水産学とは? 大学で学ぶことや就職先は?
水産学の概要・理念
水産学とは、漁業・増養殖・それらの利用・加工といった水産業を支える学問です。
日本は島国であることから、古来水産業が盛んに行われてきました。
海で魚を捕らえる漁獲だけでなく、養殖や海藻の栽培により、水産資源を有効活用する技術が進歩し続けてきたのです。
こうして得られた水産品は、加工され市場に流通し、消費者の手に届けられます。
このような水産業における一連の技能や機能を科学的な観点から研究し、水産業をさらに進歩・発展させていくことを目指すのが水産学の役割の1つです。
近年では国際間の漁業水域や乱獲や環境汚染に伴う資源の枯渇が危惧されるなど、水産資源をめぐっては数多くの課題が山積しています。
こうした問題に対して学問としてのアプローチから解決策や改善策を考案し、水産業を持続可能な産業として維持していくのも、水産学に求められている研究成果といえます。
地球規模で見たとき海洋に境界線はありませんので、特定の地域に限らずグローバルな視点で研究を進める必要があります。
水産学で学ぶこと
水産学は、大きく分けて漁業学、増殖学、食品生産学の3つに分類されます。
漁業学は海洋生物の生態について調査し、分析結果をもとに漁場や漁獲量を適正に保つことに役立てることを目指します。
増殖学では、養殖に代表されるように水産資源を効率的かつ持続的に生産する方法について研究が進められています。
食品生産学では、水産物を食品として利用するための技術について研究し、改良や新たな手法の開発について探求します。
近年では漁場探索に人工衛星の技術が応用されたり、養殖にバイオテクノロジーが導入されたりと、水産業に最新鋭の技術が取り入れられ、より効率的で適切な生産方法の模索が進められています。
このように、最先端の技術を水産業に取り入れる手法についても学びます。
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水産学の大学での授業科目の例
海洋生態学
海洋の微生物やプランクトン、海藻、魚類、海洋哺乳類について、その分布や行動、物質循環といった切り口から研究します。
水産増養殖学
海洋生物の遺伝・成長・病気の研究を通じて、人工的に育成し効率的に増やす技術を開発・改良する方法を模索します。
水産食品学
水産物を食品として利用するにあたり、その加工技術や保存方法、流通の仕組みについて総合的に学びます。
水産資源学
海洋生物の分布や数量の変動を観測することによって、乱獲や気候変動などに伴う急激な減少を抑える手法を学びます。
海事法
海事活動を規定する国内法をはじめ、私企業間の活動を規定する国際私法まで、水産学にまつわる法的な知識を習得します。
水産学のレポート・テーマの例
水産学の研究領域は、水産物として利用可能な海洋生物だけでなく、その生態に影響を与えるプランクトンや微生物にも及んでいるため、非常に広い範囲に及びます。
レポートについても、実際に漁船に乗り漁獲を体験する実習について総括するなど、座学に留まらない実践的な内容を含むこともあります。
- ・動物プランクトンの生態
- ・海洋細菌由来の抗菌物質
- ・魚類の免疫と脳ホルモン
- ・甲殻類の増養殖について
- ・水棲生物における天然低分子毒の分布
水産学と関連する学問
水産学を学ぶ上で、水生生物の体の仕組みや性質について知ることは不可欠ですので、解剖学や薬理学といった医学・薬学に関する知識を求められる場合があります。
水生生物の生態や分布を調査するにあたっては、生物学や環境科学の知見も必要になります。
また、産業としての水産業について研究するには、流通や小売の仕組みについて知る必要があることから、経営学や経済学とも関わりがあります。
さらに、海事法について学ぶため、法学とも関連のある学問と考えることができます。
水産学を学んで就職に有利な業界・仕事
水産学の知識を活かすのであれば、水産会社など食品メーカーに就職するにあたって知識や技能を活かすことができます。
また、環境アセスメントや船舶関連、医薬品、化学工業といった業界においても、水産学の研究内容と関連する部分があることから、専門知識を持つ人材として重宝される可能性があります。
公務員としても、水産関連施設の職員や農林水産省をはじめとする官公庁での募集がありますので、水産学の知識を活かせる機会があるでしょう。
水産学を学ぶことができる大学そのものの数が限られていることから、水産学の専門知識を持つ人材が希少であることは間違いなく、こうした業界においては就職に有利になる場合もあります。
ただし、いずれの業界においても研究職は非常に狭き門であり、仮に大学院を修了したとしても研究職として着任できる機会は決して多いとはいえません。
そのため、実際には水産学とは直接的な関わりの薄い流通、金融、情報処理といった業界へ就職する人も多く見られます。
水産学の知識は人生でどう役立つ?
日本は古くから食をはじめ、暮らしの中で水産品を利用し、役立ててきました。
近年では、2014年に太平洋クロマグロが絶滅危惧種Ⅱ類に指定されるなど、私たちにとって身近な水産品が将来にわたって活用できるか危ぶまれる事態も見られます。
こうした大きな流れを科学的な視点から的確に判断し、消費者として適切な行動を取る上においても、水産学の知識を活かすことができるでしょう。
また、水産学は水産業の発展のために大きく貢献してきた学問であり、産業界と深く関わっている実学の1つです。
世の中で役立てられていることを実感できる学問を学ぶことを通じて、物事を広い視野で捉え、客観的な思考を巡らせていく上でも、水産学を学んだ経験が役立つはずです。
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