるための技術や知識を習得するのが大変なことです。
まず数千種類の香料を実際に手に入れるのも一苦労ですし、専門家からのアドバイスや指導を受けられないのもデメリットといえます。
また、調香師は求人そのものが決して多くないため、大学で専門的に学んでいる人のほうが優先的に採用されます。
現実的には独学だけで調香師を目指すのは厳しいと考えておいたほうがよいでしょう。
関連記事調香師になるにはどんな学校に行けばいい? 大学・専門学校・留学のルートを解説
調香師の資格・試験の難易度
調香師に国家資格はないが、薬剤師の資格が役立つことも
調香師そのものの国家資格や公的資格は存在しないため、たいていは食品会社などへの入社後に、研修や実務経験を通して調香師としてスキルアップを目指していきます。
ただ、調香師として働くうえで役立つ資格はいくつかあります。
たとえば「薬剤師」の資格は、化粧品会社などに就職する際には大きな武器となるでしょう。
難易度の高い国家資格であるため、専門的な知識を習得していることを対外的に示しやすいのも魅力です。
調香に関連する民間資格もある
調香に関連する民間の資格に「日本調香技術師検定」があります。
こちらは2010年からスタートした新しい検定資格で、一般の人でも受検が可能なため、今後注目を集めていくかもしれません。
このほか「臭気判定士」という嗅覚に関する資格や、「アロマテラピー検定」などアロマ系の資格、また食品メーカーなどでは「栄養士」「調理師」「食品衛生責任者」などの資格も生かせることがあります。
基本的には、業務をスタートしてから必要な資格を得ていく人が多いようです。
調香師の給料・年収
理系の専門職としてやや高めの給料・年収が見込める
調香師が食品メーカーや化粧品メーカーなどの企業に勤める場合、平均年収は400万円~550万円ほどと考えられます。
理系の大学や大学院を卒業後、専門的知識を備えた人材として研究開発部門に配属されることが多いため、同じ会社の営業職などと比較すると、基本給はやや高めに設定されていることが多いです。
また、調香師を雇用する企業は大手が中心であるため、社会保険や各種手当をはじめとする福利厚生が充実しており、安定した生活を送りやすいでしょう。
専門職としての知識向上のために、外国語教育や各種セミナー、研修などさまざまなサポート体制が用意されている会社も多く、場合によっては海外留学の機会もあるかもしれません。
同じ会社で長く働き続ける人が多い
調香師は、社内における研究職の一種として、じっくりと腰を据えて仕事に取り組んでいくことが特徴です。
もともと一人前になるには時間がかかる職業ということもあって、頻繁に転職を繰り返す人はあまり多くありません。
勤続年数を重ね、社内で実績を積んだり、役職に就いたりすることで収入アップを目指すのが一般的です。
誰にでも簡単にできる仕事ではないため、十分な経験を積んで優秀な調香師として評価されれば、非常によい待遇で働ける可能性があります。
調香師の現状と将来性・今後の見通し
日用品の香りを開発する調香師の需要が拡大
最近ではアロマブームもあり、香りのついた生活用品が多く登場し、人気を集めています。
シャンプーやクリームなどのボディケア用品はもちろん、洗剤や柔軟剤、芳香剤など、さまざまな香りのバリエーションが求められています。
日常の中でも香りによって癒やしを求める風潮が高まっていることから、従来の食品・飲料のフレーバーはもちろん、生活に密接した香りづくりに携わる「フレーバリスト」の活躍の場ははますます広がるでしょう。
一方、日本国内では「パヒューマー」として、香水やフレグランスを作る調香師の仕事のの需要は非常に少ないのが現状です。
このような職を志望する場合は、フランスなどの海外に出ていくことを目指すほうが活躍できるチャンスが多いのが実情です。
調香師の就職先・活躍の場
食品メーカーや化粧品メーカー、香料会社などで活躍
調香師のおもな活躍の場は、食品・飲料メーカー、化粧品メーカー、また香料の専門会社です。
食品・飲料メーカーでは、フレーバリストとして食品や飲料、歯磨き粉、お酒のほか、薬やタバコの香りを作りだします。
香りとはいっても、人の口に入る製品づくりに関わることから、安全性にも十分に考慮したフレーバー開発をすることが求められます。
化粧品メーカーや香料専門の会社では、パヒューマーとして化粧品や石けん、シャンプー、入浴剤、洗剤、芳香剤などの香りを生み出します。
最近では、多様な種類の香りを特徴とした製品の開発が活発化しており、安定した需要はあるものの、調香師全体としては求人があまり多くありません。
このほか、香りの知識を生かしてアロマ関連のショップで勤務したり、独立してクライアントから依頼を受けて新しい香りを生み出したりする人もいます。
調香師の1日
研究所での開発業務が中心となる
現在、日本で活躍する調香師のほとんどは、食品メーカーや飲料メーカーにおいて、自社製品の香料を扱う「フレーバリスト」です。
研究開発部門に所属することが多く、日勤中心で、毎日同じような時間帯で働きます。
香料を扱う専門会社では、他社から委託されて調香を行うため、打ち合わせや出張が入ることもあります。
ここでは、食品メーカー勤務の調香師のある1日を紹介します。
関連記事調香師の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
調香師のやりがい、楽しさ
研究者として香りの世界を突き詰めていく魅力
調香師は、数千種類にも上る香りの原料を組み合わせて、「香り」という目に見えないものを開発します。
そこに絶対的な正解はなく、また香りに対する評価はおのおのの感覚によっても異なります。
非常に難しい挑戦ではありますが、だからこそ、この世界を探究していくおもしろさがあるといえます。
また、調香師は企業において「研究者」としての立場で仕事をすることが多く、腰を据えてじっくりと日々の業務に取り組みやすいです。
業務を通じて調香に関する知識が蓄積され、その経験を生かしてまた新しい調香をしていくことに、やりがいを感じている調香師が多くいます。
また、メーカーでは自分が手掛けた製品が最終的には市場に出ていくため、完成品を手にしたときの喜びも実感できます。
調香師のつらいこと、大変なこと
常に嗅覚を研ぎ澄ませなくてはならない
調香師として働くためには、まず香りに関する知識を習得することが必須ですが、加えて、最も重要になってくるのが自らの嗅覚です。
嗅覚は体調に大きく影響されるため、調香師は常に体調管理に気を配る必要があります。
風邪や寝不足、疲労などで体調を崩してしまうと、嗅覚を鈍らせて正しい香りが調香できなくなってしまいます。
また、調香師が生み出す新しい香りは目に見えるものでもなく、「これ」という正解がないものでもあります。
実際にさまざまな調合を試しながら、納得のいく香りを生み出していく奥深さと難しさを感じる日々になるでしょう。
調香師に向いている人・適性
香りに対して敏感で、記憶力があること
調香師として働くには、まず香りに敏感であることが必要です。
数千種類以上あるといわれる香料を嗅ぎ分けて、微妙な調合によって「良い・悪い」を判断していくためには、人並み外れた嗅覚が欠かせません。
なお、もともと嗅覚の機能に問題がない人であれば、嗅覚は長年の訓練によって育てていくことが可能といわれています。
調香師を目指す人は香りを嗅いでその成分を当てる訓練をするため、もともと香りに敏感で、多種多様な香りを覚えることに関心のある人に向いている仕事といえます。
また、調香の際には過去に自分が得た香りの知識をもとに香料を組み合わせていくことも多いため、記憶力に自信がある人も適性があるでしょう。
加えて、なにもないところから香りを生み出すクリエイティブな要素もあるため、芸術的な感性や創造力を備えている人も調香師向きです。
調香師志望動機・目指すきっかけ
香水やフレグランスから興味をもつ人が多い
調香師を目指すきっかけとしてよく聞かれるのは、もともと香水やフレグランスが好きで、さまざまな種類の香りに興味をもったというケースです。
また、学校で化学に関する勉強をするうちに香料に触れる機会があり、「自分でも香りを作り出してみたい」と思ったことを機に調香師を目指す人もいます。
最近では、シャンプーや洗剤、柔軟剤など、身の回りの生活用品にも個性的な香りがついているものが多いため、日常生活のなかで自然と香りに関心がむく人も増えているようです。
ただし、いざ調香師としての就職となると、日本国内で調香の仕事ができる場は限られているため、どうしても倍率が高くなる傾向にあります。
「香りが好きだから」から一歩踏み込んだ、強い志望動機を考えていく必要があるでしょう。
調香師の雇用形態・働き方
企業では正社員として研究開発部門に所属することが多い
調香師の主要な就職先としては、化粧品メーカーや食品メーカー、あるいは香料会社の研究開発部門が挙げられます。
多くの企業では専門的な知識をもつ研究職の一種として採用されるため、雇用形態は正社員がほとんどです。
上記の企業以外では、たとえばアロマやハーブなどの香りに関連するアイテムを扱うショップに勤務する場合には、アルバイトとして採用されることもあるでしょう。
なかには独立し、フリーランスとして働く人もいますが、調香師として一人前になるには時間がかかります。
また、個人で調香の仕事をするとなると、より高度な専門性や実績をアピールする必要があるため、経験が浅いうちはなかなか難しいでしょう。
調香師の勤務時間・休日・生活
規則正しい生活を送れることが多い
調香師の多くは食品メーカーなどの企業に勤めているため、他職種の日勤の会社員と同様、朝から夕方にかけて働くことが多いです。
研究部門に所属する場合は、始業が8時や8時半など、やや早めになることもあります。
休日は勤務先にもよりますが、土日祝日を休みとする完全週休2日制が一般的です。
平常時の残業はそれほど多くありません。
調香師は、業務のなかでさまざまな香料を嗅ぎ分けなくてはならないため、短時間でも非常に集中力や精神力を使います。
休日はしっかりと体を休め、リフレッシュして体調を整えることが大切です。
しかし、調香師は、もともと香りに興味があるため、休日に街に出かけても、ついさまざまな香りが気になってしまうという人もいるようです。
調香師の求人・就職状況・需要
日本ではフレーバリストとしての業務がほとんど
調香師になるには、大学や大学院で化学を専攻したのち、化粧品メーカーや食品メーカー、飲料メーカー、または香料の専門会社へ就職するのが一般的なルートです。
ただし、調香業務を担当する専門職の求人が出されるケースは、あまり多くありません。
とくに、志望者は多いですが、化粧品や香水などの調香に携わる「パヒューマー」の求人はごくわずかです。
日本国内の調香師の求人で比較的多いのは、食品メーカーや飲料メーカーの研究開発部門にて、調香を学んだ「フレーバリスト」が募集されるケースです。
フレーバリストが扱う製品は、企業によって異なりますが、食品や飲料のほか、お酒やタバコ、医薬品などまでさまざまなものがあります。
調香師の転職状況・未経験採用
求人数が少なく、調香師への転職は難易度が高い
新卒・転職に関わらず、調香師の求人は極めて少ないため、常に高倍率になりがちです。
求人が出たとしても、即戦力となれる経験者を求めていることが多く、まったくの未経験から転職することはほぼ不可能と考えておいたほうがよいでしょう。
ただし、化学分野の大学・大学院を出ていたり、前職でも化学系の知識が生かせる研究職に就いていたりした人であれば、タイミング次第で採用される可能性は考えられます。
それでも確実に調香業務に就けるとは限らず、やはり狭き門といえます。
社会人が未経験から調香師への転職を目指す場合には、数は多くありませんが、働きながらでも通える調香の専門学校やスクールに通い、少しでもアピール材料を増やす努力が必要でしょう。
パヒューマーとフレーバリストの違い
香りの対象とする製品の種類に違いがある
調香師の種類は、大きく「パヒューマー」と「フレーバリスト」の2種類に分けられます。
両者の違いを簡単に紹介すると、パヒューマーは「口に入らないもの(化粧品や石けん、シャンプー、入浴剤、洗剤、芳香剤など)」の香りを調合する人のことです。
こうした製品には、各メーカーやブランドごとに個性的で特徴的な香りをつけることも多く、香りが売れ行きを左右することも少なくありません。
香水もパヒューマーが扱うものの一種ですが、日本では香水に関する調香業務の需要があまり多くないため、海外で働く人が多いのが実情です。
一方、フレーバリストは「口に入るもの(食品や飲料、歯磨き粉、お酒、薬、タバコなど)」の香りを調合します。
フレーバリストの仕事では、食欲をそそる香りを作ったり、加工食品をリアルな味に近づけたりと、「いかに口の中でおいしく感じさせるか」を目的とするものが中心です。