皇宮護衛官になるには
この採用試験には年齢制限などのが定められているため、受験を希望する人は事前に情報を確認しておきましょう。
この記事では、皇宮護衛官になるまでの道のりや目指せる年齢、また、なってからのキャリアパス・キャリアプランなどをまとめて紹介しています。
皇宮護衛官になるまでの道のり
まずは採用試験への合格を目指す
皇宮護衛官になるには、人事院が行う「皇宮護衛官採用試験」に合格し、採用される必要があります。
皇宮護衛官採用試験には、大きく分けると「大学卒業程度試験」と「高校卒業程度試験」があり、それぞれ年齢制限などの受験資格が設けられています。
試験は一次試験(筆記試験)と二次試験(面接や体力検査など)の二段階で実施され、例年、大卒の試験は6月~7月、高卒の試験は9月~11月にかけて実施されています。
なお、上記の試験のほか、柔道や剣道の段位を有する人を対象とする「武道有段者選考試験」も実施されることがあります。
皇宮護衛官は採用予定人数が少ないこともあり、試験の倍率は高くなりがちです。
10倍~30倍程度になる年が多いため、合格のためにはしっかりと試験対策をして臨む必要があります。
採用後は皇宮警察学校へ
皇宮護衛官としての採用が決まったら、まずは「皇宮巡査」として任命されます。
そして、東京の皇居内にある皇宮警察学校に入学し、大卒者は6か月間、それ以外の人は10か月間の訓練と初任教養を受けます。
皇宮警察学校は全寮制で、集団生活を行いながら皇宮護衛官としての心構えを徐々に身につけていきます。
学習内容は、法学や柔道、剣道に加えて、和歌、書道、華道、茶道、英会話など多彩です。
皇宮警察学校を卒業すると護衛署で約3か月間の実習を行い、再び皇宮警察学校に入校。今度は2か月間の初任補習科を経て、いよいよ配属が決定します。
配属先は、おもに「皇居」と「赤坂御用地」となりますが、そのほか、下記の場所で勤務することもあります。
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皇宮護衛官の資格・難易度
皇宮護衛官になるために、特別な資格は必要ありません。
採用試験の区分別で受験資格が設けられており、基本的には年齢と学歴の要件を満たしていれば、誰でも試験を受けることが可能です。
皇宮護衛官になってからは、皇宮警察学校での教育を受けたり、日々の業務の中で学んで皇宮護衛官としての知識とスキルを磨いていくことが求められます。
皇宮護衛官になるための学校の種類
さまざまな学校から目指すことができる
皇宮護衛官を目指すにあたって、採用時に有利になる学校はとくにありません。
「大卒程度試験」は、院卒、大卒、短大卒、高専卒のいずれかの人であれば受験することができます。
また「高卒程度試験」の受験資格は、高校または中学校を卒業後5年を経過していないことが条件となっているため、高卒や中卒の人はもちろん、該当期間内であれば大学や専門学校の在学生・卒業生も受験可能です。
年齢の上限はありますが、実際に皇宮護衛官になった人の卒業した学校の種類はさまざまで、学部・学科や文系・理系で採用時に不利になることもありません。
自分が前向きに、自信を持って学生生活を送れる学校を選ぶとよいでしょう。
公安職俸給表(ー)学歴別人数
下記のグラフは、皇宮護衛官を含む「公安職俸給表(一)」の学歴別人数を表したものです。
大卒が過半数を占めていますが、高卒も約35%、短大卒は約11%程度と、さまざまな学歴の人が活躍していることがわかります。
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皇宮護衛官に向いている人
正義感が強く、誠実である
皇宮護衛官は、「皇族を護る」という非常に重要な責務を担っているため、正義感にあふれ、いつでも誠実な対応をとることが大事だとされます。
また、海外のゲストと接する機会も多いため、礼儀正しく品行方正であり、丁寧な言葉遣いができる人に向いている仕事です。
忍耐力・集中力がある
護衛や警備などを行う皇宮護衛官は、普段は決して目立つことのない裏方の職業であり、業務の大半は地味で地道なものです。
護衛署は静けさに包まれることも多いですが、そのような空間でも集中して仕事を続けることができる忍耐力と粘り強さが必要です。
日本文化に興味がある
皇宮護衛官にとって、日本の伝統文化に興味を持つことは大事な要素となります。
皇宮警察学校でも茶道や華道、短歌、書道などの授業がありますので、それらの知識と教養を深めることを楽しめる人に向いている仕事です。
皇宮護衛官のキャリアプラン・キャリアパス
皇宮護衛官として必要とされる武道やけん銃の扱い方などの訓練は、採用後に入校する皇宮警察学校にて、時間をかけて行われます。
柔道や剣道、逮捕術は初心者でも問題ありません。
これらは体を強くすることはもちろんですが、精神力を鍛えるためにも大切な訓練とみなされています。
また、皇宮護衛官に欠かせない敬礼や基本姿勢、整列、各種装備の出し入れなども、現場に出る前に皇宮警察学校できちんと訓練されます。
重い盾などを身につけて走ることや、いざというときに武道などで学んだことが生かせるよう、実践的な総合訓練も行われています。
また「警防訓練」といわれる消防活動の訓練もあります。
大きなホースを担いで走り回るのは大変ですが、このような訓練を重ねてこそ、ようやく一人前の皇宮護衛官として働くことができるようになります。
訓練は大変と感じることもあるでしょう。しかし、負けない気持ちがあれば乗り越えられるので、簡単には諦めない姿勢が大切です。
皇宮警察学校卒業後は、階級が進むごとに巡査部長任用科、警部補任用科など昇任に応じた研修があります。
また、実務に即した鑑識専科、護衛専科、情報管理専科などの各種研修制度もあり、自分の希望や適性に応じて、さまざまな方向へステップアップすることが可能です。
皇宮護衛官を目指せる年齢は?
皇宮護衛官採用試験は、試験区分によって目指せる年齢が変わってきます。
自分がどの区分なら受験できそうか、事前によく確認しておきましょう。
大卒程度試験
「21歳以上30歳未満」の年齢制限があります。
21歳未満の場合でも、大卒(および卒業見込み)の人であれば受験が可能ですが、遅くても20代のうちには試験に合格して採用されることを目指す必要があります。
高卒程度試験
年齢の要件はありません。
ただし、「採用試験を受験する年度の4月1日時点で、高校または中学校を卒業した日の翌日から起算して5年を経過していないこと」が条件となります。
武道有段者試験
年齢制限はありません。
ただし、採用試験を受験する年度の4月1日において高校または中学校を卒業していることが前提で、それに加えて柔道や剣道に関する段位の条件があります。
最新の募集要項は、皇宮警察本部の皇宮護衛官採用情報ページで確認してください。
皇宮護衛官は高卒から目指せる?
皇宮護衛官採用試験は、高卒の人であっても受験することができます。
また、高卒程度試験の応募資格を満たしていれば、中卒の人が受験することも可能です。
ただし、皇宮護衛官採用試験は非常に倍率が高く、高卒程度試験でも20倍や30倍を超えることがあるため、決して簡単に合格できるものではありません。
基礎能力試験にむけた勉強や作文の練習をしておくほか、体力検査に合格できるくらいの基礎体力づくりをしておく必要があります。
皇宮護衛官は女性でもなれる?
皇宮護衛官は、警察官に比べると女性の割合は大きいといわれています。
全体の人数がそこまで多いわけではありませんが、全皇宮護衛官の1割程度が女性といわれており、実際、採用試験でも毎年女性の合格者が複数人出ています。
採用試験では男女関係なく成績上位者から合格者が選ばれるため、女性だからといって不利になることはありません。
また、皇宮護衛官としての仕事内容でも不利になることはありませんし、さまざまな仕事に挑戦することができます。
近年は、職場において子育てと仕事を両立できる制度や環境がさらに整ってきて、結婚・出産後も働き続ける女性皇宮護衛官が増えているそうです。
参考までに、下記のグラフは、皇宮護衛官が該当する「公安職俸給表(一)」の男女比を表したものです。
公安職俸給表(一)は皇宮護衛官以外の職種も含むため、あくまでも参考情報にはなりますが、とくに20代など若い世代では女性の比率が比較的高めとなっています。