専門学校に通うメリットとデメリットは? 夜間・通信も含めて解説

進学先を考えるにあたって、大学や短大を選ぶか、専門学校を選ぶかは重要な決断の1つです。

進路には多様な選択肢がありますので、人によってどの道を選ぶのがベストといえるのかは異なります。

もし専門学校に進む選択をするのであれば、専門学校に通うメリットとデメリットをしっかりと理解しておく必要があるでしょう。

そこで、専門学校に通うメリット・デメリットについて、夜間や通信といったコースも含めて整理しておきましょう。





専門学校に通う3つのメリット

平成元年度の時点で、全国におよそ2,800校の専門学校があり、新年度には約27万人が専門学校に入学しています。

参考:学校基本調査(文部科学省)

これほど多くの人が専門学校の門を叩き、専門学校で学ぶ道を選んでいるわけですから、通うことのメリットがあると考えるのが自然でしょう。

専門学校に通うメリットとして、主に次の3点が挙げられます。

就職に直結する資格を取得できる

専門学校では、主に職業や実生活に必要な知識や技能の習得を目指して学びます。

大学や短大が学術的な研究や幅広い教養を身につけることを教育目標としているのと比べると、将来の職業に直接的に関わることを学べるのが専門学校の特徴と言えます。

そのため、専門学校での授業は講義のほか、とくに実習の時間が多く確保されており、職業人として求められる実践的な知識や能力を身につけることが重視されています。

プロフェッショナルとして働く上で必要とされる資格があれば、資格取得を目指して対策授業を実施してくれる場合もあります。

また、卒業時点で就職に直結する資格を取得できる学科やコースが設けられている専門学校もあります。

このように、就職して働いていく上で直接役立てられる知識や技能を学べるのは、専門学校に通う上での大きなメリットの1つと言えます。

同じ目標を持った仲間と一緒に学べる

専門学校は学ぶ対象が絞られており、特定の分野を集中的に学ぶことを目的としています。

高校卒業時点で専門学校に通うことを選ぶ人の多くは、将来就きたい仕事や選びたい進路がしっかりと決まっている人が多い傾向があります。

大学や短大にも将来の目標を明確に持っている学生はいますが、やりたいことが決まっていないのでとりあえず大学に進学する人も多いのは否めません。

その点、専門学校で一緒に学ぶ仲間は、将来の目標をはっきりと決めている人が多いため、同じ目標を持った人の中で学べるメリットがあります。

保育士になりたい」「美容師になりたい」といった明確な目標がある人が身近にいることは、自分自身が学び続けていく上でも良い刺激になるはずです。

職業によっては専門学校卒が有利になる場合も

専門学校で学べる分野は、大きく「工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉、商業実務、服飾・家政、文化・教養」の8種類に分けることができます。

学ぶ分野によっては、柔道整体師歯科技工士、保育士のように、就業するためには国家資格の取得が必須とされているものがあります。

また、声優アニメーターのように特殊なスキルを要する職業の場合、専門学校で基礎的な知識や技能を習得しておくことが望ましい場合もあります。

こうした専門知識は大学や短大に通いながら独学で習得できる場合もありますが、その仕事に就くことに特化したカリキュラムが用意されている専門学校で学ぶほうが近道となることもあります。

このように、将来的に選ぶ職業によっては、専門学校で学んできたことが就職時に有利に働く場合もあります。

専門学校に通う3つのデメリット

特定の分野の専門技能に特化して学ぶことができる専門学校ですが、もちろんメリットばかりではありません。

大学や短大ではなく専門学校を進学先に選ぶことで、どうしても避けられないデメリットを被る場合もあります。

ここでは主に3つのデメリットを挙げますが、これらのデメリットよりも先に挙げたメリットが上回っていると思うのであれば、専門学校は有力な進路の選択肢となるでしょう。

大卒以上を条件とする求人には応募できない

大手企業や人気業種では、新卒採用の応募要件を「大学卒業以上」としている会社が多く見られます。

専門学校を卒業すると「専門士」の称号が与えられ、高卒よりも専門的な知識・技能を習得してきた証明になります。

ただし、専門士はあくまで「専門学校卒」の称号であり、大卒者に与えられる「学士」などの学位とは異なります。

そのため、大卒以上が必須条件となっている求人には基本的に応募することができません。

「高卒以上」または「専門卒以上」が条件となっている求人を選んで応募する必要があります。

もし将来働きたい業種や企業が大卒以上を採用条件としているのであれば、専門学校を卒業してもその会社の求人に応募することはできません。

途中で進路を変更するのが難しい

専門学校では特定の分野に特化したカリキュラムが用意されており、将来その道に進むことを前提として授業や実習が行われます。

将来就きたい職業が明確に決まっている人にとっては、仕事に直結する知識や技能を学べる恵まれた環境となります。

ただし、途中で進路を変えたくなった場合、変更するのは現実的に難しくなりがちです。

たとえば、美容師を目指して美容専門学校に通っていた人が、途中でアニメーターに進路を変えたいと思っても、美容専門学校でアニメーターになるための授業を受けることはできません。

高い専門性に特化した授業を受けられるメリットが、逆にデメリットにもなり得るのです。

そのため、専門学校を進学先として選ぶのであれば、自分が将来やりたい仕事は本当にそれでいいのか、事前によく考えておく必要があります。

大学よりも修学期間が短く忙しい

専門学校(専修学校専門課程)は、修業年数が2年以上であることが必須条件となっています。

実際には修業年数が2年の専門学校が多く見られます。

4年制大学であれば、入学してから卒業するまで4年間ありますので、1・2年次は基礎科目や教養科目の授業を受け、3年次より専門分野の授業が中心になるのが一般的です。

これに対して、修業年数が2年の専門学校では1年次から専門的な内容をみっちりと学ぶ必要があります。

授業が少ない曜日もある大学とちがい、専門学校では平日は朝から夕方まで授業で埋まるのが普通です。

また、修業年数が短いことは就職活動においても時間の余裕がなくなる原因になります。

専門学校に入学して1年が経ち、学校生活に慣れてきた頃には卒業や就職に向けて準備を進めなくてはなりません。

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専門学校の学費は大学と比べて安い?

専門学校に進学するメリットを考える上で、学費について知っておくことも重要です。

とくに学費が高額になりやすい私立大学などと比べると、専門学校は学費が安く抑えられるイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。

ただ、学費に関しては学ぶ分野や進学先の学校によって大きく異なることがあります。

漠然としたイメージではなく、実際にどれだけの学費がかかるのか調べておくことが大切です。

一般的に学費は大学>専門学校

私立大学と専門学校の学費について、初年度納入額の平均は以下のようになっています。

私立大学(※1) 専門学校(※2)
入学金 249,985円 182,000円
授業料 904,146円 698,000円
施設設備費 181,902円 195,000円
初年度合計 1,336,033円 1,075,000円
卒業まで 4,594,177円 1,968,000円

(実習費、その他費用を除外した納入額)

(※1)参考:私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について(文部科学省)

(※2)参考: 令和元年度 学生・生徒納付金調査(東京都専修学校各種学校協会)

卒業までにかかる学費の合計は、大学は4年間、専門学校は2年間で計算しています。

平均的な納入額で考えると、専門学校は私立大学と比べて卒業までにかかる学費が半分以下に抑えられることが分かります。

学ぶ分野によっては大学と学費が変わらない場合も

ただし、学ぶ分野によっては実習が多く行われたり、修業年数が3年や4年になることもあることから、結果的に大学と学費がそれほど変わらなくなる場合もあります。

一般的に、医療系の分野や製菓のように実習が多い分野においては、学費が高額になりやすい傾向があります。

《学費が高い傾向のある分野の一例》

理学療法作業療法 製菓
入学金 321,000円 210,000円
授業料 971,000円 662,000円
実習費 203,000円 561,000円
設備費 240,000円 162,000円
その他 43,000円 118,000円
初年度合計 1,777,000円 1,713,000円
卒業まで 6,149,000円 3,216,000円

(理学療法・作業療法は4年間、製菓は2年間として卒業までの学費を算出)

このように、専門学校の学費に関しては入学金や授業料だけでなく、実習費や設備費といった費用も加味して卒業までに必要な学費を試算しておくことが非常に重要です。

学費が大学よりも抑えられることを期待して専門学校に進学したにも関わらず、結果的に大学以上に学費がかかってしまうことのないよう、しっかりと調べておきましょう。

夜間・通信の専門学校とは?

ここまで解説してきた専門学校のメリット・デメリットは、主に昼間部についてのものです。

しかし、専門学校にはさまざまな事情で平日の昼間に通学できない人のために夜間や通信といった方法で学べる仕組みを整えている学校もあります。

夜間や通信の専門学校にはどのような特徴があるのか確認しておきましょう。

夜間の専門学校の特徴

夜間の専門学校とは、夕方以降に授業が行われる専門学校のことを指します。

一般的に18時から21時頃にかけて授業が実施されています。

年間で確保できる授業時間数が限られるため、昼間部と比べて授業内容が凝縮されているのが特徴です。

そのため、短期間で集中的に学ぶ必要がありますが、学べる内容としては昼間部と違いがなく、資格取得や専門士の称号授与についても昼間部と同様に可能です。

ただし、企業実習や外部研修に関しては、昼間部とは別のカリキュラムとなっている場合がありますので、事前によく確認しておく必要があります。

夜間部に通う学生の多くは、昼間に仕事をしています。

アルバイトをしている人や、社会人として会社に勤務している人など、さまざまな人がいます。

よって、昼間部と比べて通学している学生の年齢層が幅広くなりやすい傾向があります。

通信の専門学校の特徴

通信の専門学校とは、通学して講師から教わるカリキュラムではなく、自宅で教材等を使って自学自習する学習スタイルの学校のことです。

すべての専門学校や学科で通信制カリキュラムが用意されているわけではなく、とくに美容系の学校に設置されているケースが目立ちます。

大学・短大などとのダブルスクールで専門知識を習得したいと考えている人や、社会人で働きながら学びたい人が多く利用しています。

通学が必要ないのは大きなメリットですが、通信制の専門学校には注意点もあります。

卒業して専門士の称号を得るには、高校卒業後、2年以上にわたって所定の授業を修了する必要があります。

しかし、通信制のカリキュラムの多くはこうした専門課程とは別のカリキュラムになっています。

つまり、通信制の専門学校を卒業しても専門学校卒とは認められません。

また、全ての課程を通信で実施できるとは限りません。

スクーリングと呼ばれる通学型の講義や実習を平日の昼間に受けなくてはならない場合もあるため、平日の昼間に時間を作ることが難しい人は受講が難しい場合もあります。

この記事のまとめ

高校卒業後の進路選択の1つとして、専門学校にはさまざまなメリットがあります。

職業に直結する内容を学べることや、志が同じ仲間と一緒に学べることは、将来の可能性を広げる上で心強い支えになるでしょう。

一方で、大卒資格は得られないことや学費が大学よりも抑えられるとは限らないことなど、デメリットもいくつかあるのは事実です。

専門学校を進路の選択肢として検討する場合には、こうしたメリットとデメリットの両面をしっかりと理解しておくことが大切です。

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